賃金台帳とは? 記載項目や保存方法、注意点などをまとめて解説
企業に作成や保存が義務付けられている帳簿として「賃金台帳」があります。賃金台帳に記載する内容は、法律で細かく規定されているため、適切に把握しておくことが重要です。
本記事では、賃金台帳の基本的な概要について解説し、記載項目や保存方法、注意点などをご紹介します。賃金台帳の基本をあらためて確認したい人は、ぜひ参考にしてください。
賃金台帳の基本的概要
賃金台帳の基本的な概要や、給与明細との違いを解説します。
賃金台帳は従業員の給料や労働に関する内容が記載されている
賃金台帳とは、雇用している従業員の給与や労働に関する情報をルールに基づいてまとめた書類です。労働基準法で「法定三帳簿」の一つとして定められており、従業員を雇用しているのであれば、企業や個人事業主を問わず作成・保管する義務があります。
また、労働時間や給与など、複数の項目別で記載が求められます。
賃金台帳と給与明細の違いとは
賃金台帳に似ている書類に「給与明細」があります。これらには類似項目もありますが、原則として別物です。たとえば、給与明細は賃金台帳と異なり、保存義務がありません。
そのほか、給与明細だけ作成したとしても賃金台帳としては内容が不十分です。そのため、給与明細と賃金台帳はそれぞれ作成しなければならないことが多いでしょう。
賃金台帳の記載項目について
賃金台帳で記載が必要な8つの項目を取り上げて解説します。
1.従業員の氏名・性別
給与を支払ったすべての従業員の名前と性別を記載します。このとき、正社員だけでなく、日雇いなども含めた全員の記載が必須です。
書き方について明確な決まりはありませんが、最上部のわかりやすい位置に記載し、社員番号があればあわせて載せておくとよいでしょう。
2.賃金計算期間
「賃金計算期間」とは、給与計算の対象期間のことで、具体的には毎月の給与を計算する際の開始日から締め日を指します。企業は「毎月一定の期日に」「1か月に1回以上」給与を支払うことを要件に、賃金計算期間の自由な設定が可能です。
たとえば、月末締めの場合「2023年11月1日〜11月30日」のように記載します。ただし、日払い従業員については、記載する必要がありません。
3.労働日数
「労働日数」は、従業員が実際に勤務した日数です。賃金台帳に記載するのは、就業規則で規定する所定日数ではないことに注意が必要です。
また、年次有給休暇を取得した日も労働日数に含めます。年次有給休暇の取得日数をカッコで囲むなど、実労働日数と区別して表記するとわかりやすいでしょう。
4.労働時間数
労働日数だけではなく、労働時間数の記載も必要です。労働時間数には、時間外労働(残業時間)や休日労働の時間も含めます。労働時間数の項目は特に重点的にチェックされるため、正確な数字を記載しておかなければいけません。
5.時間外労働の時間数
法定労働時間を超えた場合の勤務時間を記載します。法定労働時間は1日8時間・週40時間までを指しますが、勤務形態や雇用契約によっては例外もあります。時間外と認められる時間がある場合は、優先して記入しましょう。
6.深夜および休日勤務の時間数
深夜や休日に勤務した場合の時間数を記載します。深夜労働時間は、22時から翌5時の時間帯で働いた時間です。
また、休日労働時間とは、法定休日に働いた時間を指します。ただし、一般の従業員と労働条件が異なる管理監督者などは、深夜に勤務した時間数のみの記載で問題ありません。
7.基本給・手当の種類とその額
基本給と各手当について項目ごとの記載が必要です。
まず、各種手当を含まない基本給の額を記載し、時間外割増賃金(残業手当)も記入します。加えて住宅手当や通勤手当、家族手当、役職手当、臨時手当、賞与などの種類と各金額を記載しましょう。
8.控除項目とその額
社会保険料や所得税、住民税など給与から控除された項目とそれぞれの金額を記載します。独自で控除している項目がある場合も記載が必要です。
賃金台帳の保存期間は?
賃金台帳はどのくらいの間保存すればいいのか、期間について解説します。
原則5年間
賃金台帳を保存しなければならない期間は、原則5年間です。従来は3年間とされていましたが、2020年4月1日に施行された改正労基法によって5年に延長されています。
経過措置により当面の間3年間
賃金台帳の保存期間には、法律の改正における経過措置があります。そのため、当分の間は3年間の保存で問題ありません。ただし、いつ経過措置が終了しても対応できるよう、環境を整備しておくとよいでしょう。
源泉徴収簿を兼ねるときは7年間
源泉徴収簿を兼ねるときは、7年間の保存期間が必要です。賃金台帳のみの場合と異なるため、注意しましょう。
賃金台帳の保存方法について
賃金台帳を保存する際の方法について解説します。
賃金台帳は紙媒体と電子媒体のどちらでも保存可能
賃金台帳は、紙媒体と電子媒体のどちらでも保存が可能です。そのため、企業の方針や環境にあわせた保存方法を選択することができます。
賃金台帳を電子媒体で保存する方法
賃金台帳を電子媒体で保存する際は、下記の所定条件を満たす必要があります。
- 画面への表示と印刷ができる
- 労働基準監督官の検査に対して即提出できる
- 故意の消去や書き換えがされていない
- 長期間の保存ができる
このように、すべての事業場において画面上に賃金台帳のデータを表示し、すぐに印刷できる状態でなければいけません。
賃金台帳の作成・保存時における注意点
賃金台帳の作成・保存をする際の主な注意点を取り上げて解説します。
事業場ごとに作成・保存が必要
賃金台帳は、事業場ごとに作成・保存が義務づけられています。事業場を複数持っている企業の場合、それぞれで賃金台帳の作成と保存が必要になるため、注意が必要です。
作成の対象者はすべての労働者
賃金台帳は、すべての労働者を対象に作成しなければいけません。正社員やパート・アルバイトのほか、日雇い労働者にも作成の必要があります。
また、管理監督者に対する報酬に関しても賃金台帳への記載が必要です。
賃金台帳に不備があると罰則の可能性もある
賃金台帳に不備があると、罰則を受ける可能性があります。賃金台帳にかかわる罰則について解説します。
作成・保管義務への違反は30万円以下の罰金
賃金台帳に関する違反があった場合、30万円以下の罰金が科せられます。
賃金台帳の作成時に「必要な項目をすべて満たしていない」「保存期間を守っていない」など、作成・保管義務の違反となるケースは複数あるため、注意が必要です。
まずは是正勧告が実施される
賃金台帳の違反に対しては、最初に是正勧告が実施されるのが基本です。是正勧告にしたがって改善すれば、罰則の対象とはなりません。そのため、是正勧告の段階で確実に対応することが重要です。
まとめ
賃金台帳は、従業員の給料や労働に関する内容が記載されている書類です。給与明細とは別物で、両方とも作成する必要があります。賃金台帳の記載項目は主に8つあり、それぞれ正確に記入しなくてはいけません。
また、保存期間は原則5年間で、経過措置により当面は3年間とされています。ただし、源泉徴収簿を兼ねる場合は7年間の保存が必要です。
賃金台帳は、紙媒体と電子媒体のどちらでも保存が可能です。電子媒体で保存するときは、画面をいつでも表示できたり印刷がすぐできたりという所定の条件を満たす必要があります。
もし不備があった場合は罰則を受ける可能性もありますが、是正勧告の段階で改善すれば問題ありません。事業場ごとの作成・保存が必要なことや、すべての労働者が作成の対象などの注意点を押さえておくとよいでしょう。
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