給与明細のペーパーレス化によるメリット・デメリット|同意が得られないときの対処法やシステムの選び方も解説
給与明細は紙で配布されるのが以前は主流でしたが、デジタル化が進んだ現代は、電子化による提供が一般的になりつつあります。
給与明細のペーパーレス化にはさまざまなメリットがある一方、デメリットや注意すべき点もあります。そのため、導入を検討する際は、十分に理解したうえで判断しなければなりません。
本記事では、給与明細のペーパーレス化によるメリット・デメリットを紹介し、同意が得られないときの対処法や給与計算システムの選び方についても解説します。給与明細のペーパーレス化を検討している企業の担当者は、参考にしてみてください。
給与明細のペーパーレス化とは
「給与明細のペーパーレス化」とは、給与の支払い時に発行する給与明細書を電子化し、電子メールや専用Webポータルなどを通じて従業員に交付することです。
給与明細を電子交付する方法には、以下の3点があります。
- 電子メールで送信する方法
- 社内のLANやWAN、インターネットを介して閲覧してもらう方法
- CD-ROMなどの記録媒体を用いて配布する方法
記録媒体を用いた方法は手間がかかるため、業務の効率化をはかるには、電子メールでの送信や社内ネットワーク・インターネットを通じた閲覧が便利でしょう。
給与明細のペーパーレス化は法律上問題ない
給与明細のペーパーレス化は、大半の法律で特段の問題は生じませんが、所得税法においては注意が必要です。
所得税法上、給与明細をペーパーレス化して交付する際は、従業員の同意が必須条件とされています。また、同意の事実を証明できるよう記録に残す必要があり、従業員から同意書を取得することが不可欠です。
従業員から同意が得られない場合、企業は引き続き紙の給与明細を交付しなければなりません。
ペーパーレス化が推進されている理由
給与明細のペーパーレス化が推進されている主な理由は、以下の4点です。
- DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進
- 働き方改革の推進やテレワークの普及
- 電子帳簿保存法の改正
- 環境保全の観点
近年、デジタル技術を活用して業務効率を向上させる取り組みである「DX(デジタルトランスフォーメーション)」を推進する企業が増えています。DXを進めるには、従来の紙を基本とする運用から脱却して、ペーパーレス化を進めることが不可欠です。
また、国を挙げての働き方改革の推進とテレワークの普及にともない、オフィスに出勤しなくても円滑に業務を進められる環境を整備する必要があります。加えて、2024年には電子帳簿保存法の改正が行われ、取引情報の電子保存化が必須とされました。
さらに、紙の原料である木材の使用は、地球環境の破壊につながると懸念されています。持続可能な社会の実現に向けて、ペーパーレス化は環境保全の観点からも意義があるでしょう。
近年のESG経営への関心の高まりを踏まえると、給与明細のペーパーレス化は企業として積極的に取り組むべき課題の一つといえます。
給与明細をペーパーレス化するメリット
給与明細をペーパーレス化することによる企業側のメリットは、以下の4点です。
- 業務を効率化できる
- 人的ミスが起こりにくい
- 給与データを管理しやすくなる
- セキュリティを強化できる
業務を効率化できる
紙での給与明細の場合、印刷や封入、郵送・配布といった業務が発生しますが、ペーパーレスにするとそのようなアナログ作業の工数削減が可能です。
特に、給与計算システムを導入すると、給与明細のペーパーレス化だけでなく、給与計算の自動化やシステムによっては勤怠管理との連携も実現できます。
人的ミスが起こりにくい
人の手による給与情報の管理や明細書の配布作業では、細心の注意を払っていてもミスが発生する可能性があります。給与データの転記ミスや配布先の間違いなどが起こると、従業員の信用低下につながりかねません。
しかし給与明細のペーパーレス化で、発行作業はもちろん、給与計算なども自動化することができます。これにより、人為的なミスが発生するリスクを大幅に減らせるでしょう。
給与データを管理しやすくなる
ペーパーレス化すると、給与データを管理しやすくなります。そのため、従業員から問い合わせがあった際などに過去データの検索が簡単にできます。管理負担が軽減できるのも大きなメリットといえるでしょう。
セキュリティを強化できる
給与明細のペーパーレス化では、従業員個人に対して安全に情報を配信できるようになり、書類の紛失や封入ミス、ずさんな管理などによる情報漏えいのリスクを大幅に低減できます。
また、電子交付の際に誤送信してしまった場合でも、従業員個人が設定したパスワードがなければ、サポート体制が充実している者が当該給与明細を閲覧できないという安全性の高さもメリットの一つです。
給与明細をペーパーレス化するデメリット
給与明細をペーパーレス化するデメリットとして、以下の2点が挙げられます。
- システムの導入にコストや手間がかかる
- セキュリティ対策が求められる
システムの導入にコストや手間がかかる
紙での発行には印刷代や作成作業などのコストがかかりますが、システム利用時にも一定のコストはかかります。従業員数が多い企業ほど費用がかかる傾向にあるでしょう。
特に、導入時には設定や用件定義などで工数がかかるため、サポートが厚いものや自社に合うシステムを探すことが重要です。毎月の作成作業や管理工数と比較して、費用対効果を試算することをおすすめします。
セキュリティ対策が求められる
オンライン上で給与明細を扱うペーパーレス化においては、紙よりも膨大なデータが流出する可能性が高いです。そのため、セキュリティ対策が万全なシステムの導入や従業員のセキュリティリテラシーを高める必要があるでしょう。
Web給与明細システムの選び方・確認したいこと
Web給与明細システムを導入する場合の選び方や事前に確認しておきたい点について紹介します。
- システムが苦手でも使いやすいか
- サポートが充実しているか
- セキュリティ対策が万全か
- コストが適正か
- ほかのシステムと連携できるか
システムが苦手でも使いやすいか
給与明細は、雇用されているすべての従業員に対して交付されるものであり、給与明細をシステムに移行した場合も同様です。電子化に対する同意にかかわる可能性もあることから、システムの使いやすさは重要な要素といえるでしょう。
マニュアルなどを参照しなくても、必要な情報に容易にアクセスできるような直感的な操作画面であるか確認することが大切です。
サポートが充実しているか
Web給与明細システムを導入する際は、開発元でなければ対処できない問題が生じる可能性を考慮しなければなりません。システム障害やトラブルが発生した場合の連絡先が明確に示されているか、サポート対応が迅速かつていねいであるかを確認しておきましょう。
特に、導入前(トライアルなど)からサポートしてくれるサービスがおすすめです。契約プランによってサポートの内容や範囲が異なることもあるため、十分に確認しておくとよいでしょう。
セキュリティ対策が万全か
クラウドを利用して給与明細データを管理する場合、セキュリティ対策が十分に施されたシステムを選択することが重要です。
具体的には、外部からの不正アクセスを防ぐための暗号化通信の採用や、内部からのアクセスを制御するためのID・パスワード認証、IPアドレスによるアクセス制限機能の有無などを確認する必要があります。
セキュリティ対策が適切に講じられているか否かは、給与明細データの安全性を左右する重要なポイントといえるでしょう。
コストが適正か
要件には合っていても、初期費用や月額費用が高すぎると使い続けにくかったり、経営層の理解を得られなかったりします。効率化に見合った費用なのかを確認し、コストが適正か検討する必要があります。さまざまなWeb給与明細システムと比較検討するとよいでしょう。
ほかのシステムと連携できるか
ほかのシステムと連携が可能か否かもWeb給与明細システムを選ぶ際のポイントの一つです。
給与明細の作成において、従業員一人ひとりの情報を手作業で入力するのは非常に手間がかかります。そのため、給与明細のペーパーレス化を検討する際は、ほかのシステムとの連携性を十分に確認することが重要です。
なお、従業員数が多かったり担当者が少なかったりする企業は、勤務データの集計から給与計算、Web明細発行まで一体型のシステムを選択することをおすすめします。
給与明細をペーパーレス化するまでの手順
給与明細をペーパーレス化するまでの手順は、以下の3ステップです。
- 従業員の同意を得る
- 給与明細をペーパーレス化するシステムを導入する
- システムから給与明細を送付する
1.従業員の同意を得る
給与明細のペーパーレス化には従業員の同意を得る必要があり、同意書の締結も求められます。同意書のやり取りは、紙の書類で行ってもよいですが、給与明細の電子化に対応したシステムの機能を活用することでも可能です。
同意書に記載する主な内容は以下の通りです。
- 電子交付書類
- 電子交付の方法
- 交付予定日
- 交付開始日
従業員から同意が得られない場合は引き続き、紙の給与明細を交付する必要があります。給与明細をペーパーレス化する目的やメリットについて、事前に従業員に十分な説明を行い、理解を得ることが重要です。
2.給与明細をペーパーレス化するシステムを導入する
従業員の同意が得られたら、給与明細をペーパーレス化するシステムを導入します。
Web給与明細システムは、管理担当者にとって使い勝手がよいだけでなく、従業員の視点に立って操作性の高いサービスを選ぶことが重要です。また、サポート体制が充実している会社を選択した方が安心でしょう。
導入にあたっては、給与明細に必要な情報が漏れなく含まれているか、電子化を実現するための要件が満たされているかといった点を入念にチェックしましょう。
3.システムから給与明細を送付する
適切な給与明細電子化システムの導入が完了したら、実際の運用を開始します。具体的には、電子化された給与明細を作成し、従業員に送付する流れです。
ペーパーレス化した給与明細の送付方法としては、メールでの送付やクラウド上へのアップロードなどがあります。従業員にとっての利便性やコスト削減、業務効率化の観点を踏まえ、自社の状況にもっとも適した方法を採用しましょう。
給与明細のペーパーレス化に従業員が同意しないときの対処法
給与明細のペーパーレス化について、特別な事情がない限り、多くの従業員は同意する傾向にあるでしょう。ただし、一部の従業員において同意が得られない可能性も否定できません。
同意が得られない場合の対処法を2点取り上げます。
- 個別にヒアリングの場を設ける
- システムの使い方や見方を説明する
個別にヒアリングの場を設ける
従業員が給与明細のペーパーレス化に反対した場合は、個別にヒアリングの場を設け、ペーパーレス化する理由を明確に伝えます。
また、紙での発行を希望する理由を聞いて解決策を検討することも大切です。違法ではないことやメリット・デメリットを提示するとよいでしょう。
システムの使い方や見方を説明する
給与明細のペーパーレス化に同意しない理由として、システムを利用することへの不安を持っている従業員もいるでしょう。そのため、誰でも使いやすいシステムを導入するのはもちろん、システムの使い方や見方をていねいに説明することも重要です。
それでも同意を得られない場合は、紙で配布する必要があります。
給与明細のペーパーレス化で業務効率化へ
給与明細のペーパーレス化とは、給与明細書を電子化し、オンライン上などで従業員に交付することです。従業員の同意を得られるのであれば法律上問題はありません。しかし、同意が得られない場合は、紙での発行もできるようにしておく必要があります。
業務の効率化やミス防止などのメリットがある一方、導入コストやセキュリティ対策の必要性といった課題もあり、給与計算担当者は両面について把握しておきましょう。
自社に適切なWeb給与明細システムの導入を検討する際は、本記事で紹介した選び方や導入手順をお役立てください。
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