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【図解】目標と目的は何が違う? 意味を比較表で解説|分けて設定する方法も

目標と目的は、組織や個人の成果を追求するうえで重要な役割を果たします。しかし、目標と目的の違いを混同されやすく、違いを理解できていないと、目指すゴールを見失ってしまう可能性があります。

本記事では、目標と目的の意味や違い、特徴を図や比較表を用いがなら解説します。さらに、目的を達成するための目標設定の方法も紹介していますので、成果を最大化する手段の一つとしてお役立てください。

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    目標と目的の違い【比較表】

    目標と目的の違いは表の通りです。

    特徴目標目的
    範囲狭い広い
    特性具体的で明確抽象的で不明確
    時間の概念短期的または中期的な視点長期的な視点
    要素具体的なターゲットや成果への焦点・現実的企業や個人の方針や理念・理想
    成果への評価具体的な数値や基準で明確に評価できる評価がしにくい
    年間売上高を10%増加させる企業の成長を促進する

    目標の意味は「指標」

    目標の意味をひと言であらわすと「指標」です。

    目標は目的を達成するための具体的なステップや到達すべきポイントといえるでしょう。目標には「いつまでに達成する」といった期限があり、達成の度合いを数値で評価できます。

    目的の意味は「ゴール」

    目的の意味をひと言であらわすなら「ゴール」でしょう。組織や個人が「達成したい」「こうありたい」と考える理想の状態、すなわち最終地点です。

    目的は組織や個人の存在理由や方針を示す際に使われ、抽象的な表現になりやすいという特徴があります。たとえば「利益追求」「社会貢献」など、大局的な方針がこれにあたります。

    目標は目的のために、目的は目標の先にある

    目標は、理想の状況に到達するための具体的な手段や行動計画であり、目的を具現化するための一連のステップです。

    組織や個人が目指すべきゴールを「目的」とするなら「目標」は道しるべといえるでしょう。組織や個人が効果的かつ戦略的なアプローチを取り、目的を達成するために目標を積み重ねていくことが、成果を生み出すカギです。

    目標と目的の違いをわかりやすくする具体例

    目標と目的の違いをよりわかりやすくしてみましょう。

    目標は具体的な行動指標であるのに対し、目的は目指すべき理想の状態(状況)です。たとえば、企業の目的が「事業拡大」である場合、達成するための「売上高を10%増加させる」「1年以内に新規部署を設立し、前年比10%増の採用をする」などが目標です。

    なお、目標は上記のように具体的であることが前提のため、数値で評価され、達成度が明確で測定可能です。

    目標・目的と混同される言葉

    目標・目的とよく混同される言葉はいくつかあります。ここではそれぞれの言葉の意味を解説します。

    手段

    手段は目的を達成するための具体的な方法であり実行可能なアクションです。手段とは、目的達成のための目標を立てたときの取り組みを指します。

    たとえば、目的が「事業拡大」で、目標が「売上高10%増」と仮定した場合、「1日に5件のアポイントを獲得する」「1日20件架電する」など実際に行う内容が手段です。

    手段はあくまでも目的達成のために設定します。手段を実行することが目的にすり替わってしまう「手段の目的化」が起こるため注意が必要です。

    方針

    方針は組織や個人が行動する際の基本的な方向性です。目的と関連しており、目的達成のための大まかな原則やルールといえばわかりやすいかもしれません。

    方針は目標や目的の達成に向けた行動の基盤です。しかし、目標と同様に具体的な成果を示すものではありません。

    ゴール

    ゴールは「目標・目的を達成すること」です。組織や個人が達成しようとする最終的な結果を指します。ゴールは目的の一部でもあり、目的がなぜ重要なのかをより具体的に示すものともいえるでしょう。ゴールに到達することで、一定の成果が得られます。

    テーマ

    テーマは目的を達成するための主題です。たとえば、「社会に価値を提供し、利益を上げること」が企業の目的である場合、テーマは「環境保護」や「イノベーション」などが設定できます。

    仮に「環境保護」をテーマにした場合、製品の環境への影響を最小限に抑えることや再生可能エネルギーの利用などを実行できるでしょう。目的は企業が目指す理想像であり、テーマは方針や目的を支える「枠組み」です。

    目標と目的を混同するとどうなる?

    目標と目的はよく混同されてしまいます。もしそのようなことが起きると、組織やプロジェクトは本来の目的を見失い、望む結果を得ることが難しくなってしまうでしょう。

    目標の達成が優先されてしまう

    たとえば、人事部門の目的が「従業員の職場満足度とエンゲージメント向上」であるとします。「年間で従業員の残業時間を10%削減する」という具体的な数値を設定した場合、目標と目的を混同しやすくなります。

    数値目標の達成が優先された場合、働き方の改善が目的を上回ることがあるでしょう。その結果、本来の目的である従業員の満足度やエンゲージメント向上がおろそかになる可能性があります。

    もちろん従業員の働き方の改善は重要です。しかし、それが目的ではありません。目標と目的は明確な区別が必要です。数値目標は、本質的な目的を支える手段だと理解しましょう。

    具体性のない目標になってしまう

    目標と目的を混同すると、具体性のない目標設定になってしまう可能性があります。たとえば「売り上げ向上」という目標は具体性がありません。

    このような目標が設定されてしまうと、いつまでに、どのくらい売り上げを向上させればよいのか、売り上げ向上のためにどのようなアクションプランを立てればよいのか、などがわかりません。

    そのため、従業員のモチベーション低下やタスクの優先順位付けの混乱が生じてしまうでしょう。「年間売上を10%増加させる」のような具体的で測定可能な目標を設定することで、従業員は明確な方向性を把握しやすくなり、行動計画が立てやすくなります。

    ビジネスの目標・目的の設定方法

    目標・目的の設定はビジネスを成功させるために必要です。ここではフレームワークを活用した設定方法を紹介します。

    OGSMを使った目標・目的の設定

    OGSMは「Objectives(目的)」「Goals(目標)」「Strategies(戦略)」「Measurements(評価)」の4つの要素から成り立つフレームワークです。組織の戦略や目標を設定し、実行する際に使われます。

    目的の設定(Objectives)

    まずは組織のビジョンや方針を体現する、明確な目的を設定しましょう。目的は、中長期的な視点で組織が達成しようとする姿です。目的が明確になることで、全体の方向性が定まります。

    たとえば、新市場進出や競争力強化、企業価値の向上などが目的として挙げられるでしょう。最終的に、どのような状態になっていたいのかを考えることで目的が定まります。

    目標の設定(Goals)

    目的が確定したら、それを達成するための具体的で測定可能な目標を具現化します。目標はSMARTの法則に基づいて設定します。

    具体的かつ明確で、数値で評価可能、達成可能で、組織の方針と関連性があり、期限が設定されていることが重要です。

    たとえば、売上高の増加率、新規顧客の獲得数、製品の開発完了期限などが目標として挙げられます。

    戦略の策定(Strategies)

    目標が定まったら、達成するための具体的な戦略や行動プランを策定します。目標達成に向けた具体的なアクションは、1つとは限りません。

    数ある中から、最も効率的に進められるものを選択することが大切です。戦略の例には、市場のニーズに合わせた製品開発や効果的なマーケティング戦略の構築、競合他社との差別化などがあるでしょう。

    評価方法の設定(Measurements)

    最後に、目標の進捗を適切にモニタリングし、評価するための指標やKPIを定義します。これにより、組織は目標の進捗を把握し、戦略の適応や最適化が可能です。

    具体的な指標は組織によって異なりますが、月間の売り上げ成績や1か月の市場シェア率、半期の顧客満足度指数などが挙げられます。

    定量的に測定できれば、戦略を効果的に実行できているかがわかり、軌道修正もしやすくなります。

    OGSMを活用した目標・目的設定のイメージ
    Objectives(目的)製品品質の向上
    Goals(目標)不良品率を年間で10%削減
    Strategies(戦略)生産プロセスの効率化と品質管理体制の強化
    Measurements(評価)不良品率、顧客からのクレーム数

    目標と目的を分けて設定するコツ

    目標と目的を混同してしまうと、適切な目標・目的の設定はできません。それぞれの違いを理解したうえで、次の点を押さえながら設定してみましょう。

    目標と目的の混同に注意する

    目標は具体的な数値や成果指標であるのに対し、目的は大局的で組織的な方向性を示すものです。この2つの役割の違いを正しく理解し設定することが大切です。

    また、目標がいつの間にか目的にすり替わることがないよう、日頃から目的を意識しながら目標達成に向けて行動しましょう。

    目的・目標は具体的に設定する

    目的が不明確だと、目標も定まりません。また、目的がはっきりしていないと、目標にすり替わってしまうこともあります。ゴールを明らかにしたうえで、具体的な数値目標を立てましょう。

    もし、目的を見失いそうになった場合は、目標に対し「なぜ達成する必要があるのか」を考えるとよいでしょう。

    少し難易度の高い目標を心がける

    簡単に達成してしまう目標や、達成が現実的でない目標は、従業員のモチベーション低下につながります。難易度の設定は、少し努力しなければならない程度にしておきます。

    適度な挑戦は目標達成への意欲を駆り立てるだけでなく、達成に向けたアクションプランを主体的に考えられるようになるでしょう。

    共通の定義を設定する

    目標や目的に対する社内の理解や定義が一致していなければなりません。。目標と目的の違いや役割はもちろん、用語の使い方などは共通している必要があります。

    たとえば企業によっては「目的」のことを「パーパス」と呼ぶこともあるでしょう。認識のズレが生じると目標・目的の達成に影響を与えてしまいます。

    ズレが発生しないよう、社内コミュニケーションを通じて同じ認識を確立することが重要です。

    振り返りを必ず行う

    目標と目的の達成には、進捗確認や振り返りが不可欠です。達成できた点とできなかった点を確認し、未達成については、その原因を分析し改善策を見つけましょう。

    目標の達成度や目的の進捗を定期的に評価することで、戦略の修正や学びの導入が可能です。PDCAを回すことは目標・目的達成までの近道であることを覚えておきましょう。

    目的を達成するための目標設定が大切(まとめ)

    目的を達成するためには、具体的で明確な目標設定が不可欠です。目的は「目指すべき理想のゴール」、目標は「ゴールに到達するための具体的な指標」です。

    それぞれの関係性を深く理解し、効果的な戦略を立て、目標・目的達成に向けたステップを踏みましょう。目標・目的の設定には、当記事で紹介したフレームワークを活用するのもおすすめです。