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内定承諾書とは? 辞退されたら? 内定通知書との違いや法的効力、準備の流れを解説

内定承諾書とは、求職者が内定を承諾し、入社に向けた誓約をするための書類です。本記事では、内定承諾書を発行・送付する目的をはじめ、法的効力の有無や作成方法について詳しく解説します。内定通知書との違いにも触れるので、人事業務を担当される方はぜひ参考にしてください。

内定承諾書とは? 辞退されたら? 内定通知書との違いや法的効力、準備の流れを解説
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    内定承諾書とは

    内定承諾書とは、企業が採用を決めた内定者が企業に対して内定を承諾し、入社することを誓約する書類です。企業から内定者へ内定通知書を送付する際に同封するのが一般的で、内定者は内定承諾書の内容を確認し、署名や捺印をして企業に返送します。

    内定承諾書は入社誓約の意思表示

    内定承諾書の提出によって、内定者は入社に対する意思表示をします。内定承諾書を提出する企業に就職すると誓う以外にも、就職活動や転職活動を終了し、ほかの企業から内定が出ても申し出を断るという意味合いを含みます。

    内定承諾書の法的効力|辞退できる?

    内定承諾書は法的拘束力を持たないため、内定者は内定承諾書を企業に提出したあとでも辞退できます。企業が内定承諾書を発行すると、内定者と「始期付解約権留保付労働契約」が結ばれます。企業側は、特別な理由がない限り内定を取り消すことはできません。

    一方で、内定者側が辞退を申し出ることは認められています。内定者はいつでも辞退可能であり、辞退の意思表示から2週間が経過することで契約は解除されます。

    内定の法律上の定義

    会社が内定を出すと、会社と内定者の間に労働契約が成立します。つまり、内定とは法的な契約を締結した状態を指します。たとえ入社前であったとしても、労働契約法や労働基準法などの適用を受けるようになるのです。

    内定承諾書とほかの書類の違い

    内定承諾書以外の内定に関連する書類の特徴や、内定承諾書との違いを解説します。

    内定通知書との違い

    内定通知書は、最終選考を通過した応募者に対して、企業が内定の意思を通知する書類です。企業が書面を発行し、内定者に送付します。

    採用通知書との違い

    採用通知書は、最終選考を通過した応募者に対して、企業が採用の意思を正式に伝えるための書類です。採用通知書は、内定通知書を送付したあと、応募者からの承諾を得てから発行されるのが一般的です。

    雇用契約書や労働契約書、労働条件通知書との違い

    雇用契約書と労働契約書は、同じような意味合いで使われる書類です。どちらも雇用する企業と労働者の間で締結されるもので、両者に大きな違いはありません。

    ただし、雇用契約は民法上の表現であり、労働契約は労働関係法令上の表現である点が異なります。採用通知書を送付したのちに、雇用契約や労働契約を交わすのが一般的な流れです。

    労働条件通知書とは、企業が労働者に対して賃金や労働時間、契約期間、就業場所、業務内容などの労働条件を示す書類です。

    内定承諾書の役割と企業の意図

    内定承諾書の役割と、内定承諾書を発行する企業の意図について解説します。

    内定を証明する

    内定承諾書に内定者の署名や捺印をもらうことで「内定者が内定を承諾し、入社を誓約した」という証明になります。内定承諾書を通して、内定者の意思を正確に把握できるのです。

    内定辞退を防止したい

    内定承諾書には、内定者に対して入社を念押しし、内定辞退を防ぐ目的もあります。内定者に内定承諾書の提出を求めることで「これから入社する企業だ」という認識や自覚が生まれるでしょう。

    内定承諾書を準備する流れ

    内定者が確定したら、企業は内定者へ内定承諾書を発行します。内定承諾書を準備する流れと、一緒に準備すべき書類の内容について詳しく解説しましょう。

    内定承諾書と内定通知書、労働条件通知書を準備する

    選考が終了して内定者が確定したら、次の3つの書類を準備してください。

    • 内定通知書
    • 内定承諾書
    • 労働条件通知書

    上記以外にも、入社までのスケジュール表や入社式の案内、入社に向けた注意事項などを内定者に送付します。

    内定承諾書に記載する内容

    内定承諾書に記載する内容は、次の通りです。

    • 作成年月日
    • 企業名と代表者名
    • 内定通知書を受け取った年月日(年月日は空欄にし、内定者自身に記入してもらう)
    • 入社を承諾した旨
    • 内定者本人の氏名と捺印欄
    • 保証人の氏名と捺印欄(必要がある場合のみ)
    • 内定取り消しになる場合の条件

    内定承諾の意思をあらわす文言とあわせて、内定取り消しになる場合の条件についても記載しておきましょう。

    内定通知書に記載する内容

    内定通知書に記載する内容は、次の通りです。

    • 作成年月日
    • 企業名と代表者名
    • 応募に対するお礼
    • 採用が内定したことのお知らせ
    • 入社年月日(入社日未定の場合は別途案内する旨を記載)
    • 同封する書類の案内
    • 入社までに提出が必要な書類の案内
    • 内定承諾書など返送書類の期限
    • 内定取り消しになる場合の条件
    • 採用担当者の連絡先

    応募への感謝の気持ちを伝えるとともに、入社年月日や同封した書類の案内、提出物の返送期限などを記載します。

    労働条件通知書に記載する内容

    労働条件通知書に記載すべき内容は、次の通りです。

    • 契約期間の定めの有無
    • 就業場所 
    • 従事すべき業務の内容
    • 始業・終業の時刻
    • 休憩の時間帯
    • 残業の有無
    • 年次休暇の有無
    • 有給休暇の日数
    • 賃金
    • 残業手当などの手当の種類
    • 給与支払い日や支払い方法
    • 定年年齢
    • 解雇条件
    • 退職に関する事項など

    内定者との不要なトラブルを未然に回避するためにも、上記の内容を網羅したテンプレートを作成することをおすすめいたします。

    内定承諾書の例文

    内定承諾書の例文を紹介します。

    内定承諾書とは? 辞退されたら? 内定通知書との違いや法的効力、準備の流れを解説

    内定承諾書を送付し、返送されるまでのステップ

    内定者が内定承諾書を受け取り、返送するまでの流れを把握しておきましょう。

    1.内定承諾書と条件通知提示書の内容を確認する

    内定者は、企業から送付する内定承諾書と労働条件通知書の内容を確認します。内定承諾書によっては、内定が取り消される条件(内定取り消し事由)が記載されているので、それらの内容に問題がないかをチェックしてもらうことが大切です。

    2.内定承諾書の添え状を作成する

    内定者は、内定承諾書や労働条件通知書の内容を確認したのち、書類を返送するために必要な添え状を作成します。添え状に記載される内容は次の通りです。

    • 送付日
    • 宛名
    • 内定者の名前と連絡先
    • 件名
    • 本文
    • 同封書類名

    3.内定承諾書に署名・捺印をして返送する

    内定承諾書の以下の項目で、企業は内定者に記入や署名・捺印を求めます。

    • 記入した年月日
    • 内定者の住所
    • 内定を承諾した人の氏名
    • 内定を承諾した人の捺印

    内定者は、内定承諾書に必要事項を記入して捺印をしたら、企業から指定された期限までに返送します。送付物を追跡できるよう、簡易書留や特定記録郵便で郵送するのが一般的です。

    内定承諾後の辞退・取り消しについて

    内定承諾後に内定者から辞退を申し出られた場合や、内定の取り消しを希望する場合の対処方法を解説します。

    承諾書を受理したあと、内定辞退されたら?

    内定承諾書に法的拘束力はないため、内定承諾書を受理したあとに内定者から辞退の申し出をされた場合は拒否できません。ただし、内定承諾書を交わすことで企業と内定者の間で労働契約が結ばれているため、内定承諾後の辞退は退職のような扱いとなります。

    承諾書を受理したあと、内定取り消しは可能?

    内定承諾書を交わすことで労働契約が結ばれるため、企業は自由に内定を取り消せません。ただし、内定を取り消すための合理的な理由がある場合は、内定の取り消しが可能です。

    内定の取り消しが認められる事由には、大きく分けて次の2つがあります。

    内定者都合・書類に虚偽の内容が記載されている
    ・内定者がけがや病気により働けなくなった
    ・内定者が学校を卒業できない
    ・内定者の犯罪や不適切な行動
    企業都合・会社の業績悪化
    ・経営上やむを得ない

    内定承諾後のフォローのポイント

    内定承諾後は、内定者へのフォロー体制を整備する必要があります。

    内定者辞退を防止するために有効な施策は、次の通りです。

    • 入社前研修会
    • 内定者インターンシップ
    • 社内見学会
    • 経営のトップや従業員との交流会、座談会
    • 同期との懇親会

    上記のようなイベントや研修会を通して、内定者がベストな状態で入社日を迎えられるようフォローすることが大切です。ほかにも、電話やメール、Web面談などで気軽に相談できる窓口を設置することで、内定者の入社に対する不安や疑問を解消できるでしょう。

    内定承諾書でよくある疑問

    内定承諾書を受け取る内定者から寄せられる疑問や質問を紹介します。

    内定承諾書の提出後も就活を続けてもいい?

    内定承諾書に法的拘束力はないため、内定者が内定承諾書を提出したあとも就職活動を続けることは違法行為ではありません。

    内定承諾書の提出後も辞退できる?

    内定承諾書には法的拘束力がないので、内定者は内定承諾書を提出したあとでも辞退できます。内定辞退にいつまでという制限はなく、いつ辞退しても問題はありません。

    内定承諾書は内定者にいつ届く?

    企業から内定の連絡があったあと、数日~1週間ほどで内定承諾書が内定者のもとに届くのが一般的です。企業の担当者は、選考が終わり内定者が決まった時点で、なるべく早く内定承諾書を送付しましょう。

    内定承諾書に添え状はいる?いらない?

    内定承諾書には添え状をつけるのがマナーです。社会人としてのビジネスマナーが試される機会でもあるので、内定者が正しく対応できているかを確認してみてください。

    内定承諾書の封筒に決まりはある?

    内定者が企業に書類を返送する際は、白い封筒を選ぶのが基本です。A4サイズの書類を送付する場合は、角形2号が適切なサイズです。

    内定承諾書の提出期限は?

    内定承諾書の提出期限は、大体1週間を目安に設定されるケースが多くあります。企業側が、送付状などに返送期限をわかりやすく記載することが大切です。

    内定承諾書をメールで送付してもいい?

    最近では、内定承諾書を電子データとして送付する企業も増えてきました。企業から内定者へ提出依頼メールを送付し、そのメールに返信してもらうように依頼しましょう。

    まとめ

    内定承諾書には法的拘束力がないため、内定者が内定を辞退しても違法行為にはあたりません。内定承諾後の内定辞退を防ぐには、企業側がフォロー体制を整備する必要があります。

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