サービス業とは【職種一覧】種類と仕事内容、向いてる人や役立つスキルを解説

サービス業とは【職種一覧】種類と仕事内容、向いてる人や役立つスキルを解説

サービス業とは、顧客に対して直接的なサービスを提供し、目に見える製品の販売よりも顧客体験や満足度が重視されやすい業種です。サービス業と聞くと、飲食業や宿泊業などをイメージする人も多いかもしれませんが、それだけではありません。

本記事では、サービス業の種類や仕事内容、役立つスキルなどを紹介します。

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    サービス業とは

    サービス業は、顧客のニーズに合わせてサービスや経験、技術などを直接提供する産業分野です。

    たとえば、観光業では観光案内やツアーガイド、宿泊業では宿でのおもてなしや快適な滞在を提供します。これらの産業は、サービスの質が顧客の評価やリピートに直結するといわれています。

    またサービス業では、顧客に提供されるサービスに対して、対価が支払われることが一般的です。商品そのものの代金とは異なり、対価は得られた経験や便利さなどに基づいて満足度が変動します。

    近年は、顧客ニーズが多様化し、個々の好みや要望に合わせたサービスが求められる傾向にあります。これによりサービス業の範囲が広がり、新たなサービスや特定のニーズに特化したサービスが登場するようになりました。

    そもそもサービスとは

    そもそもサービスとは、ラテン語の「servitium」が語源で「奉仕」や「仕えること」を意味します。派生して現代では「人やスキルによって付加価値を提供するもの」という意味で使用されるようになりました。

    サービスには「IHIP」と呼ばれる4つの特徴的な要素があるとされています。これらの特徴について、詳しく見ていきましょう。

    I(Intangibility):無形性

    無形性とは、サービスが物理的な形を持たないという性質です。このため、サービスを事前に作って在庫として保管することはできません。この特徴は「非有形性」とも呼ばれ、有形の商品とは異なる独特の課題を生み出します。

    具体的には、目に見えないサービスの価値や質を顧客に効果的に伝えることが難しいという点です。この無形性は、サービス業における重要なマーケティング上の課題となっています。

    H(Heterogeneity):異質性

    異質性、または非均一性とは、同じ種類のサービスでも、提供者や状況によって品質にばらつきが生じる可能性があることを指します。

    たとえば、美容師の仕事ぶりは日によって変わる可能性があります。その日の調子や顧客の要望によって、仕上がりが異なることがあります。この不確実性は、サービス業における品質管理の難しさを示しています。

    I(Inseparability):生産と消費の同時性

    サービスの多くには、提供と消費が同時に行われるという特徴があります。これは「生産と消費の同時性」と呼ばれます。

    たとえば、学習塾での授業や鉄道による移動サービスなどがこれに該当します。この特性により、サービスの提供には常に人や場所が必要となり、これがサービス業特有の課題を生み出しています。

    P(Perishability):消滅性

    消滅性とは、サービスが提供された瞬間に消えてしまう性質を指します。つまり、サービスを保存して後日提供することは不可能です。

    製造業と比較するとよく理解できます。自動車製造業では、製品を保管して複数の顧客に提示できますが、ホテル業では未使用の客室は売上につながりません。この特性は、サービス業の効率的な運営において重要な課題となっています。

    接客業との違い

    サービス業というと、接客業を思い浮かべるかもしれませんが、接客業はサービス業には含まれるものの同義ではありません。

    接客業とは、主に直接顧客と接し、サービスを提供する業種です。飲食店や小売業、宿泊業、観光業などが含まれます。接客業は、サービス提供の一環として顧客に対面で奉仕する仕事が一般的でしょう。

    一方、サービス業には、接客以外にも教育や医療、ITサポートなどが含まれるため、接客業はサービス業の一部といえます。

    サービス業の分類と職種一覧・仕事内容

    総務省の分類によると、サービス業は以下の9つの種類があります。

    業種職種の例
    1情報通信業(情報サービス業)・通信事業者
    ・インターネットサービスプロバイダー
    ・情報サービスプロバイダー
    ・ITコンサルタント
    ・Webデザイナー
    ・Web開発者
    ・通信機器メーカー
    2学術研究/専門/技術サービス業・研究員
    ・弁護士
    ・会計士
    ・税理士
    ・研究開発サービス
    ・医療研究機関
    3生活関連サービス業/娯楽業・美容師
    ・マッサージセラピスト
    ・フィットネストレーナー
    ・ヨガインストラクター
    ・ミュージシャン
    ・ウェディングプランナー
    4医療/福祉医療/福祉・医師
    ・看護師
    ・薬剤師
    ・歯科医師
    ・歯科衛生士
    ・放射線技師
    ・理学療法士
    ・作業療法士
    5運輸業/郵便業
    (運輸に附帯するサービス業)
    ・トラックドライバー
    ・パイロット
    ・キャビンアテンダント
    ・船員
    ・鉄道の運転手
    ・バスドライバー
    ・配達員
    ・倉庫管理者
    ・タクシードライバー
    6宿泊業/飲食サービス業・ホテルマネージャー
    ・レセプショニスト
    ・シェフ
    ・ソムリエ
    ・バーテンダー
    ・バリスタ
    ・パティシエ
    7教育/学習支援業・小学校教師
    ・中学校教師
    ・高等学校教諭
    ・大学教授
    ・大学職員
    ・塾講師
    ・保育士
    8複合サービス事業・ショッピングモールスタッフ
    ・コンビニエンスストアマネージャー
    ・ショッピングアドバイザー
    ・カルチャースクール講師
    9その他・マーケティングサービス
    ・人材派遣サービス
    ・ペットケアスタッフ
    ・芸能マネージャー

    出典:『日本標準産業分類』総務省

    情報通信業(情報サービス業)

    情報通信業(情報サービス業)は、情報技術や通信技術を用いて情報の収集や処理、伝送を提供する業種です。携帯のキャリア事業者やインターネットサービスプロバイダーなどの職種が含まれます。

    また、情報通信に関するサービスを提供するシステム開発者やITコンサルタントなども情報サービス業の一種です。

    ・通信事業者
    ・インターネットサービスプロバイダー
    ・情報サービスプロバイダー
    ・ITコンサルタント
    ・ウェブデザイナー
    ・ウェブ開発者
    ・通信機器メーカー

    学術研究/専門/技術サービス業

    学術研究/専門/技術サービス業は、専門的な知識や技能を提供する業種です。大学や研究機関で研究活動や教育を行う職種や、税務や法務など専門的な知識や資格を活かしてサービスを提供する税理士事務所や法律事務所などが該当します。

    ・研究員
    ・弁護士
    ・会計士
    ・税理士
    ・研究開発サービス
    ・医療研究機関

    サービス業と聞いて、すぐに士業をイメージされる人は多くないでしょう。しかし、専門的な知識やスキルというサービスを提供するという意味で、サービス業に分類されています。

    生活関連サービス業/娯楽業

    生活関連サービス業および娯楽業は、日常生活や余暇活動に関連するさまざまなサービスを提供する業種です。美容室やクリーニング店、イベントプランナーなどが挙げられます。

    ・美容師
    ・クリーニング店
    ・マッサージセラピスト
    ・フィットネストレーナー
    ・ヨガインストラクター
    ・ミュージシャン
    ・ウェディングプランナー

    医療/福祉

    医療と福祉は、人々の健康と福祉に関連するさまざまなサービスを提供する業種です。病院や薬局、介護サービスなどが該当します。

    ・医師
    ・看護師
    ・薬剤師
    ・歯科医師
    ・歯科衛生士
    ・放射線技師
    ・理学療法士
    ・作業療法士

    運輸業/郵便業(運輸に附帯するサービス業)

    運輸業と郵便業は、物流や旅客サービスなどを提供する業種を指します。貨物の運送や倉庫管理などの物流業務や、バスやタクシー、航空機や列車の運行管理などの旅客運送業が含まれます。

    ・トラックドライバー
    ・パイロット
    ・キャビンアテンダント
    ・船の船員
    ・鉄道の運転手
    ・バスドライバー
    ・配達員・倉庫管理者
    ・タクシードライバー

    宿泊業/飲食サービス業

    宿泊業と飲食サービス業は、観光や旅行、日常生活において宿泊施設や飲食サービスを提供する業種です。ホテルや旅館、レストランなどが該当します。

    ・ホテルマネージャー
    ・レセプショニスト
    ・シェフ
    ・ソムリエ
    ・バーテンダー
    ・バリスタ
    ・パティシエ

    教育/学習支援業

    教育・学習支援業は、教育や学習に関連するさまざまなサービスを提供する業種です。

    幼稚園や小学校、中学校、高校、大学などの教育機関だけでなく、塾や予備校、職業訓練機関など、教育にかかわる幅広い職種が該当します。

    ・小学校教師
    ・中学校・高等学校教諭
    ・大学教授
    ・大学職員
    ・塾講師
    ・保育士

    複合サービス事業

    複合サービス事業は、異なる種類のサービスを統合的に提供する事業を指します。たとえば、アトラクションや飲食施設を組み合わせて提供するエンターテインメント複合事業や、授業だけでなく進学相談や模試対策、オンライン学習などを組み合わせて学習者にサポートを行う教育複合事業などがあります。

    ・複合型アミューズメント施設のスタッフ
    ・予備校講師
    ・複合型ショッピングモールのスタッフ

    サービス業(ほかに分類されないもの)

    特定の産業に明確に分類されないサービスを提供する業種です。人材派遣サービスや車の整備士、神社や大使館などの職員などが該当します。

    ・人材派遣サービス
    ・車の整備士
    ・ペットケアスタッフ
    ・神社や大使館の職員
    ・芸能マネージャー

    一般的に人材派遣業は、サービス業というイメージを持つ人は少ないでしょう。しかし、企業の人材ニーズに対して労働力や人的リソースを提供するという意味で、サービス業に分類されています。

    サービス業の特徴・やりがい

    多様な職種があるサービス業の特徴とやりがいを4つ取り上げて紹介します。

    • 未経験でもチャレンジしやすい
    • 人と接する機会がある
    • 成長を実感しやすい
    • 顧客に喜んでもらえる

    未経験でもチャレンジしやすい

    一般的に、サービス業は未経験から始めやすい職種の一つとされています。求人の募集が多く、人物重視の採用が行われることが多いためです。業種にもよりますが、顧客へのサービススキルは評価しにくく、コミュニケーション能力や顧客への接し方などが重視されるという特徴があります。

    人と接する機会がある

    サービス業は、ほかの業種と比較して人と接する機会が多いことが特徴です。顧客の反応を直接受け取れるのは、サービス業ならではのやりがいであり、幅広い視野や多様な価値観を学ぶきっかけとなります。

    結果としてコミュニケーション能力の向上が期待でき、将来的に異業種に転職したとしても役に立つスキルを身につけられる可能性があります。

    成長を実感しやすい

    サービス業で働く中で、努力が相手の期待を超えて好ましい評価を受けた場合は、自身の成長を実感できるでしょう。具体的な改善点を指摘された場合であっても、次の行動の指針となるはずです。

    サービス業の特徴は、個人のスキルがサービスの質に直結しやすく、顧客からフィードバックを受ける機会が多くあることです。フィードバックを通じて得られる反応によって、スキルの向上を実感し、モチベーションが維持されるため、やりがいを感じやすいといえるでしょう。

    顧客に喜んでもらえる

    サービス業のやりがいは、提供したサービスを通じて顧客を喜ばせられた瞬間にあります。感謝の言葉とともに相手の満足の表情を見られることで、大きな達成感を感じられるでしょう。職業への満足感や誇りを持てることは大きなやりがいの一つです。

    サービス業に向いている人・必要なスキル

    サービス業に向いている人や、サービス業に従事するうえで必要なスキルを5つ取り上げて解説します。

    • コミュニケーション能力が高い人
    • 顧客ニーズを捉える洞察力が高い人
    • 臨機応変な対応力が高い人
    • 複数のタスクを同時にこなせる人
    • 体力に自信がある人

    コミュニケーション能力が高い人

    サービス業では、顧客と接する機会が多いため、高いコミュニケーション能力が必要です。

    たとえば、販売員は顧客との自然な会話の流れの中で好みや要望を把握し、最適な商品を提案します。医療従事者も、ていねいな聞き取りにより、相手の状態や悩みに寄り添う姿勢が求められます。

    顧客ニーズを捉える洞察力が高い人

    サービス業では、顧客の実際のニーズを正確に理解する洞察力が重要です。顧客の本質的な要求や期待を見抜ける人は、ニーズに応じたサービス提供ができ、顧客との信頼関係を築くことができます。

    たとえば、レストランの従業員が顧客と接する中で好みやリクエストを把握できると、それに応じた提案やサービスを提供でき、顧客満足度の向上につながるでしょう。

    臨機応変な対応力が高い人

    臨機応変に状況に応じて振る舞える人は、予測不可能な状況や多様な顧客の要望に柔軟かつ迅速に対応できるため、サービス業で重宝されます。たとえば、ホテルのフロントデスクは予約の変更や顧客ごとに異なるリクエストへの対応が必要です。

    複数のタスクを同時にこなせる人

    サービス業は、さまざまな業務が同時に発生することが多いです。

    具体的には、レストランのサーバーやカスタマーサービス担当者が、同時に複数の要望に対応する場面が挙げられます。複数のタスクを同時にこなせる人は、業務を効率的に進められ、迅速かつ柔軟なサービスを提供できます。

    体力に自信がある人

    体力に自信がある人がサービス業に向いている理由は、一部の業種で長時間立ち続けたり、重いものを運搬したりする作業があるためです。

    たとえば、ホテルやレストランの従業員や宿泊施設の清掃作業における立ち仕事や荷物の運搬が挙げられます。体力に自信がある人は、そうでない人に比べて、任せられる業務の幅が広がるため重宝されるでしょう。

    サービス業に役立つ資格

    サービス業に就職するにあたって役立つ資格をご紹介します。

    • 販売士(リテールマーケティング)
    • 接客サービスマナー検定
    • 接客販売技能士
    • レストランサービス技能検定
    • JASPAセールスプロフェッショナル資格
    • ファッション販売能力検定
    • TOEIC

    販売士(リテールマーケティング)

    販売士(リテールマーケティング)は、商品やサービスを顧客に提案し、販売するスキルを評価する資格です。日本商工会議所・全国商工会連合会が運営しています。

    販売士の試験は商品知識や販売スキル、商品仕入れ、在庫管理、マーケティングなどに関する幅広い分野から出題されます。販売業務でキャリアを築くために受験することが一般的です。

    参考:『販売士 商工会議所の検定試験』日本商工会議所

    接客サービスマナー検定

    接客サービスマナー検定は、NPO法人日本サービスマナー協会が主催する顧客対応や接客スキルを評価し、高品質な接客サービススキルを証明する資格試験です。

    試験内容は、敬語や席順、電話応対などの基礎的なサービスマナーといった接客に関する幅広い分野を含みます。接客業務に従事するプロフェッショナルやサービス業界の従業員がスキルアップのために受験することが一般的です。

    参考:『接客サービスマナー検定』NPO法人日本サービスマナー協会

    接客販売技能士

    接客販売技能士は、日本百貨店協会が主催する、顧客との円滑なコミュニケーション能力や実践的な販売スキルを証明するための国家検定試験です。

    試験では商品知識や接客応対、販売テクニック、顧客対応能力などのスキルを評価します。試験にはレディースファッション販売やメンズファッション販売、ギフト販売の3科目があり、それぞれ学科試験と実技試験があります。

    参考:『接客販売技能検定』(一財)日本百貨店協会

    レストランサービス技能検定

    レストランサービス技能検定は、レストランのサービス技能や食事や飲み物に関して一定の知識があることを証明する国家検定試験です。1〜3級に分かれており、それぞれ学科試験と実技試験を受験する必要があります。

    参考:『技能検定』日本ホテル・レストランサービス技能協会
    参考:『令和5年度 技能検定 受験案内』厚生労働省

    JASPAセールスプロフェッショナル資格

    JASPAセールスプロフェッショナル資格は、一般社団法人日本プロフェッショナル販売協会が主催しています。販売員のセールススキルと販売に必要なコミュニケーション能力を証明する試験資格です。

    試験は1次試験と2次試験に分かれています。1次試験は筆記試験、2次試験はミステリーショッピング(覆面調査)方式での受験です。

    参考:『JASPA Sales Professional資格制度』(一財)日本プロフェッショナル販売員協会(JASPA)

    ファッション販売能力検定

    ファッション販売能力検定は、ファッション業界での販売スキルや専門知識を身につけていることを証明する資格です。ファッション商品に関する基礎知識や販売スキル、接客技術などが問われます。

    2級と3級は販売スタッフ向けの資格であり、1級は店舗運営に関する知識も問われるため、店舗マネジメントにかかわるマネージャー向けの資格といえます。

    参考:『ファッション販売能力検定』(一財)⽇本ファッション教育振興協会

    TOEIC

    TOEICは、国際的なビジネス環境での英語コミュニケーション能力を評価するための試験です。TOEICスコアは、企業や機関が従業員や求職者の英語スキルを評価する際に広く使用されています。

    TOEICの試験は、リスニングとリーディングの2つのセクションから構成されており、満点は990点です。

    参考:『TOEIC Program』(一財)国際ビジネスコミュニケーション協会

    サービス業の問題・課題

    サービス業には多くのやりがいがあるものの、さまざまな課題も指摘されています。主な課題を4つ紹介します。

    • 長時間労働の是正
    • 年次有給休暇の取得推進
    • 同一労働同一賃金への対応
    • 人手不足への対応

    長時間労働の是正

    サービス業の事業形態では、営業時間が長く設定されることが多く、個人の労働時間がほかの業種と比較して長くなる傾向があります。業種によっては需要の変動が激しく、自分のペースで仕事を進めることが難しいことも影響しているでしょう。

    たとえば観光業は、繁忙期と閑散期では業務量の差が大きく、飲食業でもランチや夜などの時間帯に来客が多く、人の波に働き方が左右されます。従業員は休憩のタイミングが取れず、長時間労働を余儀なくされる場合もあります。

    働き方やシフト体制を見直して、長時間労働を是正することが求められています。

    年次有給休暇の取得推進

    サービス業の中でも特に、宿泊・飲食サービス業の有休取得率は低いことで知られています。

    『令和5年就労条件総合調査』では、宿泊・飲食サービス業における労働者1人あたりの平均有休取得率は49.1%と発表されました。約5年前の32.5%に比べると大幅に改善していますが、全業種の中でもっとも低く、平均を大幅に下回っていることを考えると改善が望まれる課題といえます。

    長時間労働の問題とあわせて、働き方やその構造から見直しが求められるでしょう。

    参照:『令和5年就労条件総合調査の概況』厚生労働省
    参照:『平成30年就労条件総合調査の概況』厚生労働省

    同一労働同一賃金への対応

    サービス業の中でも、小売業や飲食・宿泊業で働く人は、非正規雇用の割合が高いことが厚生労働省でも明らかとなっています。

    2020年4月(中小企業では2021年4月)より施行された同一労働同一賃金の原則により、非正規雇用の待遇の改善が目指されることとなりました。

    同一労働同一賃金とは、正規雇用者と非正規雇用者間の間に不合理な待遇の格差をなくし、同じ業務をこなす従業員に同じ賃金を保証するという考え方です。

    サービス業の非正規従業員において、同一労働同一賃金に基づいた待遇の改善が求められています。

    参照:『就業形態別労働者割合』厚生労働省
    参照:『同一労働同一賃金 | 働き方改革特設サイト』厚生労働省 

    人手不足への対応

    サービス業の課題の多くは、人手不足が発端となっている場合があります。人を採用しても、労働時間が長時間であることや有給休暇を取得しづらい環境であることにより、人材の定着が進まないのです。

    厚生労働省の調査でも離職率の高さが指摘されており、全産業の離職率が15%に対して、宿泊業・飲食サービス業の離職率は26.8%と高い傾向にあります。

    昨今話題となっているAI接客ツールやセルフレジを導入して、業務効率化を進める必要があるでしょう。

    参照:『令和4年雇用動向調査結果の概況』厚生労働省

    サービス業の将来性・動向

    サービス業は変化の激しい業界でもあるため、将来性や今後の動向が注目されています。サービス業が今後どのように変容していくか予想されている未来について紹介します。

    • AIの台頭
    • IT・DX化
    • 外国人労働者

    AIの台頭

     AI技術の進化により、サービス業でも自動化が進んでいます。たとえば、顧客対応のチャットボットや予約管理システムなどが導入され、単純な作業や基本的な情報提供がAIによって行われるようになっています。

    また、AIはデータ解析にも活用され、顧客ニーズを予測し、それに基づいて将来的にサービスを提供できるようになるかもしれません。

    IT・DX化

    IT技術を積極的に活用することで、サービス業の業務プロセスが改善され、人手不足への取り組みが進んでいます。たとえば、セルフレジやタッチパネル式の注文端末の導入により、店頭での顧客対応に関連する業務が削減されつつあります。

    外国人労働者

    サービス業では日本国内の人材不足が懸念されているため、外国籍労働者の活用が将来的な課題解決の方法として模索されています。

    令和4年10月末現在の外国人雇用数は、約182万人と過去最高を記録しました。今後も労働力の確保とグローバル化への対応のため、外国人労働者数は増加傾向が続くと予測されています。

    参考:『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和4年10月末現在)』厚生労働省

    まとめ

    サービス業には士業から人材派遣事業まで多様な業種が含まれます。従事する人には、コミュニケーション能力や臨機応変な対応力、顧客ニーズを捉える洞察力などが求められます。

    サービス業の職種によっては専門性や技能力を証明する資格があると重宝されるため、業務内容に適したスキルを身につけるのもよいでしょう。

    サービス業のマネジメント層は、個人のスキルアップのための研修や知識を更新するための機会を定期的に設けるなど、一人ひとりのキャリア形成を支援することが重要です。人材の定着率を上げるためにも、社内の研修制度や職場環境を見直してみてはいかがでしょうか。