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早期離職の理由は何? 調査から見える原因と人事が取り組みたい対策を紹介

採用難が叫ばれる昨今、企業が直面している課題の一つが「従業員の離職」です。

入社数日で離職を決意する人も増え、とくに4月初旬は、新入社員からの退職代行サービスへの問い合わせがあとを絶たないといいます。若手従業員の早期離職は、さまざまな理由に起因しており、組織にダメージを与えます。

本記事では早期離職の背後に隠れるさまざまな原因と、人事が取り組むべき対策について紹介します。

早期離職の理由は何?調査から見える原因と人事が取り組みたい対策を紹介
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    早期離職の定義とは? 何年が目安?

    早期離職とは、従業員が入社後3年以内に離職することです。

    企業にとっては、採用や教育にかかるコストの損失につながるとともに、ほかの従業員のモチベーションが低下する恐れがあります。

    採用難の時代において、この問題はより深刻化しており、企業はできるだけ早期に原因の解明と対策を練る必要があります。

    若手の早期離職の現状

    若手の早期離職の現状について、厚生労働省がまとめたデータから確認しましょう。

    参照:『新規高卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)』厚生労働省
    参照:『新規大卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)』厚生労働省

    学歴別

    資料によると、令和2年(2020年)における早期離職率は新規高卒就職者が37.0%、新規大卒就職者が32.3%です。同年の就職率は、高卒・大卒ともに98%程度と高い一方で、約3人に1人が3年以内に離職していることになります。

    高卒就職者の早期離職率37.0%
    大卒就職者の早期離職率32.3%

    参照:『新規学卒者就職率と就職後3年以内離職率』厚生労働省

    業種別

    早期離職率は、業種によって大きな差があります。

    もっとも早期離職率が高い業種は、宿泊業・飲食サービス業で、高卒が62.6%、大卒が51.4%です。次いで生活関連サービス業・娯楽業で、高卒が57.0%、大卒が48.0%と高い離職率であることがわかります。

    早期離職率高卒者大卒者
    宿泊業・飲食サービス業62.6%51.4%
    生活関連サービス業・娯楽業57.0%48.0%

    いずれもサービス関連における離職率が高い傾向にあり、労働環境や人間関係のストレスなどが早期離職に関与していることが考えられます。

    事業所規模別

    事業所規模別の早期離職率を見てみましょう。従業員数が1,000人以上の大企業においては、高卒が26.6%、大卒が26.1%でした。

    一方で、従業員数が100〜499人規模の企業においては高卒が36.7%、大卒が32.9%、従業員数が5人未満の小規模企業では高卒が60.7%、大卒が54.1%と報告されています。

    早期離職率高卒者大卒者
    従業員数1,000人以上26.6%26.1%
    従業員数100〜499人36.7%32.9%
    従業員数5人未満60.7%54.1%

    企業の規模が小さくなるほど早期離職率が高く、大きな課題となっていることが読み取れます。

    若手の早期離職の理由ランキング

    独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)が公表している資料をもとに、若手がなぜ3年以内に退職を選ぶのか、その理由を見てみましょう。

    • 労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった
    • 賃金の条件がよくなかった
    • 人間関係がよくなかった

    参照:『第2回若者の能力開発と職場への定着に関する調査 ヒアリング調査)』労働政策研究・研修機構(p.19)

    労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった

    休日・休暇が取得しにくく、労働時間が長すぎるなどを早期離職の理由に挙げる人は男女ともに多い傾向にあります。同資料によると、男性28.0%、女性27.4%が理由に選んでいます。

    賃金の条件がよくなかった

    男性の28.5%が賃金の条件を理由に早期離職を選んでいます。女性は24.1%であることから、男性の方が賃金の条件を重視する傾向にあることがわかります。

    人間関係がよくなかった

    早期離職の理由を「人間関係」と回答した人も多く、男性26.7%、女性24.4%と報告されています。

    リモートワークなどによりコミュニケーションが希薄になった現代、職場の人間関係に悩む若手は男女ともに多いようです。

    このほか、男性の26.2%は「キャリアアップ」を理由に(女性は15.2%)早期離職を選んでおり、男女で違いがあらわれています。

    早期離職を引き起こす原因

    早期離職には、さまざまな原因があります。どのようなことをきっかけに早期離職を選ぶ若手がいるのか、詳しく確認していきましょう。

    • 家庭や個人の事情(結婚・育児・介護・病気)
    • 給与・待遇
    • 労働環境
    • 人間関係
    • 会社の将来性・安定性
    • 仕事内容
    • ノルマや責任の重さ
    • スキル能力とのマッチング

    家庭や個人の事情(結婚・育児・介護・病気)

    家庭の事情や個人のライフスタイルが合わないと、仕事を続けることが難しくなります。

    たとえば、結婚を機に引っ越したり、子育てや介護の責任が生まれたりすることで、勤務地や労働時間に問題が生じる場合が考えられます。

    とくに小さな子どもを育てる従業員や要介護者を支えるビジネスケアラーは、突発的な遅刻・早退、休みなどが発生しがちです。このようなときに、周囲のサポートがなければ、早期退職を考えるきっかけになってしまうでしょう。

    給与・待遇

    若手の早期離職理由の上位にもランクインしているように、給与や待遇面も原因の一つに挙げられます。

    昨今の物価高も影響し、従業員は給与に納得感を求める傾向にあります。適切な評価に基づいた納得感のある給与や、十分な福利厚生が提供されていないと、よい待遇の転職先に移ってしまうでしょう。

    労働環境

    労働環境の悪さは、従業員のストレスや不満を引き起こし、早期離職を促します。

    過重労働や不衛生なオフィス環境のほか、休暇が取りにくい社風など、ワークライフバランスを考慮していない環境もまた、早期離職を招いてしまうでしょう。

    人間関係

    職場内での人間関係の悪さは、従業員の早期離職に直結するといっても過言ではありません。

    上司や同僚とのコミュニケーションの問題、パワーハラスメントやセクシャルハラスメント、いじめなどを放置していると、従業員エンゲージメントが低下し、離職を早める結果になるでしょう。

    会社の将来性・安定性

    会社の将来性や安定性に不安があると、従業員はほかの安定した企業を求め、早期離職を決意するかもしれません。とくに新型コロナウイルス感染症流行後、その傾向が強まりました。

    経営状況の不透明さや業績の悪化は、従業員に不安を与えます。歴史が浅いベンチャー企業や景気に左右されやすい中小企業では、このような問題が多発する可能性があります。

    仕事内容

    求人票の仕事内容と実際の仕事内容に相違があると、離職を考える人は一定数います。

    たとえば、希望していた部署に配置してもらえなかったり、単調なルーティン作業しかさせてもらえなかったりすると、やりがいを感じられず、早期離職の引き金になります。

    ノルマや責任の重さ

    過剰なノルマや責任の重さは、従業員にストレスやプレッシャーを与えるため、早期離職を招く原因になります。

    ノルマを達成できないと責められるような環境は、精神面に悪影響を及ぼします。「どうにかしてノルマをこなさなければ」と追い詰められた従業員は、体調を崩し、不正行為に手を染める人もいるかもしれません。

    スキル能力とのマッチング

    従業員のスキルや能力と仕事内容がミスマッチであると、組織の生産性が下がるうえに、本人が不満やストレスを抱えてしまいます。自分のスキルを十分に活かせないと感じられる場合も同様です。

    ミスマッチな状況が続くと、スキルに見合った仕事を求めて、他社への転職を考え始めても不思議ではありません。

    早期離職が組織に与える影響

    早期離職は、組織へ多岐にわたる負の影響を及ぼすことがあります。代表的な4つの影響を解説します。

    • 人材投資コストが無駄になる
    • 対外的なイメージが悪化する
    • 後継者が育たない
    • 在籍者のモチベーションを下げる

    人材投資コストが無駄になる

    早期離職により、採用プロセスや新入社員の教育にかかったコストは無駄になります。

    企業は新たに人材を採用して、再び教育を行わなければならないため、採用にかかる費用や時間、人的リソースなどがさらに増加します。

    早期離職が繰り返されると、組織に与えるダメージはさらに大きくなるでしょう。

    対外的なイメージが悪化する

    早期離職が頻繁に起こる組織は、安定感や魅力が欠けていると見られます。

    とくに、近年はSNSの普及により、誰でも簡単に組織の内情を知ることができるようになりました。万一、悪い評判が世の中に拡散されてしまった場合、企業の信頼性が低下し、人材獲得や顧客獲得に影響を与えるでしょう。

    後継者が育たない

    早期離職が続くと、将来的に経験豊富な従業員が不足します。

    次世代リーダーを育成するには長期的な取り組みが必要です。若手が早期離職してしまうと、時間をかけて後継者を育てられません。その結果、組織の持続的な成長に支障をきたしてしまうでしょう。

    在籍者のモチベーションを下げる

    早期離職が頻繁に続くと、在籍しているほかの従業員のモチベーションを低下させてしまいます。従業員は同僚の離職を目にし、不安や不満を抱いてしまうかもしれません。

    状況が悪化すると、生産性の低下や離職率のさらなる上昇を招くことも考えられます。

    早期離職の対策【フェーズ別】

    組織への負の影響を回避するためにも、早期離職には、各フェーズで適切な対策を取りましょう。とくに、採用前の段階から手を打つことが重要です。

    フェーズ別に実施すべき早期離職対策を紹介します。

    採用前ミスマッチの防止
    採用後オンボーディングの充実
    日頃組織の環境改善

    採用前:ミスマッチの防止

    早期離職を防ぐには、採用前の段階から手を打つことが重要です。徹底した採用ミスマッチの防止に取り組みましょう。具体的には以下の通りです。

    • 求人情報に正確な情報を記載する
    • 選考基準や面接のプロセスを見直す
    • 入社後をイメージする機会を提供する

    求人情報に正確な情報を記載する

    職務内容や責任範囲、キャリアパス、社風などを明確に記載し、応募者に正しい情報を提示しましょう。これらの情報に虚偽があったり、不明瞭な情報があったりすると、入社後のミスマッチが起こり早期退職の原因につながります。

    選考基準や面接のプロセスを見直す

    早期離職を防ぐには、採用前に自社が求める人材を明確にし、面接で実施する質問内容をあらかじめ決めておくことも重要です。スキルだけでなく、価値観などもヒアリングし、組織文化への適合性も客観的に評価しましょう。

    前職の働きぶりを確認する「リファレンスチェック」を実施するのも一案です。組織と応募者の考え方、価値観にズレが生じると入社後のミスマッチにつながります。

    入社後をイメージする機会を提供する

    インターンシップや職場見学など実際の職場環境を体験してもらうことで、応募者の期待と現実のギャップを軽減できます。また、応募者から職場環境や待遇面などについて質問があった際には真摯に答えることもミスマッチを防げます。

    採用後:オンボーディングの充実

    早期離職の対策として、採用後に注力したいのは、オンボーディングを充実させることです。

    • 効果的な新人研修を実施する
    • コミュニケーションを取りやすい環境をつくる
    • メンター制度を導入する
    • 定期的なフィードバックを行う

    効果的な新人研修を実施する

    新入社員が組織の一員として早期に活躍・定着するために、計画的な研修プログラムを設計しましょう。一般的な座学研修ではなく、仕事の進め方や必要な知識、ルールなどを身につけるオンボーディングや、実務を行いながらスキルを身につけるOJTなどを行うことが必要です。

    活躍の場がすぐに提供されると、従業員のエンゲージメントが高まり、早期離職を防止できます。

    コミュニケーションを取りやすい環境をつくる

    新入社員が孤立しない環境整備は、早期離職を防止し組織への定着を促進できます。

    フリーアドレス制でほかのメンバーとコミュニケーションを取りやすくしたり、社内SNSやチャットツールを活用したテキストコミュニケーションを促したりして、できるだけ早く社内のメンバーと交流できるようにしましょう。

    メンター制度を導入する

    年齢の近い従業員を新入社員のメンターに据えることで、安心して会社生活が送れるでしょう。

    メンター制度では、仕事の指導だけでなく組織文化や人間関係などプライベートな相談にも応じることができます。困ったことや悩んでいることを気兼ねなく相談できる環境は、新入社員の定着率を向上させるでしょう。

    定期的なフィードバックを行う

    定期的な1on1ミーティングで、上司が新入社員の悩みや要望を聞き、適切なフィードバックを提供することで、早期離職を防止できます。業務進捗や目標設定に悩んでいるようなら、解決策をアドバイスするなど、早期に問題を特定して対処しましょう。

    日頃:組織の環境改善

    早期離職を防ぐために日頃から心掛けたい対策として、環境や制度の改善ほか、長期的な視点で一人ひとりのキャリアを支援していくことが挙げられます。

    • 労働条件や待遇を改善する
    • 評価制度や昇給・昇格制度を見直す
    • キャリア開発の機会を提供する
    • 働きやすい職場環境をつくる
    • 従業員エンゲージメントを強化する

    労働条件や待遇を改善する

    多様化する働き方に対応するため、労働条件や待遇の見直しが必要です。リモートワークの導入や、時短勤務など、家庭の事情を抱える従業員でも気兼ねなく働ける条件を設定しましょう。

    また、従業員に対して周囲がサポートできるよう、啓蒙活動や待遇の設定なども必要です。

    評価制度や昇給・昇格制度を見直す

    仕事ぶりを適切に評価し、公平で透明性のある評価制度を構築することで、従業員の早期離職を防止できます。仕事ぶりを適切に評価されないと、従業員はモチベーションを失い、早期離職を考えても不思議ではありません。

    業績や勤務態度を明確に評価できる評価基準や従業員へのフィードバック、評価結果に基づいて、給与や賞与、昇給・昇格制度を構築することが大切です。

    キャリア開発の機会を提供する

    従業員のキャリア目標に合わせた研修や昇進の機会を提供することも、定着率向上に有効です。

    従業員が今後どのようなポジションを目指したいのか、どのような業務にチャレンジしたいのかなど定期的にヒアリングし、実現するための機会を提供しましょう。

    リスキリングやリカレント教育制度などを導入するのも効果的です。スキルアップやキャリアアップを通じた自己成長の見通しが立つと、モチベーションアップにつながります。

    働きやすい職場環境をつくる

    快適なオフィス環境を整備することで、従業員の満足度向上と早期離職防止に役立ちます。

    制度だけでなく、働く環境の整備も早期離職を防ぐ取り組みの一つです。落ち着いて仕事に集中できる個室ブースの設置や、複数のメンバーとくつろぎながら会話できるカフェスペースの設置、快適なオフィスづくりも検討しましょう。

    従業員から意見を募り、積極的に改善していくことが大切です。

    従業員エンゲージメントを強化する

    日頃から従業員エンゲージメント向上に取り組むことで、早期離職防止と定着率向上に貢献できます。社内イベントにより社内の結束力の向上や、エンゲージメントサーベイの実施により、現状の把握など、取り組みは多岐にわたります。

    早期離職の理由を知って対策を

    若手従業員の早期離職は多くの企業にとって深刻な問題です。近年では転職が一般的になり、組織に不満があれば早い段階で離職を選択する人も増えています。

    早期離職を防ぐには、離職の原因を理解し、採用前の段階から候補者の不安や不満を解消するサポートが必要です。

    本記事で紹介したメンター制度の導入や労働環境の改善、エンゲージメントサーベイの実施などのアプローチを実践して定着率を高めましょう。

    早期離職の防止にタレントマネジメントシステム活用も

    早期離職の防止には、タレントマネジメントシステムの導入も有用です。

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