育児休業給付金(育休手当)の計算方法|条件や支給期間、関連制度も解説

育児休業給付金(育休手当)の計算方法|条件や支給期間、関連制度も解説

育児休業給付金は、育休中の生活を支える重要な手当です。「実際にいくらもらえるの?」と疑問に感じていませんか。

育児休業給付金の計算方法を理解すれば、もらえるお金の目安を把握できます。また企業の人事担当者も、従業員から相談を受けた際に説明しやすくなるでしょう。

本記事では、育児休業給付金の計算方法を具体例を挙げながらわかりやすく解説します。従業員に安心して休んでもらうためにもお役立てください。

目次アイコン目次

    育児休業給付金とは

    育児休業給付金とは、育休中に一定の収入を確保するために、雇用保険を財源として支給されるお金です。

    育児休業中は、企業から給与が支給されないケースが多いため、収入がなくならないようにするために国が制度を整えています。

    支給額の目安は時期により異なり、休業開始時賃金月額の50〜67%です。2025年4月からは一部のケースで最大80%まで引き上げられています(詳しくは後述)。

    育児休業給付金の概要をおさらいしたい方は、以下の表でご確認ください。

    対象者育児休業を取得する雇用保険の被保険者
    支給期間子どもが1歳に達する日の前日(1歳の誕生日の前々日)まで
    ※一定の条件で延長可能
    条件1育児休業開始日前2年間に、賃金支払い基礎日数11日以上(もしくは就業時間80時間以上)の完全月が12か月以上
    条件2育休中の給与が休業開始前賃金の8割未満
    条件3就労日数が月10日以下(10日を超える場合は月80時間以下)
    延長最長2歳まで可能(保育園に入れない場合や配偶者が養育できない特別な事情がある場合)
    申請方法申請方法の主な手順は以下のとおり
    (1)必要書類を準備する
    (2)書類提出など、手続きを行う
    (3)育休手当が支給される
    (4)2回目以降の申請

    条件を満たせば、正社員だけでなくパート・アルバイト、契約社員も受給が可能です。

    ただし有期雇用の場合、子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約が終了しないことが条件に追加されます。有期雇用契約者は契約期間に注意しましょう。

    参照:『育児休業給付の内容と支給申請手続』厚生労働省

    育児休業給付金の条件について詳しく知るには以下のページもご確認ください。

    育児休業給付金の計算方法

    育児休業給付金の支給額を求める計算式は、以下のとおりです。

    時期計算式
    育休開始から180日目まで休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%(給付率)
    育休開始から181日目以降休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%(給付率)

    育児休業給付金の支給額は、取得開始180日目までは給与の3分の2程度、181日目以降は給与の半分程度となります。

    休業開始時賃金日額とは、育児休業(または産前産後休業)開始前の直近6か月間に支払われた賃金総額を180で割り算した額です。

    「休業開始時賃金日額」に支給日数(原則として30日間)と、休業の経過日数に応じた給付率を掛けて、育児休業給付金の金額が算出されます。

    【収入額別】育児休業給付金の計算例

    育児休業給付金を具体的な例を挙げて計算してみましょう。

    休業開始時賃金日額が10,000円(月額300,000円)の場合、金額は以下のとおりです。

    育休開始からの日数計算式
    180日目まで10,000×30日×67%=201,000円
    181日目以降10,000×30日×50%=150,000円

    さらに休業前の賃金額別に、算出される育児休業給付金の目安をシミュレーションしてみます。

    育児休業開始前の月給与育児休業開始180日目まで育児休業開始181日目以降
    休業開始時賃金日額×支給日数(30日) × 67%休業開始時賃金日額×支給日数(30日)×50%
    20万円134,000円100,000円
    25万円167,500円125,000円
    30万円201,000円150,000円
    35万円234,500円175,000円
    40万円268,000円200,000円
    45万円301,500円225,000円
    50万円335,000円250,000円

    育児休業給付金の計算は、育児休業開始前の給与と給付率がポイントです。

    企業の担当者は、従業員からの相談に備え、給与別の支給額を把握しておくと対応しやすくなります。

    一方で育児休業を取得予定の従業員は、自身の給付額の目安を事前に確認し、家計のシミュレーションに活用しましょう。

    参照:『育児休業給付の内容と支給申請手続』厚生労働省

    育児休業給付金の計算する際の注意点

    育児休業給付金の計算には、日数や給与の支給状況によって思わぬ影響を受けるポイント があります。「思ったより少なかった」「もらえないケースがあるなんて知らなかった」 という事態を避けるため、事前に注意点を把握しておきましょう。

    育児休業給付金の計算式は日数で異なる

    育児休業給付金の計算では、育児休業開始から180日目を境に支給率が変わります。

    • 育休開始~180日目までは67%(約3分の2)
    • 181日目以降は50%(半分)

    育休を長期間取得する場合、181日目以降の減額を考慮しておくと安心です。

    育児休業給付金には上限と下限がある

    育児休業給付金には、上限額と下限額が定められており、一定額を超えて支給されることはありません。

    2025年7月31日までの上限額は15,690円、下限額は2,869円です。支給日数が30日の場合の各給付率における限度額は以下のとおりです。

    給付率上限額下限額
    67%(180日目まで)315,369円57,666円
    50%(181日目以降)235,350円43,035円

    「上限額」を超えた分は支給されないため、事前にシミュレーションしておきましょう。

    休業中に給与支給があると計算方法が変わる

    育児休業中に企業から給与が支給されると、育児休業給付金が減額されるか、受給できなくなる場合があります。

    具体的な計算式は以下のとおりです。

    休業180日まで(給付率67%)

    育休中の給与支給額計算式
    休業開始時賃金月額の13%以下
    ※181日目以降30%
    休業開始時賃金日額×休業期間の日数×67%(181日目以降50%)
    休業開始時賃金月額の13%超~80%未満
    ※181日目以降30%
    休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額
    休業開始時賃金月額の80%以上支給なし

    たとえば、休業開始時賃金月額が30万円の従業員が、休業中に4万5000円(30万円の15%)の給与を支給された場合

    (30万円 × 80%)- 4万5000円 = 19万5000円

    19万5000円が育児休業給付金として支給されます。

    休業181日以降は給付率が50%に下がります。

    育休中の給与支給額計算式
    休業開始時賃金月額の30%以下休業開始時賃金日額×休業期間の日数×50%
    休業開始時賃金月額の30%超~80%未満休業開始時賃金日額×休業期間の日数×80%-賃金額
    休業開始時賃金月額の80%以上支給なし

    育児休業開始前に支給されていた賃金の5割から7割程度が目安と理解しておきましょう

    参照:『育児休業給付の内容と支給申請手続』厚生労働省

    育児休業給付金の手取り額が増える? 2025年4月の新制度とは

    2025年4月から、育児休業給付金の支給額が、最大で「手取りの100%」まで引き上げられました。新たに創設される「出生後休業支援給付金」と通常の育児休業給付金を組み合わせたことによるものです。

    従来の給付額との違いを以下の表で比較します。

     これまで

    2025年4月以降(出生後休業支援給付金適用)

    支給額の目安

    賃金の67%(181日目以降は50%)

    +13%上乗せで最大80%
    適用期間育休期間全体出生後28日間のみ適用
    社会保険料免除免除(変更なし)
    実質手取り(最大)約80%約100%

    新制度の概要は以下のページでご確認ください。

    出生後休業支援給付金とは

    出生後休業支援給付金とは、父母がともに育児休業を取得した場合に受け取れる新しい給付金です。「男性の育児休業取得率を上げる」 ことを目的に導入されました。

     適用期間は、子どもが生まれてから28日間 が対象です。その間、通常の育児休業給付金に13%が加算されます。

    出生後休業支援給付金の仕組み

    通常、育児休業中の給付額は67%(181日目以降は50%) ですが、新たな制度により最大80% まで引き上げられます。さらに、育児休業中は社会保険料(健康保険・厚生年金など)が免除されます。

    育児休業給付金は非課税であるため、結果として手取り額は「育休前の給与のほぼ100%相当」になるケースが多いというのがポイントです。

    「育休中に給与が減って生活が苦しくなる…」という不安が減り、男女従業員ともに安心して仕事を休める環境が促進されています。

    参照:『雇用保険法等の一部を改正する法律等の概要』厚生労働省

    育児休業給付金の延長と計算

    育児休業給付金は、育児休業の取得期間に応じて支給されるため、育休が延長されると、給付金の受給期間も一緒に延長されます。

    原則1歳まで(通常の育休期間)
    延長1保育園に入れない場合などの理由があれば1歳6か月まで延長可
    延長2さらに保育園に入れない場合、2歳まで延長可

    育児休業給付金の受給期間を延長した場合も、金額の計算方法は通常と同様です。

    育児休業給付金の延長条件

    育児休業給付金の延長を申請するためには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。

    • 保育所等に申し込んでいるが、入園できなかった場合(例:保育園の待機児童が多く、入園できない)
    • 配偶者が養育できなくなった場合(例:死亡や疾病、配偶者と子どもが別居)
    • 新たな妊娠によって産前産後休業を取得する場合

    以上の条件に該当すれば、最長2歳まで延長が可能です。

    保育園等に入園できない場合の育児休業延長が厳格化

    2025年4月から、育児休業給付金の延長申請が厳格化されました。「保育所に入れない」理由で延長する場合、単に入園申し込みをしただけでは不十分になります。

    具体的には、以前までの書類に加え、以下の書類が必要です。

    • 育児休業給付金支給対象期間延長事由認定申告書
    • 市区町村に保育所等の申し込みを行った際の申込書のコピー
    • 市区町村が発行する保育所等の利用ができない旨の通知

    従業員が育児休業を延長する場合、従来の「入所保留通知書」だけでは申請が認められません。すみやかな職場復帰を前提とした申し込みである証明が求められます。追加書類の必要性を伝え、希望者には準備を促しましょう。

    給付金の申請については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

    参照:『育児休業給付金の支給対象期間延長手続き』厚生労働省

    まとめ

    育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率」 で決まります。

    育休開始180日目を境に給付率が変わるため、長期取得を考えている場合は事前に計算しておくと安心でしょう。

    また、育児休業に関連する制度や最新のルールを理解することで、給付金の受給額や期間を最大限活用できます。

    2025年4月からの新制度や、延長条件の厳格化もあるため、従業員・企業担当者ともに注意が必要です。

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