キャリアドリフトとは? 具体例やメリット、手順を解説
キャリアドリフトとは、目標だけを決めて、具体的な計画などは立てずに偶然に出会うチャンスを活かしてキャリアを積んでいく考え方です。
キャリアを考えるとき、多くの人は将来像を描いて計画的に行動します。しかし、キャリアドリフトのように、目標だけを決め、偶然の機会や流れに身を任せる考え方もあるでしょう。
本記事では、キャリアドリフトの考え方について解説しながら、メリットや手順なども紹介します。ぜひ参考にしてください。
キャリアドリフトとは
キャリアドリフトとは、次の目標だけを決めて、流れや自然に任せてキャリアを積んでいくことを意味する言葉です。キャリアドリフトは、さまざまな出会いや偶然を大切にするため、柔軟なキャリア形成が可能です。
キャリアドリフトとキャリアデザインの違い
キャリアドリフトとキャリアデザインの違いは、目標に向けた計画性の細かさの程度です。
キャリアデザインとは、将来のキャリアビジョンを実現するために、細かい計画を立て実行していくことです。
一方で、キャリアドリフトは、次の目標に対して方向性は決めるものの、自然の成り行きに任せる側面が強いです。細かな計画や具体的なアクションを考えません。
どちらもキャリアに関する言葉であり、理想の実現や自分の価値観に沿って進める点は共通していますが、意味合いは対照的です。
キャリアドリフトが重視される理由
キャリアドリフトが重視される理由には、市場や社会の変化が挙げられます。
日本においては、終身雇用や年功序列が崩壊しつつある中で、長期的な雇用が保障されにくくなっています。
近年、働き方改革の推進や新型コロナウイルスの流行をきっかけに、働き方は大きく変化しました。また、デジタル化やDXが急速に推進したことで、求められる人材像も大きく変化しています。
雇用や社会情勢の変化にともない、働く人にとって将来の予想がつきにくくなっています。予測不可能な社会で、思い描くキャリアビジョンや細かく計画したキャリアデザインを実現できるかどうかわかりません。
キャリアドリフトの概念によって、自然に任せながら変化に対応していくことで、偶然の出会いや機会から始まるキャリア形成が注目されています。
キャリアドリフトを取り入れるメリット
キャリアドリフトのメリットには、どのような点があるのでしょうか。具体的なメリットについて紹介します。
- 変化に対応しやすい
- モチベーションを維持できる
変化に対応しやすい
キャリアドリフトを採用すると、想定外の変化にも柔軟に対応できるため、環境や選択肢が変わっても落ち着いて行動できます。
計画に縛られず、市場や業界の変化に対応していくことで、新しいキャリア形成の機会に恵まれるでしょう。詳細なキャリアプランニングだけでは得られない成長を促進できる可能性があります。
モチベーションを維持できる
キャリアドリフトは、初めから計画を立てないため、モチベーションが維持しやすいというメリットがあります。
キャリアについて細かく計画を立てたにもかかわらず、変化により実行が難しくなる場合があるでしょう。キャリアドリフトなら計画に固執せず、定期的に調整できるため、軌道修正を行う必要がありません。
中断や計画変更のたびに落胆することがなく、モチベーションを保ちやすいといえます。
キャリアドリフトのデメリット
キャリアドリフトを採用するデメリットは、得られた成果の測定がしにくいことです。
キャリアドリフトは労働期間の全体にかかわる考え方であるため、特定の期間だけを抜き出して成果を評価することが難しいためです。
また、細かな計画を立てずに流れに身を任せる考え方であるため、主体的に行動することが少なくなります。現状に満足して、ただ時間だけが過ぎてしまうと成長の機会は得られません。
キャリアドリフトに基づいてキャリアを形成する場合も、自身のキャリアについて定期的に振り返り、主体的に考える時間を設けることが重要です。
キャリアドリフトの具体例
キャリアドリフトの例を年代別に紹介します。ライフステージが大きく変わるタイミングも含めて、参考にしてください。
20代のキャリアドリフトの例
20代は仕事を新鮮な気持ちで楽しみつつも、必死に業務を覚えて多様な経験を通して学ぶ期間です。
20代後半になると、責任をともなう仕事を任されたり、後輩の指導を担当する機会が訪れたりすることもあります。得意分野や組織における自分の存在価値なども、この頃からわかり始めてきます。
まずは自分の価値観に沿って、将来の「なりたい自分」を意識しましょう。
30代のキャリアドリフト例
30代は中堅社員として活躍し始める時期です。より責任ある仕事への抜擢、昇進・昇格のチャンスもあるかもしれません。そのため、30代前半に一度、目指したい方向性を設定しておくことが重要です。
プライベートでは、結婚や妊娠・出産などのライフイベントを迎える可能性が高くなります。ライフステージが大きく変わる場合は、あらためてキャリアの方向性を見直すなど、柔軟に対応しましょう。
自分の軸を大切にしながら、周囲の声に耳を傾けることも大切です。
40代のキャリアドリフト例
40代もキャリアにおいてさまざまな変化が訪れる時期です。1つの会社に勤めている場合は中堅からベテラン社員へと、また1つ成長が求められます。
管理職となって全体を指揮統括したり、専門領域のエキスパートとして第一線で活躍したりする道もあるでしょう。縁や偶然により、転職など新たなステップに進む選択をするかもしれません。
どのような状況においても、キャリアドリフトのアプローチを取り入れた場合は、訪れるチャンスに対して柔軟な姿勢を持ち続けることで、キャリアの新たな可能性を探求できるでしょう。
キャリアドリフトのやり方や手順
キャリアドリフトの具体的な手順について紹介します。
- キャリアの方向性を決める
- 節目でキャリアデザインもしてみる
- キャリアの方向性に基づいて行動する
1.キャリアの方向性を決める
まずは自分のやりたいことや価値観をもとに、キャリアの方向性を決めましょう。方向性はキャリア形成の軸になるため、キャリアドリフトでも大切にしなければなりません。
2.節目でキャリアデザインもしてみる
キャリアドリフトは、時代や社会の変化に柔軟に対応しながらキャリア形成を進められるメリットがあります。しかし、当初設定していた方向性から大きくズレてしまうケースも考えられます。
キャリアドリフトに固執するのではなく、タイミングや必要に応じて、詳細なキャリアデザインを設定することも大切です。たとえば、節目になる年齢を迎え将来に不安を感じたタイミング、人事面談の機会などが挙げられます。
入社3年目や30歳になる年、ライフステージに変化があったときは、これまでのキャリアを振り返り、今後について再考するとよいでしょう。キャリアの方向性についての見直しや、方向性からズレていないかなどの確認をします。最低限取るべき行動などを洗い出すことも重要です。
人事面談などでキャリアに関する話をしたときは、目指す方向性に進めているか現在地を確認します。不足している点などがあれば、補うための方法や行動を検討しましょう。
3.キャリアの方向性に基づいて行動する
キャリアの方向性が決まったら、必要な能力や経験を積むために行動しましょう。
行動する際は、長期的な視点でじっくりと取り組むと成果を得やすくなります。能力や知見が習得できれば、さらに新たな機会に巡り合えるかもしれません。
ただし、決めた方向性に縛られすぎてはいけません。一見すると関係がないように思えても、偶然の機会を大切にすることで、好影響につながるのがキャリアドリフトの考え方です。
キャリアドリフトの目的はキャリア形成です。目指す方向性やライフステージに変化があった場合は見直すなど、柔軟に考えるようにしましょう。
キャリアドリフトのポイント
キャリアドリフトを成功させるためにも、あらかじめ注意すべき点について把握しておきましょう。
- 計画的偶発性を起こすための行動を取る
- 変化を受け入れるリスクも覚悟しておく
- 客観的な意見も大切にする
計画的偶発性を起こすための行動を取る
計画的偶発性理論とは、個人のキャリアは偶然の出来事の積み重ねによって決まるという前提のもと、訪れた機会を活かしていくキャリア理論です。
流れに身を任せるキャリアドリフトでは、ただぼんやりと時間を過ごしているだけでは、キャリアの進展が見られないことも少なくありません。計画的偶発理論を積極的に起こして新たなチャンスに出会うためには、主体的な行動を取って日々の仕事に取り組むことが大切です。
変化を受け入れるリスクも覚悟しておく
キャリアドリフトに取り組む中で、キャリアが変化する局面に遭遇するかもしれません。これをチャンスと捉えることもできますが、リスクもともないます。
変化によって得られるチャンスや可能性だけでなく、リスクも比較したうえで受け入れるかどうかを検討しましょう。
客観的な意見も大切にする
自分の長所や適性を正しく理解することは簡単ではありません。周囲の意見などにも耳を傾け、客観的な視点も含めて自分の才能を捉えましょう。
自分が考えていたものとは異なる部分に長所や才能があり、周囲から求められている場合もあります。適切なキャリア形成を行うためにも、自分の考えだけでなく、客観的な意見も取り入れましょう。
まとめ
キャリアドリフトとは、次のキャリアの方向性だけを決めて、流れや自然に任せてキャリアを積んでいくことを意味する言葉です。
現代の日本では、年功序列が崩れつつあり、市場やビジネスにおいて予測不能な変化が起こる可能性があります。変化の激しい社会では、入念なキャリア計画に基づいて行動を起こすことは必ずしも思い通りにいくわけではありません。
本記事で解説したキャリアドリフトの考え方を意識し、自分にとってよりよいキャリア形成につなげていきましょう。