テレワークで活用できる助成金とは? 種類や導入が推進されている理由も解説!
働き方改革の一環として、テレワークの導入や促進を検討している企業も少なくないでしょう。国や多くの自治体でテレワークに関するさまざまな助成金制度を導入していますが、どの助成金制度を選べばよいかと悩んでいる企業も多いはずです。本記事では、テレワークに活用できる助成金や補助金制度について詳しくご紹介します。
テレワークで活用できる助成金とは
リモートワークと同様の意味で用いられるテレワークとは、従業員が自宅やカフェ、シェアスペースなどのオフィス以外の場所で、ICTを活用しながら業務を行う働き方のことです。リモート環境で業務を遂行するスタイルであり、オフィスへの通勤が不要なため、時間や場所に縛られずに働けます。テレワークとひと言でいってもさまざまな働き方があるため、導入する際はそれぞれの会社に合ったスタイルを用いることが重要です。
助成金におけるテレワークの定義とは?
一般的に、助成金制度におけるテレワークとは、在宅またはサテライトオフィスにおいてICTを活用し業務を行う働き方のことを指します。したがって、その条件を満たす次のような働き方がテレワークとして認められています。
- 在宅勤務
- サテライトオフィスワーク
- モバイルワーク
テレワークの助成金制度は、テレワークに取り組む中小企業事業主に対して、その実施に要した費用の一部を助成するものです。ただし、助成金におけるテレワークの定義は助成金の種類や国、地域によって異なるため、利用する助成金制度の条件などを事前に確認しましょう。
テレワークの助成金と補助金の違い
テレワークの助成金と同じような制度として、補助金制度があります。結論からいうと、両者の制度にもともとの意味の違いはありません。しかし、交付する官公庁によって名称が異なります。
制度 | 交付元 |
---|---|
助成金 | 厚生労働省や地方自治体 |
補助金 | 経済産業省や地方自治体 |
テレワークの助成金や補助金は、制度の要件を満たす企業や事業所が応募期間内に申請・受理された場合に受給できます。助成金・補助金は、いずれも原則として返済不要です。テレワークを導入する際は積極的に活用しましょう。
テレワークの助成金導入が推進されている理由
テレワークの助成金導入が推進されている背景を知ることで、補助金制度を利用するさまざまなメリットを理解できるはずです。
優秀な人材確保に役立つから
テレワークの導入により、場所や時間の制約を受けずに働ける環境を提供できるようになり、優秀な人材を確保しやすくなるでしょう。たとえば、これまで地理的な制約があって採用できなかった遠隔地に住む優秀な人材とも連携できます。年々労働人口が減少している日本において、今後ますます激化する人材獲得競争に対応するためのテレワークの導入は重要な課題です。テレワークの助成金を活用して、場所や時間にとらわれずに働ける柔軟な環境を整えていきましょう。
業務効率化をはかれるから
テレワークに適したITツールの導入によって、従業員はオフィスに出勤する必要がなくなり、自宅や外出先などで業務を行えます。通勤時間の削減や柔軟な働き方、円滑なコミュニケーションを実現でき、結果として業務効率が飛躍的に向上するでしょう。さらに、テレワークを推進すれば、従業員の通勤時間や移動コストだけでなく、オフィススペースの縮小や関連コストの削減も期待できます。このようにテレワークの助成金を活用する企業が増えることで、社会全体の生産性向上も見込まれるのです。
BCP対策に役立つから
テレワークは、自然災害や感染症などの緊急事態に備えたBCP(事業継続計画)の一つとして位置づけられています。BCP(事業継続計画)とは、企業や組織が運用を安定させ、災害などの緊急事態に遭遇しても事業を継続させていくための計画のことです。リモートワークの推進によって、従業員がオフィスに行かなくても業務を継続できるようになり、結果として自然災害や感染症などの発生時にもビジネスの停滞を最小限に抑えられると考えられています。助成金制度を利用すればテレワークの導入・促進がしやすくなるため、BCPの強化が期待できるでしょう。
ワークライフバランスの改善につながるから
テレワークの助成金導入が推進されている理由の一つは、ワークライフバランスの改善につながることです。従業員がオフィスに出勤せずに自宅や外出先で働けるテレワーク環境の整備によって、通勤時間の削減や柔軟な働き方を実現できます。従来の働き方よりも、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなるでしょう。テレワークの助成金を導入し、従業員にとって働きやすい環境を整備できれば、結果として従業員のストレス低減や健康増進などワークライフバランスの改善に貢献できるのです。
テレワークの導入時に発生するコストとは?
テレワークの導入には、ITツールの導入費用をはじめオフィス環境の整備などさまざまな費用がかかります。また、導入コストだけでなく、ランニングコストも考慮することが重要です。テレワークの導入時に発生するコストの内訳は、以下の通りです。
内訳 | 単位 | 相場 |
---|---|---|
ITツールなどの導入費用 | 1ツールあたり | 初期費用:10~30万円 |
利用料:5~10万円(月額) | ||
インターネット費用 | 1人あたり | 3,000〜8,000円 |
業務で使用する機材 | パソコン1台あたり | 数万〜数十万円 |
消耗品費 | 1人あたり | 3,000〜15,000円 |
ITツールなどの導入費用
テレワークを実施するためには、コミュニケーションツールや業務管理ツールなどのITツールの導入、そして通信インフラの整備が必要です。たとえば、従業員がリモートワークをするために必要な機器やソフトウェアの導入、セキュリティ対策、さらにはライセンスの購入費用や導入にともなう設定・運用に必要な人員の給与費などがかかります。初期コストの大部分を占めるITツールなどの導入費ですが、テレワーク導入によって従業員の通勤コストやオフィススペースを削減できるため、長期的に見ると大幅なコスト削減につながるでしょう。
インターネット費用
テレワークの導入にともない、従業員の自宅でのインターネット接続費用が必要となります。オフィスワークと同等レベルの業務効率を維持するためには、自宅でのインターネット回線の増設や高速化が重要な課題です。また、セキュリティ対策としてVPN導入やセキュリティソフトの購入が必要なケースも考えられるでしょう。さらに、オフィスでの電話対応ができなくなることから、クラウドPBXなどの導入も検討しなければなりません。
業務で使用する機材
テレワークを実施するためには、従業員の作業環境を整備するための機材が必要です。たとえば、パソコンやモニター、プリンタなど業務で使用する機材の導入費用が発生します。特に、パソコン機器は、セキュリティ対策のためにも会社から貸与するのが望ましいでしょう。また、Web会議を行うためのマイクやカメラなどの周辺機器、オフィス用品や家具などの導入費用がかかる場合もあります。
消耗品費
テレワークを実施する際には、自宅での作業に必要な消耗品の費用も考慮しましょう。たとえば、文房具や紙類、インクなどの消耗品費、書類の印刷や郵送にともなう費用などが発生します。これらの消耗品にかかる費用は、企業として負担しなければなりません。消耗品費は個人の使用量によって変動するため、企業側が事前に見積もりを行う必要があります。
テレワーク導入に使える補助金
2023年4月時点で利用可能なテレワーク導入の補助金制度をご紹介します。
- IT導入補助金2023
- ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
IT導入補助金2023
IT導入補助金2023とは、中小企業・個人事業主などの業務効率化や売上アップをサポートするための補助金です。具体的には、業務効率化につながるようなITツールや機器、ソフトウェア、サービスの導入費用の一部を支援するものです。IT導入補助金2023には、大きく分けて次の3つの申請枠があります。
- 通常枠(A類型・B類型)
- デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)
- セキュリティ対策推進枠
参考:『IT導入補助金について』2023 一般社団法人 サービスデザイン推進協議会
ソフトウェアの購入費をはじめ、セキュリティ対策を推進するための経費、パソコンやタブレット、スキャナーなどのデジタル化を推進する機器の導入費用の一部が補助金の対象です。補助金の申請方法や対象となる費用については厳密に定められているため、事前に確認しましょう。
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金
ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、テレワーク導入に限らず、生産性向上への投資を支援する制度です。働き方改革や賃上げ、インボイスの導入など、中小企業が直面する制度変更に対応することを目的に、設備投資やIT化にかかる費用の一部が支援されます。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金には、大きく分けて次の5つの申請枠があります。
- 通常枠
- 回復型賃上げ・雇用拡大枠
- デジタル枠
- グリーン枠
- グローバル市場開拓枠
申請期限が設けられており、それぞれの枠で対象となる費用などは大きく異なるため、注意しましょう。
テレワーク導入に使える助成金
2023年4月時点でテレワーク導入時に利用可能な助成金をご紹介します。
- 人材確保等支援助成金(テレワークコース)
- テレワーク導入ハンズオン支援助成金
人材確保等支援助成金(テレワークコース)
人材確保等支援助成金(テレワークコース)は、企業がテレワークを導入したことで発生する人材育成費用や、テレワークに適した職場環境を整備するための費用などを支援する制度です。中小企業を中心に、人材教育やテレワーク環境整備にかかる費用の一部が補助されます。人材確保等支援助成金(テレワークコース)の受給額は以下の通りです。
助成内容 | 支給単位 | 支給額 | 上限(以下ABのうち、金額が低い方) |
---|---|---|---|
機器等導入助成 | 1企業あたり | 支給対象となる経費の30% | A.100万円(1企業あたり) |
B.20万円 (テレワーク実施対象労働者1人あたり) | |||
目標達成助成 | 1企業あたり | 支給対象となる経費の20% (賃金要件を満たすときは35%) | A.100万円(1企業あたり) |
B.20万円 (テレワーク実施対象労働者1人あたり) |
参考:『人材確保等支援助成金(テレワークコース)』厚生労働省
2023年度より、テレワークで使用する端末(PC、タブレット、スマートフォン)のレンタルやリース費用が助成対象に含まれるようになりました(対象となる経費は最大6か月分、合計77万円まで)。人材確保等支援助成金(テレワークコース)は受給額や受給対象が毎年変更されるため、厚生労働省の公式サイトで最新情報を確認しておくとよいでしょう。
テレワーク導入ハンズオン支援助成金
東京都が実施する助成金制度であるテレワーク導入ハンズオン支援助成金は、テレワーク導入に際して必要な手順を指導するサービスを受けられるのが特徴です。中小企業を中心に、ハンズオン支援にかかる費用の一部が助成されます。
テレワーク導入ハンズオン支援助成金で対象となる経費例 |
---|
テレワーク用機器の購入費 |
業務ソフトウェアなどの購入費 |
クラウドサービスやアプリケーションソフトの利用料 |
業務システムの導入費用 |
テレワーク導入ハンズオン支援助成金の上限額や助成率は以下の通りです。
事業者の規模 | 助成金の上限 | 助成率 |
---|---|---|
30人以上999人以下 | 250万円 | 1/2 |
2人以上30人未満(29人まで) | 150万円 | 2/3 |
参考:『テレワーク導入ハンズオン支援助成金(公益財団法人東京しごと財団実施事業)』東京都産業労働局
郵送または電子申請のいずれかの方法で申請可能です。デバイスの購入費用やソフトウェアの利用料も助成金の対象となりますので、この機会にテレワークに必要なデバイスを準備しましょう。
テレワークの助成金や補助金を賢く活用(まとめ)
多くの中小企業にとって大きな課題であるテレワーク導入ですが、さまざまな助成金や補助金制度を活用することで導入コストを大幅に削減できます。人材確保等支援助成金(テレワークコース)やテレワーク導入ハンズオン支援助成金などを利用すれば、テレワークの普及を促進し、労働環境の改善や生産性の向上をはかれるでしょう。助成金の種類や条件は常に変動するため、制度を利用する際は、各助成金の公式ウェブサイトや関係機関の情報を確認してください。
「One人事」は人事労務をワンストップで支えるクラウドサービスです。人事管理を効率化し、よりスムーズかつ効果的に人事業務を遂行できます。人事労務情報の集約からペーパーレス化、さらには電子申請や年末調整、マイナンバー管理など幅広い業務の効率化を助け、担当者の手間を大幅に軽減できるでしょう。費用や使用感などで気になることがありましたら、まずは当サイトよりお問い合わせください。
サービス紹介資料をはじめ、業務効率化のヒントとなるお役立ち資料も無料でダウンロード可能です。こちらもどうぞお気軽にお申し込みください。