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年末調整を社労士に依頼することは違法なのか|税理士との違いや依頼できる内容を徹底解説

企業にとって年末調整は1年で重要な業務の一つです。従業員の数が増えてきた企業では、社外への依頼を検討する企業も多いでしょう。毎月の給与計算などを社労士に依頼している企業では、そのまま年末調整も依頼したいと思うケースもありますが、じつは違法になる可能性があります。

本記事では、年末調整を社労士に依頼する場合の違法性や、依頼してもよい内容、外部に依頼する際の注意点について解説します。年末調整を社労士に依頼するか検討している方は参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

年末調整を社労士に依頼することは違法なのか|税理士との違いや依頼できる内容を徹底解説
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    年末調整を社労士にしてもらうのは違法?

    年末調整と一口にいっても、作業は複数あります。内容によっては、社労士に依頼するのはNGです。社労士に依頼できる範囲と違法になるケースをご紹介します。

    • 税務関連の業務を社労士がすると違法になる
    • 給与や保険料の計算を依頼するのは問題ない

    税務関連の業務を社労士がすると違法になる

    年末調整とは、1年間で源泉徴収されていた所得税額と、1年間の実際の給与で計算し直した本来の所得税額を比較し、調整する作業です。税金に関連する業務であり、税理士の業務範囲です。したがって、年末調整を社労士に依頼すると、違反になる可能性があります。

    また、年末調整で必要な源泉徴収票は、所得税法によって義務づけられている書類であるため、そもそも税理士以外の人に作成の依頼はできません。

    たとえ毎月の給与計算などを社労士に依頼していたとしても、源泉徴収票の作成や所得税の計算などの税金に関連する業務を依頼するのは違法に該当します。

    給与や保険料の計算を依頼するのは問題ない

    年末調整には、1年間の従業員ごとの給与を正確に把握する業務が発生します。毎月の給与計算は、税務関連の業務には当たらず、独占業務でもないため、社労士に依頼しても問題ありません。

    実際、給与計算では従業員の勤怠状況を反映させることから、労務関係に強い社労士に依頼する企業も多いです。給与計算を社労士に依頼すると、従業員の長時間労働や残業代の未払いなどの労務に関する課題をみつけ、解決に導いてくれるでしょう。

    社労士と税理士は何が違う?

    社労士を一言でまとめると、労働法と社会保険の専門家です。一方で、税理士は、税金の専門家です。業務内容がまったく異なります。社労士と税理士の違いを詳しく解説します。

    社労士とは何のプロ?

    社労士とは、資格が必要な業務に当たれる士業の一つ。正しくは「社会保険労務士」 と呼びます。社労士に認められている独占業務は以下の通りです。

    労働社会保険諸法令に基づいた手続き申請書類の作成や、手続きの代行などを行う
    労働社会保険諸法令に基づいた帳簿作成労働者名簿や賃金規定、就業規則、退職金規定などを作成する
    社会保険などの書類作成書類作成および提出をする
    人事労務関連の相談人材採用や育成、労務管理などの企業運営をサポートする

    税理士とは何のプロ?

    税理士とは、税金に関する専門家です。税理士も士業の一つで、以下の業務を独占業務として認められています。

    税務申告などの代理個人事業主や企業に代わって、税務申告や届出書の提出を請け負う。
    税務調査があった場合には、代理陳述も可能
    税務書類の作成税務関連の申請書や申告書などを代理で作成する
    税務関連の相談税金の申告方法や節税対策などに関する相談が受けられる。
    財務関連の業務など、税金の専門知識を活かして経営をサポートする

    年末調整で社労士に依頼できる内容

    年末調整で社労士に依頼できる内容は大きく以下の2つです。

    • 給与・保険料の計算
    • 算定基礎届や月額変更届などの提出

    それぞれ解説します。

    給与・保険料の計算

    給与・保険料の計算は、独占業務ではないため、社労士・税理士ともに作業できます。

    年末調整の源泉徴収票の作成はできませんが、作成に必要な1年間の給与や保険料の算定なら社労士でも行えます。給与の総額や社会保険料は所得税を計算するにあたって重要な項目であり、正確に計算するためにも専門的な知識のある社労士に依頼する企業も多いです。

    算定基礎届や月額変更届などの提出

    年末調整で必要となる社会保険料は、社会保険控除として所得税に影響するため、正確な計算が必要です。そのため、算定基礎届や月額変更届の手続きも正確に行っておく必要があるでしょう。提出忘れや漏れは、毎月の給与を正確に計算できなくなり年末調整に影響します。

    年末調整では、社会保険に関するルールに強い社労士に、算定基礎届や月額変更届などの書類をチェックしてもらいながら正確に社会保険料控除額を計算するケースも多いです。

    年末調整で税理士に依頼できる内容

    税金に関連する業務は税理士に依頼可能です。年末調整では、以下の書類をもとに源泉徴収票を作成します。

    • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
    • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
    • 給与所得者の保険料控除申告書

    3つの書類に不備がないように税理士にチェックしてもらい、毎年11月頃から従業員に記入してもらいます。従業員が記入する書類が集まったら、税理士に所得税額を計算してもらい、過不足分を還付または徴収したうえで源泉徴収票を作成する必要があります。

    源泉徴収票は、翌年1月31日までに税務署への提出が必要で、その際に必要な「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」や市区町村に提出が必要な「給与支払報告書(個人別明細書と総括表)」も税理士に作成してもらえます。

    年末調整で不備があり、税務調査が入った場合にも、税理士に立ち会ってもらえるため、税理士に依頼する企業は多いです。

    年末調整に必要な作業を社労士や税理士に手伝ってもらうメリット

    年末調整に必要な作業を社労士や税理士に手伝ってもらうメリットは以下の2つです。

    • 効率的に年末調整を実施できる
    • 年末調整のミスを減らせる

    それぞれ解説します。

    効率的に年末調整を実施できる

    従業員が多い企業や規模を拡大した企業では、年末調整の計算業務や書類作成に時間も手間もかかります。しかし、日ごろから給与や社会保険の計算に慣れている社労士や税務関連業務に慣れている税理士に依頼すれば、社内の人員を割くことなく効率的に年末調整が実施できるでしょう。

    税務関連業務は社労士に任せると違法になるため、年末調整は一括で税理士に依頼した方が効率的です。日ごろの労務管理などを徹底したいのであれば、毎月の給与計算や社会保険関連の業務は社労士に任せるとよいでしょう。

    年末調整のミスを減らせる

    外部の専門家に任せることで、計算ミスや書類作成の不備が防げます。年末調整は従業員それぞれで控除額や控除内容が異なるため、社内だけで行うとミスや漏れの恐れがあります。専門知識やルールにのっとってサポートしてくれるため、正確に年末調整ができるでしょう。

    年末調整を外部に依頼する際の注意点

    年末調整を外部に依頼する際の注意点は以下の2つです。

    • 年末調整だけを任せたいなら税理士だけでよい
    • 年末調整以外も依頼するなら社労士と税理士が所属する事務所を探す

    それぞれ解説します。

    年末調整だけを任せたいなら税理士だけでよい

    給与計算から年末調整までを一括でできるのは税理士です。そのため、年末調整だけを外部に依頼する場合には、税務署や市区町村への書類提出まで対応できる税理士だけで問題ありません。

    年末調整以外も依頼するなら社労士と税理士が所属する事務所を探す

    年末調整だけでなく日ごろの給与計算や労務管理、社会保険料に関する書類作成なども依頼したいなら、税理士と社労士のどちらも所属している事務所を探すとよいでしょう。

    労働保険や社会保険に関する業務や帳簿作成などの労務関連業務は、税理士はできません。雇用関係助成金などの助成金や補助金の申請では、どちらの専門家の知識が必要になるケースもあります。

    年末調整だけでなく1年を通してアウトソーシングを検討するなら、社労士・税理士ともにいた方が安心でしょう。

    まとめ

    源泉徴収票や所得税の計算などは税理士の業務です。

    したがって、社労士に依頼すると違反に当たります。ただし、毎月の給与計算であれば、社労士でも依頼できます。業務により、税理士と社労士で依頼できる内容が異なるため注意しましょう。

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