雇用契約を更新しない場合の理由やルール|手続きや伝え方も解説
有期雇用契約は、基本的に契約期間満了によって終了し、企業側が更新を望まない場合、契約終了が認められるケースと認められないケースがあります。
雇用契約を更新しない場合には、対象の従業員に配慮し、さまざまな点に注意しなければなりません。
本記事では、雇用契約を更新しない場合の手続きや注意点、伝え方のポイントなどを解説します。企業の経営層や人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
雇用契約を更新しないことが認められるケース
雇用契約を更新しないのであれば、正当な理由が求められます。理由によっては認められないこともあるため、注意が必要です。
雇用契約を更新しないことが認められるケースには、以下の理由が挙げられます。
- 前回の契約更新時に、次回契約更新をしない旨に合意していたため
- 契約締結の際に設けた更新回数の上限に達したため
- 担当業務が終了したため
- 企業の事業縮小のため
- 従業員の業務遂行能力が不足していることが認められるため
- 違反行為があったため
- 勤怠不良や勤務態度が著しく悪いため
上記の理由のもと、契約更新を行わないのであれば、認められやすいといえるでしょう。
また、雇用契約の更新は、企業と労働者の契約内容や雇用関係の状況が大きくかかわります。たとえば、以下のような状況では、契約更新を行わなくても問題になりにくいでしょう。
- 業務内容や契約上の地位が臨時的、一時的である
- 期間満了にともなう契約関係の終了により、企業と労働者の認識が一致している
- 更新手続きの判断基準によって厳しく管理されている
- 更新回数が少なく、雇用関係にあった期間も短い
雇用契約を更新しないことが認められないケース
雇用契約を更新しない場合、認められないケースを紹介します。
- 無期契約と変わらない
- 理由が適切ではない
- 雇用継続が合理的である
無期契約と変わらない
有期雇用契約と無期雇用契約の労働者の業務が同等であるとき、契約を更新しないことが認められないケースがあります。特に、業務内容や社内の地位などが同等の場合は認められにくいでしょう。
また、これまでの契約更新の回数が多く、通算の契約期間が長い従業員も、契約更新しないことが認められにくいです。
理由が適切ではない
雇用契約を更新しない理由が適切でないと、認められにくいでしょう。
理由が合理的ではない、社会通念上相当性がないと判断されるような内容だと、簡単に雇い止めはできません。
雇用継続が合理的である
雇用契約の更新をする場合もしない場合も、判断基準に沿って、企業側と従業員側の合意に基づき、決定します。
ただし、契約が自動更新される状況が続いていたり、正社員と相違ない業務を担当しており雇用継続が合理的と判断されたりするのであれば、雇い止めができない可能性もあります。
契約更新に関する具体的な判断基準は、以下の内容です。
- 業務内容が恒常的である
- 正社員と同様の業務を行い、同等の地位で働いている
- 通算の契約年数が長い
- 更新回数が多い
- 使用者から契約更新を期待させる言動があった
- 同等レベルの労働者で過去に雇い止めがあった
- 労働者の年齢や勤続年数にルールがある
契約更新しない場合の手続き
雇用契約を更新をしない場合、企業側はどのような手続きを行う必要があるのでしょうか。具体的な手続きについて解説します。
- 雇い止めの予告と理由
- 契約期間への配慮
雇い止めの予告と理由
従業員を解雇する場合、事前に雇い止めの予告をしておきましょう。雇い止め予告は、契約解除の30日前までに従業員へ伝えなければなりません。
雇い止めには以下の3種類があります。
普通解雇 | 能力不足や勤怠不良など、従業員の債務不履行による解雇 |
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懲戒解雇 | 従業員の規律違反への制裁による解雇。もっとも重い懲戒処分 |
整理解雇 | 経営不振などにより、人員削減のために行う解雇 |
雇い止めの理由は、社会通念上相当であると認められるときに限ります。契約更新をしない理由は、解雇の種類を踏まえて、妥当性がある内容で用意しましょう。
なお、解雇予告を30日以上前に行わなかった場合、従業員に対して解雇予告手当を支払わなければなりません。
解雇予告手当=1日の平均賃金×予告期間が30日に足りなかった日数 |
平均賃金とは、算定事由発生日の前日から3か月間に支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(暦日数)で割った金額です。
契約期間への配慮
有期雇用で契約期間が終了するときも、簡単に契約を打ち切ることは難しいでしょう。
雇用契約を1回以上更新し、1年以上継続雇用している従業員との契約更新において、契約の実態と本人の希望に応じて、契約期間を長くするように努める必要があります。
参照:『有期労働契約の締結、及び雇止めに関する基準について』厚生労働省
雇用契約を更新しない場合の伝え方とポイント
契約更新をしないことを労働者に適切に伝えるには、ポイントがあります。具体的なポイントを理解して、労使間のトラブルを防ぎましょう。
- 雇い止めについて事前予告する
- 面談を設けて伝える
- 契約解除通知書にサインをもらう
雇い止めについて事前予告する
雇い止めを行う場合、予告期間と解雇の有効性を理解したうえで伝えなければなりません。
これまでの契約更新回数が3回以上である場合や、1年以上継続雇用されている有期雇用者であれば、契約期間満了の30日前までに雇い止め予告をしなければなりません。
面談を設けて伝える
雇用契約を更新しないときは、あらかじめ面談などを通して伝えます。
「書面に書いてある通りです。」などと簡易的に終わらせるのではなく、従業員の生活面や転職活動について配慮したうえで、誠実に対応しましょう。
契約解除通知書にサインをもらう
有期雇用契約を更新しない場合、企業側は契約終了が確定したら、従業員本人のサインをもらいます。
書式ルールはありませんが「言った言わない」のトラブルに発展しないよう、契約終了に関する項目を明記しておきましょう。
- 解除する契約
- 解除理由
- 解除までの猶予期間
特に、契約解除の理由を明記し、従業員が少しでも納得できるように配慮しましょう。
2024年4月から労働条件明示のルールが改正
雇用契約の更新に関連して、2024年4月1日より、労働条件明示のルールが変更されました。改正内容は、労働契約の締結や更新時における労働条件明示事項が追加された点です。有期雇用契約の締結や契約更新時に重要な内容なので、理解しておきましょう。
- 就業場所・業務の変更範囲の明示
- 更新上限の明示
- 無期転換申込機会の明示
- 無期転換後の労働条件の明示
就業場所・業務の変更範囲の明示
すべての雇用契約の締結と、有期雇用契約の更新時において、雇い入れ直後の就業場所と業務内容に加えて、変更範囲の明示が必要になりました。
変更の範囲とは、将来における配置転換において変わる可能性のある就業場所や業務範囲を指します。
これにより、企業で働く際にどのような場所でどのような業務を行う可能性があるのか、イメージしやすくなるでしょう。
更新上限の明示
有期雇用契約の締結と契約更新時期に、更新上限の有無と内容の明示が必要になりました。また、更新上限を新たに設けたり、更新上限を短縮したりするときは、理由も説明しなければなりません。
無期転換申込機会の明示
無期転換申込権が発生する更新時ごとに、無期転換を申し込めるという内容を明示しなければなりません。
無期転換後の労働条件の明示
無期転換申込権が発生する更新時ごとに、無期転換後の労働条件を明示することが必要になりました。
正社員など、通常の労働者とのバランスを考慮した事項は、有期雇用労働者に説明する努力が求められます。
また、留意点として「相談体制の整備」もポイントです。企業側は、雇用契約の従業員からの相談に応じ、適切な対応を取れるように体制を整備する必要があります。
参照:『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律第16条』e-Gov法令検索
無期転換ルールとは
無期転換ルールとは、同一企業との間で、有期雇用契約が5年を超えて更新される場合に、有期契約労働者からの申し込みによって無期雇用契約に転換できることです。
参照:『2024年4月から労働条件明示のルールが変わります』厚生労働省
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まとめ
雇用契約を更新しないことが認められるケースは、以下の通りです。
- 前回の契約更新時に、次回契約更新をしない旨に合意していたため
- 契約締結の際に設けた更新回数の上限に達したため
- 担当業務が終了したため
- 企業の事業縮小のため
- 従業員の業務遂行能力が不足していることが認められるため
- 違反行為があったため
- 勤怠不良や勤務態度が著しく悪いため
有期雇用契約の従業員であっても、契約期間が終了したからといって、企業が一方的に雇用契約を解除できるわけではありません。雇用契約を更新しないのであれば、社会通念上相当と認められる正当な理由で決定しているか否かが重要です。
企業が雇用契約を更新しないと判断した場合、解除予告だけでなく面談の機会も設けて、誠実に伝えるように努めましょう。