健康診断に使える助成金とは? 2つの助成金と特徴、申請方法を解説!
従業員に健康診断を受診させるにはコストがかかりますが、助成金を利用すれば企業の負担を最小限に抑えられます。健康診断の重要性がますます認識されるなか、助成金を活用して従業員の健康管理に関する取り組みを強化していきましょう。本記事では、健康診断に使える2種類の助成金の概要や特徴、申請方法を詳しくご紹介します。
健康診断に助成金を使うことは可能?
結論からお伝えすると、健康診断に助成金を活用できます。健康診断に利用できる助成金は次の2つです。
- 職場定着支援助成金
- キャリアアップ助成金
どちらの助成金も、職場環境や処遇を改善する目的の一環として健康診断の助成を行うもので、従業員の離職率の低下やキャリアアップの促進などが期待できます。
2023年4月時点、キャリアアップ助成金の『健康診断制度コース』は実質廃止、そして職場定着支援助成金制度は申請受付を休止しており、事実上健康診断に特化した助成金制度は存在しません。しかし、近い将来に職場定着支援助成金の申請がスタートする可能性もあるため、2つの助成金制度の概要や手続き方法を理解しておきましょう。
健康診断で使える2つの助成金
健康診断に助成金を活用することで、従業員の健康診断の費用を削減できるだけでなく、健康経営の一環として従業員の健康増進を促進できるでしょう。健康診断で利用できる2つの助成金について詳しく解説します。
職場定着支援助成金
職場定着支援助成金とは、雇用の安定をはかるために日本国政府が実施している助成金制度です。2018年4月1日より『人材確保等支援助成金』に統合されました。しかし、2022年4月1日より『人材確保等支援助成金』は整備計画の受付を休止しており、2023年4月時点でも引き続き休止中です。今後再開する可能性はあるため、定期的に厚生労働省の助成金情報を確認しましょう。
人材確保等支援助成金では、労働者の健康診断や健康相談の実施、健康増進施策の導入、職場環境の改善など労働者の健康を促進する取り組みを行った雇用主に対して、一定の条件を満たすことで助成金が支給されます。労働者の健康を維持・向上させ、長期間にわたって離職率を減らし安定した雇用を維持することを目的としています。
キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)
キャリアアップ助成金は、政府が実施する助成金制度で、複数のコースから成り立っているのが特徴です。2021年度まで存在していた『健康診断制度コース』では、企業が従業員の健康管理を目的として健康診断制度を導入・運営した場合にかかる費用が助成されていました。しかし、2022年度から実質廃止となったため、現在は助成金申請ができません。
職場定着支援助成金の特徴
職場定着支援助成金(現:人材確保等支援助成金)は、中小企業などが新規雇用者を採用した際や非正規雇用者を正規化した場合に受け取れる助成金です。職場定着支援助成金は、次の4つのコースで構成されています。
- 雇用管理制度助成コース
- 介護福祉機器助成コース
- 保育労働者雇用管理制度助成コース
- 介護労働者雇用管理制度助成コース
上記4つのコースのうち『雇用管理制度助成コース』にて健康診断に活用できる助成金が支給されます。
受給額の目安
健康保険の助成金を受給できる職場定着支援助成金の『雇用管理制度助成コース』の受給額をご紹介します。
制度導入助成 | 目標達成助成 | |
---|---|---|
評価・処遇制度 | 1制度につき10万円 | 57万円(生産性要件を満たした場合は72万円) |
研修制度 | ||
健康づくり制度 | ||
メンター制度 | ||
短時間正社員制度(保育事業主のみ) |
参考:『職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース・介護福祉機器助成コース・ 保育労働者雇用管理制度助成コース・介護労働者雇用管理制度助成コース)のご案内』厚生労働省
健康診断は、雇用管理制度助成コースの『健康づくり制度』を利用することで助成金の対象となります。助成金の受給額は、制度導入費用として10万円、そして目標達成した場合は1制度あたり最大72万円まで支給されます。導入した制度や達成状況、経費に応じて支給額が決定されるため、企業ごとに異なるのが特徴です。
支給対象になるための労働者の条件
職場定着支援助成金の支給対象となる労働者の条件は次の通りです。
職場定着支援助成金の受給対象 | |
---|---|
1 | 正社員であること |
2 | 雇⽤保険の被保険者であること |
3 | 社会保険の適用事業所に雇用されている場合、社会保険の被保険者であること |
4 | 実施する健康診断費用の半額以上を事業主が負担すること |
5 | 健康づくり制度について、その費用負担が労働協約または就業規則に明示されていること |
6 | 制度計画期間内に退職が予定されている者のみを対象としていないこと |
特に、正社員のみが対象となっている点に注意してください。非正規雇用の労働者は支給の対象外です。
支給対象になるための事業主の条件
職場定着支援助成金の受給対象事業者になるためには、次の条件を満たす必要があります。
職場定着支援助成金の受給対象事業者の条件 |
---|
健康診断にかかる費用のうち、半額以上を事業主が負担就業規則に健康診断の制度について明示 |
ただし職場定着支援助成金は、法定内の健康診断には利用できません。支給対象とされる健康診断の範囲は、限定されていることを理解しておきましょう。
職場定着支援助成金の申請方法
職場定着支援助成金の申請方法を詳しくご紹介します。
職場定着支援助成金の必要書類
職場定着支援助成金を利用して健康診断のための助成金を受給するには、以下の書類が必要です。
職場定着支援助成金の申請に必要な書類 | |
---|---|
1 | 『職場定着支援助成金(雇用管理制度管理制度助成コース)雇用管理制度整備計画(変更)書』(様式第a-1号) |
2 | 『導入する健康づくり制度の概要表』(様式第a-1第a-1号別紙3) |
3 | 『事業所確認票』(様式第a-2号) |
4 | 現行の労働協約または就業規則 |
5 | 雇用保険一般被保険者の離職状況がわかる書類 (対象事業所における計画時離職率の算出にかかる期間) |
6 | その他管轄労働局長が必要と認める認める書類 |
参考:『職場定着支援助成金(雇用管理制度助成コース・介護福祉機器助成コース・ 保育労働者雇用管理制度助成コース・介護労働者雇用管理制度助成コース)のご案内』厚生労働省
職場定着支援助成金の利用の流れ
職場定着支援助成金の利用の流れは次の通りです。
- 雇用管理制度整備計画の作成・提出
- 認定を受けた雇用管理制度整備計画に基づく雇用管理制度の導入
- 雇用管理制度の実施
- 制度導入助成の支給申請 (計画期間終了後2か月以内)
- 目標達成助成の支給申請 (算定期間終了後2か月以内)
- 助成金の支給
スケジュールに余裕を持って、必要な段取りや手続きを行いましょう。
キャリアアップ助成金の特徴
キャリアアップ助成金の『健康診断制度コース』は、2021年度に『諸手当制度共通化コース』に統合されました。その後、2022年度に『諸手当制度共通化コース』が『賞与・退職金制度導入コース』へと変更されたことで、健康診断の助成は対象外となってしまったのです。しかし、どのような助成金制度だったかを知りたい方のために、キャリアアップ助成金制度の概要や助成金額を解説します。
最大48万円を受給できる
キャリアアップ助成金は要件を満たしている場合、最大48万円を受給できる制度です。受給額は、該当する企業の規模や生産性の向上が認められるかによって変動します。生産性が向上していると判断されるためには、次の2つの要件を満たす必要があります。
- 助成金を申請する直近の会計年度の生産性が、3年度前と比較して6%以上アップ
- 3年度前と比較して1%以上アップ(金融機関から一定の事業性評価を得ている場合)
キャリアアップ助成金の受給額 | ||
---|---|---|
企業規模 | 中小企業 | 大企業 |
支給額 | 38万円(48万円) | 28万5,000円(36万円) |
※()内は生産性向上が認められた場合
法定にかかわらない健康診断のみ受給できる
キャリアアップ助成金は、法定外の健康診断を受けさせることを目的としています。法定外健診は、実施することを企業に任せられた健康診断で、法定内健診以外のものです。
キャリアアップ助成金は、契約社員やパート、アルバイトなど正社員以外の従業員に、企業が導入する健康診断を受けさせる際に役立つ助成金制度です。
支給対象になるための労働者の条件
キャリアアップ助成金で健康診断の助成を受けるためには、次の4つの条件があります。
支給対象条件 | |
---|---|
1 | 有期契約労働者であること |
2 | 雇用時の健康診断・人間ドックを受診する日に、申請事業主の事業所において雇用保険被保険者であること |
3 | 助成金の支給申請日に離職していないこと |
4 | 事業主や取締役の3親等以内の親族ではないこと |
上記の条件を満たさない場合には支給対象とならないので、注意が必要です。
支給対象になるための事業者の条件
キャリアアップ助成金で支給対象になる事業主の条件として、次の7項目が設定されています。
支給対象となる事業主の条件 | |
---|---|
1 | 有期雇用者に対する健康診断制度などを就業規則に規定していること |
2 | 有期雇用者のべ4人以上に健康診断制度を実施していること |
3 | 規定した健康診断制度を定期的に実施していること |
4 | 実施した定期健康診断制度や雇入時健康診断制度の費用を全額負担すること |
5 | 実施した人間ドック制度の費用を半額以上負担すること |
6 | 健康診断制度が適用される従業員の要件を就業規則などに規定していること |
7 | 生産性要件を満たす申請を行う場合には要件を満たしていること |
上記の7つを満たさないと支給対象とならないため、注意しましょう。
キャリアアップ助成金の申請方法
キャリアアップ助成金の申請方法は次の通りです。
キャリアアップ助成金の必要書類
キャリアアップ助成金を申請する際に必要な書類は次の通りです。
- キャリアアップ助成金支給申請書
- 健康診断制度コース内訳
- 支給要件確認申立書
- 支払方法・受取人住所届
- キャリアアップ計画書の写し
- 健康診断制度.の規定前後の労働協約、または就業規則の写し
- 健康診断の実施が証明できる書類の写し
- 対象労働者の労働条件通知書または雇用契約書の写し
- 対象労働者の賃金台帳の写し
- 中小企業事業主であることを確認する書類
参考:『キャリアアップ助成金支給申請(健康診断制度コース)チェックリスト』厚生労働省
健康診断を実施したことを証明する書類の写しとは、健康診断を実施した期間の領収書や健康診断結果表などが該当します。
キャリアアップ助成金の流れ
キャリアアップ助成金の利用の流れは次の通りです。
- キャリアアップ計画の作成・提出
- 就業規則または労働協約に健康診断制度を規定する
- 健康診断などの実施(4人以上に実施)
- 助成金の支給申請
- 支給決定
キャリアアップ計画書の提出期限は、健康診断制度を規定する日までです。提出先は、管轄の労働局長と決められています。助成金の支給申請期限は、健康診断を行った日を含む月の、賃金を支払った日の翌日から2か月以内と定められています。
健康診断を対象とした助成金制度の今後の流れに注目(まとめ)
健康診断を対象とした2つの助成金制度をご紹介しました。職場定着支援助成金とキャリアアップ助成金はいずれも2023年4月時点は申請できない制度ですが、近い将来、申請受付の再開や代替の制度がスタートするかもしれません。今後の動向に注目していきましょう。
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