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令和6年(2024年)年末調整の変更点|ポイントをわかりやすく解説

令和6年(2024年)年末調整の変更点|ポイントをわかりやすく解説

令和6年度の年末調整では、いくつかの変更点があります。特に企業の年末調整担当者は、変更点を正しく理解しておかなければなりません。

本記事では、令和6年度の年末調整における主要な変更点を解説します。令和7年以降に予定や検討されている変更点についても紹介しますので、企業の年末調整担当者や給与所得者はぜひ参考にしてください。

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    令和6年度年末調整における変更点の概要

    令和6年度の年末調整に関する変更点として、概要は以下の通りです。

    • 定額減税
    • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の様式変更
    • 給与所得者の保険料控除申告書の様式変更
    • 国外居住親族への「送金関係書類」の提出書類範囲追加
    • 住宅ローン控除に関する手続き

    企業の担当者は特に上記の変更点を理解し、従業員への周知や対応を実施しましょう。

    令和6年度年末調整の変更点「定額減税」

    令和6年度の年末調整では、税制改正によって行われた「定額減税」について理解しておかなければなりません。

    特に年末調整の際に必要とされる「年調減税事務」の手順については、正しく把握しましょう。

    定額減税とは

    定額減税とは、令和6年分の所得税や個人住民税について、納税者および要件を満たす配偶者や扶養親族1人につき、所得税3万円、住民税1万円を控除するという内容です。

    定額減税のやり方

    定額減税の実施方法は、以下の通りです。

    所得税住民税
    扶養控除等申告書を提出している給与所得者において、源泉徴収税額から定額減税の金額を控除で、手続き方法は以下の2種類
    令和6年6月の給与支給時には住民税額を徴収(給与控除)せず、定額減税額を反映させたうえでの税額を、令和6年7月から令和7年5月まで毎月徴収する
    1.月次減税事務令和6年6月1日以降に支給する給与などについて、源泉徴収税額からその時点における定額減税額を控除する

    2.年調減税事務年末調整時に、その時点の定額減税額から清算する

    参照:『給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた』国税庁

    年末調整で必要な年調減税事務

    年調減税事務について解説します。まずは年調減税事務をする対象者は以下の通りです。

    • 令和6年12月31日時点で国内居住する者
    • 申告者の給与収入額が2,000万円以下
    • 扶養控除等申告書を提出し甲欄適用されている者

    申告者の給与収入額が2,000万円を超えている場合は、年末調整ではなく確定申告が必要となりますので注意しましょう。

    年調減税額の計算

    年調減税額は「同一生計配偶者」と「扶養親族」の人数によって異なり、同一生計配偶者および扶養親族が一人につき、30,000円の控除がされます。

    たとえば、配偶者と扶養親族が一人いる場合は、以下のように計算されます。

    30,000円(本人)+30,000円(同一生計配偶者)+30,000円(扶養親族1人分)=90,000円(年調減税額)

    年調所得税額の計算

    年調所得税額は、年末調整によって計算される所得税額を指しています。住宅ローン控除を受けている場合は控除後の金額を年調所得税額とします。年調所得税額を計算する際は、国税庁の「令和6年源泉徴収簿」を活用しましょう。

    参照:『令和6年給与所得に対する源泉徴収簿』国税庁

    年調減税額の控除

    年調減税額の控除を行う際は、年調所得税額から年調減税額を控除します。さらに、控除後の金額に102.1%を乗じ、復興特別所得税を含んだ年調年税額を算出します。年調年税額を算出したら、従来の年末調整における過不足金額を清算します。

    年調減税額の計算や控除をするときには、正しい情報にもとづく必要があります。国税庁の「年末調整計算シート」や「源泉徴収簿」を活用したり、ホームぺージや解説動画を確認したりするなどしてください。

    参照:『年末調整計算シート』国税庁
    参照:『定額減税に係る源泉徴収事務(動画)』国税庁

    令和6年度年末調整変更点「扶養控除等(異動)申告書」

    令和6年度の年末調整では「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について変更があり、簡略化されます。具体的な変更内容は、前年に申告した内容から変更がない場合「変更(異動)なし」という旨の記載のみで提出できるようになるという点です。このような内容の申告書を「簡易な申告書」といいます。

    企業側が「簡易な申告書」の提出を受ける場合、前年の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の内容を正しく把握する必要があります。また、企業の年末調整担当者は、従業員へ年末調整書類を配布する際、この変更点をわかりやすく周知するようにしましょう。

    参照:『簡易な扶養控除等申告書に関するFAQ(源泉所得税関係)』国税庁

    令和6年度年末調整変更点「保険料控除申告書」

    令和6年度の年末調整では「給与所得者の保険料控除申告書」について、記載内容の簡素化にともない、書類の様式が変更されます。具体的な内容は、以下の通りです。

    • 「社会保険料控除」について、申告者が配偶者や親族の負担すべき社会保険料を支払った際の申告者との続柄が記載不要
    • 「生命保険料控除」について、申告者と保険金等受取人との続柄が記載不要
    • 「地震保険料控除」について、保険料等の対象である家屋等に居住等する人と申告者との続柄が記載不要

    企業の担当者は、正式に確定した様式を確認し、年末調整時に従業員に周知するようにしましょう。

    令和6年度年末調整変更点「送金関係書類」

    令和6年度の年末調整では「送金関係書類」の提出についても変更されます。具体的な変更内容は「電子決済手段」による送金を証明する書類も追加された点です。

    この変更により、扶養親族に該当する送金をしている場合、以下の書類を提出する必要があります。

    • 金融機関が発行した書類(またはその写し)で、金融機関が行う為替取引によって申告者が国外居住親族に支払いしたことを証明できる書類
    • クレジットカード発行会社の書類(またはその写し)で、国外居住親族がそのクレジットカード(家族カード)を使用したことで、その金額分を申告者から受領したことを証明する書類
    • 電子決済手段等取引業者の書類(またはその写し)で、その電子決済手段によって申告者が国外居住親族に支払いしたことを証明する書類

    参照:『令和5年1月以後に 非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ 』国税庁

    国外居住親族の扶養について

    納税者が国外居住親族に関する扶養控除等を受ける場合、その親族にかかわる「親族関係書類」や「送金関係書類」の提出(または提示)が必要です。ただし、30歳以上70歳未満の国外居住親族については、以下の確認書類が必要であるため、注意しましょう。

    国外居住親族の状況必要書類
    留学生・親族関係書類
    ・送金関係書類
    ・留学ビザ等書類
    障害者・親族関係書類
    ・送金関係書類
    ・障がいの状態を確認できる書類(場合によって求められる)
    38万円以上の支払いを受けている者・親族関係書類
    ・38万円以上送金関係書類

    参照:『令和6年度(令和5年分)以降の国外居住親族に係る扶養控除等の適用について』船橋市

    令和6年度年末調整変更点「住宅ローン控除」手続き

    令和6年度年末調整では「住宅ローン控除」に関する手続きについても注意しておく必要があります。

    納税者が住宅ローン控除の適用を受ける場合は、金融機関が「調書方式」に対応しているのか「証明書方式」のままであるのかを確認し、必要書類を提出します。

    現在は経過措置期間として、多くの金融機関が「証明書方式」のままと予想されていますが、どの金融機関がいつ調書方式への移行が完了するか事前に決まっているわけではありません。企業の担当者は、従業員に対し、住宅ローン控除を受ける場合は金融機関の正しい情報を確認し、手続きを行うよう周知をしましょう。

    参照:『年末残高調書を用いた方式(調書方式)に対応した金融機関の一覧』国税庁

    住宅ローン控除に関する令和4年度の税制改正

    納税者が住宅ローン控除を適用する場合、金融機関などから交付される年末残高に関する情報を提出しなければなりません。

    従来の住宅ローン控除では「証明書方式」が採用されていました。証明書方式は、納税者が金融機関から交付された年末残高証明書を提出する方法です。この方法が、令和4年度の税制改正によって「調書方式」に変更されました。

    調書方式は、金融機関が税務署に年末残高調書を提出し、税務当局がマイナポータルなどを通じて納税者に住宅ローンの年末残高情報を知らせる方式です。さらに、納税者が年末残高情報を書類に出力して提出します。ただし、システム改修などの対応が難しい金融機関等に対しては、経過措置として引き続き「証明書方式」を認めています。

    参照:『住宅ローン控除の適用に係る手続(年末残高調書を用いた方式)について』国税庁

    令和7年度以降の年末調整で予定されている変更点

    令和7年度以降の年末調整における変更点についてご紹介します。変更が確定しているものだけでなく、議論されているものも含めてご紹介しますので、企業の担当者は今後の動向を確認しましょう。

    住宅ローン控除に関する変更点

    令和7年度の年末調整では、住宅ローン控除額についても理解しておかなければなりません。給与所得者の場合、住宅ローン控除を受ける1年目は確定申告で行い、2年目以降は年末調整で行います。具体的な内容は以下の通りです。

    • 借入限度額の上限を縮小
    • 特例対象個人の住宅ローン控除拡充
    • 新築住宅床面積に関する要件緩和

    借入限度額の上限を縮小

    新築住宅などの場合、住宅ローン控除の借入限度上限額が以下のように縮小しています。

    新築住宅買取再販における住宅種類2022~2023年2024~2025年
    長期優良住宅・低炭素住宅5,000万円4,500万円
    ZEH水準省エネ住宅4,500万円3,500万円
    省エネ基準適合住宅4,000万円3,000万円
    その他の住宅3,000万円0円(2023年までに建築確認を受けた場合は上限2,000万円、期間は10年)

    控除率は一律0.7%、控除期間は13年です。また、所得要件は2,000万円以下としています。

    特例対象個人の住宅ローン控除拡充

    住宅ローン控除の対象となる借入上限額が縮小される一方で、特例対象個人については控除額の拡充が継続されます。

    対象者
    子育て特例対象個人(以下のいずれかに該当する者)
    ・自分の年齢が40歳未満で、かつ、配偶者を有する者
    ・自分の年齢が40歳以上で、かつ、40歳未満の配偶者を有する者
    ・年齢19歳未満の扶養親族を有する者
    住宅ローン控除拡充の内容
    ・認定住宅などの新築などをして居住の用に供した場合の、控除対象の借入限度上限額拡大
    ・控除期間は13年間(その他の住宅は10年)
    認定住宅4,500→5,000万円
    ZEH水準省エネ住宅3,500→4,500万円
    省エネ基準適用住宅3,000→4,000万円

    新築住宅床面積に関する要件緩和

    住宅ローン控除について、新築住宅の床面積要件の緩和については、令和5年12月31日までとされていましたが、令和6年12月31日までに建築確認を受ければ緩和措置の対象となります。具体的には、床面積が40平方メートル以上の新築住宅を取得する場合です。適用するための所得制限として、床面積40平方メートルから50平方メートルの場合、合計所得金額が1,000万円以下である点には注意しなければなりません。

    参照:『令和6年度住宅税制改正概要』国土交通省

    変更される可能性がある内容

    令和7年度以降の年末調整において、ほかにも変更される可能性がある点には以下のような点が挙げられます。

    概要具体策
    扶養控除の見直し2024年10月以降の児童手当拡充を受けて、高校生世代の扶養控除の縮小を検討

    ※教育費の負担をふまえ、特定扶養親族としての上乗せ部分(所得税25万円、住民税12万円)を復元する内容
    ひとり親控除の拡充ひとり親の自立支援の観点から、所得要件の緩和と控除額の引き上げを検討

    ※具体的には所得要件1,000万円以下、控除額を3万円引き上げの見直し案
    子育て世帯等の生命保険料控除の拡充子育て世帯への支援拡充として、生命保険料控除の拡充を検討

    ※具体的には23歳未満の扶養親族がいる場合には適用限度額に2万円上乗せする見直し案

    これらの変更については、結論が先送りされているため、今後も動向に注意しておきましょう。

    まとめ

    令和6年度の年末調整では、複数の変更点があります。まずは企業の年末調整担当者が変更点を正しく理解しなければなりません。

    企業側として正しく理解したうえで、納税者である従業員にわかりやすい周知や説明ができるよう、事前に準備をしておきましょう。