雇用契約の期間とは【簡単に】上限と最短、法律上のルールをもとにポイントを解説
雇用契約は、労働者と使用者の合意に基づいて成立する契約です。
雇用契約には、雇用期間の定めがある有期雇用契約と定めのない無期雇用契約があります。有期雇用契約は、契約期間内に更新を行わなければ契約が解消されてしまうため、注意が必要です。
本記事では、有期雇用契約の期間に焦点を当てて、雇用契約期間の上限・最短や更新に関する法律上のルール、無期転換ルールなどの重要ポイントを詳しく解説します。
雇用契約には期間の定め「あり・なし」がある
雇用契約には期間の定めがある場合とない場合があり、それぞれを有期雇用契約、無期雇用契約といいます。
まず最初に、有期雇用契約と無期雇用契約の定義や、有期雇用契約の4つの種類などを紹介します。
有期雇用と無期雇用について
有期雇用契約とは、事業主と労働者があらかじめ雇用期間を定めて締結する契約です。
契約期間は6か月や1年などさまざまですが、労働基準法で上限は3年と定められています。ただし、高度な専門知識や技術を有している労働者や満60歳以上の労働者は、特例として5年を上限とするケースもあります。
無期雇用契約とは、雇用期間を定めない契約です。有期雇用契約のように期間満了による契約終了や更新がなく、原則として定年まで働き続けられます。
有期雇用契約の種類
有期雇用契約は、以下の4種類に分類できます。
- 準社員型契約社員
- パートタイム・アルバイト型契約社員
- 定年後に再雇用する場合の嘱託型契約社員
- 高度専門職型契約社員
有期雇用契約の従業員は、契約社員ではなく、パートやアルバイト・嘱託・非常勤・臨時職員といった呼び方を用いる企業もあります。
有期雇用契約と試用期間の違い
雇用契約を締結する際に、試用期間を設ける企業は少なくありません。有期雇用契約と試用期間の大きな違いは、雇用条件です。
有期雇用契約では、契約期間が満了した際に雇用契約も自動的に解消されます。そのため、契約期間中に従業員の能力を見極めたうえで、必要に応じて契約期間の延長や無期雇用契約への切り替えができます。
一方、試用期間とは、正社員として採用された従業員のスキルや適性を確認するための期間です。業務に必要な能力があるかを判断する目的で設けられており、期間中に判断が難しい場合は試用期間を延長することできます。
また、満了後に採用を取りやめると判断すると、解雇の扱いとなる点も試用期間の特徴です。解雇するには、ほかの従業員と同様に合理的な理由を説明する必要があります。
雇用契約期間の上限と最短
有期雇用契約の期間には上限が定められています。なかには例外もあるため整理して理解しておきましょう。
有期雇用の上限は3年、特例5年
有期雇用契約の期間は、労働基準法第14条の規定により原則として上限3年です。ただし、以下の条件を満たす労働者は、例外として最長5年とすることが認められています。
- 高度な専門知識や技術、経験があり、その専門知識などが必要とされる業務につく労働者
- 満60歳以上の労働者
一度契約を締結したら、契約期間中は、企業が一方的に契約を解消することはできません。
有期雇用の最短は決まりがない
有期雇用契約の期間には上限のみが設定されており、法律上は最短期間についての定めはありません。1週間や1か月といった短い期間はもちろん、1日だけの契約も可能です。
ただし、労働契約法第17条では、労働者保護の観点から契約期間への配慮が義務づけられています。
第十七条 使用者は、有期労働契約について、その有期労働契約により労働者を使用する目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その有期労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。
引用:『労働契約法 第17条』e-Gov法令検索
労働者を使用する目的によって、適切な契約期間を設定しなければなりません。
アルバイト・パートの雇用契約期間
アルバイトやパートの多くは、有期雇用契約を締結しています。企業はそれぞれ自由に契約期間を定められますが、3か月から6か月に設定しているケースが多いようです。
契約期間内に契約を更新すると、同じ職場で継続して働き続けることができます。ただし、アルバイトやパートの雇用形態においても、雇用期間の上限が設けられている点に注意しましょう。
有期雇用契約の期間に関する法律上の3ルール
法律で定められている有期雇用契約の期間に関するルールを、詳しく解説します。
- 従業員は通算5年で無期転換へ申し出可能に
- 雇い止めルールが明文化
- 不合理な労働条件が禁止に
従業員は通算5年で無期転換へ申し出可能に
有期雇用契約を締結した従業員が同じ企業で通算5年を超えて契約更新されると、無期雇用契約へ転換が可能です。2013年に施行された労働契約法改正によって規定が追加され、無期転換ルールといいます。
通算契約期間が5年を超える従業員から、契約満了日までに無期転換の申し出があると、契約満了の翌日から無期雇用契約に切り替わります。労働契約法第18条では、企業は従業員の申し出を拒否できないと定められている点に注意が必要です。
参照:『労働契約法改正のポイント』厚生労働省
参照:『無期転換ルールの概要』厚生労働省
雇い止めルールが明文化
雇い止めとは、有期雇用契約の期間が満了した時点で契約を更新しないことです。労働者を保護する観点から、2012年の法改正により、労働契約法第19条で雇い止めのルールが明文化されました。
契約が複数回更新されていたり、労働を継続するための合理的な理由があったりすると、雇い止めが無効とされることもある点に注意しましょう。
不合理な労働条件が禁止に
労働契約法や労働者派遣法、パートタイム労働法により、雇用形態が異なるという理由だけで不合理な労働条件を定めることを禁止するルールが設けられています。これを同一労働同一賃金といいます。
つまり、同じ企業において、有期雇用労働者と無期雇用労働者が同じ業務をしているにもかかわらず、賃金に格差があるのは認められません。
参照:『労働契約法』e-Gov法令検索
参照:『労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律』e-Gov法令検索
参照:『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』e-Gov法令検索
有期雇用契約の期間を定める際のポイント
有期雇用契約の期間を定める際に、気をつけるべきポイントを解説します。
- 期間と更新の有無、判断基準を明確にする
- 労働条件の明示事項をもれなく提示する
- 雇い止めは予告する
- 従業員の希望に応じて期間を長く設けるようにする
期間と更新の有無、判断基準を明確にする
有期雇用契約を締結する際は、契約期間や更新の有無、契約更新をする際の判断基準を労働者に明示することが重要です。
口頭で説明するだけではなく、書面やメール、社内システムを活用して契約内容を明確に伝える必要があります。企業と労働者間でのトラブルを防ぐためにも、雇用契約書を交わしておきましょう。
労働条件の明示事項をもれなく提示する
有期雇用契約を締結する際は、契約期間や契約更新以外の労働条件も、すべて明示しなければなりません。労働条件を明確にしておかないと、のちのちトラブルに発展する恐れがあるため、書面にまとめておくことが重要です。
雇い止めは予告する
以下の条件を満たす有期雇用労働者に対しては、契約満了日の30日前までに雇い止め予告をしなければなりません。
- 有期雇用契約を3回以上更新している
- 1年以下の契約を繰り返している状態が1年を超えて継続している
- 1年を超える契約期間を設定している
予告から契約満了までの日数が30日に満たない場合は、解雇予告手当として不足日数分の平均賃金を支払う必要があるため注意しましょう。
雇い止めの理由は提示できるようにする
企業が有期雇用労働者の雇い止めをする際、労働者から理由の提示を求められたときは、理由を明示し、証明書を交付する必要があります。
合理的に認められる雇い止めの理由の例として、以下のようなものがあります。
- 前回の更新時に契約更新しないことが合意されていた
- 更新回数の上限に達した
- 担当していた業務が中止・終了となった
- 事業が縮小した
- 勤務態度に問題があった
- 違反行為が認められた
- 業務を遂行する能力が不足している
従業員の希望に応じて期間を長く設けるようにする
有期雇用契約の労働者に対して、企業は賃金や業務内容などの労働条件だけでなく、契約期間についても最大限に配慮しなければなりません。
労働契約法第17条において、一定の条件を満たす有期雇用労働者に対しては、可能な限り長い契約期間を設定することが義務づけられています。
労働者が希望したら、企業として最大限、契約期間を延ばすように努めましょう。
期間中の解雇(退職)は原則認められない
雇用契約の期間が定められている場合、原則として契約期間中の解雇や退職は認められません。ただし、やむを得ない事情があると判断される場合に限り、契約期間中であっても解雇できます。
第十七条 使用者は、期間の定めのある労働契約(以下この章において「有期労働契約」という。)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。
引用:『労働契約法 第17条』e-Gov法令検索
やむを得ない事情とは、天災や経済的事情によって雇用の継続が困難になったケースなどです。数回遅刻や欠勤を繰り返した程度では、解雇が無効となる可能性が高いといえるでしょう。
有期雇用契約においては、期間中は労働者側も退職できないことが原則です。しかし、労働基準法附則第137条により、契約期間の初日から1年を経過した日以後であれば、いつでも退職が可能となる例外規定が設けられています。
雇用契約・労働条件の絶対的明示事項について
労働基準法により、企業には雇用契約の締結時に労働条件を明示する義務があると定められています。
労働条件を明示しておかないと、契約内容があいまいになり、企業と従業員間のトラブルに発展してしまう恐れがあるためです。
明示しなければならない労働条件を絶対的明示事項、企業に独自のルールがある場合に明示すべき労働条件を相対的明示事項といいます。
雇用契約における絶対的明示事項は、以下の通りです。
- 雇用契約の期間
- 期間の定めがある場合の更新基準
- 就業場所
- 業務内容
- 始業時刻・終業時刻
- 休憩時間
- 時間外労働の有無
- 交代勤務制がある場合のルール
- 休暇・休日
- 賃金の計算方法や支払い方法
- 昇給に関する事項
- 退職に関する事項
また、パートやアルバイトなど短時間労働者との雇用契約締結の際には、以下の項目も明示する必要があります。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 相談窓口に関する事項
2024年4月より必須項目が追加に
2024年4月より、有期雇用労働者に対する労働条件明示についてのルールが変更されています。
明示のタイミング | 追加される明示事項 |
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すべての雇用契約の締結時と有期雇用契約の更新時 | 就業場所・業務の変更の範囲 |
有期雇用契約の締結時と更新時 | 更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容 |
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時 | ・無期転換申込機会 ・無期転換後の労働条件 |
上記3点が新たに必須項目とされた点を理解し、手続きの際は注意しましょう。
参照:『労働基準法施行規則及び労働時間等の設定の改善に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令等の公布等について』厚生労働省
参照:『2024年4月から労働条件明示のルールが変わります』厚生労働省
雇用契約の期間更新時は慎重に対応
契約期間に定めのある有期雇用契約は、原則として3年と定められています。ただし、専門的な知識や技能を持つ労働者や満60歳以上の労働者は、例外として上限が5年までと定められています。
有期雇用契約の期間に関するルールを正しく理解したうえで、契約締結時や更新時には従業員とよく話し合って慎重に対応しましょう。
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