フィードバックとは|ビジネスでの意味や効果的なやり方、ポイントを徹底解説
フィードバックとは、行動や成果に対する評価や意見を相手に伝え、改善策を提案することです。仕事を進めるうえで、耳にする人は多いでしょう。
上司や部下との1on1などでフィードバックをする機会がある一方で、効果的なフィードバックを行うためのコツを学ぶ機会は少なく、悩む人も多いかもしれません。
そこで本記事ではフィードバックを実施するためのポイントや、効果を高めるスキルについて解説します。フィードバックについて悩んでいる人は、ぜひ参考にしてください。
フィードバックとは?
「フィードバック」とは、帰還や反応を意味する言葉であり、もともとはシステム工学や制御工学の用語として用いられていました。この意味でのフィードバックは、出力側に情報を伝え、システムの動作を調整するための手法を指します。エアコンなどの機器がその典型例です。
ビジネスにおけるフィードバックの意味
ビジネスにおけるフィードバックとは、行動や成果に対する評価や意見を指し、組織や個人の成長やパフォーマンス向上を促進するために用いられます。
主に以下のようなケースで実施されることがあります。
- 上司から部下へのフィードバック
- 同僚間でのフィードバック
- クライアントからのフィードバック
1on1などの定期的なパフォーマンス評価や目標設定の際に、上司は部下に対して過去の業績や行動に関するフィードバックを行います。また、成果物の提出を受けた際に、成果物の評価を行ったり、改善案を提示したりするのもフィードバックの一つです。
また、プロジェクトやチームワークにおいて、同僚間でお互いにフィードバックを交換したり、製品やサービス品質の向上のため、顧客からフィードバックを受けたりすることもあります。
フィードバックと混同しやすい用語の違い
ビジネスで用いられる用語には、フィードバックと混同されやすい言葉があります。その代表的なものを5つ、それぞれの単語の意味を交えつつご紹介します。
フィードフォワード
フィードバックは過去や現在にフォーカスし、行動や結果に対する評価を提供するものです。一方、フィードフォワードは未来にフォーカスし、計画や目標に基づいて現在の行動を促します。
フィードフォワードは、将来の目標や計画を達成するためのアドバイスが中心となるため、従業員のモチベーションを上げたいときや主体性を高めたいときに使用するとよいでしょう。
リアクション
リアクションとフィードバックは、ともに行動や情報に対する応答や反応を指す言葉ですが、明確な違いがあります。
フィードバックは、評価や意見を通じて相手の成長や学習を促すことが目的です。一方、リアクションは主に相手の行動に対する即座で素直な応答や反応を指すため、相手を評価するという意味では用いられません。
マネジメント
フィードバックは、個人・組織の行動や成果に対する評価・アドバイスであり、マネジメントは、組織・プロジェクト全体の計画や指導、運営に関する行動です。
フィードバックはマネジメントの一部であると考えられます。一方でマネジメントには、フィードバックよりも広範かつ戦略的な業務も含まれます。
チェックバック
チェックバックとは、内容をさかのぼって再確認する意味です。主にデザイナーやクリエイターが制作した成果物を検証し、必要に応じて修正指示を出すために利用されます。
対してフィードバックは、クリエイティブ業界以外でも使用されます。
レビュー
フィードバックは、行動や成果に対する具体的な評価や意見を指します。一方、レビューは、製品の品質やサービスの効果、プロジェクトの進捗など、特定の対象に対して全体的な評価や判断を行うことが一般的です。
フィードバックによって得られる4つの効果
フィードバックは、個人や組織の成長やパフォーマンス向上に役立てられます。フィードバックによって得られる主な効果を4つご紹介します。
従業員個人の成長
フィードバックは、個人が自身の強みや改善点を理解するための手助けです。具体的な評価やアドバイスは、従業員自身が客観的に自身の仕事への取り組み方を見直すきっかけとなり、自己成長を促すことが期待できます。
モチベーションの向上
ポジティブなフィードバックは、個人やチームのモチベーションを向上させる効果があります。良好な成果や行動を適切に評価することは、従業員の自信を高め、さらなる努力への意欲を生み出すきっかけになるでしょう。
目標の達成
フィードバックでは、過去の行動を評価するだけでなく、目標達成のための改善策や方向性を提示します。具体的な目標に対する評価やアドバイスは、個人やチームが目標に向かって進むための手がかりとなるでしょう。
コミュニケーションの促進
リモートワークが主流の環境や縦割り業務が常態化している職場など、従業員同士で活発にコミュニケーションを行うことが難しい場合があります。このような環境下でも、フィードバックを定期的に行うことで、メンバー間の理解が深まり、協力や協調が促進されます。
フィードバックは2種類に分けられる
フィードバックは、「ポジティブフィードバック」と「ネガティブフィードバック」の2種類に分けられます。それぞれの特徴や違いについて解説します。
ポジティブフィードバック
ポジティブフィードバックは、よい成果や優れた行動に焦点を当て、肯定的な言葉や評価を交えて行うフィードバックです。
ポジティブフィードバックは従業員のモチベーションを高め、よい行動を維持したり強化したりすることが期待されます。従業員自身の強みや成功体験が強調され、個人やチームの自信の向上にもつながるでしょう。
ネガティブフィードバック
ネガティブフィードバックは、不十分な成果や改善が必要な行動に焦点を当て、問題や不備に対する指摘を交えたフィードバックを指します。
ネガティブフィードバックの目的は、成長やスキル向上を促進し、課題に対処する手助けをすることです。具体的な失敗や改善点を指摘し、アドバイスを提示することで、受け手が前向きな変化に取り組むことを促す効果があります。
フィードバックに用いられる3つの手法
フィードバックは流れに沿って行うことで、相手に意見や評価、改善策が伝わりやすく、効果を高められます。効果的なフィードバックに用いられる主な手法を3つ紹介します。
SBI型(Situation-Behavior-Impact)
SBI型とは、以下の順番で相手の行動を評価するフィードバックの手法です。
1 | Situation(状況) |
---|---|
2 | Behavior(行動) |
3 | Impact(影響) |
具体的には、はじめにフィードバックが関連する具体的な状況や背景を述べたあと、評価の対象となる行動を指摘します。
最後に、その行動が他者や状況に与えた具体的な影響を示します。たとえば、以下のようにフィードバックを行います。
1.状況 | 先週のプレゼンテーションの際に |
---|---|
2.行動 | 資料の準備が不足していたため |
3.影響 | 理解が難しく、参加者に興味を持たれなかった |
SBI型の手法の特徴は、具体的な事例に基づいているため、受け手が状況を理解しやすいことです。フィードバックを行う際には、行動とその影響を直接的に示すことがポイントといえるでしょう。
FEED型(Fact-Example-Effect-Different)
FEED型は、以下の順番で当時の状況や相手の行動を説明するフィードバックの手法です。
1 | Fact(事実) |
---|---|
2 | Example(行動を取り上げる理由) |
3 | Effect(行動による影響) |
4 | Different(改善策) |
具体的には、はじめにフィードバックの対象とする行動を指摘します。そして、その行動を今回なぜ取り上げたのか、どんな周囲や状況にどんな影響があったのかを説明します。最後に、今後の改善策や代替案を提示し、次回からの行動につなげるようにフィードバックを締めくくります。
たとえば、以下のような手順です。
1.事実 | 先方との会議のスケジューリングを行ってくれた |
---|---|
2.行動を取り上げる理由 | スケジューリングをはじめるのが遅かった |
3.行動による影響 | 期日内に先方の日程を押さえられず、 プロジェクトの進行に影響が出てしまった |
4.改善策 | 次回からは、目的から逆算して行動をして欲しい |
FEED型は、主にネガティブフィードバックを行う際に用いられやすい手法です。具体的な改善策にまで言及するため、相手が次回からどう行動すべきかが理解しやすくなることが特徴といえます。
KPT型(Keep-Problem-Try)
KPT型は、以下の3つに焦点を当てたフィードバックの手法です。
1 | Keep(肯定的な側面) |
---|---|
2 | Problem(改善が必要な点) |
3 | Try(具体的なアクションや試すべき提案) |
具体的には、相手がすでに行っているよい行動や特徴を強調し、維持すべき点を伝えます。次に、改善が必要な点や問題を取り上げます。このとき、具体的で客観的な問題点を示し、それがなぜ問題なのかを説明しましょう。
最後に、以下のように問題解決のために試して欲しい具体的なアクションを提案します。
1.肯定的な側面 | 要領がよく、仕事が早い |
---|---|
2.改善が必要な点 | 成果物にミスが目立つ |
3.具体的なアクションや試すべき提案 | 成果物を出す前のチェックを重点的に行う |
KPT型を用いることで、肯定的な要素を取り入れつつも問題点を明示し、改善への具体的なアクションを提案するため、建設的なフィードバックを行えます。
フィードバックを効果的に行うポイント
フィードバックを効果的に行うために、押さえておくべきポイントを5つご紹介します。
具体的で客観的な情報を提供する
フィードバックは抽象的でなく、具体的かつ客観的な事実に基づいて行うことが重要です。
感情や主観的な意見ではなく、客観的な事実や、ときにはデータなどを交えながら相手の行動や成果を評価することにより理解が深まるため、行動の改善に結びつきやすくなります。
ポジティブかつ建設的に行う
問題点を指摘するだけでなく、相手の強みやよい点にも言及しましょう。改善を促すためのポジティブな目標や方向性を示すことも必要です。
相手の行動に対して行う
フィードバックを行ううえで重要なのは、相手の人格や性格ではなく、あくまでも「行動」に焦点を当てることです。人格や性格を否定したり指摘したりすることは、相手のモチベーションの低下を招くだけで、具体的な行動の改善につなげることが難しくなります。
フィードバックは行動の改善が目的であるため、フィードバックを建設的に行うことを心掛けましょう。
信頼関係を構築しておく
フィードバックは、単なる一方的な情報提供ではなく、相手に伝わって初めてその意味を成します。相手が自分の意見や改善策を理解し、実際の行動に反映するためには、日頃から相手との信頼関係を構築しておくことが非常に大切です。
円滑にフィードバックを行うために、日頃からコミュニケーションを取ることを心掛けておくとよいでしょう。
具体的な改善策や提案を示す
フィードバックでは、今後どのように改善できるかを示すことが重要です。問題を指摘して終わるのではなく、具体的な改善策や代替案を提案することで、次に向けてどのような行動を取ればよいのかを明確にします。
フィードバックの効果を高めるスキル
フィードバックの効果を高めるスキルに「ティーチング」と「コーチング」があります。それぞれのスキルについて解説します。
ティーチングとは
ティーチングとは、業務で必要な知識や技術を助言し、相手のスキルアップをはかる手法です。問題解決のための答えを相手に直接教えることが特徴で、短期間でのスキル向上が期待できます。
コーチングとは
コーチングとは、相手の目標達成を間接的に支援する手法です。ヒントを与えたり、みずから答えを導くための行動を促したりすることで、主体性や自主性を育むことが期待できます。ティーチングのように、問題解決のための答えを直接教えることはしません。
それぞれの違いと使い方
ティーチングとコーチングの違いを理解し、適切に使い分けることで、フィードバックの効果を高められます。
ティーチング | コーチング | |
---|---|---|
目的 | ・スキルや知識の習得 | ・スキルやパフォーマンスの向上 ・目標の達成 |
指導方法 | ・命令 ・指示 | ・支援・支持 |
どのように | ・OJT ・答えや手本を見せる | ・質問する ・考えさせる ・答えを引き出す |
使用場面 | ・新入社員の研修や育成 など | ・管理職の育成 など |
まとめ
従業員のスキル向上や成長を促進するためには、適切なフィードバックが不可欠です。
適切なフィードバックは従業員のパフォーマンス向上に役立ち、企業の生産性にもよい影響を与えます。従業員のレベルやスキルの習熟度にあわせて、本記事を参考に適切なフィードバックを心掛けてみてください。
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