内定ブルーとは? 起こる理由やフォローのポイントを解説
内定ブルーとは、内定が決まったものの、入社や社会人生活に対して不安を感じ、憂うつな気持ちになってしまう心理状態です。
内定ブルーは内定辞退や早期離職につながるため、内定者だけでなく企業にとっても重要な課題です。
本記事では、内定ブルーの概要をはじめ、学生が内定ブルーに陥る理由や企業がどのようにフォローしたらいいかを詳しく解説します。
内定ブルーとは
内定ブルーとは、就職活動中の学生が企業から内定を受けたものの、企業への就職を選んだことに疑念を抱き、社会人生活への漠然とした不安を感じて憂うつな気分になる状態のことです。
結婚前の「マリッジブルー」や出産前後の「マタニティブルー」のように、人生において新たな経験や大きな決断をする際に、よく起こる不安定な精神状態をあらわしています。
内定ブルーに陥りやすい時期や、内定ブルーになる学生の割合を詳しく解説します。
内定ブルーになりがちな時期
内定ブルーに陥りがちな時期には、大きく分けて以下の4つのタイミングがあります。
- 内定承諾後
- 大型連休後
- 内定式後
- 入社直前
内定が出てすぐの学生は、就職先が決まった喜びでしばらくの間は気分が高揚している状態です。しかし、いざ内定を承諾すると、「本当にこの企業を選んでよかったのだろうか」と不安な気持ちになる人も少なくありません。ほかの企業の採用活動が進んでいる場合は内定を辞退しようと動くおそれもあるため、注意が必要な時期といえます。
ゴールデンウィークやお盆休みなど、大型連休のあとも内定ブルーに陥りやすいタイミングです。友人の内定先が素晴らしく見える、地元の友人と顔をあわせて社会人になることに不安を感じる人もいます。
また内定式後も、社会人になることが現実味を帯びるタイミングであり、不安や緊張感が増しやすい時期です。
さらに入社直前は、いよいよ迫った社会人生活に対する不安が大きく膨らむため、強い内定ブルーに陥る学生が増える時期です。入社直前に内定ブルーになると、入社後も精神的に不安定な状態が続く傾向があります。五月病になる人もいるため、担当者も十分に注意しなければなりません。
内定ブルーになる学生の割合
『就活の教科書』を運営する株式会社Synergy Careerが、2024年卒業の大学生を対象に実施したアンケート調査によると、内定ブルーを経験した人の割合は65%でした。
そのうち、第一志望の企業に入社予定の学生は58.6%、第一志望でない企業に入社予定の学生は75.5%という結果が出ています。
参考:『【調査報告】内定ブルーで2割以上の学生が就活を再開! 対処法は「学生に評価した点を伝える」が効果的』就活の教科書
内定ブルーが起こる理由
内定を得た学生が、内定ブルーになる主な理由を8つ取り上げて解説します。
- 自分自身の選択に迷いがある
- 社会人になることへ不安がある
- 評価される環境に対する不安がある
- 人間関係に懸念がある
- 入社する企業の悪評を耳にした
- 内定がゴールになっていた
- 自立への不安がある
- ほかにやりたいことがある
自分自身の選択に迷いがある
第一志望の企業から内定を得たとしても、「もっと自分に合う企業があるのではないか」と考えて内定ブルーになる学生がいます。就職活動の結果に満足できず「もう少し頑張れたのではないか」と感じる人もいるでしょう。
漠然とした不安や妥協、後悔によって自分自身の選択に迷いが生じてしまうと、内定ブルーに陥りやすくなります。
社会人になることへ不安がある
社会人として働くことに対する責任の重さがプレッシャーとなり、内定ブルーにつながるおそれがあります。
大学生にとって、社会人とは経験したことのない未知の世界です。たとえアルバイトやインターンシップを経験していたとしても、大きな不安を感じてしまうケースは少なくありません。
評価される環境に対する不安がある
内定式や懇親会、内定後のインターンシップで、実際の業務に触れ、高い能力を持つほかの内定者と接すると、自分のスキルや適性に自信を持てなくなる可能性があります。
自分の能力に不安を感じ、入社後の評価に対して恐怖心を覚え、内定ブルーに陥るリスクが高まります。
人間関係に懸念がある
学生時代に同世代の仲間と過ごしていた時期とは異なり、社会人になると幅広い世代や役職者とかかわりながら業務にあたる必要があります。
どのような態度や言葉遣い、立ち居振る舞いで接すればよいかわからず、強いストレスやプレッシャーを感じる人も少なくありません。
特に、配属先の上司との相性や職場の雰囲気、業務内容が気になりすぎて不安が募り、内定ブルーになるケースもあります。
入社する企業の悪評を耳にした
友人の内定先と自分の内定先を比較したり、インターネットやSNSで内定企業の悪評を目にしたりして、不安になる学生も少なくありません。
内定者が誤情報やデマを鵜呑みにしないように、企業は入社までの期間中もフォローすることが大切です。内定者と定期的に連絡を取り、安心して入社日を迎えられるようにしましょう。
内定がゴールになっていた
内定を就職活動のゴールと考えていた学生は、内定ブルーに陥りやすい傾向があります。
就職活動をスタートさせた当初は、入社後の自分に希望を抱いていても、いざ始まるといかに早く終わらせるかばかりを考えてしまう学生もいます。
その結果、内定を手にした段階で「本当にこの企業に就職してよいのだろうか」と不安や疑問を感じ、内定ブルーに気づくのです。
自立への不安がある
就職をきっかけに親元を離れ、1人の暮らしを始める予定の内定者は、社会人になる不安に加え、「自立できるのだろうか」とプレッシャーを感じ、内定ブルーになりやすくなります。
企業は、内定者同士が話せる機会を提供したり、社員寮への入寮させたりするなど、精神面と生活面からのフォローアップが大切です。
ほかにやりたいことがある
内定をもらった時点では第一志望の企業だったとしても、内定承諾後に別の企業が気になる、ほかの業界に興味を持つ場合もあるでしょう。「ほかにやりたいことがある」「違う仕事に挑戦したい」と感じて、内定ブルーになるのはよくある話です。
内定ブルーによる影響
内定ブルーの状態は、入社に対する意欲はもちろん入社後の勤労意欲の低下も招きかねないため、企業として放置するわけにはいきません。
内定ブルーに陥った内定者を放置した場合に考えられる悪影響を詳しく解説します。
- 内定を辞退する
- すぐに離職する
内定を辞退する
内定ブルーの状態の内定者は、社会人として働くことに自信をなくし、意味を見出せなくなっています。企業が気づかずに放置してしまうと、内定辞退につながるおそれがあるため注意が必要です。
近年は新卒採用の早期化が進み、内定から入社までの期間が長くなっています。内定者が安心して入社できるよう、入社までの期間中も手厚いフォローが求められています。
すぐに離職する
内定者が内定ブルーに陥りながらも入社した場合、内定ブルーの原因が解決されないままの状態で放置していると、早期離職につながってしまうおそれがあります。
幅広い業界で人材不足が深刻化している現代社会において、大切な人材が入社後間もなく退職してしまうことは、採用する企業にとっても深刻な問題となるでしょう。
人材不足が深刻化している業界では、人材が入社後間もなく退職してしまうことは、採用する企業にとっても深刻な問題といえます。
入社したからといって決して安心せず、入社後も継続的に手厚いフォロー体制を整えていくことが重要です。
内定者をフォローする際のポイント
社会人経験がない学生の気持ちに寄り添い、適切なフォローは、内定ブルーの解消につながります。内定者をフォローする際のポイントを詳しく解説しましょう。
- 1on1を実施する
- オフラインでコミュニケーションを取る
- フォローアップ研修を実施する
- 内定者同士・先輩とコミュニケーションを取れる機会を用意する
- 内定式で会社の魅力を伝える
- SNSを活用する
1on1を実施する
内定者フォローの施策として、1on1ミーティングを取り入れることをおすすめします。
1on1とは、上司と部下がマンツーマンで定期的に対話をするマネジメント手法です。
1on1での対話を通じ、内定者は入社後の具体的な業務内容やキャリアの展望について理解を深められます。
また、将来の上司となる先輩社員に対して、キャリアプランや職場環境に関する率直な質問もでき、不安や懸念を早期に解消できます。
内定承諾後から入社までの期間に定期的な1on1を実施し、入社後も継続することで、新入社員は円滑に職場に適応できるでしょう。
オフラインでコミュニケーションを取る
最近はオンライン化を進める企業も増えていますが、オフラインでコミュニケーションを取れる機会もつくりましょう。
たとえば、内定者同士の懇親会や先輩社員を交えた研修、食事会など、企業や部署の雰囲気を感じてもらえる場を設けると、組織へ早期に定着する効果が期待できます。
フォローアップ研修を実施する
定期的なフォローアップ研修の実施は、内定者の不安解消と入社後の活躍を支える重要な取り組みです。
フォローアップ研修では、企業の最新情報や業界動向を伝え、入社後に必要となる基礎知識の習得を促します。
内定者が企業をよりスムーズに職場に適応できる取り組みを検討しましょう。
内定者同士・先輩とコミュニケーションを取れる機会を用意する
内定者にとって、同期は入社後の悩みや不安を共有し、互いに未知のことを乗り越える心強い存在です。また、気軽に先輩と接する場が持てれば、入社に対する不安が解消される場合もあります。
そこで、内定者同士や先輩社員とのコミュニケーションを取れる機会を設けましょう。具体的には、内定者専用のオンラインコミュニティやオフラインでの交流会、社内イベントへの招待などが挙げられます。
若手社員を交えた座談会を開催することで、内定者は等身大の社員生活をイメージしやすくなり、より具体的な将来像を描けます。
内定式で会社の魅力を伝える
内定式には、入社前の不安を解消するだけでなく、働くことに対するモチベーションを高め、内定者同士の連帯感を強める効果があります。
仕事のやりがいや企業の社会的な役割などを伝えて、内定者にあらためて会社の魅力を感じてもらい、入社への動機づけにつなげましょう。
SNSを活用する
SNSツールの活用も、内定ブルーの解消に向けた解決策の一つです。学生が慣れ親しんだSNSを通してコミュニケーションを取り、社内の行事やできごと、雰囲気を伝えていくことで、内定者の入社に対する不安を軽減できます。
電話やメールだけではなく、LINEを活用したコミュニケーション方法も導入すると、より活発な交流ができるでしょう。
内定ブルーを解消に向けて(まとめ)
本記事では、学生が内定ブルーに陥る原因と、企業が取るべきフォローのポイントを解説しました。内定ブルーを放置すると、内定辞退や入社後の早期離職といった問題につながります。
内定ブルーを防ぐためには、学生が抱える不安や疑問を企業が理解することが大切です。
人事担当者だけでなく、管理職や新入社員の指導に携わる従業員にも内定ブルーを理解してもらい、組織全体で内定者が安心して入社を迎えられる環境を整えていきましょう。