年末調整の世帯主はなぜ必要? 誰にする? 書き方や間違えた場合の変更方法を解説
年末調整とは、毎月の給与から源泉徴収した所得税と本来の所得税の差額を計算し、精算する手続きです。
年末調整の関連書類には「世帯主」を記入する欄が設けられているものがあります。しかし、世帯主とは誰を指すのか、正しい書き方や間違えた場合の変更方法など、疑問を持つ人もいるでしょう。
そこで本記事では、年末調整における世帯主の定義や必要性、正しい書き方や間違えた場合の対処法について詳しく解説します。続柄(つづきがら)の書き方も紹介しているので、従業員に質問されたときに備えて基本的な内容をおさらいしましょう。
年末調整における「世帯主」とは?
まずは年末調整の書類に出てくる「世帯」や「世帯主」という言葉の定義から解説します。
世帯とは家族の単位
世帯とは、居住や生計を一にする人たちを表す単位です。同じ家に住む家族であっても、生計を別々にしている場合は別世帯として扱われます。もちろん、独立して生計を立てている単身者も1つの世帯です。
世帯主とは世帯の中心にいる人
世帯主とは、世帯の中心にいる人物のことです。世帯主を規定する法律はありませんが、基本的にはその世帯の生計を主に担っている人を世帯主とします。
たとえば、父母のどちらか一方がフルタイムの正社員として働き、どちらか一方が家事・育児に専念している家庭なら、働いている人を世帯主とする場合が多いでしょう。
年末調整の世帯主は誰にすべき?
年末調整で従業員に提出してもらう書類の一つに『扶養控除等(異動)申告書』があります。申告書の世帯主の欄には、住民票に記載されている世帯主を記入します。
従業員から「世帯主が誰かわからない」と問い合わせを受けた場合は、住民票の写しを請求して確認するよう回答するとよいでしょう。
たとえば、従業員が実家暮らしでも、家族と生計を別にしている場合は本人が世帯主となります。反対に、従業員が一人暮らしをしていても、実家から住民票を移していない場合は家族の誰かが世帯主になっている可能性もあります。
いつの時点の世帯主?
年末調整における世帯主欄には、当年の12月31日時点での情報を記入します。
たとえば、年明け翌1月に引っ越しや入籍などで世帯主が変わる場合も、年内の時点での世帯主を記入してもらえば問題ありません。
年末調整における世帯主と続柄の書き方
続柄とは、ある人物を中心として見た場合の、家族間や親族間などの関係性のことです。
たとえば、父親を中心としたとき子どもの続柄は「子」、子どもを中心としたとき父親の続柄は「父」です。ポイントは誰を中心人物と考えるかです。
中心人物 | 中心人物との関係 | 続柄の書き方 | ||
---|---|---|---|---|
Aさん | → | 子ども | → | 子 |
Bさん | → | 父親 | → | 父 |
Cさん | → | 本人(=Cさん) | → | 本人 |
年末調整の申告書には世帯主だけでなく「あなたとの続柄」という欄もあります。「あなた」とは申告者=従業員本人のことなので、世帯主と従業員との関係性を記入してもらいます。
ここからは、以下のケースを例にとり、世帯主に書くべき名前と続柄の書き方を解説しましょう。
- 世帯主が自分(本人)の場合
- 実家暮らしの場合
- 実家暮らし(世帯分離)の場合
- 共働きの場合
- 同棲の場合
- 一人暮らし・独身の場合
- 別居・単身赴任の場合
世帯主が自分(本人)の場合
世帯主が自分(従業員自身)の場合、続柄の書き方に悩んでしまう人は少なくありません。
世帯主が従業員自身である場合は、世帯主には本人の氏名、続柄には「本人」と記入します。
実家暮らしの場合
実家暮らしの場合は、実家の住民票の世帯主が誰になっているかで判断します。
父母のいずれかが主に生計を担っている場合は、どちらかが世帯主になっている可能性が高いでしょう。住民票には世帯主を1人立てる決まりになっているので、収入が同程度であっても書類上はどちらか一方が世帯主に登録されています。
たとえば、父親が世帯主となっている場合は、世帯主には父親の氏名、続柄には「父」と記入します。
祖父母が世帯主になっているケースもあるため、まずは家族に世帯主が誰なのか聞いてもらい、わからない場合は住民票を確認するよう促すとよいでしょう。
実家暮らし(世帯分離)の場合
実家暮らしであっても、世帯分離をしている場合は従業員本人が世帯主となります。
世帯分離とは、同居をしていながらも家族間の世帯を分ける手続きです。世帯分離をすると居住は同じでも住民票は別となり、家族とは別の世帯として扱われます。
共働きの場合
結婚していて共働きの場合も、基本的な考え方は変わりません。
年末調整の手続きにおける「世帯主」は「住民票上の世帯主」を記入するものなので、住民票で夫婦のどちらが世帯主になっているかで判断します。夫婦の場合は夫を世帯主とするケースが多いとされていますが、妻が世帯主となるケースもあります。
たとえば夫を世帯主としている場合、従業員自身が夫の立場なら世帯主には自分の氏名、続柄には「本人」と記入してもらいます。一方、従業員が妻の立場なら世帯主は夫の氏名、続柄には「夫」と記入してもらいましょう。
同棲の場合
恋人と同棲している場合も、住民票の世帯主が誰になっているかで判断します。それぞれが仕事をして収入を得ているなら、それぞれを別の世帯として、2人とも世帯主になっているケースが多いでしょう。
2人が世帯主の場合は、一人暮らしの場合と同様に、世帯主に従業員自身の氏名を、続柄には「本人」と記入してもらいます。
なお、結婚を前提とした同棲では、一緒に暮らし始める段階でどちらか一方を世帯主にする場合もあります。
一人暮らし・独身の場合
一人暮らしや独身の場合は、もともとの住所から住民票を移しているかどうかで世帯主が変わります。
住民票を移している場合は、従業員本人が世帯主となるので、世帯主には従業員の氏名、続柄には「本人」と記入してもらいましょう。一方、住民票を移していない場合は、もともとの住所の世帯主と、従業員自身との続柄を記入してもらいます。
たとえば、実家から住民票を移していない場合は、実家の住民票の世帯主が誰かで判断します。
別居・単身赴任の場合
結婚していても夫婦で別居している場合や、単身赴任で家族と離れて暮らしている場合は、住民票を移しているかどうかで世帯主が変わることがあります。
たとえば、夫を世帯主とする世帯で妻(従業員)が単身赴任することになった場合、従業員の住民票を赴任先へ移動すると世帯が別々になります。従業員が単身で世帯主となるので、世帯主には従業員自身の氏名、続柄には「本人」と記入してもらいましょう。
一方、夫婦別々に暮らしている場合でも、住民票を移していなければ世帯主は変わりません。
年末調整の世帯主はなぜ必要?
年末調整において世帯主の情報は、主に家族構成や扶養関係を明らかにするために用いられます。
年末調整で適用される控除には「配偶者控除」や「扶養控除」など家族にかかわるものが多くあります。そのため、各種控除を適切に適用するための情報として、世帯主の氏名が重要になることがあるのです。
世帯主情報が年末調整に与える影響とは?
世帯主の情報そのものが、年末調整の手続きに影響を及ぼすことはほとんどありません。
年末調整の手続きでは「従業員に配偶者や扶養親族はいるのか」「それぞれどの程度の収入があるのか」といった点が重要なのであって「誰が世帯主なのか」という情報は控除額の計算にあまり関係ないためです。
年末調整で世帯主情報を間違えたらどうなる?
年末調整においては、世帯主の情報は手続きそのものに影響するというよりも、あくまで手続きを円滑かつ正確に進めるための助けとなるものといえるでしょう。そのため、従業員が世帯主を誤って記入してしまったとしても、すぐに問題になる可能性は低いといえます。
しかし、年末調整の手続きで集めた情報は、国や地方自治体に提出され、税金や保険料の計算に用いられます。その際、従業員が記入した世帯主の情報が使われることがあるため、やはり正しい情報を記入してもらうのが一番です。
年末調整の世帯主を間違えた場合の変更・訂正方法
世帯主の情報が間違っていても大きな問題になることはほとんどありませんが、やはり誤りに気づいたときには修正してもらうのが無難でしょう。
そこで従業員が世帯主の情報を間違えて記入した場合の訂正方法や、世帯主を変更するやり方を解説します。
間違えた場合
従業員が世帯主の情報を誤って記入してしまった場合は、次の手順で修正を依頼しましょう。
- 訂正箇所に二重線を引く
- 訂正箇所の近くに正しい情報を記入する
以前は訂正印が必要でしたが、不要になり、二重線のみで問題ありません。
世帯主の情報を含め、従業員に提出してもらった情報は、年末調整の期限である1月31日までであれば訂正することが可能です。
1月31日以降に訂正する場合は自分で確定申告をしてもらう必要があります。しかし世帯主情報は年末調整に直接的な影響は少ないです。期限を超えてしまったら、あえて訂正せず、そのままにしておくという方法もあります。
変更したい場合
年末調整書類の世帯主欄には、住民票に記載されている世帯主を記入します。
引っ越しや離婚、死亡などにより世帯主を変更したい場合は、まず各自治体の窓口で手続きを済ませなければなりません。
年末調整書類の収集を簡単にするには?
年末調整で提出してもらう書類には、世帯主の氏名と、従業員との続柄を記入する欄があります。
世帯主とは、居住と生計を一とするグループにおける代表者です。単身者も一つの世帯として扱われるため、従業員が経済的に独立して一人暮らしをしている場合は「世帯主=従業員本人」となります。
ただし、家族が別々に暮らしていても、住民票を移していない場合は同じ世帯として扱われます。年末調整における世帯主は、住民票に記載された世帯主の情報に基づくため、世帯主が誰かわからない場合は住民票を確認してもらうようにしましょう。
従業員から提出された書類は担当者が確認し、間違いがある場合は差し戻さなければなりません。紙の書類の収集・管理や確認作業は手間がかかるので、電子化して効率化することをおすすめします。
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