法定休日の出勤ルールとは|回数の上限や割増賃金の考え方を解説
法定休日に出勤した場合の「休日出勤」に関するルールは少し複雑なので、正しい知識を持ち、誤って運用しないように注意する必要があります。
本記事では、出勤回数の上限や割増賃金など、法定休日の出勤に関するルールをわかりやすく解説します。労働者の権利を守り、法的なトラブルを避けるためにも、人事労務の担当者は、ぜひ参考にしてください。
法定休日とは
法定休日とは、法律によって定められた休日のことです。労働基準法では、企業は従業員に対して少なくとも「1週間に1日」または「4週間を通じて4日」の休日を与えなければならないと定められています。
(休日)第三十五条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。② 前項の規定は、四週間を通じ四日以上の休日を与える使用者については適用しない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
なお、曜日に関する規定はなく、企業が自由に設定できます。たとえば、週休2日制で土日休みの企業では、土曜日か日曜日のどちらか一方が法定休日となるでしょう。また、法定休日を固定の曜日としないことや、従業員ごとに法定休日を変えることも可能です。
企業が法定休日の規定を守らないと、労働基準法違反となり、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
罰則を回避できたとしても、労働基準法に違反することは、企業の社会的信用を失墜させます。各種法令を理解したうえで、ルールを遵守できるような体制を整えることが大切です。
法定外休日(所定休日)との違い
法定外休日(所定休日)とは、法定休日以外の休日を指します。法的な義務はないものの、従業員の福利厚生のために企業が独自に設定する休日です。
たとえば、週休2日制で土日休みの企業は、土曜日が法定休日だとしたら、日曜日は法定外休日となります。
法定外休日を定めるかどうかは企業の裁量に任されていますが、法定休日だけでは法定労働時間を超過してしまうケースが大半です。
労働基準法では、労働時間の上限は1日8時間・週40時間までと定められています。労働時間が1日7時間や8時間の場合、休日が1日(法定休日)のみでは、週あたりの労働時間の上限を超過してしまうのです。
そのため、「法定休日1日+法定外休日1日」という組み合わせで週休2日制を採用している企業が多いでしょう。
法定休日と法定外休日(所定休日)の関係
法定休日と法定外休日(所定休日)は、法律上の扱いが異なります。法定休日は労働基準法によって定められた休日なので、企業は従業員に対して法定休日を与える義務があります。
一方、法定外休日は、あくまでも企業が独自に設定するもので、法的な義務はありません。
このような背景から、法定休日と法定外休日では「休日に出勤した場合の扱い」も異なります。
従業員に休日出勤を依頼するとき、企業は通常支給される賃金に上乗せして割増賃金を支払わなければなりません。法定休日と法定外休日では、この割増率が異なるのです。
従業員の給与を正確に計算するためにも、企業は法定休日と法定外休日を明確に区別する必要があります。
次項から。従業員が法定休日・法定外休日に労働した場合の割増賃金について、さらに詳しく解説しましょう。
法定休日に出勤させた場合の割増賃金
従業員が法定休日に労働した場合、企業は35%以上の割増賃金を支給しなければなりません。
1時間あたりの基礎賃金が2,500円、法定休日に4時間労働したケースを例に、割増賃金を計算してみましょう。割増率を35%とすると、支払うべき割増賃金は以下の通りです。
2,500円×1.35×4時間=13,500円 |
法定外休日に出勤させた場合は割増賃金が発生しない
法定外休日は法的に定められた休日ではないため、通常は割増賃金が発生しません。
企業としては、法定休日よりも法定外休日に出勤を依頼したほうがコスト削減につながります。従業員にも違いを理解してもらったうえで、両者を明確に区別することが大切です。
ただし、法定外休日に出勤したことで法定労働時間の上限を超過した場合は、25%以上の割増賃金を支給する必要があります。
たとえば、1日7時間労働×週5日勤務の企業では、週あたりの所定労働時間は35時間です。加えて法定外休日に7時間労働したとすると、35時間+7時間=42時間で、法定労働時間を2時間超えてしまいます。この場合、1時間あたりの基礎賃金が2,500円、割増率を25%とすると、休日出勤に対する賃金の計算結果は以下の通りです。
2,500円×5時間+2,500円×1.25×2時間=18,750円 |
法定休日の出勤回数の上限について
プロジェクトの進捗遅れやトラブルの発生により、法定休日に出勤してもらわなければならない状況もあるでしょう。そのようなとき、法定休日の出勤回数に上限はあるのでしょうか。
法定休日の出勤回数におけるルールについて解説します。
時間外労働時間の上限を超えないことが前提
結論として、法定休日の出勤に回数制限はありません。しかし、法律を遵守するためには、出勤回数と労働時間をセットで考える必要があります。
時間外労働時間の上限は、月45時間・年360時間までと定められています。時間外労働とは、法定労働時間を超えて働いた時間のことです。
たとえば、通常の出勤日の残業時間が月30時間に達している場合、法定休日に1日8時間ずつ労働すると、2回の休日出勤で時間外労働の上限を超えてしまいます。
時間外労働の上限規制を遵守するためには、従業員の時間外労働時間や法定休日の出勤回数を間違いなく管理することが大切です。
法定休日の出勤ルールが就業規則に定められている場合も場
就業規則に「法定休日の出勤は月2回まで」というルールが記載されている企業もあります。時間外労働時間の上限を超過していなくても、自社の就業規則に法定休日の出勤上限回数が明記されているならば、そのルールは遵守しなければなりません。
法定休日に出勤させるために必要な準備
法定休日に出勤してもらうためには、事前の準備が不可欠です。
36協定を締結する
法定休日の出勤を従業員に対して依頼するには、あらかじめ36協定を締結している必要があります。36協定とは、休日労働や時間外労働について、企業側と従業員側が合意した内容を取りまとめたものです。
36協定を締結しないまま、従業員に法定休日の出勤を強いると、企業は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。36協定は労働基準監督署長への届出も必要なので、万一対応が遅れている企業は、早めに準備を進めましょう。
振替休日の取得ルールを定める
平日の残業時間や休日出勤の回数が多いなら、従業員に振替休日を付与する方法もあります。
振替休日とは、休日と別の労働日をあらかじめ入れ替えておくことです。振替休日を付与すると、休日出勤させた日が通常の労働日として扱われるため、時間外労働として加算されなくなります。
たとえば、日曜日(法定休日)に出勤してもらう代わりに、あらかじめ翌月曜日(労働日)を休日にするという例が考えられます。
ただし、振替休日は休日出勤の前に設定する必要があります。休日出勤を終えてから設定した休日は「代休」という扱いとなり、休日出勤が時間外労働として加算されるため注意しましょう。
法定休日の出勤させる場合の注意点
従業員を法定休日に出勤させる場合は、以下のポイントに注意しましょう。
従業員の負担にならない出勤回数に
法定労働時間や時間外労働時間の上限を超過していないとしても、休日出勤を依頼する場合は、従業員の精神的・肉体的な負担を考慮しなければなりません。
休日出勤を命じられた従業員は、十分な休息がとれなかったり、プライベートの予定が崩れたりして、不利益を被ることになります。ストレスや不満が溜まり、モチベーションや生産性が低下する恐れもあります。
法律や就業規則では問題がなくても、企業として従業員の心と身体の健康に配慮することが大切です。
就業規則に上限を設ける場合は慎重に
就業規則に「法定休日の出勤回数は月2回まで」という上限を設ける場合は、慎重に検討しましょう。上限を設けると、そのルールの範囲内で従業員に依頼しなければなりません。
予期せず休日出勤を増やさざるを得ない状況では、、生産の遅れなど不都合が生じる恐れがあります。
割増賃金の計算・支払いルールを理解
法定外休日とは異なり、法定休日の労働時間にはすべて割増賃金が適用されます。
法定休日の出勤は給与計算に大きな影響を与えるため、割増賃金の計算方法やルールを法律に基づいて正しく理解しておくことが大切です。
勤怠管理を正確に実施
法定休日と法定外休日は、休日手当の割増率が異なるため明確に区別し、ミスのない勤怠管理を目指しましょう。
さまざまな雇用形態・勤務形態の従業員が所属する企業では、勤怠管理が複雑になりがちです。アナログな作業を自動化できる勤怠管理システムや給与計算ツールなどを活用し、一人ひとりの勤怠情報を正確に管理しましょう。
法定休日に出勤させる場合はルールを遵守
従業員を法定休日に出勤させる場合、企業は35%以上の割増賃金を支給する必要があります。法定外休日(所定休日)とは割増率が異なるため、両者を明確に区別することが大切です。
また、法定休日の出勤により時間外労働時間の上限を超過する場合は、実質的に出勤回数にも制限が生じます。
労働基準法や就業規則を遵守し、法定休日の出勤を含めた勤怠情報を適切に管理しましょう。
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