人事異動の内示とは|いつ伝える? 伝え方や注意点、漏えい対策をわかりやすく解説
新しい部署への異動や職務の変更は、多くの従業員にとってキャリアの転機となります。 そのきっかけである「人事異動の内示」を受けた本人は、不安や期待ときには戸惑いが入り混じった気持ちになるものです。
従業員が納得して節目を迎えられるよう、人事異動の内示を伝える側には、タイミングや伝え方に慎重さが求められます。
本記事では、人事異動の内示とは何か、いつ伝えるのが適切かなど基本を解説します。人事異動の内示はプライバシーにかかわる社内通知です。漏えい対策や注意点も解説するので、人事異動をスムーズにするためにお役立てください。
また異動配置の検討には、人事データに基づく事前シミュレーションが不可欠です。感覚に頼らない異動シミュレーションの方法はこちらの活用例をご覧ください。
人事異動の内示とは?
人事異動の内示とは、正式な辞令発令の前に、従業員に対して異動や役職変更の予定を非公式に伝える行為です。
人事異動の内示の目的は、従業員に引き継ぎや新しい役割への心構えを持たせることです。企業側が従業員の反応を確認し、必要に応じて調整の余地があるかを判断する側面もあります。
たとえば、海外異動の内示を受けた従業員が語学スキルの確認を始めたり、家庭の事情で異動に難色を示した場合に企業が柔軟な対応を検討したりします。
人事異動の内示は、あくまでも予定であるため、伝えたあとの反応や状況次第で、内容が変更されるケースもあるでしょう。
人事異動の内示は義務?
企業に人事異動の内示を行う法的義務はありません。内示はあくまでも企業側の裁量により行われるものであり、必須ではないのです。
義務でないにもかかわらず、内示を行う理由は、従業員の反応を確認できるというメリットがあるからです。
人事異動の内示を行うことで、異動後の円滑な業務移行や従業員のモチベーション維持につながります。たとえば、異動内容に対する従業員の意見や懸念を事前に確認することで、正式な異動までに調整が可能です。
内示が行われずに突然の異動を通知すると、従業員が不安や不満を抱き、業務効率や職場の士気に悪影響を及ぼすリスクが考えられます。
人事異動の内示は多くの企業で慣習として実施されており、適切なタイミングで伝えることが重要です。
人事異動の内示を伝えるタイミング
人事異動の内示のタイミングは正式な辞令の1~2か月前に行われます。もちろん企業によってタイミングは違うので自社のルールを確認しましょう。
十分な時間を確保することで、従業員が異動に向けた心構えを持ち、業務の引き継ぎや新たな環境への準備を進められます。
たとえば昇進や昇格にともなう異動であれば、新しい役職に向けたスキルアップや責任の理解が必要です。また転勤や配置転換の場合は、家族との相談や引っ越しの準備に時間がかかります。
早めの内示により、従業員にとっても企業にとっても納得のいく円滑な異動を実現できるでしょう。
人事異動の内示と辞令・発令の違い
人事異動の内示は、異動や昇進・降格といった予定を非公式に伝える方法です。あくまで内々で行われ、最終的な決定が覆る可能性も含まれています。
一方、辞令や発令は企業からの正式な決定事項としての通知です。辞令や発令が実施されたあとは、原則として従業員はそれにしたがわなければなりません。
内示の段階では、従業員と話し合いを行ったり、家庭の事情や本人の意向を確認したりする余地があります。たとえば、転勤の内示を受けた従業員が家庭の事情で調整が難しい場合、企業が配置計画を見直すケースもあると理解しましょう。
【種類別】人事異動における内示の内容
人事異動の内示では昇進や降格、部署異動、転勤などさまざまな内容が伝えられます。内示の種類ごとに具体的な内容や注意点を解説します。
内示の種類 | 内容 | ポイント・注意点 |
---|---|---|
昇進・昇格 | 新しい役職職務等級の引き上げ | 具体的な評価理由を伝え、スキルアップを支援する |
降職・降格 | 現職より低い役割職や等級への変更 | 背景理を伝え、フォローアップする |
部署異動・配置転換 | 新しい部門や業務内容の異動。従業員の能力開発や組織全体の最適化が目的 | 期待を伝え、不安を軽減する支援をする |
転勤・転任 | 勤務地変更をともなう異動。 特に遠方の場合、生活や家庭への影響が大きい。 | 早めの内示で準備期間を確保し、引っ越しなどの支援を提案する |
内示の種類ごとに、新しい役割を踏まえて、企業が従業員の反応を確認し、必要に応じて調整することが大切です。モチベーションを損なわないポイントや企業側ができる工夫を確認していきましょう。
昇進・昇格
昇進や昇格の内示では、従業員が新たな役職や職務等級に就くことが伝えられます。昇進は職位が上がること、昇格は給与や職務等級の引き上げを意味します。
人事異動の内示段階で評価理由や期待される役割を伝えることで、従業員は責任感を強め、新しい業務への準備を始められるでしょう。
ポイント |
---|
・昇進理由(評価している理由)を伝える ・必要な研修やスキルアップの機会を提供する |
降職・降格
降職や降格の内示は、従業員にとってデリケートな内容であり、慎重な対応が求められます。
人事異動の理由を明確に伝えつつ、将来的なキャリアの可能性を示すことが重要です。業績不振や組織改編が原因の場合もありますので、従業員が納得する説明を心がけましょう。
ポイント |
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・具体的な背景(組織再編など)を伝える ・降格後もキャリア形成をサポートする |
部署異動・配置転換
部署異動や配置転換の内示では、新たな部門や業務内容が伝えられます。従業員にとって新しいキャリアの機会を得るチャンスであり、企業にとっても個人の能力を活かし組織全体のパフォーマンスを高めるための施策の一つです。
しかし、慣れている業務から離れることに不安を感じる従業員もいるため、人事異動を前向きに受け入れられるよう目的や期待される役割を伝えましょう。
ポイント |
---|
・具体的な期待を伝える(経験を積んでほしい など) ・異動後のサポート体制を整える、異動後の上司と顔合わせの機会を設ける |
転勤・転任
転勤や転任の内示では、勤務地の変更が伝えられます。特に遠方への転勤は従業員の家庭や生活に大きな影響を与えるため、可能な限り早い段階で内示を行いましょう。
転勤にともなう支援やサポートについても具体的に説明して、従業員の不安を取り除くことが大切です。家族の事情などを考慮して、必要に応じて人事異動先を調整します。
ポイント |
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・1〜2週間後の異動など急な内示はしない ・住居探しや移動費用の負担についてルールを設ける・家庭の事情も考慮する |
人事異動の内示の通達方法
人事異動の内示の通達方法には、一般的に「口頭」と「メールや書面」の2種類があります。それぞれの特性を理解し、状況に応じて使い分けることが重要です。
人事異動の内示の伝え方 | メリット | デメリット |
---|---|---|
口頭 | 双方のコミュニケーション。相手の反応をもとに超せできる | 伝えもれや誤解が発生する可能性がある |
メールや書面 | 正確に情報を伝える | 冷たい印象を与えることがある |
適切な人事異動の伝え方を採用することで、従業員との信頼関係を強化し、異動後の業務移行をスムーズに進める土台をつくれます。従業員の勤務地や特徴に応じて、2つの方法を併用してもよいでしょう。
口頭
口頭での人事異動の内示は、もっとも一般的な方法です。対面で伝えることで、従業員の表情や反応を確認しやすい利点があります。
ただし、口頭だけでは正確に伝わらず誤解を招く可能性もあります。内容を整理して明確に理由や背景を伝えるようにしましょう。後日、書面もあわせて提示することもあります。
メールや書面
メールや書面での人事異動の内示は、情報を正確に伝える手段として採用される場合があります。
特に遠隔で勤務している従業員や多忙な従業員には、直接会うよりも迅速に情報を共有できることが利点です。
ただし、書面だけでは冷たい印象を与える可能性があるため、フォローとして口頭での説明を加えるとよいでしょう。
人事異動における内示の伝え方・注意点
人事異動の内示は、従業員のキャリアや生活に大きな影響を与えます。本人に納得してもらったうえで、内示を行いたいと考える担当者は多いでしょう。
企業が以下の3つの注意点に配慮することで、納得感が得られるだけでなく、異動後のスムーズな業務移行につながります。
- 納得感のある人事評価・異動を実施する
- 内示の詳細をていねいに説明する
- 内示情報が漏えいしないように注意する
一方で伝え方を誤ると、従業員が不満に思い、モチベーション低下や社内の混乱にまで発展しかねません。注意点を心がけ、双方が納得する人事異動を実現しましょう。
納得感のある人事評価・異動を実施する
人事異動の内示の最重要ポイントは、双方にとって納得感があることです。
評価や業務内容に基づいた公平な人事異動であることを伝え、昇進・降格の理由を理解してもらう必要があります。
納得感を高める伝え方(1) |
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新しい役職での経験が次のステップアップにつながると考えています。 |
将来的な展望を共有すれば、本人のモチベーションの向上が期待できます。
一方で降格内示では、特に理由を明確にし、必要に応じてフォローアップを行うことが不可欠です。
納得感を高める伝え方(2) |
---|
経営判断による組織再編が理由であり、個人の評価に基づくものではないです。 |
マイナスに捉えられがちな人事異動は、背景を説明した方が、従業員の納得を得やすくなります。
降格であっても、キャリア形成をサポートする施策を提示できるとモチベーションを維持できるでしょう。
内示の詳細をていねいに説明する
人事異動の内示では、異動先や新しい役割について、従業員が安心して準備を進められるように詳細な説明が大切です。
従業員が前向きに考えられる伝え方(1) |
---|
新しい部署では、今まで培ったスキルを活かし、新規事業の企画に携わる予定です。 |
以上のように伝えると、人事異動後の環境を具体的にイメージしやすくなります。
さらに以下の伝え方のように、不安を軽減するために支援体制を明確に伝える配慮も必要です。
従業員が前向きに考えられる伝え方(2) |
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人事異動後は、研修やサポート体制を整えているので、安心して新しい業務に取り組んでほしい。 |
ていねいな説明は、異動後の適応をスムーズにするだけでなく、従業員の信頼を得るうえでも重要です。
内示情報が漏えいしないよう注意する
人事異動の内示は正式な発令前の非公式な通達であるため、情報漏えいのリスクに細心の注意を払う必要があります。内示の情報は関係者以外がアクセスできないよう、厳格な管理を徹底します。
情報漏えいを防止するため、個別面談で直接伝えるのも一つの方法です。
情報漏えいを防ぐ伝え方 |
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正式な発令までは社外秘扱いです。 |
本人に正式な発表までは周囲に話さないように伝え、社内での混乱や誤解を防いで、職場の調和を保てるように配慮しましょう。
人事異動における内示の漏えいリスク
人事異動の内示は非公式な段階で行われるため、漏えいリスクを最小限に抑えることが重要です。想定されるリスクには次の4つがあります。
- 人事異動の内示情報が悪用される
- 従業員のモチベーションが低下する
- 従業員や取引先との信用問題にかかわる
- 人事異動の調整や取り消しの可能性がある
情報管理を徹底することで、以下の3つの効果が期待できます。
- 社内の信頼関係の維持
- 従業員のモチベーションや離職リスクの軽減
- 円滑な人事計画の遂行
内示の段階からスムーズな人事運営を実現するために、想定するリスクを確認していきましょう。
人事異動の内示情報が悪用される
人事異動の内示が漏えいすると、昇進や降格に関する情報が早期に広まり、社内の競争や不和を引き起こす可能性があります。たとえば、昇進予定者に対する嫉妬や不満が原因で、同僚との関係が悪化し、職場の士気が低下するかもしれません。
また、昇進や降格情報が悪用されると、従業員同士の足の引っ張り合いや噂の拡散など、健全な職場環境を損なう事態につながるため注意を払いましょう。
従業員の離職につながる
人事異動の内示が漏えいし、異動や降格が公になると、当事者が不信感を抱き、結果として離職を選択するケースもあります。従業員が企業の情報管理能力に疑問を持ち、転職を検討することもあるでしょう。
特に降格や転勤の場合は、情報漏えいが従業員のキャリアへの不安を増幅させ、離職の引き金となる可能性が高いです。
従業員のモチベーションが低下する
人事異動の内示が適切に扱われず、漏えいした場合、当事者のモチベーションが低下するおそれがあります。昇進や降格に関する情報が周囲にもれると、当事者はプレッシャーを感じたり、不満を抱いたりするかもしれません。
さらに、内示の内容が決定事項であるかのように早期に広まると、準備が整わないまま精神的な負担が増大し、業務パフォーマンスに悪影響を与える可能性もあります。
従業員や取引先との信用問題にかかわる
人事異動の内示が外部にもれ伝わった場合、社内だけでなく、取引先や外部関係者との信頼関係にも悪影響があります。重要なポジションにある従業員の異動が外部に知られると、取引先が関係性に疑念を抱くのも当然です。
企業全体への信用が低下しないよう、特に取引先とのプロジェクトの進行に影響を及ぼす異動なら、なおさら管理を徹底する必要があります。
人事異動の調整や取り消しの可能性がある
内示段階で情報が外に伝わると、従業員からの反発が生じ、計画していた人事異動を見直したり取り消したりといった事態に発展することが予想されます。
情報漏えいにより、人事計画全体が混乱し、ほかの従業員や関係者にも不安が広がるため避けるべきです。
最終的には、企業の信頼性が損なわれ、戦略的でスムーズな人事異動が難しくなってしまいます。
人事異動における内示情報の漏えい対策
人事異動の内示情報を不用意に外部に漏らさないようにするには、明確なルールと仕組みづくりが重要です。漏えい対策には以下の4つが挙げられます。
対策 | 具体例 |
---|---|
1.ルールを設ける | ・共有範囲の限定・従業員に秘密保持を徹底してもらう |
2.情報取り扱いの仕組みを整備する | ・アクセス権限の設定・システムで共有履歴を管理 |
3.コンプライアンス教育をする | ・人事情報管理に関する研修 ・過去の漏えい事例の共有 |
4.内示後は対象従業員のフォローをする | ・フォロー面談による不安の軽減 |
内示の段階から適切な管理と配慮をすることで、企業と従業員の信頼関係を維持し、職場全体の生産性向上につなげましょう。
まとめ
人事異動の内示は、従業員にとってキャリアの節目となります。企業にとっても組織全体の生産性向上や調和維持を目指す人事施策の一つです。
人事異動の内示の伝え方に配慮することで、従業員は次のステップへの心構えが整い、段階的な準備を進められます。ただし内示情報を適切に管理しないと、従業員のモチベーションや企業全体の信頼性が低下するリスクもあります。
本記事で紹介したポイントを意識し、従業員の不安を取り払いながら、伝え方やタイミングには細心の注意を払いましょう。そして双方が納得できる人事異動を実現し、早期に成果を出せるようにフォローすることが大切です。
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