ボラティリティの意味とは? 高い・低い銘柄の特徴や計算方法を解説

ボラティリティの意味とは? 高い・低い銘柄の特徴や計算方法を解説

ボラティリティとは、価格の変動の度合いをあらわす言葉です。株式や債券など、金融商品の価格変動の大きさを示します。ボラティリティに関する理解を深めることは、投資でリスクとリターンを適切に管理し成功を収めるうえで重要です。

そこで本記事では、ボラティリティの言葉の意味や種類、具体的な活用方法などを解説します。ボラティリティを活用する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

 

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    ボラティリティとは?言葉の意味や定義を解説

    ボラティリティ(Volatility)は証券用語の一つで、価格変動の度合いを示す言葉です。「ボラティリティが高い」とは価格変動が大きいことをあらわし、「ボラティリティが低い」とは価格変動が小さいことをあらわします。

    金融商品の価格変動が大きければ、実際のリターンと期待収益率とのブレ幅が大きいことを意味します。

    一般にボラティリティが高い商品はリスクが高く、ボラティリティが低い商品はリスクが低いとみなされます。

    ボラティリティを活用するメリット

    ボラティリティが高い商品は、急騰と急落を繰り返す傾向があり、リスクが高いとされています。一方、ボラティリティが低い商品は、値動きの波が小さく、より安定的なリターンが見込まれます。

    ボラティリティの数値を見れば値動きを予測しやすくなり、そ銘柄が売買に適しているのか、どの程度の金額を投資すべきなのかを判断できます。つまり、ボラティリティを活用すれば、投資に成功する可能性を高められるのです。

    ボラティリティに関する説明では「高い(大きい)」「低い(小さい)」といった言葉が用いられ、実際に値動きの変動性をあらわす際には、パーセンテージで表現されます。

    ボラティリティが5%以上であれば、該当銘柄は高い変動率を示しているという判断が一般的です。。

    ボラティリティの種類

    ボラティリティは、「インプライドボラティリティ(IV)」と「ヒストリカルボラティリティ(HV)」の2種類に分けられます。

    投資ではどちらも重要な指標なので、それぞれの違いを把握しておきましょう。

    インプライドボラティリティ(IV)

    インプライドボラティリティとは、日本語では「予測変動率」を意味する言葉です。簡単に言い換えると、市場の将来予測を反映した「未来のボラティリティ」です。

    インプライドボラティリティは、オプション取引(※)で買い手が売り手に支払う「オプション価格」から逆算して計算されます。

    インプライドボラティリティは、オプション取引の価格形成に影響を与える重要なテクニカル指標です。投資では未来の予測がとても重要なため、投資家はインプライドボラティリティを重視する傾向があります。

    ※オプション取引:将来のあらかじめ定められた期日に、あらかじめ定められた価格で商品を「買う」または「売る」権利を売買する取引

    ヒストリカルボラティリティ(HV)

    ヒストリカルボラティリティとは、日本語で「歴史的変動率」とも呼び、過去の価格データを元に計算された指標です。過去のデータから予測された「現在のボラティリティ」を、一定期間のデータに基づき現在の価格変動のリスクを予測します。

    代表的な例では、日本経済新聞社が公表している『日経平均HV』があります。『日経平均HV』は、日経平均株価を対象としたヒストリカルボラティリティで、過去20日間の日経平均の日次変化率に基づき計算されたものです。

    ボラティリティが高い銘柄の特徴

    次のような銘柄は、ボラティリティが高くなりやすいと考えられます。

    • 高業績をプレスリリースしたばかりの銘柄
    • 市場の人気を集める小型成長株
    • 上場したばかりの銘柄

    ボラティリティが高い銘柄は価格の高低差が激しいため、売り・買いのタイミング次第では短期的に大きな収益を見込めるでしょう。

    一方で、購入や損切の判断を誤ると大きな損失にもつながりかねないため、ハイリスクハイリターンであるといえます。

    ボラティリティが低い銘柄の特徴

    次のような銘柄は、ボラティリティが低くなりやすいと考えられます。

    • 業績が安定している大型銘柄
    • 業績が景気に左右されにくいディフェンシブ銘柄

    (食品や医薬品、社会インフラなど)

    ボラティリティの低い銘柄は価格の変動が少なく安定しているため、大きな損失にはつながりにくく、中長期的な保有にも向いています。一方、価格の高低差が小さいため、大きな利益にもつながりにくく、ローリスクローリターンであるといえます。

    ボラティリティの計算方法

    ヒストリカルボラティリティは統計学の標準偏差「σ(シグマ)」に該当し、複雑な計算が必要です。

    また、インプライドボラティリティの計算には、オプションの理論価格を算出する『ブラック・ショールズ・モデル』が用いられます。

    どちらも専門知識がない人にとっては難解なので、本記事では「TR(トゥルー・レンジ)」と「TP(ティピカル・プライス)」を用いて、当日のボラティリティを計算する方法を紹介します。

    当日のボラティリティの計算式は、以下の通りです。

    当日のボラティリティ(%)=当日のTR/当日のTP×100

    TRには、以下の3つのうち、値が最大になるものを用います。

    1. 当日の高値-当日の安値
    2. 当日の高値-前日の終値
    3. 前日の終値-当日の安値

    TPとは、高値・安値・終値の3つの平均値です。

    数値をボラティリティの計算式にあてはめた結果、ボラティリティが5%以上になれば、一般的にその日は「ボラティリティが高い」と判断できます。

    ただし「5%以上」は一般的な基準です。市場や資産クラスによって異なる可能性があり、個々のトレーダーの判断によります。なお、株価が急騰した場合は、ボラティリティが10%以上にまで高まることもあります。

    ボラティリティの活用方法

    ボラティリティの具体的な活用方法は、以下の通りです。

    • 短期トレードの銘柄選び
    • 相場の変動予測
    • 中長期投資のリスク判断
    • 投資金額の決定

    それぞれの活用方法について、以下で詳しく解説します。

    短期トレードの銘柄選び

    ボラティリティは、短期トレードの銘柄選びの指標です。

    短期トレードとは、文字通り短期間で株式を売買し、利益を上げる投資手法です。たとえば、1日のうちに売買を完結させる「デイトレード」や、数秒で売買を完結させるのを1日に何度も繰り返す「スキャルピング」などが含まれます。

    ボラティリティが高い銘柄は、値動きの幅が大きいので短期トレードに適しています。反対に、ボラティリティが低い場合はトレードに大きな変化がないため、短期間では売買のタイミングを確認できない可能性が高いでしょう。

    相場の変動予測

    ボラティリティは、相場の変動予測にも役立ちます。

    たとえば、ヒストリカルボラティリティを確認し、低いボラティリティを維持していれば「相場として動きが少ない」「変動トレンドのエネルギーをためている時期だ」と判断ができます。

    動きが少ない傾向のある銘柄は、ブレイクアウト(※)後の変動幅が大きくなると予測されるため、投資チャンスをつかむための判断材料になるでしょう。

    ※ブレイクアウト:株価が過去の価格相場のレンジを突き抜けて、値上がり・値下がりすること

    中長期投資のリスク判断

    中長期投資では、ボラティリティが高いまたは低い銘柄ばかりだと、リスクとリターンのバランスが悪くなります。

    中長期投資を行う場合は、リスクとリターンの両面から考え、ボラティリティを基準の一つとして投資対象を選ぶことが大切です。たとえば、景気の悪化が懸念される場合は、ボラティリティが低い銘柄を選んでリスクを減らすやり方が考えられます。

    投資金額の決定

    資産運用のリスクを低減したい場合は、投資先を分散させることが重要です。ボラティリティを指標として、投資金額の配分を決定するとよいでしょう。

    ボラティリティが高い変動幅の大きな銘柄には少なめに、ボラティリティが低い安定的な銘柄には多めに投資すれば、リスクを極限まで低減できます。具体的には、投資金額を次のように配分するとよいとされています。

    ボラティリティが高い銘柄10%
    ボラティリティが低い銘柄60%
    現金保有30%

    ボラティリティを活用する際の注意点

    ボラティリティを活用する際は、以下の3つのポイントに注意しましょう。

    • 株価の方向の判断材料としては不十分である
    • 株価が低い銘柄はボラティリティが高くなる
    • 流動性リスクも考慮する

    それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。

    株価の方向の判断材料としては不十分である

    ボラティリティはあくまで指標の1つであり、ボラティリティだけで銘柄の株価の方向を見極めるのは困難です。

    ボラティリティを活用しつつ、ほかのテクニカル指標も活かし、それぞれの銘柄の深い分析が大切です。

    株価が低い銘柄はボラティリティが高くなる

    値動きの変動幅が同じでも、株価が安い銘柄はボラティリティが高くなります。ボラティリティの計算式における「TP」の違いが影響しているためです。

    たとえば値動きの変動幅(TR)が同じでも、分母にくるTPの値が100の場合と1,000の場合では、ボラティリティの数値に10倍もの差が生じてしまいます。

    特に、投資初心者は株価が安い銘柄を選びがちなので、知らないうちにリスクを許容していることがないよう注意が必要です。

    流動性リスクも考慮する

    ボラティリティは、市場の流動性と密接な関​​係があります。市場の流動性が高いと、売り手と買い手が多いことを意味します。すると、希望価格での取引が成立しやすくなり、ボラティリティは低くなります。

    一方、市場の流動性が低いと、売買の相手が見つかりづらくボラティリティは高くなります。

    以上のように、ボラティリティが高い銘柄は、流動性のリスクを負うケースもあるので注意が必要です。銘柄を選ぶ際は、流動性リスクも判断材料の一つとしましょう。

    ボラティリティは投資の判断材料の一つ

    ボラティリティとは、株式や債権などの価格変動の度合いを示す言葉です。ボラティリティが大きい商品は変動性が高いためハイリスクハイリターン、ボラティリティが小さい商品は変動性が低いためローリスクローリターンと判断できます。

    ただし、ボラティリティはあくまでも指標の一つなので、ほかの情報も含めて総合的に判断することが大切です。ボラティリティの数値を投資対象の選定や金額の配分決定などに有用な情報として上手に活用しましょう。