有給休暇の付与日数は何日? 計算方法やタイミングを人事向けにわかりやすく解説
有給休暇は、一定期間勤務した従業員に与えられる休暇です。入社から6か月後に、10日の有給休暇が付与されます。
2019年に施行された改正法により、有給休暇の取得管理を厳格化する必要が生じています。従業員ごとに有給休暇の残日数を管理しなければならず、労務管理が複雑になっている企業も少なくないでしょう。
本記事では、有給休暇の付与日数をはじめ、計算方法や付与される条件をわかりやすく解説します。
そもそも年次有給休暇とは?
有給休暇は、正式名称を「年次有給休暇」といいます。従業員の心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を保障するための休暇であり、労働基準法で定められた一定の要件を満たす従業員に付与されます。
通常、働いていないと賃金は発生しませんが、有給休暇を取得した期間は働いていなくても賃金が発生し、休んでも従業員の給与は減額されません。
参考元:『年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。』厚生労働省
法律で定められている有給休暇の付与日数
2019年4月に施行された改正労働基準法により、年10日以上の有給休暇が付与されるすべての従業員に、年5日の有給休暇を取らせることが企業に義務づけられました。有給休暇の取得を促すことが目的です。
勤怠管理や人事労務の担当者は、従業員全員が確実に有給休暇を消化できるよう働きかけなければなりません。また、正社員だけでなくパートやアルバイトなど雇用形態を問わず、有給休暇の付与日数・取得日数を正しく計算し、管理する必要があります。
参照元:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省
有給休暇の付与日数と計算方法
有給休暇の付与日数と計算方法について、雇用形態別に見ていきましょう。
フルタイム勤務
フルタイムの従業員にあてはまる要件は、次の通りです。
- 週の所定労働時間が30時間以上
- 所定労働日数が週5日以上または年間の所定労働日数が217日以上
上記の条件を満たす従業員に対しては、以下の通り有給休暇の付与日数が定められています。
勤続勤務年数 | 付与日数 |
---|---|
0.5年 | 10日 |
1.5年 | 11日 |
2.5年 | 12日 |
3.5年 | 14日 |
4.5年 | 16日 |
5.5年 | 18日 |
6.5年以上 | 20日 |
出典:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省
原則として、入社から半年が経過した時点で初回の有給休暇が付与されますが、なかには前倒しで有給休暇を付与する企業もあります。
パートタイム勤務
パートタイムとは、週あたりの労働時間が30時間未満、かつ週の所定労働日数が4日以下の短時間勤務のことです。パートタイム勤務は、週または1年間の所定労働日数によって変わる「比例付与」で有給休暇の付与日数を計算します。
継続勤務年数 | 所定労働日数と付与日数 | |||
---|---|---|---|---|
週1日 | 週2日 | 週3日 | 週4日 | |
年48〜72日 | 年73〜120日 | 年121〜168日 | 年169〜216日 | |
0.5年 | 1日 | 3日 | 5日 | 7日 |
1.5年 | 2日 | 4日 | 6日 | 8日 |
2.5年 | 2日 | 4日 | 6日 | 9日 |
3.5年 | 2日 | 5日 | 8日 | 10日 |
4.5年 | 3日 | 6日 | 9日 | 12日 |
5.5年 | 3日 | 6日 | 10日 | 13日 |
6.5年以上 | 3日 | 7日 | 11日 | 15日 |
出典:『年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています』厚生労働省
上記の付与日数は、労働基準法で定められた最低限の付与日数です。企業によっては、従業員により好条件で有給休暇を付与するケースもあります。
有給休暇が付与される条件
労働基準法により、有給休暇が付与される従業員の条件は、以下の通り定められています。
- 雇い入れ日から6か月継続勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
原則として、入社から半年が経過しており、出勤率が8割以上であれば有給休暇が付与されます。病気やケガなどの理由で長期休暇を取った従業員については、出勤率が8割に満たないことがあるので注意が必要です。
出勤率の計算方法
有給休暇の付与条件である出勤率は、以下の通り算出します。
出勤率=出勤日数÷全労働日数 |
従業員の出勤率を算出する際は、全労働日数や出勤日数に含める項目を把握することが重要です。
全労働日数・出勤日数に含める日 |
---|
・有給休暇 ・産前産後休業、育児休業 ・介護休業・業務上のけがや病気による休業 ・遅刻日、早退日 |
全労働日数・出勤日数に含めない日 |
---|
・企業都合による休業 ・休日出勤した日 ・正当なストライキで休業した日 ・休職制度を利用した休職期間 |
労使間の合意により、全労働日数・出勤日数に含めるかを決定 |
---|
・生理休暇 ・慶弔休暇 ・通勤災害による負傷などで療養するための休業 |
労働日や出勤日として数える項目を理解して、正確に出勤率を求めましょう。
有給休暇が付与されるタイミング
有給休暇が付与されるタイミングは、労働基準法第39条により「雇い入れてから6か月が経過した日」と定められています。有給休暇の権利が発生する日を基準日といい、2回目以降はこの基準日から1年ごとに付与されます。
ただし、39条文の規定は企業側が最低限順守しなければならないルールです。従業員にとって有利な条件であれば、より早いタイミングで基準日を設定しても問題ありません。
有給休暇は前倒しで付与できる?
労働基準法によって、有給休暇を付与するタイミングは入社日から半年後と定められているものの、それより早い時期に有給休暇を付与することも可能です。
入社日に初回の有給休暇を付与している企業は、従業員に対して有給休暇を前倒しで付与していることを意味します。
前倒しで有給休暇を付与したすると、付与した日が基準日となる点に注意しましょう。
有給休暇の基準日は統一できる?
従業員が入社するタイミングによっては、従業員ごとに有給休暇付与の基準日がバラバラになり、管理が煩雑になってしまうことがあります。
従来の基準日を前倒しするのは問題ないので、基準日を自由に変更し、全従業員の有給休暇の基準日を統一することも可能です。ただし、従業員にとって不利にならないように配慮してください。
参照元:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省
有給休暇の有効期限と繰越日数
有給休暇の有効期限と、繰り越せる日数について解説します。
有給休暇の有効期限は2年
労働基準法第115条において、有給休暇には2年の有効期限があると定められています。
従業員が有給休暇を使いきらない状態で新しい有給休暇を付与されたとしても、付与されてから2年以内であれば問題なく利用できます。しかし、基準日から2年が経過すると、有給休暇に対する権利が消失するため注意が必要です。
翌年に繰り越せる有給休暇日数
年内に利用しなかった有給休暇は、翌年に繰り越すことが可能です。
有給休暇の付与日数は、勤務年数や所定労働日数によって異なります。フルタイム勤務で6年6か月以上継続勤務した場合、有給休暇の付与日数は最大20日であり、繰り越しできる上限も20日です。しかし、年間5日は有給休暇を取得させることが企業側に義務づけられているため、実質的に繰り越せる日数は最大15日です。
つまり、基準日に新たに付与される20日と合計すると、最大35日の有給休暇を保有できます。
参照:『年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説』厚生労働省
有給休暇を付与する際の注意点
有給休暇を付与する際に注意すべきポイントをご紹介します。
出勤率が8割に満たない場合
出勤率が8割に満たない場合は、原則として有給休暇は付与されません。しかし、出勤率が8割に満たない場合でも勤続年数には含める必要があるため、有給休暇の付与日数を計算する際は注意が必要です。
たとえば、新入社員が半年後の初回基準日に8割の出勤率が足りておらず、有給休暇が付与されなかったとしても、翌年に達すれば、1年6か月継続勤務したと認められ有給休暇11日が付与されます。
有給休暇を従業員が取得できなかった場合
従業員が年5日の有給休暇を取得できなかった場合、企業は労働基準法に違反したと見なされ、従業員1人につき30万円以下の罰金が科せられます。
また、従業員の希望する時季に有給休暇を与えなかった場合も取得義務違反とされ、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意が必要です。
有給休暇を取得させないことのリスクを理解し、従業員と相談のうえで適切な有休管理をしていきましょう。
有給休暇を買い上げしたい場合
有給休暇の買い上げは、原則できません。有給休暇は従業員の心身のリフレッシュを目的に付与される休暇であるため、企業が買い取ることは認められないのです。
ただし、以下の条件に該当すれば、買い上げが認められるケースもあります。
- 法律で定められた日数を上回って付与された有給休暇
- 退職時に残っている有給休暇
- 2年を超えて時効消滅した有給休暇
参照:『Q4.消化しきれなかった年休の分の賃金を支払って買い上げることはできますか?』厚生労働省東京労働局
有給休暇の付与日数を簡単に計算する方法
有給休暇の付与日数を効率よく計算するための方法をご紹介します。
エクセルを活用する
表計算ソフト・エクセルの関数機能を活用すると、有給休暇取得計画表を気軽に作成できます。導入コストもかからず、使い慣れたソフトで管理できる点がメリットです。
しかし、データを手入力する必要があるため、手間と時間がかかるだけでなく人為的ミスが起こりやすいというデメリットもあります。計算式や入力データに間違いがないか、複数の担当者で二重にチェックし、付与日数を正確に把握しましょう。
勤怠管理システムを導入する
勤怠管理システムを導入すると、従業員の勤続年数や有給休暇の付与日数などを手軽に管理できます。従業員の基本的な情報を入力しておけばシステムが自動的に計算してくれるため、管理者の負担を大幅に軽減できるでしょう。
有給休暇だけでなく、出退勤記録や休暇申請、残業時間などもシステム上で一括管理できます。リアルタイムで従業員の勤怠情報を可視化できるのは大きなメリットといえます。
勤怠管理システムを導入して有給休暇の適切な管理を
有給休暇は、正社員やパート、アルバイトなどの雇用形態に関係なく、条件を満たしたすべての従業員に付与しなければなりません。有給休暇の付与日数は、雇い入れ日からの継続勤務年数や所定労働日数に基づいて計算します。
有給休暇を付与する時期は、原則として雇い入れ日から半年が経過したタイミングです。法改正による年5日の有給休暇の取得義務や、繰越の期限についても正しく理解する必要があります。
勤怠管理システムの導入も検討しながら、有給休暇の付与日数や従業員の取得状況を適切に管理していきましょう。
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