タレントマネジメントとは? 目的や効果、導入手順も解説

タレントマネジメントは、経営目標の達成や戦略的な人材活用を支える人材管理の方法です。しかし、進め方や具体的なメリットをよく知らず、ただなんとなく取り入れようとしている経営層や人事担当者もいるかもしれません。
本記事では、タレントマネジメントが注目される理由やメリット、導入の手順についてわかりやすく解説します。後半では、タレントマネジメントを導入効果を高めるシステムも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次

タレントマネジメントとは
タレントマネジメントとは、経営目標を実現するために戦略的人事を実行し、成果を出すために役立つ人材マネジメントの方法です。
従業員の経歴や経験、能力やスキルなどの情報を集約し、人材配置や人材育成、会社としての人材採用に活用します。
企業によって、人事戦略や課題は異なるため、タレントマネジメントを画一的に行えばよいというわけではなく、企業の人事事情に合わせたタレントマネジメントが必要とされています。
また、すべての従業員をタレントマネジメントで管理することは大変であるものの、近年「タレントマネジメントシステム」の普及が進んだことも影響し、タレントマネジメントの対象を全従業員とする企業も多くなっています。

タレントマネジメントの定義
タレントマネジメントでは統一された手法がなく、定義もさまざまです。タレントマネジメントの主な定義を3つ紹介します。
(1)ASTD(米国人材開発機構)での定義
ASTDでのタレントマネジメントの定義は、企業の経営目標に合わせて従業員を採用し、人材開発や配置を通じて人的リソースを最適化しながら目標達成を目指す統合的なアプローチです。
(2)SHRM(全米人材マネジメント協会)での定義
SHRMでは、企業の経営目標を実現する前提で人材を採用・育成した上で活用するという一連のプロセスを改善した上で、生産性を向上させる戦略を推進することをタレントマネジメントと定義しています。
なお、SHRMは「タレントマネジメント」のルーツとしても知られています。
(3)リクルートワークス研究所での定義
リクルートワークス研究所では、タレントマネジメントを次のように定義しています。
「優秀な個人の能力とリーダーシップを最速で開花させることにより、ビジネスゴールの達成と、組織内におけるリーダーシップの総量を極大化させるための、本人・上位者・人事による成長促進プロセスである」
リクルートワークス研究所「タレントマネジメントの本質」
タレントマネジメントの発祥
タレントマネジメントの概念は、1997年にアメリカ大手コンサルティング会社であるマッキンゼー&カンバニーが「War for talent(人材育成競争)」という言葉を掲げたことで誕生しました。
「War for talent」は、経済社会の変化により、社内外問わず人材を獲得しなければならないということを意味しています。
また、優秀なマネジメント層やリーダー層の人材育成が重要であり、そのための人材育成施策の実行が重要という考えを示しています。

タレントマネジメントが注目される背景
タレントマネジメントが日本でも注目されていることには、どのような理由や事情があるのでしょうか。その背景について、以下でご紹介していきます。
少子高齢化による人材不足
タレントマネジメントが注目される背景として、昨今の少子高齢化に伴う、労働力人口の減少が挙げられます。
人材が不足しているなかで、いかに従業員の離職を防止できるかという点が重要になってくるでしょう。そのためにも人材を管理したうえで、適切な人材配置や本人のエンゲージメントを高める必要があります。
タレントマネジメントをおこなうことで、本人の経験や素質などを捉え、本人が活躍・満足できる環境に配置することも期待できるでしょう。
人材や働き方の多様化
タレントマネジメントは、人材や働き方の多様化という点においても注目されやすくなっています。
昨今、女性の活躍や外国人社員が増加しています。また、産休育休や時短勤務、テレワークなど働き方の多様化も進んでいます。
人材や働き方が多様化することで、人材管理の方法も変化に対応できなくてはなりません。
市場競争や環境の変化
タレントマネジメントは、市場競争や環境変化への対応にも役立ちます。ITやDX化が普及しつつあるなかで、データ活用やインターネットの活用などがさらに必要とされています。こうした様々な変化に対応するためにも、タレントマネジメントでは、従業員の能力や経験を確認したり、効率よく管理できるため、必要とされています。

タレントマネジメントの目的
次に、タレントマネジメントを行う目的について確認してみましょう。

経営目標の実現
タレントマネジメントの目的は、会社の経営目標を実現することです。成果や利益を創出するためには、経営理念の浸透や会社目標を理解したうえで、各部署においても目標設定が必要です。
そこで人事部門では、会社の目標に沿った適切な人材配置、必要な人材の確保が求められいています。会社の経営目標の実現のために、タレントマネジメントを行って人事戦略を遂行していくのです。
人材に関する目的
タレントマネジメントは、あくまでも経営目標達成のために必要な手段ですが、経営目標達成には様々な人事戦略の達成が必要になります。
そこで、タレントマネジメントを活用しておこなう人材育成や適切な人材配置、人材確保なども目的の一つになります。
部署間での連携
タレントマネジメントをおこなうことで、組織における様々な部署の連携も可能になります。経営目標を達成するためには、ときに部署を超えた連携や協力が必要なシーンが幾度も出てくるでしょう。
そこで、タレントマネジメントで組織図の確認や他部署の従業員データ確認、必要なスキルを持った人材を見つけるということも可能になります。連携が可能になることで、部署間でのコミュニケーション活性化にも役立つでしょう。
会社の生産性向上
タレントマネジメントを通じて従業員一人ひとりが優れたパフォーマンスを発揮できれば、組織・会社全体の生産性向上を目指せます。限定型正社員やパート勤務といった仕事内容や労働時間が限られている社員でも、希望や能力に合ったポジションで戦力になるでしょう。
組織としての強み・弱みも明らかになるため、既存の従業員に研修を実施したり新たな人材を迎え入れたりすることで、組織力の底上げもはかれまいtす。タレントマネジメントで蓄積したデータがあると、求める人材像も明確になるため、採用の効率化のほか、採用ミスマッチも防げるでしょう。
タレントマネジメントの対象
タレントマネジメントでは、企業において大きく分類すると2種類に分かれます。以下でタレントマネジメントの対象についてご紹介します。
全従業員が対象
タレントマネジメントの対象を全従業員にする場合、会社の幹部からアルバイトまでの人材管理をすることになります。
全従業員を対象とすることで、管理する層は広くなりますが、細かいところまで適正な人材配置につながることが期待できます。
会幹部候補や優秀な人材が対象
タレントマネジメントの対象を幹部候補や優秀な人材に絞る場合、リーダーシップやさらなる能力開発を重点とした人材管理を進めていきます。
管理する層は絞られますが、より会社に貢献し得る人材の適正評価や人材登用につなげることで、さらなる活躍や組織強化が期待できます。
タレントマネジメントの効果やメリット
タレントマネジメントを導入することで得られやすい効果やメリットを以下でご紹介します。
戦略人事の実現
タレントマネジメントを行うことで、企業の経営理念や事業戦略を理解した戦略的な人事の実現に役立ちます。
人材不足の中でも、今いる従業員の経験やスキル、本人の希望を考慮したうえでおこなう人材配置で、より成果が出やすい組織や従業員エンゲージメントが高い組織への成長が期待できるでしょう。
公正な評価
タレントマネジメントでは、従業員の経歴やスキル、将来のキャリアビジョンなどをデータ化し、評価に活用します。そのため、客観的な評価が可能になり、評価に関する不平等感や不満を抑えやすくなるでしょう。公平な人事評価や、評価制度の構築にも役立ちます。
人材育成の促進
タレントマネジメントでは、従業員の人材育成も期待できます。幹部候補者やリーダーの育成にも役立つでしょう。幹部やリーダーの不足など、現状の課題から今後の採用計画や人材登用などにつなげることができるでしょう。
目標管理の適正化
タレントマネジメントでは目標管理も見直しすることができるようになります。会社や組織の目標を整理して明確化することで、所属部署単位だけでなく従業員単位の目標を適正化しやすくなるでしょう。
会社の目標に沿った内容で、本人の能力やキャリアプランにも生かせるような目標の設定も可能になります。
離職防止(定着率向上)
タレントマネジメントでは、対象の従業員情報を管理し、能力や本人の希望など、適材適所の人員配置を行うことで、エンゲージメントを高め、離職防止にもつなげることができます。
従業員エンゲージメントの向上
タレントマネジメントで従業員を適切に管理することは、従業員と企業との信頼関係を高め、従業員のエンゲージメント向上にも役立つでしょう。
本人の経歴やスキルを人材配置に活用することで、従業員が活躍できる可能性も高まります。従業員が活躍できる場の提供や、従業員のパフォーマンスを認めてもらうことで、より企業への愛着心や愛社精神にもつながるでしょう。
エンゲージメントが高まることで、さらなる成果の創出や離職防止にもつながります。
タレントマネジメントの導入ステップ
タレントマネジメントを導入して進めていくうえでの必要なステップを以下でご紹介いたします。

1.目的の明確化
タレントマネジメントをすることで、どのような目的を果たしたいのかという点を明確にする
2.採用や育成の計画立案
データ分析や人事課題、適材適所を踏まえた採用や育成・配置の計画を立てる
3.対象のタレントの情報を集める
タレントマネジメントの対象となる従業員の人数や情報を集め、人事戦略の課題や現状の過不足などを確認する
4.採用や配置など施策実施
戦略や計画に基づいた人材採用や人材育成・配置をおこなう
5.人事評価
ステップの流れで行った施策の成果を評価する
6.改善施策の再考(リテンション)
成果に応じて今後の課題抽出、さらなる改善施策等の再考をおこなう
タレントマネジメントの進め方としては、従業員の情報収集からタレントマネジメント効果の振り返りまで行うため、PDCAを回しながら進めていくというイメージがわかりやすいでしょう。
タレントマネジメントシステムの活用が便利
タレントマネジメントシステムとは、企業の従業員に関する人材データ(従業員の個人情報や配属、上司からの評価)など様々な情報をシステム上で一元的に蓄積・管理できるサービスです。人事評価や人事戦略(人材育成、採用)への活用もできるシステムとして注目されています。
タレントマネジメントの導入を考えている場合には、システムで一元管理できるタレントマネジメントシステムを活用することが効率的かつ効果的でしょう。
タレントマネジメントシステムの主な機能
タレントマネジメントシステムには、サービスによって搭載されている機能が異なります。以下で、タレントマネジメントシステムの一般的な機能をご紹介します。
- 人材データ管理機能(スキル/経歴/資格等)
- データ分析機能
- 組織図機能
- 目標管理機能
- 人事評価管理機能
- セキュリティ機能
- 計画立案機能
- 診断機能
- アンケート機能
- データ入出力機能
- 適性検査機能
タレントマネジメントシステムには、サービスごとに搭載されている機能は異なります。また、プランによっては機能があらかじめ決まっているもの、自由にカスタマイズできるものがあります。
会社によって必要な機能は異なるため、必要な機能を自由に組み合わせたりカスタマイズできるようなサービスがおすすめです。
タレントマネジメントシステムの注意点
タレントマネジメントシステムを導入するうえで、踏まえておきたい注意点をご紹介します。
- 導入コストがかかる
- 評価基準を見直さなくてはならない場合がある
- 従業員への周知徹底が必要になる
- 機能を使いきれないことがある
とくに、評価基準を見直さなくてはならない場合がある」という点については、現状導入している目標管理のやり方が、タレントマネジメントシステムに対応していない場合があり、その場合別途で管理するか目標管理のやり方を変更しなければならない場合があるため、注意しましょう。
タレントマネジメントシステムの選び方
タレントマネジメントシステムを選ぶ際は、様々な点を考慮して選びたいところです。大きくまとめて「コスト」「機能」「他システムとの連携」「サポート」の4つの点から、選び方のポイントをご紹介します。

料金は適正か
タレントマネジメントシステムを導入する場合、コストがかかります。初期費用や月額利用料がどれくらいかかるのかという点を明確にしましょう。
タレントマネジメントシステムのなかには、機能をカスタマイズできることで最低限の機能だけにするなど、料金を抑えることができるサービスもあります。必要な機能や予算を踏まえ、どのサービスが妥当なのかを検討しましょう。
必要な機能が備わっているか
タレントマネジメントをおこなうにあたって、欲しい機能が搭載されているかどうかを確認しましょう。サービスによって搭載する機能は異なります。
多機能を搭載しているものは魅力的に見えるものの、使いこなせるかどうかも含め、検討してみましょう。
他システムと連携できるか
人事労務関係の他システムとの連携ができるかどうかも重要な点です。まずは自社でどのようなシステムを利用していて、タレントマネジメントシステムとの連携可否を確認しましょう。
サポート体制は万全か
タレントマネジメントシステムを導入する際は、サポート体制にも注目したいところです。なにかトラブルや早急に解決したいことが生じた際に、すぐに対応してくれるかどうかが重要です。電話やチャットサポートなどは最低限のサポートとしてチェックしてみましょう。
なかには伴走型サポートをおこなっているサービスもあります。導入のはじめから運用開始までなど、専属でスタッフがついてくれる場合もあるため、安心です。
タレントマネジメントの成功事例
タレントマネジメントを導入して、従業員のパフォーマンス向上と会社の成長に成功している事例を紹介します。
サイバーエージェント
ITメガベンチャーのサイバーエージェントでは、社内の専門部署「キャリアエージェント」を軸としてタレントマネジメントに着目した人事戦略を推進しています。従業員数の増加に伴い、一人ひとりの顔が見えなくなったという経営陣からの声が、部署発足のきっかけでした。
独自開発のサーベイツール「GEPPO」を活用して、従業員のコンディションやキャリア志向・抱えている問題に関する情報を収集して、適材適所の人材配置や業務量の調整などの課題を解決しています。役員が戦略的な人材配置を検討する「人材覚醒会議」を設けているのも特徴的です。
社内の各部署が必要としている人材の情報は「キャリバー」に掲載されており、希望する部門やグループ会社への異動をエントリーできる「キャリチャレ」を使って活躍の幅を広げられます。会社が人事異動を行う場合も、役割と期待を本人に伝えた上で決定しています。会社と従業員が情報交換しながら適材適所への人材配置を行い、能力の最大化を実現している事例です。
日清食品ホールディングス
大手食品メーカーの持株会社である日清食品ホールディングスでは、「今後必要となる人材を計画的にプールしておく」という考え方でタレントマネジメントを推進しています。
経営目標を人事施策と連動させて、目標達成の中核となる人材を中途社員の採用や新卒社員の育成によって増やそうという戦略人事を推進しているのが特徴です。
必要なスキルや人材像に関する情報を瞬時に確認できる特性を活かして、適材適所の人材配置に関する議論が活発に行われています。顔写真付きで情報をチェックできるので、経営層による人材配置の判断もスムーズです。
全社員に会社の満足度やビジョン・戦略への共感度などの調査を年1回実施している他、希望者には人事担当者が個別に面談して配置の希望などを話し合っています。タレントマネジメントで得た情報をもとに、経営戦略を踏まえた人材育成・人員配置を実践している事例です。

タレントマネジメントに関する課題
タレントマネジメントを導入すれば課題がゼロになるわけではありません。
タレントマネジメントの導入では、うまく運用できないことで、かえって課題が増えてしまうこともあるでしょう。
- 導入の目的が共有できていない
- 自社の人事課題が明確化できていない
- 最適な運用ができていない
- 十分なデータが収集や分析ができていない
- 導入や運用における担当者の負担
- 経営層の理解
こうした導入後の課題についてもあらかじめ理解し、適切で効率的な運用を行うためにも、タレントマネジメントシステムを活用するなど、事前に対策をしておきましょう。
タレントマネジメントの課題や対策についての詳細記事も、ぜひチェックしてみてください。
タレントマネジメントシステム|One人事[タレントマネジメント]
One人事[タレントマネジメント]は、人材データをまとめて管理・見える化し、適材適所の配置や人材育成、公平な人事評価を支援するタレントマネジメントシステムです。
官公庁や大学法人をはじめ、多くの民間企業でも導入されており、業種や規模を問わず活用されています。人事業務の効率化や人材情報の一元管理、データ分析を通じて、組織力の強化が期待できるでしょう。
目的に応じて欲しい機能だけを選べる料金プランでご利用いただけます。多機能過ぎて使いこなせないといった無駄はありません。
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まとめ
タレントマネジメントは、会社の経営目標を実現するうえで役立ちます。人材管理や適切な人員配置、人材採用など、経営目標に沿った戦略的人事にも活用できます。
今後も少子化が進み、労働力人口の減少が進むことが予想されることや、働き方改革が進むことをふまえると、タレントマネジメントの導入が必要となってくるでしょう。
