タイムカードの保管期間は原則5年間! 適正な保管のために企業がすべきこととは
勤怠管理において、多くの企業が導入しているタイムカードです。タイムカードはただ作成すればよいのではなく、保管方法や期間などのルールを守って適切に管理する必要があります。
2020年4月の法改正により、タイムカードを原則5年間保管することが義務づけられています。そこで自社の管理方法について、細部までチェックできているかどうか気になっている企業は少なくないでしょう。
本記事は、タイムカードの保管期間や保管方法を詳しく解説します。保管期間の起算日についても紹介するので、人事労務の担当者の方はぜひお役立てください。
タイムカードには保管期間がある
タイムカードの保管は、労働基準法によって定められた企業の義務です。具体的な保管期間について解説しましょう。
タイムカードの保管期間は原則5年
労働基準法第109条により、タイムカードの保管期間は原則5年間と定められています。
(記録の保存)
第百九条 使用者は、労働者名簿、賃金台帳及び雇入れ、解雇、災害補償、賃金その他労働関係に関する重要な書類を五年間保存しなければならない。
引用:『労働基準法』e-Gov法令検索
従来の保管期間は3年でしたが、2020年4月の労働基準法改正により2年間延長されました。
法律を遵守していない企業には罰則が科せられる恐れもあるため、十分注意が必要です。ただし、経過措置として当面の間は従来の保管期間(3年)の適用が認められています。
7年間保管しなければならないケース
法人税法施行規則第59条の解釈により、7年間の保管が義務づけられるケースもあります。
(帳簿書類の整理保存)
第五十九条 青色申告法人は、次に掲げる帳簿書類を整理し、起算日から七年間、これを納税地(第三号に掲げる書類にあつては、当該納税地又は同号の取引に係る国内の事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地)に保存しなければならない。
一 第五十四条(取引に関する帳簿及び記載事項)に規定する帳簿並びに当該青色申告法人の資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引に関して作成されたその他の帳簿
二 棚卸表、貸借対照表及び損益計算書並びに決算に関して作成されたその他の書類
三 取引に関して、相手方から受け取つた注文書、契約書、送り状、領収書、見積書その他これらに準ずる書類及び自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものはその写し
引用:『法人税法施行規則 第59条』e-Gov法令検索
たとえば、源泉徴収簿を作成せず、賃金台帳が源泉徴収簿としての役割を担っている場合などが該当します。賃金台帳の保管期間と同じく「賃金台帳を作成するために必要なタイムカードも、7年間保管する必要がある」と解釈できるためです。
自社が当てはまるかどうか判断に迷う場合は、税務署や顧問税理士、社会保険労務士などに相談するとよいでしょう。
タイムカードの保管期間の起算日
タイムカードの保管期間を守るにあたって、「いつからいつまで」をカウントするのが正解なのでしょうか。タイムカードの保管期間の起算日について解説します。
基本は給与の支給日
勤怠データの保管期間は、最後に記録をした日が起算日です。
しかし、当該記録した日よりも当該記録に係る賃金の支払日が遅い場合には「勤怠にかかわる給与の支払いが完了した日(賃金支払い日)」を起算日とするよう定められています。
たとえば、10日締め、25日払いの会社の場合を考えてみましょう。9月11日~10月10日分のタイムカードは、10日25日を起算日として保管期間をカウントします。
法改正前は「最後に記録をした日」が起算日とされていました。誤って従来の方法で管理することのないように注意が必要です。
派遣社員の起算日には注意が必要
派遣社員の場合は、正社員とは起算日が異なります。正社員における起算日が「給与の支払い日」なのに対し、派遣社員における起算日は「派遣契約が終了した日」です。
タイムカードの保管対象者
タイムカードは、すべての従業員の分を保管する必要があるのでしょうか。保管の対象者である従業員の範囲を説明します。
基本は全従業員で退職者も含む
従業員のタイムカードは、正社員や派遣社員、アルバイトなどの雇用形態に関係なく保管する必要があります。なお、退職者についても賃金請求権の消滅時効までは保管義務が生じるため、誤って破棄しないよう注意しましょう。
例外はあるものの保管は必要
タイムカードは雇用形態にかかわらず保管義務がある一方、高度プロフェッショナル制度の対象者は、例外的に保管の必要がありません。
ただし、労働安全衛生法では、労働者に対する面接指導を行うために労働者の労働時間を把握することが義務づけられています。
また、賃金台帳が源泉徴収簿としての役割を担っている企業では、労働に関する重要な記録はすべての従業員の分を保管する必要があります。
このように、労働基準法上では保管義務のないケースはあるものの、基本的にタイムカードはすべての従業員の分を保管しておくのが望ましいでしょう。
タイムカードの保管に関する罰則
タイムカードを適正に保管することは、企業に課せられた義務の一つです。保管義務を怠った場合は、罰則が科せられるリスクがあります。
タイムカード保管義務を怠った場合
タイムカードの保存義務を怠った場合、30万円以下の罰金が科せられる恐れがあります。
従業員が個人的な判断で破棄したケースであっても、企業の責任は免れません。その場合は、当該従業員と企業の双方に罰則が科せられる可能性があります。
適切な管理・保管を促すため、企業側は保管ルールの周知徹底をはかるとともに、チェック体制を万全に整えましょう。
裁判で客観的な打刻情報を提示できない場合
残業手当の未払いにより、従業員から訴訟を起こされるケースは一定数存在します。
万が一、自社が訴えられた場合にタイムカードを保存していないと、裁判で客観的な打刻状況を提示できません。すると、本来は給与計算が適正であったとしても、悪質な賃金未払いとみなされる恐れがあります。
敗訴した場合は、未払いの残業手当だけでなく、同額の付加金の支払いも命じられるリスクもあるため注意しましょう。
社会的信頼の失墜につながることも
タイムカードの保管義務を怠ると、行政からの是正勧告や法的なペナルティを受けるだけでなく、インターネットやマスコミを通して「悪徳企業」という情報が広まってしまう恐れもあります。そのような事態に陥ると、自社に対する社会的信頼は失墜してしまうでしょう。
悪評による業績悪化やブランドイメージの低下など、企業が受けるダメージは計り知れません。
タイムカードを整理・保管するメリット
タイムカードを適正に整理・保管していると、以下のようなメリットがあります。
- リスク回避に有効
- 立ち入り調査にすぐ対応できる
- 助成金などの申請時
それぞれのメリットについて、詳しく解説しましょう。
リスク回避に有効
タイムカードを適正に管理・保管しておくと、従業員から残業手当の未払いなどで訴訟を起こされた場合もすぐに対処できます。タイムカードによる記録は、裁判でも客観的証拠として有効です。日頃から適正な保管を心がけ、万が一のトラブルに備えましょう。
立ち入り調査にすぐ対応できる
労働基準監督署は、企業の問題の「ある・なし」にかかわらず、定期的に立ち入り調査を実施するものです。普段からタイムカードが適正に保管されていれば、賃金の計算や支払いが客観的に見ても適正であることを証明できます。
急な調査にも落ち着いて対処できるよう、賃金台帳や労働者名簿、そしてタイムカードの適正な保管を心掛けましょう。
助成金などの申請時に役立つ
雇用調整助成金や傷病手当金の申請では、タイムカードや出勤簿の提示が求められます。申請時だけではなく、申請後の調査で求められるケースもあります。日頃から適正な管理を実施していれば、求められたタイミングですぐに提出できるでしょう。
上記のような助成金には、申請条件として「労働関係法令の遵守」が定められているケースが少なくありません。タイムカードの適正な管理ができていなければ申請すらできない恐れもあるため、十分注意しましょう。
タイムカードの保管方法
タイムカードを保管する具体的なやり方を「紙の場合」と「データの場合」それぞれ解説します。
紙で管理されたタイムカード
紙のタイムカードを管理する際は、年・月ごとに分類して保管するケースが一般的です。年月ごとに分類しておけば、労働基準監督署の監査にもスムーズに対応できるでしょう。
紙のタイムカードは、専用の箱などに入れて管理するのがおすすめです。直射日光やホコリなどから紙を守り、紙の劣化を防ぐ効果が期待できます。クリップや輪ゴムを使ってまとめるのは劣化の原因になるため、なるべく避けましょう。
データ上で管理されたタイムカード
タイムカードをデータとして管理すれば、分類や保管の手間を大きく軽減できます。紙のタイムカードとは異なり保管場所も不要なので、スペースの不足に悩まされることもありません。社内でのデータ共有も容易で、バックアップをとっておけば古いデータもすぐに復元できます。
ただし、情報漏えいやデータ改ざんなどのリスクを防ぐため、セキュリティ体制を整える必要があります。
タイムカード保管は電子化がおすすめ
タイムカードを適正に管理・保管するなら、勤怠管理の電子化がおすすめです。紙と比べて保管スペースを省略でき、必要なときに必要な情報をすぐ開示できます。紙のタイムカードと異なり物質的な「モノ」ではないため、紛失リスクを軽減できるのもメリットです。
効率化を目指すなら、勤怠管理システムの導入も検討しましょう。
勤怠管理システムにはタイムカードとしての機能が搭載されているタイプも多く、日々の打刻から勤怠管理までをオンライン上で完結できます。紙のタイムカードそのものが不要になるだけでなく、第三者による打刻の代理など不正の防止にもつながるでしょう。
法改正にともなうバージョンアップに対応しているシステムも多いため、常に最新の法律を遵守できます。
タイムカードは保管期間を守って、適切に管理
タイムカードの保管期間は、原則として5年と定められています。現在は経過措置として法改正前の保管期間(3年)が認められており、将来的には5年間保管できる仕組みを整えておく必要があるでしょう。
タイムカードを適正かつ効率的に管理するなら、勤怠管理システムを導入するのもおすすめです。打刻をオンライン上で行えるタイプなら、打刻の代理など不正の防止にもつながります。
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