キャリア形成とは? 必要性や具体的な方法、企業の支援策を解説
キャリア形成は、人材が生き生きと働き、活躍するために重要なプロセスです。変化の激しい時代で、自分の価値観からイメージする将来の姿があることで、自己成長や自己実現につながります。
本記事では、キャリア形成の重要性や手順、企業が行うべき支援を解説します。人材育成や組織力強化を目指す企業の経営層や人事担当者は、ぜひ参考にしてください。
キャリア形成とは
キャリア形成とは、自分が望むキャリアを実現するために必要な一つひとつのステップを積み重ねることです。具体的には、理想の将来像になるために必要な資格資格取得や、経験を得ることです。
キャリア形成を意識すれば、今自分が何をすべきかがわかるようになるため、自分の目指すキャリアを実現し、生き生きと働くことにつながります。
国も力を入れているキャリア形成支援
キャリア形成は、国としても重視しており、さまざまな支援を行っています。国によるキャリア形成に対する代表的な支援は以下の通りです。
支援主体 | 内容 | |
---|---|---|
文部科学省 | キャリア教育 | 子どもたちの将来に向けて、幼小中高の教育段階においてそれぞれ適切なキャリア教育を支援 |
厚生労働省 | キャリア形成・リスキリング推進事業 | ・労働者にジョブカードを記載してもらい、キャリアコンサルティングの機会を無料で提供 ・現在から今後にかけてのキャリアの相談やスキルアップなどに助言を行い、主体的なキャリア形成をサポート |
教育訓練給付制度 | ・キャリアコンサルティングの育成として、雇用保険の加入者が教育訓練を修了することで費用の20%(上限10万円)を補助 | |
人材開発支援助成金 | ・業務に関連したスキルや知識を修得するための制度導入をした企業に対し、その費用の一部を助成 |
参照:『キャリア教育』文部科学省
参照:『キャリア形成支援』厚生労働省
キャリア形成の課題
キャリア形成は長期的に取り組むため、時代や環境の変化によって失敗もあります。そのため、キャリア形成を成功させるためには、広い視野で捉え、起こり得るトラブルやリスクを想定しなければなりません。
また、キャリア形成は自分の意思や希望だけに沿って取り組むのではなく、現状や能力、適性を考慮しなければなりません。自分だけの価値観や夢から取り組むだけでなく、第三者の考えや客観的な視点なども考慮したうえで考えることが課題であり、成功の秘訣といえます。
キャリア形成の必要性や目的
キャリア形成が重要視されるには、どのような背景や理由があるのでしょうか。キャリア形成の目的には、以下3つが挙げられます。。
- 雇用制度の変化
- ジョブ型雇用の普及
- 働き方の多様化と個の尊重
雇用制度の変化
キャリア形成が重視される理由には、雇用制度の変化が挙げられます。これまでの雇用制度として一般的であった終身雇用や年功序列制度から、現代は成果主義が台頭しました。その結果、企業が従業員のキャリアを決定するのではなく、労働者はみずからの経験や適性をふまえ、より活躍するために主体的なキャリア形成を行う必要があるのです。
このことから、キャリア形成の主体が企業側から従業員へと変化していることがわかります。現代でキャリア形成は企業が行うのではなく、一人ひとりの従業員が主体的にキャリア形成を行い、それを企業側が支援するようになっているのです。
ジョブ型雇用の普及
キャリア形成が重視されるようになった背景には、日本でジョブ型雇用が普及してきたことも挙げられます。ジョブ型雇用とは、企業側が職務に必要な能力を明確化したうえで、そのスキルや適性に合致した人材を採用する雇用制度です。特に時代の変化とともに、DXやAIなど情報技術をはじめとした、高度で専門性の高いスキルを重視した雇用も進みつつあります。キャリア形成は、将来的に自分の希望する職種や領域で活躍するためにも、ジョブ型雇用との相性が良いと考えられています。
働き方の多様化と個の尊重
キャリア形成は、多様性を重視する社会でも重視されています。現代では、働き方への価値観が多様化しているため、一人ひとりの考え方が尊重されます。このような時代で、キャリア形成によって自分の価値観を高めることで、生き生きと働き、社会で活躍できるきっかけにもなります。
キャリア形成のメリット
キャリア形成のメリットはどのようになるのでしょうか。従業員側と企業側のメリットをそれぞれご紹介します。
従業員にとってのメリット
従業員にとってキャリア形成を行うメリットは、以下の3つが挙げられます。
- 従業員の将来に向けて成長できる
- 自分の強みや求められている役割を認識できる
- モチベーション高く仕事に取り組める
従業員の将来に向けて成長できる
キャリア形成を行うことで、自分の将来像に向けて必要なスキルや知識を得られるため、成長につながります。これは、キャリアプランニングは長期的な視点で行い、キャリア形成によって目指す未来のために自分が今やるべきことが何かを理解できます。将来のために、必要なステップを達成すれば、時間を有効に使えます。
自分の強みや求められている役割を認識できる
キャリア形成では、自分の希望だけでなく適性や得意分野も把握します。自分以外の人からの客観的な視点や意見にも耳を傾けることになるため、自分では気が付かなかった強みに気付けることもあるでしょう。
このように、自分の思いと客観的な強みを踏まえることで、自分に何ができるのかや求められていることがわかる機会にもなります。社会で、自分がより活躍できるキャリアの発見にもつながります。
モチベーション高く仕事に取り組める
キャリア形成によって、自分が望む将来像に向けてやるべきことが明確になるため、従業員のモチベーションが向上します。目の前の一つひとつの業務や目標は、将来のキャリアに向けて必要であることも理解できるため、前向きな気持ちで取り組めるようにもなります。また、キャリア形成の一つひとつのステップやプロセスを経ることで、スキルアップや成長を実感できれば、さらなるモチベーション向上が期待できます。
企業にとってのメリット
キャリア形成は、従業員だけでなく企業側にもメリットがあり以下の2つが挙げられます。
- 従業員の満足度やエンゲージメントの向上
- 組織力強化や企業成長につながる
従業員の満足度やエンゲージメントの向上
企業がキャリア形成を支援すれば、従業員は「大切にされている」と感じ、会社への満足度が向上します。終身雇用が当たり前ではなくなった現代では、従業員がみずからのキャリアを切り開いていく必要があります。
企業側によるキャリア形成の支援は、従業員の成長を願う気持ちの表れといえます。従業員の満足度が向上すれば、企業に対するエンゲージメントも高まりやすくなり、成果創出や離職防止にもつながります。
組織力強化や企業成長につながる
キャリア形成によって従業員のモチベーションが高まれば、意欲の高い従業員が増えるため、組織力が強化されます。また、キャリア形成によって一人ひとりのスキルやパフォーマンスが向上すれば、成果も出しやすくなるため、企業全体としても成長できます。
キャリア形成の手順
キャリア形成の一般的なステップは以下の4ステップです。。
- 自己の理解
- 目標の設定
- キャリア形成における計画の策定
- キャリア形成の計画実行と見直し
自己の理解
キャリア形成の最初のステップは、従業員が自分自身を理解するところから始めます。過去から現在の自分と向き合い、仕事で得た経験や習得したスキルや知見などを整理する「キャリアの棚卸し」を行います。
目標の設定
キャリア形成の次のステップでは、目標を設定します。キャリアの棚卸した内容をもとに、以下の点を整理します。
- 自分がやりたいこととやりたくないこと
- 自分が得意なことと苦手なこと
- 今後自分が挑戦したいこと
- 将来自分がなりたい姿(モデルを設定しても可)
上記の点を整理したうえで、自分が希望する将来像を明確にし、キャリア形成で必要なステップを見極めましょう。
キャリア形成における計画の策定
将来の目標や必要スキルを明確化したら、実現に向けた計画を立てます。将来像をゴールとして、必要なステップを抽出しましょう。計画のコツは、最終的な目標から逆算し必要な行動や成果の設定です。将来の目標を達成するために、各段階でクリアすべき小目標などを立てましょう。
キャリア形成の計画実行と見直し
キャリア形成の目標と計画を設定したら、行動を実行します。計画に沿って行動を実行します。計画通りに進まないことや小目標を達成できないことも考えられます。その場合も、軌道修正を行うために、適宜見直しや目標修正を行いましょう。また、キャリア形成をサポートするために、上司や人事担当者などによる面談なども定期的に実施しましょう。
キャリア形成に必要な力
キャリア形成を行うために必要な能力には、主に以下5つが挙げられます。
- 課題を発見し解決していく力
- 計画を立て実行していく力
- 自己研鑽していく力
- 良好な人間関係の構築力
- 客観的に捉える力
課題を発見し解決していく力
キャリア形成を行う際は、課題解決力が必要です。計画を実行するにあたって、うまくいかないことや失敗などもあります。そのときに、どこに課題があるのかを発見し、課題を解決しなければなりません。
課題解決力がなければ、思い描くキャリアの実現は難しくなります。課題解決力を養うためには、日頃から成功した理由や失敗した理由を考え、さらなる課題点や改善ポイントを考える癖を付けましょう。
計画を立て実行していく力
キャリア形成は、最終的になりたい姿に向けた計画を立て、継続的に取り組みます。そのため、計画に沿って地道に行動を実行していくことが大切です。
キャリア形成で目標や計画を立てても、着実に実行していく行動力や努力が伴わなければ、計画や目標は達成できずに終わってしまいます。
自己研鑽していく力
キャリア形成では、従業員本人が自分の目標に向けてスキルアップや経験を積んでいく必要があります。そのため、積極的に研鑽を行っていかなければなりません。従業員みずからが、キャリア形成に必要な研鑽を行うことはもちろんのこと、企業側も従業員の成長に必要な学びの機会を提供し、支援を行いましょう。
良好な人間関係の構築力
キャリア形成では、人間関係を構築する力も重要です。自分が望むキャリアを実現するためには、自分一人では達成できない目標やステップも少なくありません。周囲からの協力を得なければならないシーンもあるため、日頃から人間関係を構築しておく必要があります。良好な人間関係を構築できれば、円滑に仕事を進め、困ったときに周囲が助けてくれることにもつながります。
客観的に捉える力
キャリア形成では、物事を客観的に捉える力も必要です。客観視できないと、現状把握や予測が正しくできません。客観的に見ることに不安がある場合は、上司や同僚などの第三者の意見を聞き、冷静な判断をおこなえるようにしましょう。
キャリア形成では、最終的な目標を実現するまでに、小目標を修正するなどの軌道修正が必要です。主観的に捉えてばかりいると、正しい判断が行えず、軌道修正さえも行えなくなってしまう恐れがあるため、注意しなければなりません。
キャリア形成に対して企業が行うべき支援
キャリア形成は、従業員の取り組みだけでなく、企業側の支援も重要です。そこで、企業が行うべき具体的な支援には、以下の3つが挙げられます。
- 自己研鑽や自己啓発の促進
- 第三者による面談機会の提供
- さまざまな人事施策の実行
自己研鑽や自己啓発の促進
キャリア形成では、従業員の自己研鑽や自己啓発によって、より成長が見込めます。
従業員みずからが常に自己研鑽や自己啓発への意識が難しい場合があるため、企業側が定期的に自己研鑽や自己啓発の環境を提供すると良いでしょう。
具体的には、社内研修の実施や自己研鑽への補助、外部セミナーの周知などが挙げられます。
第三者による面談機会の提供
キャリア形成では、従業員が客観的な視点で捉えられるよう、第三者目線による助言も必要です。そのため、企業側は、上司や人事担当者、メンターなどによる面談を定期的に実施するのがおすすめです。面談の内容は、記録を行うなどして、振り返りなどにも活用しましょう。
さまざまな人事施策の実行
キャリア形成では、従業員がさまざまな経験を通して知見を深めたり人間関係を構築する必要があります。企業側は、豊富な人事施策を企画・実行し、従業員の成長を促進しましょう。
具体的には、配置転換や社内公募、年代別や職種別のキャリア開発、異部署交流会などが挙げられます。このような人事施策を通して、従業員は経験や感性を磨き、成長するきっかけになります。
まとめ
キャリア形成は、主体となる従業員だけでなく企業にもメリットがあります。従業員が思い描くキャリアを明確にし、キャリア形成によって具体的に行動すれば、仕事へのモチベーションが向上し、生き生きと働けます。結果、組織力が向上したり成果を創出できたりと、会社の成長にもつながるでしょう。
従業員のキャリア形成を促進するためには、企業の支援が必要不可欠です。さまざまな施策やフォローを行い、従業員のキャリア形成を支援しましょう。