目的とは【意味をわかりやすく】目標との違いと手段の目的化を防ぐ方法を解説
目的と目標は、しばしば混同される言葉ですが、それぞれ異なる意味合いを持ちます。違いを理解することは、個人や組織が設定した目標や目的を達成するために大切です。
本記事では、「目的」の本質的な意味を、「目標」との違いと関連を踏まえて、わかりやすく解説します。また「手段の目的化」についても取り上げ、防止するための方法も紹介します。
目的の意味とは
目的とは、実現しようとして目指す「ゴール」です。
組織や個人が「達成したい」「将来こうなりたい」と描く理想の状態を指します。目的は抽象的で測定しにくい性質がある一方で、組織や個人にとって重要なものです。
目的と目標の違いとは
「目的」と混同されがちな言葉に「目標」があります。これらは異なる概念をもち、目的を達成するために設定する指標が目標です。
大きな違いは、目的が最終的に何を達成したいのかを示すのに対し、目標は、達成に向けてどのような具体的行動を取るべきかを示します。
具体例
目的は目指すべき理想の状態であるのに対し、目標は具体的な行動指標です。たとえば「健康経営による働きがいの向上」という目的を掲げる企業は年々増えています。
この目的に対して「ウェアラブル端末を配布し従業員の健康データを取得する」「収集した健康データを分析して必要とされる福利厚生制度を取り入れる」といった具体的な計画が目標といえます。
参考:『健康経営、最新テクノロジーで働きがい向上』日本経済新聞
目的の類語・言い換え
目的と同じような意味合いで使われる言葉はいくつかあります。ここでは類語や言い換えられる言葉を紹介します。
趣旨
趣旨とは、ものごとを実行する際の狙いや理由あるいは理念です。
「目的」と似たような側面を持ちますが、目的は将来の理想像、ゴールをあらわすのに対し、趣旨はより具体的な行動や計画の意味合いをあらわす点に違いがあります。
たとえば、趣旨を説明する場合は「なぜその行動を計画しているのか」といった理由も必要です。
意義
意義とは、ものごとの特別な意味や価値です。目的は物事が向かうべき方向を示すのに対し、意義は目的や目標が達成された場合の意味や効果を示します。
また、意義は組織や個人にとって重要性を持ち、「価値」や「意味」と言い換えられることもあります。たとえば「我が社にとってこのプロジェクトは意義がある」と表現した場合、そのプロジェクトはほかよりも特別で重要度の高い、価値あるものだといえるでしょう。
理由
理由とは、行動や決断の背景にある思いや根拠です。目的や目標の設定には「なぜそれを達成したいのか」という根拠があります。
たとえば、企業が「地域社会の環境保護」を目的にした場合、理由は自社工場が美しい自然環境に恵まれており、自然を守りたいという思いなどが挙げられます。
狙い
狙いは、特定の目標や効果を意図的に追求することです。
目的も狙いも「目指す状態」を指す言葉ですが、目的は「長期的に目指すべきゴール」であるのに対し、狙いは「短期的かつ具体的に目指している地点」という違いがあります。
また、目的は大局的な方針を示していますが、狙いはより局部的な方針を示しているといえるでしょう。
背景
背景は、事象や状況の前提や経緯を指す言葉です。目標や目的が設定される際には、その決定に影響を与えた背景があります。
たとえば、採用戦略の目的が「優れた人材を確保し、組織の成長を促進する」だとします。そこには、市場競争の激化による人材需要の高まりへの対応として、戦略的な採用が必要となったからという「背景」があります。
目的は最終的なゴールであり、背景はその目的が生まれた状況や要因です。
方針
方針は行動の方向性や基本原則を指します。組織や個人が目的を達成するための基本的な進め方やルールといえるでしょう。目的が「ゴール」、目標が「ゴールまでの指標」だとすれば、方針は「スタンス」「やり方」といった行動の基盤です。
たとえば、従業員の働きがいを向上させ、組織の生産性を高めたいとした場合「柔軟な労働環境の構築」「スキル開発への投資」など、従業員エンゲージメント向上に資する進め方が、方針です。
動機
動機は、ものごとが起こるきっかけや、特定の状況下で行動を決定する意識的・無意識的な要因です。たとえば、医師になることを志望している人の目的は「1人でも多くの人を救いたい」などがあります。
その動機は「子どもの頃に病気の自分を助けてくれた医師との出会い」などがあるでしょう。つまり、動機とは目的を持つことになった理由を意味します。
意図
意図は「考え・思惑」のほか「目論見」という意味があります。
たとえば、人事の目的が「従業員のエンゲージメント向上」である場合、意図は「新しいコミュニケーションプログラムを導入することで、チームビルディングと協力関係を実現する」などが挙げられます。
目的の対義語は手段
目的の対義語は「手段」であり目的達成に向けた方法を指す言葉です。より詳しく述べれば、目的が最終的なゴールを示すのに対し、手段はゴールに到達するための手順や仕組みです。
たとえば、組織が「利益最大化」を目的に掲げた場合、営業活動やコスト削減などが手段となり、これらが目的達成に貢献する要素です。
目的が「何を達成したいか」であるなら手段は「それを達成するために何を使うか」と表現できます。
手段の目的化とは
あくまでも「手段」は目的達成に向けた方法です。手段は具体的かつ測定が可能であり、簡単に結果を評価できます。そのため、いつの間にか高評価を獲得することが目的になってしまうことは少なくありません。これを「手段の目的化」といいます。
目的と手段が入れ替わる例
目的と手段が入れ替わる例には次のようなものがあります。
例1
Aさんの目的は「より健康的な体」です。そのために、体重を減らすことにしました。
ところがいつの間にかAさんは、体重を減らすことが優先的になってしまい、無理な食事制限により、体調を崩してしまいました。
本来の目的である「健康」を見失い、手段であった「体重を減らす」が目的化してしまったためです。
例2
B社の目的は「従業員満足度の向上」であり、手段として選択したことは、従業員満足度調査を定期的に実施することです。
しかし、調査スコアの向上が優先され、従業員満足につながる施策があと回しになりました。結果、本来の目的から大きく外れるだけでなく、以前よりも離職者が増えてしまいました。
これは、手段の数値的結果に焦点を当ててしまったためです。
例3
中小企業のC社の社長はマネージャーに「今後毎月必ず部下と1on1ミーティングを実施するように」と指示を出しました。
社長が出した支持の理由は、大手企業は毎月1on1を実施しているからというものです。マネージャーは社長からの指示に従い、部下と1on1を実施しましたが、意図がわからないため、ミーティングを行うことが目的になってしまいました。
その結果、中身のない1on1ミーティングばかりが実施され、組織全体の生産性の低下につながってしまいました。目的がないまま手段だけを実行してしまうと時間や労力の無駄が生じてしまいます。
業務における手段の目的化を防ぐ方法
手段が目的化すると、本来目指すべきゴールを見失い、目的達成から遠ざかってしまいます。手段の目的化を防ぐためには次の4つを意識しましょう。
目的を明確にする
目的を具体的かつ明確に定義しましょう。また、目的と手段は、はっきり区別することが大切です。
定期的に確認する
組織やチーム全体で、目的と手段について定期的に確認し合い、認識のずれを防ぎましょう。
中間目標を設定する
長期的な目標の代わりに中間目標を設定することで、手段が目的になるリスクが軽減します。
定期的に振り返りを行う
成果や進捗を定期的に振り返りを実施し、目的と手段の整合性を確認しましょう。
企業の最終目的とは何か?
企業が目指すべきゴールとは一体何でしょうか。組織全体の最終目的が定まっていれば、チームや個人はどのような行動を取るべきかがわかります。
顧客を創造すること
企業の最終目的は「利益」だと考える人もいるでしょう。
しかし「利益」はあくまでも企業が存続するための条件です。経済学者のピーター・ドラッカーは「顧客を創造すること」が企業の最終目的であると述べています。
企業は商品やサービスだけでなく、顧客満足や価値を通じて持続的な信頼関係を築き、市場での存在価値を高め、長期的な成功を追求すべきであるという考えです。
顧客創造のためにニーズを探る
また、顧客創造のためにニーズを探ることも重要です。
企業は常に変化する市場や社会のニーズを的確に理解し、顧客の要望に応える革新的なアプローチを模索する必要があります。これにより、企業は顧客の期待を超え、新たな価値を創造しながら競争力を維持し、成長を遂げられるでしょう。
企業は単なる需要に応じるだけでなく、先見性を持って未来のニーズを予測し、積極的な価値提供を行うこと、新たな市場を創り出すことが不可欠です。
ビジネスで目的を明確にする重要性・メリット
なぜビジネスでは目的を明確にする必要があるのでしょうか。目的を定めることで得られるメリットから重要性を理解しましょう。
組織の統一につながる
ビジネスで目的を設定する主なメリットの1つめは、組織を統一することです。
共通の目的を持つことで、従業員は一体感を覚え、組織全体が協力して共通の目標・目的を達成する方向に向かいます。
これにより、意識の一致やチームワークが促進され、高い業務パフォーマンスが期待できます。
方針と戦略が明確になる
目的の設定は、組織が取るべき方針や戦略を明確化します。
目的が具体的であれば、それに基づいて方針や戦略を構築しやすくなり、組織全体が一貫性を持った行動ができるでしょう。
明確な方針は意思決定を迅速化し、リソースが少ない状況でも組織の効率性を向上させます。
従業員のモチベーション向上につながる
組織が明確な目的を掲げることで、従業員のモチベーション向上が期待できます。
目的が明確であれば、従業員は自分が何をすればよいかがわかるため、みずからの仕事が組織に貢献していると感じられます。仕事にやりがいを感じられれば帰属意識も高まるでしょう。
モチベーションが向上することで生産性も高まり、離職率の低下も期待できます。
円滑に意思決定が行える
目的の明確化はビジネスにおける意思決定を円滑にします。目的に合致するかどうかを基準に戦略やプロジェクトを選択できるため、スピーディーに適切な判断を下せるでしょう。
変化の激しい現代において、迅速な経営判断は事業成長に大きく寄与します。目的が明確なことで組織全体が一貫性を保ちながら時代にマッチした事業を継続できるでしょう。
ステークホルダーとのコミュニケーションが強化できる
明確な目的設定はステークホルダーとのコミュニケーションを強化します。
従業員だけでなく、取引先や顧客、社会全体が組織の考え方や方向性を理解しやすくなり、ビジョンや価値観に共感しやすくなります。
コミュニケーションが強化されると、より強い信頼関係の構築やパートナーシップ形成にもよい影響を与えるでしょう。
目的の達成に向けてまずは目標を立てる(まとめ)
目的とは、組織や個人が達成したい最終的なゴールを指します。
目標はこれに対して具体的かつ測定可能な指標であり、目的の達成を支える手段です。目的は「なぜ」、目標は「何を」達成するかを表しているといえるでしょう。
なお、目的を達成するためには、適切な目標を立てることが大切であり、明確化が重要です。目的が明確であれば、それに合った目標を立てやすくなります。
また、明確な目的は組織に統一感を与え、従業員エンゲージメントの向上なども期待できるでしょう。組織や個人の成功を実現するには、まず目的を定め、達成に向けて具体的な目標を設定することがカギです。