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労務管理の年間スケジュールとは? 労務業務の注意点・業務効率を上げるポイントを解説

労務管理の年間スケジュールとは? 労務業務の注意点・業務効率を上げるポイントを解説

労務業務を効率的に行うため、やるべきことを模索している企業は多いです。まずは労務に関わる業務を洗い出し、年間のスケジュールを把握することから始めましょう。

本記事では、労務関連業務についての年間スケジュールや月間スケジュール、業務上の注意点などを解説します。労務業務を効率化するためのポイントも紹介しているので、参考にしてください。

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    労務の概要

    企業においての労務とは、従業員の雇用に必要な手続きや管理など、労働に付随して発生する業務全般を指します。

    具体的には従業員の給与計算や各種保険手続きを行い、従業員が働きやすい環境を整えることが労務の業務です。そのほかにも勤怠管理や健康診断の実施など、労務の業務は多岐に渡ります。

    労務の業務は3つに分けられる

    労務の業務は、大きく以下の3つに分けられます。

    • 毎月発生する定例業務
    • 毎年定期的に発生する業務
    • 不定期に発生する業務

    毎月発生する定例業務

    毎月発生する労務の定例業務には、従業員の給与計算や支払い、勤怠管理、社会保険料納付に関する業務などがあります。特に給与計算は誤りがあると従業員からの信用を失いかねないので、ミスがあってはならない作業です。

    また4〜7月、10月、12月は定例業務に加えて年間業務が発生するため、早めの準備を心がけて業務量などの調整を上手に行うようにしましょう。

    毎年定期的に発生する業務

    新入社員の保険手続きや賞与計算、年末調整など、毎年シーズンごとに発生する業務があります。特に3〜7月は重要な業務が重なり、毎年もっとも忙しくなる時期です。

    また4月に次いで入社や異動の多い10月は従業員対応で忙しくなり、12月は年末調整というビッグイベントがあります。年末調整は業務の量が多いため、11月頃から準備を始めるなど余裕を持って対応するとよいでしょう。

    不定期に発生する業務

    労務担当者は日常業務に加えて、不定期に発生する業務も担当しなければなりません。

    具体的には、従業員の身上異動(結婚・住所変更など)にともなう扶養手当や通勤手当の給与反映、産休・育休関係の手続き、傷病手当金、月額変更届出などです。そのほか、年に1回ストレスチェックや健康診断の実施、インフルエンザ予防接種、労災対応などの処理を行います。

    労務の年間スケジュール

    労務の業務を効率的かつ合理的に進めるには、年間のスケジュールから全体像を把握しておくことが大切です。

    4月

    • 新入社員の社会保険・雇用保険手続き
    • 新入社員の給与処理の準備
    • 昇格・降格にともなう給与改定
    • 1〜3月分の労働者死傷病報告の提出 など

    4月は新入社員の入社手続きや社会保険手続き、さらに既存社員の給与改定もある忙しい時期です。

    労働者死傷病報告とは、労働災害などにより4日未満の休業をした従業員がいた場合に、労働基準監督署に報告するためのものです。3か月ごとに集計して提出します。ただし、4日以上の休業をした従業員がいた場合には、労働基準監督署に遅滞なく提出しなければなりません。

    5月

    • 新入社員の社会保険料控除開始

    4月に入社した新入社員の場合、5月から社会保険控除が始まります。また新年度の4月から保険料率が変更になる場合もあり、在職者と退職者に新しい保険率を反映しなければなりません。

    特に4月末退職で当月予定払いの場合、3月と4月で保険料率が異なるので注意が必要です。保険料率の変更の有無とあわせて、退職者がいるか必ず確認しなければなりません。

    6月

    • 賞与計算・賞与支払届の作成
    • 住民税額の変更を給与に反映
    • 労働保険の年度更新申告書の提出 など

    賞与を支給したのちは社会保険手続きが必要になるため、賞与支給日から5日以内に賞与支払届を年金事務所に提出します。

    また、6月は新年度分の住民税の特別徴収(給与天引き)がスタートする月です。さらに労働保険の年度更新申告書を6月1日〜7月10日までの間に手続きし、届け出を完了させなければなりません。

    7月

    • 4〜6月の給与分の社会保険料の控除額の確認(定時決定)
    • 前年度分の労働保険料申告書の提出、労働保険料の納付(年度更新)
    • 算定基礎届提出
    • 高齢者・障害者雇用状況報告書の提出
    • 4〜6月分の労働者死傷病報告の提出 など

    年に1回、4〜6月の給与をもとに給与と社会保険料の控除額が乖離していないか見直します。これを「定時決定」といい、定時決定を行うために算定基礎届を作成し、管轄の年金事務所に提出します。

    また7月は前年度分の労働保険料申告書の提出と、労働保険料の納付(年度更新)がある月です。

    年度更新とは、前年度に支払った労働保険料の清算と同時に、新年度分の概算労働保険料を納付するための手続きをいいます。年度更新は毎年6月1日〜7月10日までに行わなければならず、手続きが遅れると追徴金が課せられるため注意しましょう。

    さらに7月は、高齢者・障害者雇用状況報告書の提出も行わなければなりません。これらは高齢者と障害者の雇用状況をハローワークに報告するもので、高齢者や障害者の方の就業機会の確保につなげることが目的です。

    8月

    • 7月月額変更届提出(社会保険料改定)

    7月の定時決定による社会保険料の控除額の見直しは、9月から反映されます。実際には10月の給与から控除されますが、給与計算のミスを防ぐため、9月から定時決定後の保険料率を反映させます。たとえば9月末日退社の場合、8月と9月では保険料率が変わることがあるため注意が必要です。

    10月

    • 最低賃金確認
    • 変更があった場合は厚生年金保険料の改定
    • 7〜9月分の労働者死傷病報告の提出 
    • 7月に算定基礎届を提出した従業員の社会保険料の改定 など

    例年9月頃に、地域別最低賃金の発表が行われます。時給制でアルバイト・パートを雇用している場合は、地域別最低賃金を下回っていないかの確認が必要です。

    最低賃金を下回る時給で雇っている場合、時給改定しないと最低賃金法によってその部分が無効となり、最低賃金と同様の定めをしたものと見なされます。

    11月

    • 被扶養者リストの確認と提出
    • 年末調整業務開始 など

    健康保険に加入している従業員に対して、被扶養者が被扶養者の条件を満たしているか確認し、リストを提出します。扶養から外れる従業員がいる場合は、被扶養者移動届を提出しましょう。

    また、従業員の人数が多い企業では11月から年末調整業務が始まります。年末調整の用紙の配布や、提出日の設定は早めにスタートしておくとよいでしょう。

    12月

    • 年末調整・源泉徴収票の作成と発行
    • 賞与計算・賞与支払届の作成 など

    12月からは本格的に年末調整業務が始まります。従業員が記入した書類に誤りがないかを確認し、給与総額から給与所得控除後の給与を算出して所得税の確定計算を行います。さらに、12月は年末調整業務と並行して賞与計算も行わなければならないため、労務担当者にとって繁忙期といえる月です。

    1月

    • 法定調書、給与支払報告書の提出
    • 再年末調整 など

    法定調書とは「所得税法」「相続税法」「租税特別措置法」「国外送金等調書法」によって、税務署へ提出が義務付けられている資料です。労務担当者は1月末までに法定調書を管轄の税務署に提出し、給与支払報告書を従業員が住んでいる市町村に提出しなければなりません。

    また12月の年末調整に誤りがあった場合は、1月に再年末調整を行います。

    2月

    • 雇用契約書更新準備

    年度単位(4月1日から3月31日まで)での雇用契約の場合、雇用契約書更新の準備を進めます。雇用契約更新時に労働条件の変更があれば従業員に伝え、契約更新の意思確認を行います。雇用契約更新は従業員の生活にもかかわってくるため、1か月ほど余裕を持って行うのが望ましいでしょう。

    3月

    • 退社手続き・退職者給与支払い・退職金の計算
    • 36協定の更新と届け出 など

    年度末を迎える3月は退職者も多く、退職に関する手続き業務が多くなります。

    また、36協定の期限を4月から翌年の3月までの期間としている場合は、3月に協定の更新と労働監督署へ届け出をしなければなりません。36協定とは「1日8時間・1週40時間以内」の法定労働時間を超えて労働させる場合や、休日労働させる場合に締結しなければならない協定です。

    労務の月間スケジュール

    毎月行われる業務は、従業員の給与や社会保険に関する業務が中心です。労務の月間スケジュールを見ていきましょう。

    • 毎月10日
    • 給与支給日前
    • 月末

    毎月10日

    毎月10日に発生する定例業務には、

    • 前月の給与から控除した源泉所得税の納付
    • 住民税の特別徴収

    があります。法令により源泉徴収した所得税と復興特別所得税は、原則として給与支給月の翌月10日までに国に納めなければなりません。ただし給与を支払う従業員の人数が常時10人未満の場合は、半年分まとめて納められる特例があります。

    給与支給日前

    給与支給日を目安にして従業員の基本給や勤怠状況、控除額などを確認しながら給与計算を行います。労務担当者は給与計算以外にも、給与明細作成から振り込み手続きまで滞りなく行わなければなりません。給与は従業員のモチベーションにつながるため、ミスがないよう業務を進めましょう。

    給与計算のスケジュール

    1. 勤怠の締め日に、タイムカードをもとに労働時間のチェックと集計を行う
    2. 勤怠情報をもとに基本給と時間外勤務手当を計算する
    3. 家族手当や通勤手当などの諸手当を加算し、給与の総支給額を算出する
    4. 社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険)と税金(所得税・住民税)の控除額を算出する
    5. 給与の総支給額から控除額を差し引き、手取り額を算出する

    月末

    給与から控除した社会保険料(健康保険・厚生年金保険)を、給与支給月の翌月末までに納付します。健康保険と厚生年金の保険料の徴収は、日本年金機構が行っています。

    労務担当者は毎月の給料から被保険者負担分の保険料を差し引いて、事業主負担分の保険料とあわせて翌月末までに納めなければなりません。

    労務担当者が注意したいポイント

    業務の中で法律や個人情報を扱うことの多い労務担当者が、業務において注意したいポイントをご紹介します。

    • 法改正に対応する
    • 安心して働ける環境をつくる
    • 情報の管理を徹底する

    法改正に対応する

    労働に関する法律は改正される頻度が高く、ほぼ毎年のように改正されています。労務担当者が扱う労働・社会保険関連の手続きは、制度変更や法改正の影響を大きく受けるため、最新の情報を取得しなければなりません。

    労務担当者は日頃から法改正に関する情報収集に努め、早めに対応しておくことが重要です。

    安心して働ける環境をつくる

    従業員の健康状態やストレス状況を把握することも、労務管理の重要な業務の一つです。年に1回の健康診断とストレスチェックを実施し、異常の有無に限らず従業員に通知する必要があります。

    また従業員が安心して働けるよう、残業時間の管理やハラスメント防止のための研修を実施することも労務の任務といえるでしょう。

    情報の管理を徹底する

    労務担当者は業務上、従業員の人事データやプライバシーに関する情報を扱います。そのため業務で知り得た情報について秘密を保持する姿勢を持ち、情報管理を徹底させることが重要です。

    最近ではペーパーレス化が進み、書面ではなくデータで情報を扱う機会が増えています。セキュリティ性を保持するため、セキュリティ機能が高いシステムを導入してもよいでしょう。

    労務を効率化するためにできること

    労務管理は年間を通して業務が多いため、業務の効率化は重要な課題です。労務業務を効率化するためにできることをご紹介します。

    • 業務フローを改善する
    • システムを導入する

    業務フローを改善する

    労務業務を効率化させるには、業務の現状を把握したうえで優先順位をつけることがポイントです。まずは業務の年間スケジュールを立てて、業務の全体像を把握しましょう。そこからフローチャートでプロセスを整理すると、業務を分担しやすく効率改善に効果的です。

    さらに業務の効率化をはかるなら、社会保険労務士などの専門家にアウトソーシングを検討してもよいでしょう。

    システムを導入する

    労務業務を正確に早く行える、労務管理システムの導入もおすすめです。労務管理システムとは、給与計算や社会保険料の計算など労務業務が行えるシステムです。労務業務を一部自動化できると労務担当者の負担が軽減し、業務の効率化が狙えるでしょう。

    また最近では申請や契約手続きなどがオンラインで完結できるようになり、システム上で従業員情報をデジタル化することが重要視されています。

    まとめ

    労務業務はほぼ毎年同じようなスケジュールで進んでいきますが、突発的な業務が加わることもあり業務数は膨大です。1年の半分は繁忙期のような状態にあるにもかかわらず、労務担当者は業務に必要な知識やスキルのアップデートも行わなければなりません。

    年間を通して業務の多い労務管理において、業務効率化は重要な課題といえます。労務業務の効率化をはかるには、まずは年間スケジュールから業務の全体像を把握しましょう。そのうえで必要に応じてアウトソーシングや、労務業務を一部自動化できるシステムを導入するのがおすすめです。

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