キャリアラダーとは? キャリアパスとの違いや導入方法、活用事例を解説

キャリアラダーとは? キャリアパスとの違いや導入方法、活用事例を解説

キャリアラダーとは、従業員のキャリア形成において、順当なステップを踏んでいくことでキャリアを積んでいく仕組みです。

企業のキャリア開発のためにも、キャリアラダーによって従業員が達成すべき一つひとつのステップを明確にすることが大切です。

本記事では、キャリアラダーについてわかりやすく解説し、メリットや導入の流れも紹介します。企業としてキャリア開発を進めたいと考えている経営層や人事担当者はぜひ参考にしてください。

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    キャリアラダーとは

    キャリアラダーとは「キャリア(経歴)」と「はしご」を掛け合わせた言葉です。

    キャリアラダーは、企業の人事制度やキャリア開発において、一つひとつの目標に向かってはしごを上るように達成し、キャリアを積んでいくために用いられます。

    キャリアラダーはさまざまな企業で導入されていて、優秀な人材の確保のためにも用いられています。人事制度とキャリアラダーを連動させることで、評価基準が明確になり、従業員の目標を管理やモチベーションを高める効果が期待できるシステムです。

    キャリアラダーを導入しやすい職種や分野

    キャリアラダーは、さまざまな業界で注目されています。特に導入が進んでいるのは、以下の職種や分野です。

    • エンジニア職
    • 看護職
    • アパレル業界
    • 外食産業
    • 派遣社員

    上記のように、専門的なスキルや経験を高めていく職種や業界との親和性が高いといえます。また、正社員だけでなく派遣社員やパート・アルバイトなどの非正規雇用でも、有効に活用できます。

    非正規雇用から正規雇用に向けて、段階的に経験やスキルを積んでいくことでキャリアアップにつながるのです。そのため、企業では、正社員登用の仕組みとしてもキャリアラダーの手法を用いることがあります。

    キャリアパスとの違い

    キャリアラダーとキャリアパスは、どちらもキャリア形成のための道筋を提示する観点では同じです。両者の大きな違いは、対象者が異なる点です。

    キャリアラダーは、基本的に同一職種の中でさらにキャリアを磨いていくための道筋を示すものであり、一般的には異動や職種変更などは含まれません。

    一方のキャリアパスは、企業や組織の中で昇進するための道筋を示す意味合いがあり、異動や配置転換の可能性もあります。企業のキャリア開発では、キャリアラダーとキャリアパスを使い分けることが大切です。

    クリニカルラダーとの違い

    キャリアラダーとクリニカルラダーも混同しやすい言葉です。

    クリニカルラダーとは、段階的に評価基準を設定し、看護師の自己学習を促進したり人材育成で用います。

    両者は、段階的にステップを踏むことによって評価する意味合いでは似ていますが、クリニカルラダーは主に看護業界で用いられる仕組みであるため、より狭義の意味合いといえます。

    キャリアラダーを導入するメリット

    キャリアラダーを導入するメリットにはどのような点があるのでしょうか。企業が得られる具体的なメリットを紹介します。

    • 企業のキャリア開発が進みやすくなる
    • キャリアアップの公平性や納得感を高められる
    • 従業員のモチベーション向上につながる

    企業のキャリア開発が進みやすくなる

    キャリアラダーを導入することで、企業のキャリア開発を進めやすくなります。キャリアラダーでは、従業員が自分のキャリア形成に取り組みやすくなるためです。

    キャリアアップするために必要なことを、一つひとつのステップとして常に把握できる状態になるため、キャリアへの計画やイメージが立てやすくなります。

    キャリアアップの公平性や納得感を高められる

    キャリアラダーを導入すれば、キャリアアップの公平性や納得感を高められます。

    キャリアラダーでは、同一職種におけるキャリアアップのために必要なステップが明確化されるため、不公平感を抑えられます。従業員が、同じ基準や指標でキャリアアップを目指せるため、納得感を得られやすくなるでしょう。

    従業員のモチベーション向上につながる

    キャリアラダーは、従業員のモチベーションを高める効果もあります。従業員は、常に目指すべきステップが明確になっているため、目標を意識しやすくなります。

    また、評価への理解が深まり、自分の課題や不足している点を把握しやすくなり意欲向上にもつながるのです。

    キャリアラダーを導入するデメリット

    キャリアラダーを導入する場合、デメリットもあります。具体的なデメリットを紹介します。

    • 導入にコストがかかる
    • 職種によっては導入が難しい

    導入にコストがかかる

    キャリアラダーを導入するためには、時間と人的労力のコストがかかります。キャリアラダーは同一職種で活用するため、職種別にステップを設定しなければなりません。人事評価と連動する場合は基準や内容など、設定すべき項目も多くなります。

    また、キャリアラダーを導入する場合は、人事担当者だけでは準備できません。職種別にステップを設定するため、現場の従業員にヒアリングを行ったり、責任者と調整したりすることも必要です。

    職種によっては導入が難しい

    キャリアラダーは、すべての職種に導入できるわけではありません。キャリアラダーは専門的な職種で、部署間異動が少ない場合に活用しやすいため、向いていない職種もあるのです。

    たとえば、社内におけるさまざまな場面で総合的に対応するような職種はキャリアラダーを用いることは難しいでしょう。そのため、企業の中で職種によって使い分けをするのも一つのやり方として、おすすめです。

     キャリアラダーを導入する流れ

    キャリアラダーを導入するためには、どのような手順で行えばよいのでしょうか。キャリアラダーの一般的な導入の流れを紹介します。

    1. キャリアステップの設定
    2. 連動する評価システムの準備
    3. キャリア研修の計画
    4. キャリアラダーの運用開始と効果測定

    1.キャリアステップの設定

    キャリアラダーを導入する際は、まず職種におけるキャリアステップを設定しましょう。

    職種ごとに、必要なスキルや知識を抽出します。重複しないよう注意したうえで、順序を並べ替え、段階的な構成になるようステップの設定が必要です。

    最後に、各ステップを非正規雇用から最上位の職種まで階層化します。

    2.連動する評価システムの準備

    次に、キャリアラダーと連動する人事評価システムを整備します。

    キャリアラダーにおけるステップが上がるほど、人事評価も上がる仕組みにし、連動させましょう。注意したい点が、直接的な成果にはあらわれない点をどのように評価するのかです。

    たとえば、従業員の仕事に取り組む姿勢や日頃の言動、コミュニケーション能力などは、組織で仕事をするうえでは重要です。このような部分は、評価制度としては対象外になったとしても、別軸での評価や表彰制度などを設けるようにしましょう。

    3.キャリア研修の計画

    キャリアラダーで設定したレベルに応じて、研修を実施することも大切です。次のレベルではどのようなことが求められるのかを明確にすれば、従業員もさらなるステップアップに取り組みやすくなります。

    研修の内容は、階層に応じてレベルを変えることで、差別化でき、従業員のモチベーション向上も期待できます。

    4.キャリアラダーの運用開始と効果測定

    キャリアラダーの準備が整ったら、運用を開始します。

    すぐに全社的な運用を行うよりも、まずは運用対象を特定の職種や階層に絞って実施してみるのがおすすめです。試運用を行うことで、制度の問題点や課題点を把握できるため、全社運用の前に改善できます。

    キャリアラダー導入時の注意点

    キャリアラダーを導入する際の注意点を紹介します。あらかじめ注意点を知っておくことで、導入時の失敗や混乱を防ぐことにもつながります。

    • 導入する目的を明確にする
    • 評価のハードルを上げすぎない
    • キャリアラダーの内容を安易に変更しない

    導入する目的を明確にする

    キャリアラダーを導入する場合は、企業側の目的を明確化しましょう。

    キャリアラダーによってどのような成果を得たいのかを明確にすることで、取り組みにも一貫性が出ます。解決したい組織課題を明確にすると、キャリアラダーの内容や項目も、より効果的なものを設定しやすくなります。

    評価のハードルを上げすぎない

    キャリアラダーと連動する人事評価は、基準を上げすぎないようにしましょう。次のステップに上がるためにハードルが高すぎると、従業員が諦めてしまったり、モチベーションが低くなったりしてしまいます。

    ステップの内容や基準を設定する際は、細かく設定したり、基準を高めすぎたりしないようにしましょう。

    キャリアラダーの内容を安易に変更しない

    キャリアラダーの運用では、各ステップの内容や評価基準を頻繁に変更することは避けましょう。

    キャリアラダーの内容が変更されると、従業員が習得すべきスキルや知識も変わるため、従業員の混乱を招いたり、やる気を失わせてしまったりする危険性があります。

    また、部下を育てる側の従業員も、指導や育成計画を変えなければならなくなります。そのため、キャリアラダーの内容を設定する準備段階で、慎重に検討し、小まめな変更は行わないように注意しましょう。

    キャリアラダーを導入した他社事例

    キャリアラダーを導入した企業では、どのような運用を行っているのでしょうか。キャリアラダーを導入している企業の事例を紹介します。

    • 株式会社メルカリ
    • 筑波大学付属病院看護部

    株式会社メルカリ

    株式会社メルカリでは、エンジニア職の人材に対して「Engineering Ladder」を取り入れました。「Engineering Ladder」は、エンジニアとしてあるべき姿を明確化し、互いの個性を尊重したり強みを活かすために活用されています。

    具体的には、人事評価やゴール設定、キャリア設計で利用されていて、現時点での自分の立ち位置や次のステップを確認するための指標として役立っています。

    参照:『Engineering Ladder | メルカリエンジニアリング』株式会社メルカリ

    筑波大学付属病院看護部

    筑波大学附属病院の看護部では、個々の看護の質を高められるよう、キャリアラダーを導入しました。看護の専門職として必要な領域を4つに分類し、人材育成と職員の成長を促進するシステムとして活用しています。

    また、キャリアラダーをレベル別に分類し、ラダーごとのステップを達成するための研修も実施しています。

    参照:『キャリアラダー|看護師採用 求人 募集|筑波大学附属病院』筑波大学附属病院看護部

    まとめ

    キャリアラダーは、従業員が一つひとつのステップに向かってはしごを上るように達成し、キャリア形成をはかるために用いられます。キャリアラダーは、特に専門性の高い職種において有効とされています。

    多くの企業では、専門性の高い職種と総合的な職種が混在しているでしょう。より効率的にキャリア開発を進めていくためには、職種に応じてキャリア形成の方法を使い分けてみてはいかがでしょうか。