キャリア志向とは? 重要性や知るための方法を解説
キャリア志向を従業員が持つことは、自己認識を深め、モチベーション向上にもつながり、キャリア形成に重要です。
企業がキャリア開発に注力する際には、まず従業員一人ひとりのキャリア志向を把握する必要があります。
本記事では、キャリア志向について解説し、キャリア志向に重要なキャリア・アンカーや、従業員にみずからのキャリア志向を知ってもらう方法なども紹介します。キャリア開発や人材育成に注力したいと考える企業の経営層や人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
キャリア志向とは
キャリア志向とは、自分が持つスキルや経験、興味関心があるのかを把握するための自己認識を指します。
キャリア志向は、具体的な職種や業務、働き方、組織環境、役職、責任の班員など、さまざまな角度から考えられます。仕事に対する考え方はその人の価値観によって大きく異なるため、キャリア志向は正解や不正解などの分類はされません。
キャリア志向をもつ意義
キャリア志向を持つ意義は、以下のように、さまざまな点が挙げられます。
- 自分の希望するキャリア形成
- 今後自分の進むべき方向性や取るべき行動の明確化
- 理想とする働き方の明確化
- 自己成長
- 仕事に対するモチベーション向上
このように、キャリア志向を持っていることで、将来のキャリアに向けた行動がとれるようになり、成長を促してくれるのです。
キャリア志向の重要性
キャリア志向がどのような点から重要視されているのか理解しましょう。
- キャリア形成は自分が主軸となって行うため
- 企業において適材適所の人材配置を行うため
- 従業員が自律した人材に成長するため
キャリア形成は自分が主軸となって行うため
成果主義が珍しくなくなった現代の日本では、成長意欲や主体性の高い人材が求められています。キャリア志向を持った人材は、自分のキャリア形成のために主体的に考え、行動できるため、企業において活躍しやすいといえます。
キャリア志向によって自分の強みや弱みにかかわる自己認識もできているため、効率的にキャリア形成が可能です。
企業において適材適所の人材配置を行うため
企業は、従業員のスキルや経験、希望などを踏まえて人材配置を行います。キャリア志向を活かすことにより、適材適所の人材配置が可能です。
適材適所の人材配置ができれば、従業員が活躍したり、成果を出しやすくなります。その結果、従業員の会社に対する満足度やエンゲージメントが向上するため、人材の離職防止にもつながるでしょう。
従業員が自律した人材に成長するため
キャリア志向を把握することによって、従業員はみずからのキャリアの方向性を考えます。方向性が明確になれば、目標も設定しやすくなり、モチベーション向上も可能です。
モチベーションが向上すれば、主体的な行動や目標に向けた努力など、自律した行動につながります。
キャリア志向に重要なキャリア・アンカーとは
キャリア志向を把握するために重要になるのが、個人のキャリアや仕事に対する価値観である「キャリア・アンカー」の概念です。キャリア・アンカーは、アメリカの組織心理学者エドガー・シャイン氏によって提唱されました。
キャリア・アンカーは3つの要素と8つのタイプに分類されます。キャリア・アンカーが形成されるのは30歳前とされており、一度形成されたキャリア・アンカーは大きく変化することはないといわれています。
キャリア・アンカー「3つの要素」
キャリアアンカーは「コンピタンス」「動機」「価値観」と3つの要素があり、これらの要素を深堀する中で自分自身が譲れない点を見つけます。3つの要素の重なる部分をキャリアアンカーとして仕事に活かせれば、特に満足感を感じながら仕事ができるでしょう。
コンピタンス
コンピタンス(能力)とは、個人が持つ能力や知識範囲を指します。個人がどのような分野でどの程度の業績や成果を出せるかを示す要素です。
コンピタンスがあれば、自分に自信を持てるため、スムーズな業務遂行やモチベーション向上にもつながるでしょう。
コンピタンス志向が強い人は、専門性を磨くことに重きを置くため、特定の分野や領域で成長しやすく、プロフェッショナルな人材として活躍できます。
動機
動機とは、個人の仕事に対する願望や意志、取り組む理由などを指します。動機には、外部からの刺激による外発的動機と、自分の内部から発生する内発的動機があります。
キャリアアンカーで特に重視するのは内発的動機です。自分の意思や願望を大切にすることで、モチベーションが高まり、成果にもつながります。
価値観
価値観とは、個人が重視する信念や倫理観を指します。価値観や使命感を大切にし、自分のやるべきことを着実に行います。
会社にも自分と同じ価値観を求めやすいため、組織との方向性を合わせたり、一体感を持って仕事をしたりすることが重要です。自分の価値観や考え方を尊重するため、同じ価値観の企業で成果を出すことを追求します。
キャリア・アンカー「8つのタイプ」
キャリアアンカーは、具体的に8つのタイプに分類できます。8つのキャリアアンカーのうち、自分がどのタイプなのかを把握することで、キャリア志向の把握やキャリア形成にも役立ちます。
- 専門・技能別
- 全般管理
- 自立・独立
- 保障・安定
- 創造性
- 奉仕・社会貢献
- 純粋な挑戦
- 生活様式
専門・技能別
専門・技能別タイプは、専門的な能力や経験を重視し、エキスパートとして働くことを大切にします。
自分自身が現場で仕事を行ったりリーダーシップを取るなど、特定の得意分野においてスキルや知識を活かすことに価値があると考えるのです。そのため、専門性を活かせないような場合はモチベーションが低下しやすい場合もあります。
全般管理
全般管理タイプは、マネジメントに価値を置いたり、昇進意欲が強かったりするタイプです。組織の中で役職に就くことや責任の重い役割を担うことを望みます。そのため、昇進や昇格など、キャリアアップのための自己研鑽や努力も惜しみません。
自立・独立
自律・独立タイプは、自立心が高いタイプです。仕事は、自分のペースややり方を大切にするため、自己責任で進める傾向があります。
裁量のある仕事や柔軟な働き方を望むため、責任あるポジションを任せるのもよいでしょう。個人事業主や起業家にも向いています。
保障・安定
保障・安定タイプは、仕事や働き方について安定した環境を求めています。組織の安定性や将来の不安感がない状態を理想とするため、リスクや大きな変化を嫌います。
このようなタイプは、長期的な視点でキャリア形成を見込めるのが魅力です。ただし、部署異動や転勤などに抵抗があります。
創造性
創造性タイプは、新しい価値や意見の創造に価値を感じます。斬新なアイデアやクリエイティブな視点を持つため、企画や商品開発、新規事業などで活躍しやすいでしょう。裁量権をもって業務を行ったり、自由な発想を活かせたりするような環境を望みます。
奉仕・社会貢献
奉仕・社会貢献タイプは、みずからの能力や知見を活かすことよりも、他者に貢献することに高い価値を感じます。面倒見がよく、誰かの役に立ちたいと考えており、奉仕するような活動を好みます。
具体的に向いている職種は、社会福祉や医療現場、企業の人事労務担当者、非営利組織などです。
純粋な挑戦
純粋な挑戦タイプは、一般的に難しいと考えられることに挑戦することを好みます。競争心や向上心が強いため、自己研鑽にも抵抗を感じません。
得意不得意は関係なく、難しい課題やこれまで誰も成し遂げられなかったことに価値を感じます。そのため、ルーティンワークには抵抗を感じやすいといえます。
生活様式
生活様式タイプは、仕事と私生活を両立し、バランスの取れた生活を送りたいと考えています。プライベートも大切にしているため、労働環境の整った働きやすい環境が好みです。柔軟な働き方ができる企業や福利厚生が手厚く整備された企業でこそ、生き生きと働けます。
キャリア志向を知る(持つ)ための方法
キャリア志向は、仕事やさまざまな経験を通して身につけるものであるため、簡単には形成されません。
また、自分のキャリア志向について正しく把握したり知ったりする機会も少ないでしょう。従業員が自分のキャリア志向を知ったり持ったりするためには、企業の取り組みやキャリアに関する意識付けによる促進が大切です。
- 自己分析
- ジョブローテーションの実施
- 自己啓発(SD)の制度の導入
- キャリア開発環境の整備
- キャリア面談の定期的な実施
自己分析
キャリア志向を形成するためには、自己分析を行う方法が挙げられます。自己分析では、これまでの人生を振り返り、どのタイミングでどのようなことが起こり、そこで何を感じたかを考えます。
さまざまな出来事の中で、特に今の自分に至った出来事や感情、価値観を見つけ出すことが必要です。自己分析によって把握した価値観や特性を参考にしたうえで、キャリア志向を見極めるとよいでしょう。
ジョブローテーションの実施
キャリア志向を持つためには、さまざまな職種や業務を経験することが大切です。さまざまな経験から、自分の価値観で重視したい部分が見えてきます。
特に社会人経験が浅い若手社員は、限られた経験の中からキャリア志向を持つのではなく、ジョブローテーションによって得た多くの経験からキャリア志向を持つのがおすすめです。
自己啓発(SD)の制度の導入
自己啓発を支援するための制度を企業が整備することで、従業員は自身のスキルや知識を高められるため、キャリア志向の向上にもつながります。
自己啓発を支援する具体的な内容は、セミナーやオンライン研修、資格取得に向けた費用負担などが挙げられます。費用負担だけでなく、社内研修などの開催でも自己啓発につながるため、従業員の成長意欲を刺激するのもよいでしょう。
キャリア開発環境の整備
キャリア志向を持つためには、企業がキャリア開発の環境を整えることも大切です。
キャリア開発の手法には、研修や面談、キャリアパスの提示、人事制度の見直しなどが挙げられます。
このように、企業側が従業員のキャリア形成を促進するための環境を整備することで、従業員がキャリアについて考える機会が増え、キャリア志向も持ちやすくなります。
キャリア面談の定期的な実施
キャリア志向を形成するためには、キャリアについて考える機会を増やすことが大切です。特に定期的なキャリア面談を実施することで、従業員は将来に関する相談を気軽にできるようになります。
キャリアについて自分だけで考えるよりも、上司や人事担当者など第三者による客観的な意見も参考にすることで、自分では気付けなかった強みや特性に気づける場合があります。
従業員のキャリア志向も一元管理できるタレントマネジメントシステム
タレントマネジメントシステムは、人材情報をシステムに集約し、さまざまな戦略人事に役立つシステムです。従業員のキャリア志向もシステムで一元管理できるため、適材適所の人材配置やそれぞれのキャリア形成に必要な人材育成施策に活用できます。
キャリア志向の管理もサポート|One人事[タレントマネジメント]
One人事[タレントマネジメント]は、従業員のキャリア志向の一元管理も行えるクラウドツールです。
一般的な人材情報だけでなく、キャリア志向もシステム上に集約できるため、企業のキャリア開発や人材育成をサポートする手段としてご活用いただけます。キャリア研修などを実施した場合は、その受講歴を人材情報に紐づけて育成計画に活かすなど、中長期に渡る戦略的な人事施策にもお役立ていただけます。
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まとめ
キャリア志向とは、自分が持つスキルや経験、興味・関心を把握するための自己認識のことです。自分のキャリア志向を知ることは、キャリア形成にも重要です。
キャリア志向を知ったり、持ったりするためには、さまざまな方法があります。企業側は、従業員のキャリア形成を促進するためにも、積極的に環境整備を目指しましょう。