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残業させないのはハラスメント? 時短ハラスメント対策や残業の削減方法を解説

働き方改革の推進により、企業内で従業員に対して残業をさせないように指示するケースがあります。仕事量が多いにもかかわらず、残業をさせずに定時内に終わらせるよう圧力をかける行為を「時短ハラスメント」、略して「ジタハラ」といいます。ジタハラはハラスメントの一種です。
本記事では、残業をさせないハラスメントの概要や原因について詳しく解説します。また、時短ハラスメントを防止するために企業ができる対策もわかりやすく紹介します。

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    残業させないのはハラスメント?

    時短ハラスメントとは、職場において業務量の調整や働き方の見直しを行わずに労働時間の短縮を強要するハラスメント行為を意味します。

    最近はさまざまなハラスメントが存在しており、社会問題となっています。なかでも話題となっているのが、残業をさせないハラスメントを指す時短ハラスメントです。

    残業させないハラスメントは具体的には、次のような例が該当します。

    • 就業時間内に業務を終わらせるように圧力をかけ、業務が遂行できなければ叱責する
    • 定時内で終わるはずのない仕事量を押しつけ労働環境を整備しないにもかかわらず、決して残業をさせない
    • 残った仕事を終業後に自宅へ持ち帰らせて作業させ、労働時間には計上しない

    以上のように、時短ハラスメントとは、残業時間や業務量を削減するための具体的な対策をとらないまま、従業員に「残業するな」と強要する行為です。

    残業させないハラスメント行為が起こる3つの原因

    時短ハラスメントが起きてしまう理由として、働き方改革の推進や慢性的な労働力不足などが考えられます。3つの原因を取り上げて詳しく解説します。

    • 働き方改革推進による間違った対策が行われている
    • 労働時間と業務量のバランスが合っていない
    • 残業時間分を加味せずにスケジュールを作成している

    働き方改革推進による間違った対策が行われている

    近年、日本は少子高齢化による労働力人口の減少、育児や介護などと仕事の両立、さらには働く人たちのニーズの多様化といった状況に直面しています。

    そこで、生産性の向上や就業機会の拡大などの課題を解決するために、働き方改革の推進が始まりました。一人ひとりの労働者が多様な働き方を実現できるよう、2019年4月よりさまざまな関連法が施行されています。

    働き方改革の中で特に問題とされているのが、長時間労働です。改正された労働基準法では、定められた上限時間を超える残業が禁止されました。

    もちろん、正しい改善方法で残業規制に取り組んでいる企業もある一方で、具体的な対策をせずに業務時間のみを短縮している企業が存在することが、時短ハラスメントの一因といえます。

    労働時間と業務量のバランスが合っていない

    時短ハラスメントが起こる原因として、労働時間と業務量のバランスが合っていないケースが挙げられます。

    働き方改革の一環として残業規制をしたものの、業務量は従来のままという状況では、従業員の負担やストレスは増すばかりでしょう。これまでは残業で対応していた業務があった場合、定時に終わらせるために休憩時間を返上したり、自宅へ仕事を持ち帰ったりするケースも考えられます。

    また、親会社と子会社や受託先との間で業務の偏りがある場合も、労働時間と業務量のバランスがくずれてしまう典型的な事例といえるでしょう。

    残業時間分を加味せずにスケジュールを作成している

    残業が禁止された状態で、発注から納品までの日数に変化がない状況も、時短ハラスメントが起こる原因と考えられています。

    残業時間込みで作業時間を確保していた場合、残業が禁止されると、業務時間内に対応できなくなるのは当然の結果といえるでしょう。それでも上司が「業務量は変えない」「これまで通りのスケジュールで対応する」という考えでいることは、時間外労働を強要しているのと同義といえます。

    残業させないハラスメント行為による悪影響

    残業時間を規制する本来の目的は、労働者のワークライフバランスの改善や、柔軟な働き方の実現などにあります。業務量や労働環境を整備しないまま残業時間を削減しただけでは、根本的な問題は解決しません。

    時短ハラスメント行為の横行により、従業員や企業にどのような悪影響が及ぶのかを詳しく解説します。

    サービス残業や持ち帰り残業が常態化する

    時短ハラスメントにより定時に帰るよう強制されたとしても、従来と業務量が変わらない場合は、サービス残業や持ち帰り残業が常態化する恐れがあります。サービス残業や持ち帰り残業の時間は残業時間とみなされないため、従業員は事実上、無給の状態で働かなければなりません。

    ワークライフバランス改善のために導入されたはずの働き方改革への取り組みが、オフィスでの労働時間を短縮するのみで、従業員のプライベートの時間を削ってしまう恐れがあるのです。

    記録上は定時に退社しているように見せかけて、実際は残業を強制しているケースもあるかもしれません。このような行為は「みなし残業代」や「固定残業代」の不適切な運用につながる懸念があり、労働基準法違反となる恐れもあります。

    業務進捗状況の遅れや品質低下にともなって信用力が低下する

    労働時間を無理矢理短縮することで、業務に対する十分な時間を確保できず、納期の遅延や、品質低下の恐れがあります。限られた時間内で業務を完遂することが優先されてしまうと、従業員は仕事の質以上にスピードを重視し、「とにかく早く終わらせよう」と考えてしまいます。

    その結果、組織全体の生産性が大きく低下してしまう事態になりかねません。取引先からの信用失墜や、ブランド力の低下につながるリスクもあると覚えておきましょう。

    中間管理職の負担が増える

    業務の担当者である一般の従業員に残業させないように制限することで、責任のあるポジションにいる現場マネージャーや係長などの中間管理職の負担が増えてしまう恐れがあります。

    ほかの従業員の仕事をカバーしようと奮闘するあまり、心身の不調を招いてしまうケースも考えられるため、注意が必要です。

    業務の負担が増え、会社や上司に対して不満を持つ中間管理職が増えると、最悪の場合離職率が高まることも懸念されます。離職する社員が増えれば企業の労働力はますます減少し、さらなる離職を招きかねません。

    時短ハラスメントを防止するために企業ができる対策

    時短ハラスメントを防止するために、企業ができる対策について詳しく解説します。

    • 労働時間と業務量のバランスを見直す
    • 業務プロセスを見直す
    • クライアントと打ち合わせを重ねて共通理解を得る
    • 社員教育を通して時短ハラスメントについての意識改革をはかる
    • 企業内で相談窓口を設置する

    労働時間と業務量のバランスを見直す

    時短ハラスメントにならずに残業を規制して定時の帰宅を促す場合、労働時間と業務量のバランスを見直し、分業化や業務の調整を行う必要があります。

    企業が労働時間の短縮を強要しているにもかかわらず、業務量がそのままの状態では、労働力が不足して業務を遂行できなくなるでしょう。特定の従業員に業務負担が集中している場合は、業務量過多になっている原因や課題を洗い出し、業務の割り振りについても考え直さなければなりません。

    必要に応じて従業員の配置や人数を見直し、業務量に対して必要な労働力を確保するよう、柔軟な対応が求められます。

    業務プロセスを見直す

    時短ハラスメントにつながらないように効率を上げるために、業務プロセスの見直しも必要です。残業が発生している原因が、業務効率の悪さにあるケースもあります。

    それぞれの従業員だけでなく、部署やチーム単位で業務の内容と優先度を確認し、優先順位の高い業務に集中して時間をかけることを意識しましょう。

    また、業務効率を向上させるためには、業務のやり方をマニュアル化して、ITツールを積極的に活用するのも一案です。

    紙でまとめられた資料やマニュアルの電子化や、AIに任せられる業務の自動化などにより、業務時間の短縮につながります。

    業務効率化のためのITツールを導入する際はどうしても初期投資がかかりますが、長期的に見ると人件費の削減につながる可能性もあるため、前向きに検討しましょう。

    クライアントと打ち合わせを重ねて共通理解を得る

    時短ハラスメントの防止策として、クライアントと打ち合わせを重ねて共通理解を得ることも大切です。

    業務量が増えてしまう原因の一つに、クライアントが希望する納期や業務量をそのまま受け入れてしまっているケースが挙げられます。無理な納期を設定されたり、膨大な量の業務を引き受けたりすると、残業ありきでスケジュールを組まなければなりません。

    実際に業務に携わる従業員の立場からクライアントに交渉することは難しいため、管理職などが働きかける必要もあるでしょう。従業員の心身の健康や仕事の質を守るためにも、クライアントからの無理な提案を引き受けないようにすることも大切です。

    社員教育で時短ハラスメントについて意識改革をはかる

    時短ハラスメントを防止するためには、一般の従業員を管理するマネジメント層への教育が重要です。管理職のマネジメントスキルが備わっていないと、部下やチーム全体の業務を適切に管理できません。

    マネジメントスキルを高めるためには、研修会や勉強会を実施することをおすすめします。どのような行為がハラスメントに該当するかを提示し、注意喚起をするとともに、残業時間を削減するための取り組みについても会社全体で検討しましょう。

    また、上司と部下のコミュニケーションを活性化させることも大切です。上司が現場の状況を把握していれば、適正な業務量や人員配置の見直しの必要性を見極められるでしょう。

    企業内で相談窓口を設置する

    社内におけるハラスメント行為の実情を把握し、必要な対策を講じることも、時短ハラスメントの防止につながります。企業内に相談窓口を設置し、ハラスメント行為の改善に向けたサポートをしましょう。

    残業させないハラスメント対策は適切な勤怠管理から

    残業時間や人件費の削減という目的ばかりが先行してしまうと、時短ハラスメントが発生しやすくなります。業務量の調整や生産性向上につながる施策などが抜け落ちている状態では、従業員の負担は増えるばかりです。

    企業内での時短ハラスメントを回避するためには、業務の効率化や業務プロセスの見直しなどの具体的な対策を講じることが重要です。サービス残業や持ち帰り残業が常態化していないかを確認し、従業員の適切な勤怠管理を実施しましょう。

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