CDO(最高デジタル責任者)とは? DX推進に必要? CIOとの違いや役割、必要なスキルを解説

CDO(最高デジタル責任者)とは? DX推進に必要? CIOとの違いや役割、必要なスキルを解説

CDO(最高デジタル責任者)とは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を統括し、デジタル技術を駆使してビジネスの成長を推進する役職です。

DXは、働き方改革やレガシーシステムの問題を背景に、官民問わず、さまざまな企業や団体で進められています。そこで注目を高めているのが、CDOやCIO(最高情報責任者)という役職です。

本記事では、CDOとは何かについて、果たすべき役割と求められる能力、DXの推進になぜ必要かについて解説します。

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    CDO(最高デジタル責任者)とは

    CDOは「Chief Digital Officer」の頭文字を取った用語で、日本語では「最高デジタル責任者」と訳します。

    働き方改革や2025年の崖の問題を背景に、経済産業省のDXレポートの発表をきっかけに、多くの業界で耳にするようになりました。働き方改革の一環で、政府はMicrosoftTeamsやZoom、ChatGPTなどのツールを使用したDX化を推進しています。DX化の推進にともない、CDOも注目を集めています。

    日本国内でのCDO設置状況

    総務省の調査によると、日本のCDO設置率は5.0%であり、諸外国の平均的なCDO設置率は21%です。そのため日本のCDO設置率は、諸外国と比較して低いことがわかります。

    CDO設置率
    日本5.0%
    諸外国21.0%

    ChatGPTやBirdなどDX推進に重要なAIツールが普及している現状を考えると、今後、CDOを設置する企業はさらに増えると予想されます。

    参照:『平成30年版 情報通信白書』総務省

    CDOといわれるほかの役職

    CDOと訳される役職は、最高デジタル責任者のほかにもあります。頭文字が同じ「CDO」なので間違いやすいですが、以下の役職です。

    最高データ責任者(Chief Data Officer)

    最高データ責任者は、企業内でデータの管理と活用を担当する役職です。具体的には従業員の個人情報や貴社がお客さまに対して実施したアンケート結果の管理を担当します。新規事業の立ち上げやプロダクト開発・改善の際、それらのデータを使って、各部署の担当者に提言するケースもあります。

    最高デザイン責任者(Chief Design Officer)

    最高デザイン責任者は、企業のデザイン戦略を統括する役職であり、企業経営における司令塔のようなポジションです。最高データ責任者や役員と連携しながら、企業の経営方針、事業の運営方針を決めます。

    CDO(最高デジタル責任者)とCIO(最高情報責任者)の違い

    CDOは、情報管理の責任者と訳されるCIO(Chief Information Officer)ともよく似ています。

    CIO(最高情報責任者)の役割は、社内ネットワークやサーバの構築、保守点検です。さらに、情報システムの戦略的な計画や運用、セキュリティ管理なども担当します。

    一方でCDOの役割は、デジタルツールを活用したビジネス戦略の策定やデジタル変革の推進です。デジタル技術を駆使して時代に適応し、新しいビジネスチャンスの創出を目指します。

    CDOは、より戦略的な役割を担うのに対し、CIOは運用的な役割が強く、ITシステムの日々の管理や効率化、コスト削減に重点を置いているといえます。

    CDO(最高デジタル責任者)が必要とされる背景

    CDOが注目されるようになった背景として「3つの変化」が挙げられます。

    ビジネスモデルの変化

    近年、IoTや人工知能、ブロックチェーン、AR/VRなどの技術が急速に進化し、これらの技術を活用した新しいビジネスモデルやサービスが次々と登場しています。

    ビジネスの世界と業界の構造が変化しており、企業は新たな技術やツールを素早く取り入れ、自社のビジネスを進化させる必要が出てきました。変化のスピードに対応するため、デジタル戦略の策定が急務となっています。

    顧客の期待と経験の変化

    スマートフォンやSNSの普及、オンラインショッピングの成長など、デジタル技術の進化により、消費者の購買行動や期待が大きく変わってきました。現代は、24時間365日買い物できるのが当たり前の時代です。顧客ニーズに対応するため、デジタル戦略に比重を置く企業が増えています。

    労働環境の変化

    現代は政府による働き方改革が進められ、労働環境が変化しています。1990年代は「24時間戦えますか」というフレーズがテレビCMに使われるほど、長時間労働が一般化していましたが、現代においてその風潮はありません。

    現代では働き方改革の推進以降、限られた労働時間内で、より多くの業務を進めることが求められるようになりました。限られた労働時間の範囲内で業務を完了する手段として、政府や多くの企業がDX化を進めています。このような背景もCDOが必要とされるようになった背景といえます。

    CDO(最高デジタル責任者)に求められるスキル

    CDOはデジタル戦略の責任者として、以下のスキルが求められます。

    豊富なIT知識

    CDOには、最新のテクノロジーとデジタルトレンドについての広範な知識が求められます。広範囲な知識とは、クラウドコンピューティングやビッグデータ、人工知能、マシンラーニング、IoT(モノのインターネット)、ブロックチェーンなどです。

    豊富なIT知識を持つことで、CDOは新しいテクノロジーを効果的に評価し、ビジネス戦略に統合する方法を判断できます。また、技術的な課題やリスクを理解し、解決策を検討する能力も求められます。

    マネジメントスキル

    CDOはデジタル変革のリーダーであり、多様なチームを管理し、プロジェクトを成功に導く責任があります。効果的なリーダーシップとチームマネジメントスキルは、プロジェクトの目標を達成し、チームメンバーのモチベーションと生産性を高めるために不可欠です。

    CDOは戦略的思考を持ち、リソースを適切に配分してプロジェクトの進捗を監視し、適時に調整を行う能力が必要です。また、変革のプロセスにおいて、異なる部門のメンバーと連携するために、マネジメントスキルも求められます。

    コミュニケーション能力

    CDOは、テクノロジーとビジネスの橋渡し役として、技術的な内容を非技術的なステークホルダーや経営陣にわかりやすく説明する能力を持っている必要があります。

    優れたコミュニケーションスキルを持つことで、CDOはデジタル変革のビジョンと戦略を効果的に共有し、組織全体でのサポートと理解を得られるでしょう。

    また、異なる部門やチーム間の調整役として、協力とコラボレーションを促進する役割も果たします。さらに、CDOは外部の取引先や、提携を結ぶビジネスパートナー、顧客とコミュニケーションをはかり、関係を築き、デジタル変革の機会を最大化する能力も求められます。

    CDO(最高デジタル責任者)によるDX推進事例

    政府による働き方改革の推進を受け、官民を問わずさまざまな企業・自治体でDX化が進められています。

    出光興産株式会社

    昭和シェル石油との経営統合(2019年)を契機に、将来の脱炭素社会に向けて業態転換を本格的に進めていくことになり、DXを推進するデジタル変革室を2020年に設けました。

    • 従業員との共創(従業員の新しい働き方創造)
    • 顧客との共創(顧客に対する新たな価値提供)
    • ビジネスパートナーとの共創(企業間連携による新たな事業創出)

    の3本柱でDX化を進めていく方針を示しています。

    味の素株式会社

    味の素株式会社では、2019年にDX推進委員会およびDX推進部を立ち上げ、グローバル展開を開始しました。取り組み内容の一つに、全社員のデジタルスキル向上を目的とした「ビジネスDX人財育成プログラム」があります。

    DX化を推進するため「アミノサイエンスで人・社会・地球のWell-beingに貢献する」をパーパス(志)とし、社会価値と経済価値を両立させるASV経営を進化させ「志×熱×磨」を追求し「スピードアップ×スケールアップ」をはかることを目的としています。

    デジタル技術の持つスケーラビリティー(拡張性)やスピルオーバー(汎用性)、シナジー(結合による付加価値)を軸として企業全体のリテラシー向上の取り組みを実施しています。

    福島県磐梯町

    福島県磐梯町では、人口減少や高齢化といった地方自治体が抱える課題に対応するためにDX化を進めています。具体的には、クラウド技術を活用した行政サービスのオンライン化や、IoTデバイスを利用したインフラの遠隔監視やメンテナンスの効率化の実施です。

    「すべてがオンラインで完結する町役場」を目指しDX化を進めています。

    まとめ

    CDO(最高デジタル責任者)とは、企業のデジタル化戦略を主導し、DX技術を活用してビジネスの成長と変革を推進する役職です。

    日本での設置率は諸外国より低いですが、今後は増加することが予想されています。デジタルが身近になった現代において、CDOの肩書はなくともデジタル戦略に力を入れている企業は少なくないでしょう。

    ビジネス戦略を考えるときに不可欠なのが、お客さまのニーズに応えることであり、従業員の業務を削減することが求められます。そこで「データの活用」と味の素株式会社のような「社員のスキル底上げ」の両輪で、企業の運営方針や事業の方針を練ることが有効です。