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グリット(grit)とは? 意味と成功者に共通するやり抜く力を鍛える方法

グリット(grit)とは、困難に直面してもあきらめず、目標を達成する力のことです。社会的・経済的な成功者に共通する要素として注目を集め、教育現場や人材育成においても重要視されています。

本記事では、グリットの意味や構成要素、グリットを育むための方法を解説します。

グリット(grit)とは? 意味と成功者に共通するやり抜く力を鍛える方法
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    グリット(grit)とは

    グリット(grit)とは、「やり抜く力」のことです。どのような困難にも決してくじけず、根気強く努力して目標を達成する力を指します。

    とくに、長期的な目標達成や結果との関連性が高く、数か月先・数年先の目標に向けて継続的に粘り強く取り組める力といえるでしょう。

    グリットは、近年注目を集める非認知能力の一つです。個人の能力は、認知能力(IQ)と非認知能力(EQ)の2種類に分けられ、それぞれの概要は以下の通りです。

    認知能力(IQ)計算力や思考力、言語力など、数値であらわせる能力
    非認知能力(EQ)自主性や協調性など、数値であらわせない能力

    近年は、社会的・経済的な成功や人生の満足度向上には、認知能力よりも非認知能力が影響するのではないかと考えられています。教育現場においてもグリットをはじめとする非認知能力に注目が集まり、学生の自主的な学習を促す教育が重視されています。

    グリットという概念を初めに提唱したのは、ペンシルバニア大学教授で心理学者のアンジェラ・リー・ダックワース氏です。ダックワース氏は「社会的成功を収めるためには、生まれ持った知能や才能よりもやり抜く力こそが重要である」と考え、グリット理論を提唱しました。

    グリットは生まれ持った才能とは無関係であり、後天的に身につけられるものとされています。本人の心がけや取り組み次第で、何歳でも身につけられ、高めることが可能です。

    GRIT(グリット)理論について

    グリットの提唱者であるダックワース氏は、シカゴの学校で調査を実施しました。すると、グリットを持つ学生ほど、学校を途中で辞めずに卒業している確率が高いことがわかったのです。

    この結果を踏まえて、ダックワース氏は以下の3つの考え方に基づく「グリット理論」を提唱しました。

    • 生まれつきの才能や知能とは無関係である
    • 失敗を恐れずにチャレンジすることが重要である
    • 長期間、継続的に根気強く努力する必要がある

    話題になったきっかけ

    グリットが話題になったきっかけの一つは、世界中のさまざまな著名人が登壇する講演会プラットフォームの『TED』で、グリットに関するプレゼンテーションが行われたことです。

    提唱者であるダックワース氏がグリットを紹介したことで、世界中から注目を集めました。

    グリット(grit)の意味|成功者に共通する4要素

    グリットは、以下の4つの要素で構成されています。

    Ggutsガッツ情熱
    Rresilienceレジリエンス回復力
    Iinitiativeイニシアティブ自発性
    Ttenacityテナシティ根気強さ

    G=guts(ガッツ)=情熱

    Guts(ガッツ)は「情熱」「闘志」「根性」などを意味する英語です。目標達成の過程では、さまざまな困難に直面するケースが少なくありません。やり抜く力を持つためには、困難に立ち向かう情熱が不可欠です。

    R=resilience(レジリエンス)=回復力

    Resilience(レジリエンス)は「回復力」「復元力、「粘り強さ」などを意味する英語です。挑戦には失敗がつきものであり、目標を達成するためには、何度失敗しても気力を回復させ、努力を続ける粘り強さが必要です。

    I=initiative(イニシアティブ)=自発性

    Initiative(イニシアティブ)とは「自発性」「主導権」などを意味する英語です。グリットを持つためには、みずから目標を設定し、自主的に努力を続ける姿勢が必要とされます。

    T=tenacity(テナシティ)=根気強さ

    Tenacity(テナシティ)とは「根気強さ」「執念」などを意味する英語です。困難やトラブルにも負けず、最後までやり抜くためには、目標達成に対する執念が必要とされます。

    グリットには良い・悪いがある

    やり抜く力とされるグリットには、「良いグリット」と「悪いグリット」があるといわれています。

    良いグリットとは、以下の8つの要素をすべて満たした状態です。

    1. 情熱
    2. 幸福感
    3. 目標設定
    4. 自制心
    5. リスクテイキング
    6. 謙虚さ
    7. 粘り強さ
    8. 忍耐

    一方、悪いグリットとは、上記の8つの要素がどれか1つでも大きく欠けている状態を指します。

    良いグリットは自分にも周りにも良い影響を与えますが、悪いグリットは自己陶酔や嫉妬を招きます。

    たとえば、8つの要素のうち「謙虚さ」が大きく欠けていると、「情熱」や「粘り強さ」などが悪い方向に傾き、周囲のアドバイスにあまり耳を傾けない状態に陥ってしまうでしょう。また「幸福感」が大きく欠けている状態では、いくら目標を達成できても人生の満足度は向上しません。

    悪いグリットが発揮されると努力の方向性を誤り、結果的に目標から遠ざかってしまうリスクも考えられます。8つの構成要素をきちんと心得て、良いグリットを持っている状態を目指しましょう。

    グリット(grit)【やり抜く力】と成功の関係

    グリットと成功の関係性については、世界各地でさまざまな研究が行われ、以下のような結果が確認されました。

    • スペリング・コンテスト(英単語のつづりの正確さを競う大会)の順位予測に、参加者のグリットが有効に働いた
    • 陸軍士官学校における退学率の予測に、SAT試験(アメリカにおける大学受験の統一試験)や体力テストなどの総合評価よりもグリットが有効に働いた
    • グリットが高い兵士は、グリーンベレーの過酷な特殊訓練を完遂しやすいことがわかった
    • グリットが高い販売員は、仕事を辞めにくいことがわかった
    • 学位を取得するなどの教育レベルが高い人は、グリットが高い傾向がある

    参照:『日本語版グリット尺度の作成および信頼性・妥当性の検討』竹橋 洋毅、樋口 収、尾崎 由佳、渡辺 匠、豊沢 純子
    参照:『日本人児童を対象としたグリットの因子構造の検討』宮下 達哉、大森 哲至、成家 篤史、宮里 翔太、山村 豊、岡 隆

    『日本語版グリット尺度の作成および信頼性・妥当性の検討』の中では「グリットが高い人は、グリットが低い人と比べて高水準の努力を続けやすいことから、目標達成能力が高いと考えられる」と述べられています。

    このような複数の研究から考えて、成功する人の共通点に「やり抜く力」すなわちグリットが関係している可能性が高いといえるでしょう。

    GRIT(グリット)がある人の特徴

    グリットが高い人には、以下のような特徴があります。

    • 興味に一貫性がある
    • 未熟な部分を改善できるように試行錯誤してトライ&エラーを繰り返す
    • 努力を維持できる
    • 機会損失を低く評価する

    興味に一貫性がある

    仕事で大きな成果を上げたり、自分にとっての一大目標を達成したりするためには、目標に対して高い関心を持ち続けなければなりません。グリットが高い人は、興味に一貫性があり、同じ目標への情熱を長期間維持できると考えられています。

    未熟な部分を改善できるよう試行錯誤するトライ&エラーを繰り返す

    グリットが高い人は、苦手なことにも積極的に取り組み、試行錯誤を繰り返しながら粘り強く努力する特徴があります。何度失敗してもあきらめず、未熟な部分を改善するため、根気強く訓練や学習を積み重ねることが大切です。

    努力を維持できる

    グリットが高い人は、目標を達成するために高水準の努力を継続できる傾向があります。

    難関資格の取得など大きな目標を達成するためには、みずから進んで継続的に努力する姿勢が欠かせません。グリットが高い人は、自身が掲げた目標を常に見据え、粘り強く努力できる資質を備えているとされています。

    機会損失を低く評価する

    グリットが高い人は、長期にわたって目標に取り組むことによる機会損失を低く評価する傾向があります。「自分にはもっと別の道があるのではないか」と悩むことなく、脇目もふらずに努力できる人は、どれほど大きな目標でも達成できる可能性が高いでしょう。

    グリット(grit)を測る方法

    続いて、グリットの計測方法について解説します。

    グリットドスケール

    グリットスケールは、グリットの提唱者であるダックワース氏が開発した測定方法です。自分の特性について以下の10項目を5段階で評価し、スコアの合計を10で割った数字でグリットを計測します。

    まったく当てはまらないあまり当てはまらないある程度当てはまるほとんど当てはまるまったく当てはまる
    新しいアイデアが出てくると、そちらに気をとられてしまう。54321
    私は挫折してもめげない。簡単にはあきらめない。12345
    目標を設定しても、すぐ別の目標に乗り換えることが多い。54321
    私は努力家である。12345
    達成までに数か月かかるような長期のタスクに、ずっと取り組み続けることができない。54321
    一度はじめたことは最後までやり遂げる。12345
    興味の対象が毎年のように変わる。54321
    私は勤勉である。12345
    何かに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまうことがある。54321
    重要だと思う目標を、挫折しても乗り越えて達成した。12345

    参照:『やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける』ダイヤモンド社

    スコアが高ければ高いほど、その人はグリットが高いと判断できるでしょう。

    ただし、グリットスケールで計測できるグリットはあくまで現在の状態であり、そのときどきの状況やメンタル面によっても左右されます。

    日本語版グリッド尺度

    『日本語版グリッド尺度』は、グリットの提唱者であるダックワース氏の開発した測定方法をもとに、日本の研究者たちが日本語版を作成したものです。

    グリット尺度は計12個の設問で構成され、グリットを育むために必要な「興味の一貫性」因子と「努力の粘り強さ」因子の2つのグループに分けられます。

    「興味の一貫性」因子新しいアイデアや計画によって、それまで取り組んでいたことから注意がそれることがある
    あるアイデアや計画に一時的に夢中になっても、あとで興味を失うことがある
    数か月以上かかるような計画に集中して取り組み続けることは難しい
    私の興味は年々変わる
    目標を決めても、あとから変えてしまうことがよくある
    数か月ごとに新しい活動への興味がわいてくる
    「努力の粘り強さ」因子私は精魂傾けてものごとに取り組む
    重要な試練に打ち勝つため、困難を乗り越えてきた
    数年にわたる努力を要する目標を達成したことがある
    私は頑張り屋だ
    始めたことは、どんなことでも最後までやりとげる
    困難があっても、私はやる気を失わない

    参照:『日本語版グリット尺度の作成および信頼性・妥当性の検討』竹橋 洋毅、樋口 収、尾崎 由佳、渡辺 匠、豊沢 純子

    上記の設問を「非常に当てはまる」「かなり当てはまる」「少し当てはまる」「あまり当てはまらない」「まったく当てはまらない」の5択で回答します。興味の一貫性因子は当てはまるほど点数が低く、努力の粘り強さ因子は当てはまるほど点数を高く評価します。

    この日本語版グリット尺度を用いた研究では、年代が高いほど高いグリットを持つという結果が導き出されました。

    グリット(grit)を鍛える、伸ばす方法

    グリットを育むためには、以下の4つの方法を実践することが大切です。

    • 新しい課題に挑戦し続ける
    • ストレッチ目標に挑戦する
    • 小さな成功を積み重ねる
    • グリットを持つ人と働く

    新しい課題に挑戦し続ける

    新しい課題への挑戦は、グリットを高める絶好のチャンスです。やりがいを感じられるような目標を常に設定すれば、グリットを発揮する機会を維持できます。

    ストレッチ目標に挑戦する

    ストレッチ目標とは、背伸びをすることで初めて達成できる目標です。現在の能力にさらに努力を加える必要がある目標を設定し、達成するための工夫を継続しましょう。

    その際、目標達成の指標や期限を明確に定めることが大切です。

    小さな成功を積み重ねる

    始めから大きな目標に挑戦すると、達成のハードルが高く挫折してしまう恐れがあります。

    最初はスモールステップを意識し、小さなことから挑戦して成功体験を積み重ねていくとよいでしょう。これにより「自分ならできる」という自信が育まれ、困難に打ち勝つ力を鍛えられます。

    グリットを持つ人と働く

    人は環境の影響を受けやすいものです。意欲的に働く人が多い職場では自然とモチベーションが上がり、反対に働く意欲の低い人が多い職場では、つられてモチベーションが下がってしまいます。

    グリットを持つ同僚や上司・部下と一緒に働くと、周囲からよい影響を受けて自分自身のグリットも高められるでしょう。

    従業員のグリットを育てるには?

    グリットとは、困難に直面しても粘り強く努力を続け、目標を達成する力です。複数の研究により、グリットが高い人は目標達成能力が高く、あらゆる分野において高い成果を上げていることが示唆されています。

    人材の採用・配置においても、従業員のグリットを考慮すると、退職やドロップアウトのリスクをある程度は予測できる可能性があります。コスト削減やパフォーマンスの最大化につながるため、本記事で紹介したグリットを鍛える方法を試してみてもよいでしょう。

    また、従業員のグリッドを育てるためには、適切な目標設定が必要です。まずは小さな目標で成功体験を積み重ね、徐々に高めの目標を設定するように促しましょう。

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