休職証明書とは? 書き方やテンプレート、産育休や奨学金のケースも解説
休職証明書とは、従業員が休職する際に、企業が発行する場合がある書類です。休職証明書の発行が求められるのは、どのようなケースなのでしょうか。
本記事では、休職証明書について、企業が発行するケースや書き方、休業証明書との違いも解説します。企業の人事労務担当者はぜひ参考にしてください。
休職証明書とは
休職証明書とは、従業員が自己都合によって休職することを企業が証明するための書類です。
休職証明書は、従業員からの要望によって企業が発行します。これは、従業員が休職中になんらかの利益を得るために証明が必要になるためです。
従業員からの要望を受けて、企業側は休職証明書を作成します。従業員は、発行された休職証明書を、利益を提供する相手に提出します。
そもそも休職とは
休職とは、従業員が働けない事情がある場合に、企業との労働契約を維持したまま、一定期間休むことです。制度としての名称を「休職制度」といいます。休職制度を利用して休むことで、従業員は安心して休職できます。
休職制度は法律で義務付けられているものではありません。そのため、各企業が判断し、それぞれの状況や方針に合わせて制度を設計しています。一般的な休職制度には、以下のような種類があります。
休職種類 | 概要 |
---|---|
傷病休職 | 業務外の理由による病気や怪我に対する療養のために休職する制度 |
事故欠勤休職 | 従業員都合(逮捕や勾留)による欠勤が長期に及んだ場合に適用される休職制度 |
起訴休職 | 刑事事件で起訴された従業員を休職扱いにする制度 ※企業の場合、合理的な理由が必要 |
調整休職 | 従業員が出向や組合従属する際に、出向先企業や労働組合との兼ね合いで所属元企業について休職扱いにする制度 |
公職就任休職 | 従業員が公職に就くために休職にする制度 |
自己都合休職 | 従業員の自己都合による休職を認める制度 |
企業の判断で休職制度を設ける場合は、期間や賃金に関する決まりも独自に定める必要があります。
また、休職と混同しやすいのが「欠勤」と「休業」です。それぞれの概要を下記でご紹介します。休職との違いを正しく理解しましょう。
概要 | |
---|---|
休職 | 労働者の個人的な事情により仕事を休むことで、企業は労働義務を免除します。 |
欠勤 | 労働者が本来出勤すべき日に仕事を休むことで、労働義務があります。 |
休業 | 企業側の都合や法令によって労働者が仕事を休まなければならない状況であるため、給与や手当・給付金などが支給されます。 |
休職証明書と休業証明書との違い
休職証明書と休業証明書の違いは、記載内容にあります。休職は、従業員の自己都合によって仕事を休むことである一方、休業は企業側の都合や法律を根拠にして仕事を休むことです。基本的に、休職の場合は無給、休業の場合は全額ではないこともありますが、有給として扱われます。
休職証明書には、仕事を休む理由として個人的な都合や状況などを記載します。一方の休業証明書には、企業都合によって就業させられない点や事情を記載します。
しかし、両者の範囲などは明確に定義されているわけではありません。休業においても休職証明書として書類を作成する場合もあります。
休職証明書の作成
休職証明書は、従業員の求めにより、企業側が作成と発行を行います。休職証明書の書式は以下の種類があります。
- 企業側が独自に作成
- 従業員側が作成
- 提出先による指定
休職証明書の提出先
休職証明書は、一般的に従業員がなんらかの利益を受けるために必要とされます。従業員は、企業が作成した休職証明書を、利益を提供してくれる相手に提出します。たとえば、ハローワークや保険会社などが挙げられます。
提出先 | 内容 |
---|---|
ハローワーク | 育児休業給付を受けるために提出 |
保険会社 | 交通事故による怪我に対する休業損害金を受け取るために提出 |
休職証明書と診断書の必要性
休職証明書を提出する際、医師による診断書が必要かどうかを状況別に解説します。
休職申請の際に診断書が必要か
自社に対して休職申請を行う際に、診断書が必要になる場合があります。これは、従業員が病気や怪我によって休職する際、企業が診断書をもとに判断することがあるためです。とくに産前産後休業や育児休業を取得する際は、診断書が必要です。
休職証明書の提出時に添付が必要か
休職する従業員に対してなんらかの利益を提供してくれる相手に休職証明書を提出する際に、診断書も求められるケースがあります。たとえば、休職するにあたって奨学金の返済猶予をしてもらう場合は診断書の添付が必要です。
休職証明書が必要なケース
休職証明書が必要になるのは、従業員が休職することによってなんらかの利益を提供してもらう場合が一般的です。
休業損害金のため
交通事故による怪我をした場合、加害者の加入する保険会社に対して休業損害金を請求できます。休業損害金を請求する際は休業損害証明書の提出が必要です。保険会社が用意した書式に自社が記入し、従業員本人が提出します。
育児休業給付金のため
育児休業給付金を支給する際は、従業員の育児による休業を証明できる書類が必要です。この場合、従業員側ではなく、企業側が対応を行います。産前産後休業を取得する際は、休職(業)証明書は必要ありません。あくまでも育児休業給付金の場合のみ必要という点を理解しましょう。
参照:『育児休業給付申請にかかる提出書類 』厚生労働省愛媛労働局
奨学金の返済猶予のため
産前産後休業や育児休業によって、奨学金の返済を猶予してもらったり減額してもらう場合に、休業証明書が必要です。
産前産後休業や育児休業などによらない休職の場合は、休職証明書を提出します。証明書を作成するのは企業側で、書類提出は従業員本人が行います。
参照:『休職・休業(減額返還制度)』日本学生支援機構
参照:『休職(一般猶予)』日本学生支援機構
休職証明書に記載する内容
休職証明書には、具体的にどのような内容を記載するのでしょうか。一般的に記載する内容をご紹介します。
基本情報
休職証明書には、従業員や企業に関する以下のような基本情報を記載します。
- 記入日
- 氏名
- 職名
- 採用日
- 企業名
- 企業所在地
提出先によって、基本情報の記載内容に細かい指定がある場合もありますが、一般的には上記のような情報を記載します。
休職する理由
休職証明書には、従業員が休職する理由を記載します。従業員がなんらかの利益を受ける際の求職理由は、病気や怪我など、やむを得ない理由が一般的です。ここに記載する休職理由を裏付けるための診断書が求められることがあります。
休職に関する内容
休職証明書には、休職する期間や休職中の給与支給についても記載します。保険会社に提出するケースのように、期間や給与支給だけでなく、休暇種類や休職前の給与額、休業補償及び傷病手当金の有無について記載しなければならないこともあります。企業の担当者が休職証明書を作成する際は、出勤簿や賃金台帳などから正しく記載しましょう。
休職証明書のテンプレート
休職証明書は、提出先の指定やテンプレートがある場合はその通りに作成しましょう。たとえば日本学生支援機構や各種保険会社では、休職証明書のテンプレートを公開しています。休職証明書の作成をする前に、まずは提出先のホームページなどで情報を確認しましょう。
また、様式などに特に指定がない場合は、インターネット上にテンプレートを提供しているサイトを活用するのもおすすめです。
参照:『休職証明書(返還期限猶予・減額返還申請用) 』日本学生支援機構
参照:『育児休業給付金申請にかかる休業証明書』厚生労働省
参照:『休業損害証明書』ソニー損害保険株式会社
休職証明書の書き方
休職証明書の書き方について解説します。具体的な記入例や注意点をご紹介しますので、休職証明書作成のご参考にしてください。
休職期間の記入例
休職証明書における休職期間について、終了日が未定の場合は、「未定」もしくは「〇月〇日(予定)」と記載しましょう。終了日を予定としてを書く場合は、「現時点で確定しない」という旨もカッコ書きなどで記載しておきます。
休職理由の記入例
休職証明書における休職理由の部分は、できるだけ具体的に書きます。しかし、休職する理由は、病気など従業員のプライバシーにかかわる内容でもあるため、書き方に配慮する必要があります。休職証明書を企業側が作成する場合、理由として記載する程度や表現に迷う場合は、従業員本人に確認してみましょう。
まとめ
休職証明書とは、従業員が自己都合によって休職する際に、なんらかの利益を受け取るために休職していることを証明するための書類です。交通事故による怪我で休業する場合の休業損害金の申請や、育児休業時の育児休業給付金の受給、出産・育児やその他の理由での休職時における奨学金返済の猶予申請などが、代表的な例として挙げられます。
休職証明書は、従業員からの依頼により、企業側が作成することがあるため、担当者はどのようなシーンで必要なのかを理解しておくと安心です。また、実際に休職証明書を作成する際は、指定様式の有無や記載項目と内容などを確認のうえ、正しい情報を記載しましょう。