テレワークで見直される「1on1」の重要性とオンラインで実施するポイント
テレワークやリモートワークを導入する企業が増加した近年、あらためて1on1ミーティングの重要性に注目が集まっています。1on1ミーティングは、上司と部下の信頼関係を向上させることで、組織全体の活性化につながります。
本記事では、テレワークなど多様な環境下で、1on1ミーティングの効果を最大限発揮する方法を知りたいという方のために、オンライン上で効果的に進めるためのポイントや注意点、アジェンダ例までを紹介します。
1on1とは
1on1ミーティングとは、上司と部下の1対1で行なうコミュニケーションのこと。オンライン上でも実施可能で、1週間〜1か月に1回といった間隔で定期的に行なわれることが一般的です。
もともとIT産業が盛んなアメリカのシリコンバレーで根づいた文化で、人材育成や組織マネジメントにおいて非常に重要な施策として知られています。
日本の大手企業でも1on1ミーティングの導入が進んでいて、従業員の人材育成につながることはもちろん、組織全体の活性化や業績向上への効果が期待できます。
1on1ミーティングの実施方法
1on1ミーティングの目的は「上司と部下の信頼関係の構築」「従業員の人材育成」といったものが一般的。
定期的に1on1ミーティングを行なうことで、従業員エンゲージメントが高まり、離職防止や組織力強化へとつながっていきます。
そのため、やみくもに1on1ミーティングを導入するのではなく、会社全体で目的を共有することが大切です。1on1の進め方としては、下記の流れを意識しましょう。
1.事前準備(テーマの設定・部下の状況把握) 2.目的の共有と日時調整 3.1on1を実施 4.内容の共有(記録・課題設定など) |
1on1ミーティングでは、明確にこの話題を話さなければいけないといった内容が決まっているわけではありません。ただし、たとえば「今日の1on1でどのような課題を解決したいか」といったゴールを決めておくと、上司と部下双方にとって進めやすくなります。
そのために、前回の1on1ミーティングの内容を振り返りながら、テーマ設定などの事前準備を行なうことが大切です。1on1ミーティングの実施後には必ず反省や記録をして、次回までの課題設定などをしておきましょう。
1on1は人事評価ではなくコミュニケーション
1on1は、人事評価などで用いられる人事面談とは目的が異なります。
評価を行なうための面談とは違い、1on1はあくまでもコミュニケーションの一つです。部下の緊張をほぐしながら、最近の気分や体調などのたわいもない話から進めるといいでしょう。
たとえば、体調面が心配な従業員には体調に関する話題、キャリアアップに意欲的な従業員には将来的なビジョンの話題など、各個人に合わせた話題をテーマにします。
オンライン上で実施するときも、双方向のコミュニケーションとして人事評価とは別に取り入れましょう。
テレワーク環境下で再注目される1on1
テレワークや在宅勤務の環境下では、「必要最低限のコミュニケーションになり部下の成長を実感しづらい」「安心して任せられる範囲の業務しか任せられない」といった問題が生じます。
テレワークでは、上司や同僚とのコミュニケーションがとりづらいことが問題視されており、その対策として1on1が再注目されています。
テレワーク環境下 | 1on1で解決できるポイント | |
---|---|---|
会話の内容 | 業務の話のみになりがち | 個人的な話や悩みを話せる |
会話量 | 減少 | 増加 |
勤務状況 | 把握しにくい | 定期的に進捗を確認できる |
組織全体 | 連携がとりづらい | 1人ひとりの状況を把握でき、全体業務を調整しやすい |
テレワークでは社員の勤務状態を把握しづらく、業務を通常通り行なうことが難しい傾向にあります。
近年は、必要に迫られて急遽テレワークを導入しているケースも多いため、きちんとしたルールや環境が整っていない企業も少なくはありません。
そこでテレワーク環境下で発生しがちな行き違いを是正していく方法としても、オンラインでの1on1の実施が重要視されています。
テレワーク環境下の1on1で期待できる効果
業務内容の把握が難しくコミュニケーションの行き違いが起こりやすいテレワークや在宅勤務でも、1on1を導入すると以下のような効果を期待できます。
・業務の効率化と全体把握 ・人材育成の強化 ・コンディションの把握 ・信頼関係の構築、エンゲージメントの向上 |
テレワーク環境下においての1on1の効果について詳しく見ていきましょう。
業務の効率化と全体把握
テレワークの最大の課題として、業務状況や勤怠管理の難しさが挙げられます。
厚生労働省が2019年に公表したガイドラインでも、「仕事と仕事以外の切り分けが難しい」「長時間労働になりやすい」といったデメリットが多く指摘されています。
部下の業務量や勤務状況を正しく把握できていないと、必要以上に業務を振り分けてしまったり、反対に少なすぎて生産性が低下するといった可能性があります。
定期的に1on1を行なえば、業務上で困っていることや業務量を確認することができ、テレワーク環境下でも「誰にどの業務を振り分けるか」を明確にすることができます。さらに各個人の勤務状況が把握でき、効率的に全体を管理することができるでしょう。
参照:『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』厚生労働省
人材育成の強化
テレワーク環境下では、部下に対して安心して任せられる仕事のみを振り分ける上司も多く、成長ややりがいを実感しにくいと感じる部下もいるといいます。
コミュニケーション不足で業務が単なる作業と感じられてしまったり、上司が部下に業務の目的や価値を正しく伝えられなかったりすることで、行き違いが起こりやすくなります。
そこで定期的に1on1ミーティングを行なう中で小さなゴールを設定するなど、少しずつ振り返りながら業務を進められるようになると、上司も部下も成長を実感しやすくなるでしょう。
1on1で上司・部下 双方に得られるメリット | |
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上司 | 新たな課題の発見、自分にはない意見を得られる |
部下 | アドバイスがもらえる、悩みを相談できる、自分を客観視できる |
1on1ミーティングを上手に活用できれば、テレワークで起こりやすい認識のズレの修正にもつながります。客観的な視点で進捗具合や業務内容を振り返ることができる点でメリットがあります。
コンディションの把握
おもにコミュニケーションが目的の1on1ミーティングでは、体調面や精神面のケアもできるという点で効果的です。
仕事に関する不安だけでなくプライベートまで相談しやすいのは、1on1ならではのメリットです。コミュニケーションの量が減り孤独を感じやすいテレワークでは、とくにメンタル面のケアが重要視されています。定期的に1on1を実施することで従業員の異変にいち早く気づくことができれば、早期の対策やサポートにつながります。
信頼関係の構築、エンゲージメントの向上
定期的な1on1の実施は、日々の業務へのモチベーションについての悩みや問題点を可視化し、問題がある場合には早期に対策を実施できることからエンゲージメントの向上につながりやすいといえます。
上司と部下間のコミュニケーションも深まり、信頼関係も強くなるので、組織全体の活性化も期待できます。
テレワーク環境下で1on1を導入するときの注意点
テレワーク環境下の1on1ミーティングは、やみくもに導入しても高い効果を得られません。
組織全体で目的を共有するのを前提として、正しい方法で実施しながら部下をサポートしていくための注意点をご紹介します。
上司側に必要なスキルをつけてから実施する
1on1ミーティングを実施する前に、上司に必要なスキルが備わっているかを確認するとよいでしょう。必要に応じて研修などを実施し、上司が必要なスキルを身につけてから、正しい進め方で効果的に実施する必要があります。
上司に求められるスキルは以下のようなものがあります。
傾聴力 | 相手に寄り添いながら、話に耳を傾ける能力 |
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質問力 | 相手の話の不明点や疑問点に対して、適切に問いかける能力 |
指導力 | 目下の者に対して育成したり、適切に導く能力 |
伝達力 | 自分の考えやアドバイスを、相手に合わせて伝える能力 |
1on1ミーティングにおいて重要とされるのは、部下との対話からいかに課題を引き出せるかということです。部下より自発的に話された課題を軸に、必要な指導やアドバイスなどを行なう必要があります。
さらに1on1ではティーチング、コーチング、フィードバックといった3つの関わり方を組み合わせて進めるのがよいとされています。「やり方を教えること」「自発的な解決を見出せるようにすること」「言動に対する改善点などを指摘すること」を適切に使い分けることが重要です。
たとえば目的もなく「調子どう?」と問いかけるだけで部下に丸投げしているケースはあまりよいとはいえません。具体的な質問項目やアジェンダを事前に設定し、適切な関わり方を目指しましょう。
従業員エンゲージメントの向上という目的を忘れない
1on1ミーティングの目的が共有されていない場合、「上司が一方的に話す」「雑談で終わってしまう」というケースが少なくありません。
1on1ミーティングは部下のサポート手段の1つであるにもかかわらず、1on1の導入が「手段」ではなく「目的」になってる組織も多いため注意が必要です。1on1ミーティングは、あくまでも部下の成長を促進するための施策であることを前提に進めましょう。
1on1が効果的に実施されて従業員エンゲージメントが高まると、組織全体にまとまりが生まれ、生産性の向上につながっていきます。より高い効果を発揮するためには、上司と部下はもちろん、会社全体として1on1の目的を理解しておくことが大切です。
テレワーク環境下で1on1を導入するときのポイント
直接顔を合わせられないオンライン上で1on1ミーティングを実施する際は以下のようなポイントを押さえる必要があります。
・部下一人ひとりに適切なアジェンダを設定する ・テレワーク環境での準備を万全にする |
部下一人ひとりに適切なアジェンダを設定する
テレワークでは、対面で仕事をしているときよりも部下の様子を把握しにくい状況にあります。前回の1on1ミーティングの内容を振り返ったうえで、個別にアジェンダを設定するといいでしょう。
課題や悩みはその人によって異なるので、どのようなことに悩んでいたかや前回のゴール地点をどこに設定したかを参考に、次回の1on1ミーティングで話す内容を決めましょう。
アジェンダ例 | |
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仕事面 | ・業務内容の認識にズレはないか ・業務内容の課題 ・進捗具合と時間配分 ・目標設定 ・今後のキャリアについて |
プライベート面 | ・体調や心身の状態 ・リモート環境の生活 ・最近嬉しかったことや悩みごと |
適切な提案やアドバイスができるように、部下1人ひとりの性格や価値観を把握しておくのも大切です。
テレワーク環境での準備を万全にする
テレワークでは、1on1ミーティングの予定やルールを詳細に決めておくことをおすすめします。
たとえば「5分前までに入室する」「カメラはオンにする」といったオンラインでつなぐ際のルールを決めておくと、円滑に1on1ミーティングを進められます。
オンライン通信自体に不安がある場合は、1on1だけでなくほかの業務へ影響も大きいため、テレワーク環境を整えるところから始めましょう。
テレワーク環境下で1on1の効果を最大化するには
コミュニケーション不足が課題となるテレワーク環境下だからこそ、悩みを相談できる場でもある1on1ミーティングの重要性が高まっています。
オンラインのやり取りでも1on1を効果的に運用し、日々のモチベーションや従業員エンゲージメントの向上をはかることが大切です。
オンライン1on1ミーティングの実施をサポートOne人事[タレントマネジメント]
タレントマネジメントシステムOne人事[タレントマネジメント]なら、1on1の面談記録や次回のアジェンダなどを設定して一元管理することができます。過去に話した内容や進捗の管理、面談前後のコンディションも把握でき、1on1ミーティングにおける効果の可視化と最大化をサポートします。