ラテラルシンキングとは? ビジネスに必要? 鍛える方法やロジカルシンキングとの違いも解説

ラテラルシンキングとは? ビジネスに必要? 鍛える方法やロジカルシンキングとの違いも解説

ラテラルシンキングとは、物事を多角的な視点から捉え、柔軟な発想を促す考え方です。ビジネスでは、既存の常識や前提条件にとらわれず、新しい発想を生み出すことが求められます。そこで注目されている思考法がラテラルシンキングです。

本記事では、ラテラルシンキングの概要や、論理的思考をあらわすロジカルシンキングとの違い、ビジネスで活用する意義、発想力を高める鍛え方などを解説します。

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    ラテラルシンキングとは? わかりやすく解説

    ラテラルシンキングを日本語に訳すと「固定概念にとらわれない思考法」です。

    ラテラルは英語でLateral(側面・水平)と表記します。「水平思考」という表現がなぜ「固定概念にとらわれない」という意味に派生するのでしょうか。

    ラテラルシンキングの「水平」とは、固定的な枠組みや前提にとらわれない自由な発想の可能性を意味しています。

    通常、人は問題解決や発想の際に特定の方向やパターンに固執してしまいがちです。しかし、水平思考においては、固定概念や既存のパターンにとらわれず、さまざまな視点やアプローチを探求し、新しい発想を生み出そうとします。

    水平線から眺める景色は、前方や上方よりも広がりがあり、異なる視点や要素を捉えることができます。つまり、水平思考とは、既存の常識や固定概念から離れ、横断的な視野を持ち、新しいアイデアや解決策を探求する考え方です。

    このような発想の自由度や多角的なアプローチが、ラテラルシンキングの特徴です。

    ラテラルシンキングで成功した企業

    ビジネスシーンでのラテラルシンキングの例として、スウェーデンの家具メーカーIKEAがあります。IKEAは、家具業界の従来のビジネスモデルに挑戦し、独自の革新的アプローチを取りました。

    従来、家具は組み立てられた状態で販売されることが一般的でした。しかし、IKEAの創業者はラテラルシンキングを用いて、家具をバラバラのパーツで販売し、顧客に組み立ててもらうビジネスモデルを考案しました。これにより、配送コストを大幅に削減し、低価格で家具を提供することに成功しています。IKEAの登場以降、同様の戦略でビジネスを展開する企業が増えています。

    ラテラルシンキングにより、IKEAは新しい市場を開拓し、手ごろな価格で質の高い家具を提供し、家具業界に新たなビジネスモデルを築きました。

    ラテラルシンキングの提唱者

    ラテラルシンキングは、エドワード・デ・ボノ博士によって1960年代に提唱された思考法の一つです。デ・ボノ博士はもともと医師で、戦争負傷者の治療にあたっていました。しかし、当時と現代では医療設備が大きく異なります。

    そのような状況で「負傷者を治療する最善の方法はないか」と考えたことが、ラテラルシンキングの起源といわれています。その後、デ・ボノ博士はこの考え方を心理学に応用し、現代においてラテラルシンキングとして広まりました。

    ラテラルシンキングは、現在ではビジネスシーンでも広く活用されています。

    ラテラルシンキングは必要?

    先駆者になるための思考法として、ラテラルシンキングは必要といえるでしょう。市場競争から抜け出すためには、他社に先駆ける必要があります。

    日本で初めてiPhoneを販売したソフトバンクは、顧客のニーズに応えて利用者数を大きく伸ばしました。「iPhoneを使いたい」というニーズに、国内の通信会社で最初に対応した結果といえます。

    ラテラルシンキングとほかの思考法との違い・関係性

    ラテラルシンキングと対照的な思考法に「ロジカルシンキング」と「クリティカルシンキング」があります。ラテラルシンキングと2つの言葉の違いを解説します。

    ロジカルシンキング

    ロジカルシンキングとは論理的思考と訳され、前提から合理的に結論を導き出すことを重視しています。因果関係を探り、矛盾のない筋道を立てることが目的です。科学的アプローチや問題解決に適した思考法といえます。

    クリティカルシンキング

    クリティカルシンキングとは批判的思考と訳され、情報や主張を分析し、客観的に吟味・評価することです。根拠の妥当性を精査し、偏りのない公正な判断を下すことが目的です。さまざまな情報を的確に判断するうえで重要視されています。

    ラテラルシンキングと2つの思考法の違い

    ロジカルシンキングやクリティカルシンキングが合理性や論理性を重視するのに対し、ラテラルシンキングは規範的な発想から解き放たれ、自由で柔軟な発想を重視する点に大きな違いがあります。

    ロジカルシンキングやクリティカルシンキングが分析的であるのに対して、ラテラルシンキングは創造的な思考法といえるでしょう。

    3つの思考法はそれぞれの欠点を補い合う関係

    ラテラルシンキング・ロジカルシンキング・クリティカルシンキングに優劣はありません。

    根拠の妥当性を精査し、偏りのない公正な判断を下すことが目的である場合にはクリティカルシンキングが、一方で新しいアイデアや解決策を探求する場合にはラテラルシンキングが適しています。

    3つの思考法を適切に組み合わせることで、より効率的に戦略を策定できるほか、問題が発生した場合もより迅速に対応できるでしょう。

    ラテラルシンキングを取り入れるメリット

    ビジネスにおいて、ラテラルシンキングを取り入れるメリットを紹介します。

    • 創造性の向上
    • 問題解決力の向上
    • 対応力の向上

    創造性の向上

    ラテラルシンキングによって、新しい視点やアイデアを探求する能力が向上します。

    従来の思考の枠を超えて考えることで、困難な問題や挑戦に対して新しい解決策を見つけやすくなります。特に、新しいプロジェクトや創造的なソリューションが求められる状況で役に立つでしょう。

    問題解決力の向上

    ラテラルシンキングは、異なる角度から問題を検討することで、新しい解決策を迅速に見つけられるというメリットがあります。スムーズなプロジェクトの進行を助け、期限内に目標を達成する可能性が高まります。

    対応力の向上

    ラテラルシンキングが個人に定着すると、困難な問題や予期せぬ障害に対する対処能力が向上し、多角的に状況を分析できます。予期せぬ問題にも柔軟に対応できるようになるでしょう。

    ラテラルシンキングの実践手順

    ラテラルシンキングを実践するには、どのような手順で考えればよいでしょうか。思考の順序を解説します。

    1. 気づく
    2. なぜを追求する
    3. ならばと考える
    4. どうやって解決するかを考える
    5. さらに不満はないかを検討する

    1.気づく

    現状に対する不便さや不満に気づくことが第一歩です。ささいなことでも構いません。不満に気づくと、解決しようとする思考が生まれます。

    2.なぜを追求する

    不満の原因を「なぜ」と問いかけ、既成概念にとらわれずに思考をめぐらせます。そうすると、飛躍した発想や複数のアイデアが生まれる基礎がつくられます。

    3.ならばと考える

    「なぜ」の問いかけから立てた仮説に対して「ならばどうするべきか」を考えます。このとき、複数の理想的な状態を想定すると、画期的なアイデアが生まれる可能性が高まります。

    4.どうやって解決するかを考える

    理想とする状態を実現するためには「どうやって」「何をどのようにすればよいか」と具体的な解決策を複数案検討します。発想の幅を広げることが重要です。

    5.さらに不満はないかを検討する

    ステップ1〜4を一連の流れとして、理想状態に対してさらに不満がないかを再度検討します。

    ステップを繰り返してラテラルシンキングを習慣化することで、物事を多角的に見る視点や、新しいアイデアを生み出す発想力、課題解決への具体的なアプローチ力が鍛えられます。

    ラテラルシンキングはビジネスで活用できる?

    ビジネスにおけるラテラルシンキングの活用例を、オズボーンのチェックリスト法を通じて解説します。

    オズボーンのチェックリスト法は、ブレインストーミングの考案者アレックス・F・オズボーン氏による発想法です。9項目の質問に答えることで、新たな発想の種を発見できるとされています。

    9項目は以下の通りです。

    1.転用(Other uses)既存の製品やサービスをそのままの形で、全く異なる用途に使えないかを検討します。
    2.適合・応用(Adapt)ほかの業界や分野で成功している事例を参考に、自社の製品やサービスに適用できないかを検討します。
    3.変更(Modify)製品やサービスの一部分のみを変更することで、新たな魅力や価値を生み出せないかを検討します。
    4.拡大(Magnify)製品のサイズを大きくしたり、サービスの提供範囲を広げたりすることで、新たな価値を生み出せないかを検討します。
    5.縮小(Minify)反対に製品を小型化したり、サービスの提供範囲を狭めたりすることで、新たな需要を掘り起こせないかを検討します。
    6.代用(Substitute)製品の一部素材や製造工程などを、より低コストのものに置き換えられないかを検討します。
    7.再配置(Rearrange)製品の部品の配置を変更したり、サービスの提供手順を入れ替えたりして、新たな価値を生み出せないかを検討します。
    8.逆転(Reverse)これまでの考え方や手順を逆転させて、新たな発想が生まれないかを検討します。
    9.結合(Combine)既存の製品やサービスを組み合わせて、新たな価値を生み出せないかを検討します。

    ラテラルシンキングを鍛えるには?

    ラテラルシンキングのように、固定観念や既成の概念にとらわれず、新しいアイデアを出す力を鍛えるにはどのような方法が有効でしょうか。

    ラテラルシンキングの鍛え方を紹介します。

    • 異なる視点で物事を考える
    • 制約を設ける
    • 問い直しをする
    • アイデアを自由に出す

    異なる視点で物事を考える

    ラテラルシンキングを鍛えるためには、自分の立場や経験だけでなく、他者の立場や異なる文化・背景を持つ人々の視点から物事を考えることが重要です。異なる視点を持つと、新しいアイデアや解決策が生まれることがあります。

    たとえば、子どもの純粋な視点で物事を考えたり、極端な例を想像してみたりするとよいでしょう。

    制約を設ける

    あえて制約を設けると、通常は考えつかないようなアイデアを引き出し、ラテラルシンキングを鍛えられます。

    たとえば、時間を限定して問題解決を試みることで、新しい解決策が見つかることもあります。制約を苦に感じる人と、そうでない人がいるので、どちらのタイプかを把握するために試してみるのも一つの方法です。

    問い直しをする

    物事の前提や仮定を問い直すことで、ラテラルシンキングを鍛えられます。たとえば「問題の本質は何か?」や「これが唯一の解決策なのか?」といった問いを自分に投げかけてみます。既存の枠組みから脱却することで、創造的な思考が促進されるでしょう。

    アイデアを自由に出す

    ラテラルシンキングを鍛えるには、ブレインストーミングなど、アイデアを自由に出し合うセッションを設ける方法も有用です。

    このとき、批判や評価はせずに、できるだけ多くのアイデアを出すことを目指しましょう。あとからアイデアを組み合わせたり、改良したりすることで、新しい解決策が生まれやすくなります。

    ラテラルシンキングを鍛えるための問題例

    ラテラルシンキングのトレーニングになる問題を用意しました。あくまでも参考として、挑戦してみてください。回答を導く思考順と一部の回答例をあわせて解説します。

    問題1.オレンジの分け方

    問題
    3人の子どもに13個のオレンジを公平に分けるにはどうしたらよいですか
    回答例
    ・オレンジをジュースにして3等分する
    ・最初に4つずつに分けて、残りの1つを3等分する

    このように発想の枠を広げることで、新しい解決方法が生まれる可能性があります。

    問題2.マカロニの分け方

    問題
    300gのマカロニを料理で使いたい。現在持っているのは500g入りの袋のみです。どうやって300gを測りますか。

    100gずつを3回測るのは手間がかかります。もっとも簡単な方法を考えてみましょう。

    問題3.紙コップの売り上げ

    問題
    紙コップの売り上げを伸ばす方法を考えてください

    紙コップの用途や販売の対象、形状や素材など、既存の概念から離れて物事を捉え直すことで、新しい魅力や需要が見つかる可能性があります。

    まとめ

    ラテラルシンキングとは、物事を多角的な視点から捉え直し、新しい発想を生み出す思考法です。

    論理的思考や分析的思考とは異なり、既存の概念や前提条件から離れて、固定観念にとらわれずに物事を別の角度から見つめ直すことで、新しいアイデアを生み出すことを目指します。

    単に視点を変えるだけでなく、テーマを抽象化したり広い視野から捉え直したりして柔軟に発想を巡らせることが重要です。

    ラテラルシンキングを鍛えるには、日常生活の中で意識的に訓練を重ねる必要があります。本記事で紹介したオズボーンのチェックリスト法などを活用し、物事を多様な角度から見つめ直す練習を行うと、発想の幅を広げられ、ラテラルシンキングを鍛えられるでしょう。