ICTとは? 意味やIT、IOTとの違いなどをわかりやすく解説
ICT(Information and Communication Technology)は、現代社会に不可欠な情報通信技術です。しかし、ITやIoTなど類似の用語との違いがわかりにくく、意味や活用方法に戸惑う人もいます。
本記事では、ICTの意味や特徴、IT・IoTとの違いなどをわかりやすく解説します。
ICTとは?何の略?
ICT(Information and Communication Technology)とは、情報技術と通信技術を組み合わせた概念です。
具体的には、データの収集・処理・保存・伝達を可能にする技術やシステムを指します。情報を処理するだけでなく、ネットワークを通じた情報の共有や活用が特徴です。
ICTは教育、医療、ビジネス、公共サービスなど幅広い分野で活用され、私たちの生活に大きな影響を与えています。
ICTと似ている用語との違い
ICTと関連する3つの似た用語の意味と違いを解説します。
- IT
- IoT
- DX
IT
ITは「Information Technology」の略で、情報技術全般を指します。ITはデータの処理や管理を中心とした技術を指す一方、ICTは情報技術に加え、通信技術も含む広い概念です。
ICTには通信インフラやネットワーク技術も含まれるため、ITよりも範囲が広く意味が異なります。
IoT
IoTは「Internet of Things」の略で「モノのインターネット」とも呼ばれます。IoTは、インターネットに接続された物理的なデバイスが相互に通信し、データをやり取りする技術やシステムのことです。
具体例 |
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・スマートホームデバイス(スマート照明、スマートサーモスタットなど) ・産業用機械(センサーを搭載した製造装置など) |
具体例に挙げたデバイスは、インターネット経由でデータを送受信し、遠隔操作や自動制御を可能にします。
一方、ICTはより広範な情報通信技術全般を指す用語です。コンピューター、スマートフォン、ソフトウェア、通信ネットワークなど、情報処理や通信にかかわるあらゆる技術が含まれます。
DX
DXとは「デジタル・トランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略です。デジタル技術を活用して、業務プロセスや製品・サービスを根本的に変革して、新たな価値を創造する取り組みです。
DXは、紙のデータを電子化する単純なデジタル化ではありません。デジタル技術を活用して、既存の業務の枠組みやサービスを抜本的に変える目的があります。
急速に進化するデジタル技術を背景に、企業や組織が競争優位を確立して、持続可能な成長を実現するために、DXは重要な役割を担っています。
ICTが必要な理由
ICTは、私たちの生活や仕事のあらゆる場面で欠かせない役割を果たしています。現代社会においてICTが必要とされる主な理由は以下の3点です。
- 就労可能な人口の減少
- リモートワークの普及
- 業務の成果と能率の改善
就労可能な人口の減少
日本では少子高齢化が進行し、働き手となる労働力人口が減少しています。人口減少に対処するために、業務の効率化とともに、労働生産性の向上が不可欠です。
ICTは、業務プロセスの自動化や最適化を通じて、少ない労働力でも高い成果を上げる支援をします。たとえば、AIやロボットの導入により、単純作業や反復作業が自動化され、従業員がコア業務に集中できるようになります。
効率的な働き方の実現により、労働生産性の向上が期待できるでしょう。
リモートワークの普及
リモートワークが普及する中で、自宅やコワーキングスペースなどオフィスにとらわれず、業務を進めるビジネスパーソンが増えています。
ICTは、ビデオ会議やクラウドストレージを通じて、地理的な制約を超えたコミュニケーション環境を提供します。
居住地に関係なく柔軟な働き方が実現し、ワークライフバランスや生産性の向上が期待できるでしょう。
業務の成果と能率の改善
ICTの活用で、業務プロセスが効率化され、作業の能率が改善します。データ分析ツールや業務管理システムの導入により、リアルタイムで業務の状況を把握し、迅速な意思決定が可能です。
たとえば、ERP(統合業務管理システム)の導入で、在庫管理や顧客管理、財務管理などを一元化し、業務全体の効率を高められます。
政府が推進するICT施策
政府は、ICT(情報通信技術)の活用を通じて、社会課題の解決や経済成長を促進するため、さまざまな施策を推進しています。政府が推進する主なICT施策を5つ取り上げて解説します。
- ふるさとテレワーク
- 地域情報化アドバイザー派遣制度
- 医療・介護分野での情報化推進
- 中小企業向け支援
- 安全なネットワーク環境の確保
ふるさとテレワーク
ふるさとテレワークは、都市部の企業が地方にサテライトオフィスを設置し、テレワークを推進するICT施策です。地方の雇用創出と経済活性化が期待されています。
企業は、地方の優れた人材を活用し、地方コミュニティの発展に貢献できます。地方のICTインフラ整備も進められ、地域間の格差を減らすことが狙いです。
地域情報化アドバイザー派遣制度
地域情報化アドバイザー派遣制度は、地域のICT導入や活用を支援する専門家を地方自治体や地域コミュニティに派遣する施策です。
地域のニーズに応じた具体的なアドバイスやサポートが提供され、ICTの導入がスムーズに進められます。地域全体のICTリテラシー向上や地域振興がはかられるでしょう。
医療・介護分野での情報化推進
医療・介護分野での情報化推進によって、電子カルテの普及や遠隔診療の導入が進みます。結果的に、医療サービスの質が向上して、診療効率が改善されるでしょう。
介護分野では、見守りシステムやケアプランの共有が進められ、高齢者や家族に対するサービスが充実します。
また、医療情報の一元管理やデータ分析によって、より質の高いケアが提供できます。
中小企業向け支援
中小企業向け支援施策は、ICTの導入を促進し、中小企業の競争力を高めることが目的です。
政府はIT導入補助金や専門家の派遣などを通じて、中小企業がICTを効果的に活用できるようサポートしています。
中小企業の生産性向上やコスト削減の実現により、経営の安定化を目指しています。
安全なネットワーク環境の確保
安全なネットワーク環境の確保は、サイバーセキュリティを強化して、情報漏えいやサイバー攻撃から保護する施策です。
政府は、セキュリティ対策の基準を策定し、企業や組織に対してセキュリティポリシーの整備や脅威への対応を促進しています。
具体的には、セキュリティ研修の実施や、セキュリティ対策の導入支援が行われています。
参照:『情報通信ネットワーク安全・信頼性基準等の概要』総務省
ICT活用のメリット
ICTの活用には、企業や組織にとって多くのメリットがあります。ICT活用のメリットは以下の通りです。
- 作業効率向上や生産力強化
- 情報の共有と組織力増強
- 顧客へのサービス品質の改善
作業効率向上や生産力の強化
ICTの活用で、業務の自動化が進み作業効率が向上します。少ないリソースでより多くの成果を上げることが可能で、生産性が向上します。
たとえば、在庫管理や生産計画を一元化することで、どの程度の生産が可能か、見通しが立てられます。
また、ICTを活用したデータ分析や予測モデルで、今まで以上に戦略的な意思決定が実行できるでしょう。
情報の共有と組織力増強
ICTは情報の共有を容易にして、組織全体のコミュニケーションを円滑にします。部門間の連携が強まり、組織全体の一体感や協力体制が強化できます。
リモートワーク環境でもリアルタイムで情報を共有できるため、従業員がどこにいても業務を進められるため、柔軟で効率的な働き方が可能です。
顧客へのサービス品質の改善
ICTの活用で、顧客対応の質を改善できます。たとえば、CRM(顧客関係管理)システムの導入により、顧客情報を一元管理し、個々の顧客に合わせてパーソナライズされたサービスの提供が可能です。
また、ICTを活用したチャットボットやオンラインサポートの導入により、迅速で効率的に顧客に対応でき、顧客満足度の向上に貢献するでしょう。
ICT活用のデメリット
ICTの活用には、企業や組織にとってデメリットもあります。ICT活用のデメリットは以下の通りです。
- ICTに慣れていない従業員へのサポートが必要
- セキュリティ上の脅威が拡大
- 導入時に費用が必須
ICTに慣れていない従業員へのサポートが必要
ICTを導入する際には、従業員が新しい技術に慣れるまでのサポートが必要です。特に、ICTに不慣れな従業員が多い場合、適切な教育やトレーニングが欠かせません。十分な準備がなければ、かえって混乱を招くおそれがあります。
新しいシステムやツールの使い方に慣れるまでは、時間やコストが発生します。導入初期の段階では期待した成果が得られないこともあるため、段階的な導入と従業員への継続的なサポート体制が必要です。
セキュリティ上の脅威が拡大
ICTの活用が進むと同時に、サイバーセキュリティのリスクも増大します。企業や組織が扱う情報量が増えるほど、サイバー攻撃の標的となる可能性は高まります。
ICTを導入する際は、セキュリティ対策を徹底して、適切な防御策を講じることが不可欠です。具体的には、データの暗号化や多要素認証の導入、セキュリティポリシーの整備により、万が一の被害を防ぐ必要があります。
導入時に費用が必須
ICTの導入には、システムやソフトウェアの導入、ハードウェアの整備、従業員トレーニングなど初期コストがかかります。
また、導入後もシステムの維持・運用には継続的な費用が必要です。
特に中小企業にとっては、コスト負担が課題となります。ICT導入に際しては、費用対効果を慎重に検討し、長期的な視点から投資計画を立てることが重要です。
まとめ
ICTはITにコミュニケーションの要素を加えた概念で、現代のデジタル社会では必要不可欠な技術です。ITがデータの処理を中心とするのに対し、ICTはネットワークを通じた情報の共有・活用に重きを置いています。
ICTの活用は、業務の効率化やコスト削減、顧客サービスの向上など、多くのメリットをもたらします。
技術を効果的に活用するには、企業の規模や業種に応じたICT戦略を立てることが重要です。ICT活用の結果として、企業は他社との競争力を強化でき、持続可能な成長を実現できるでしょう。