ラポールとは? 意味とビジネスにおける信頼関係の構築方法をかんたん解説!
ラポールとは、相手との「信頼」や「共感」を意味する心理学用語です。ラポールは仕事を円滑に進めるうえで不可欠なものであり、その重要性から注目がされています。しかし「ラポールが具体的に何なのかよくわからない」「ラポールの築き方がわからない」という人もいるでしょう。
そこで本記事では、ラポールの意味から築き方のコツ・ポイントを解説します。上司や顧客との信頼関係の築き方で悩んでいる人は、ぜひお役立てください。
ラポールとは「相手との信頼関係」
ラポールとは「相手との信頼」「共感し合う関係」を意味する心理学用語です。
ラポールを築く力は、上司と部下、企業とクライアント、またチーム内などで活用され、相手に親しみや好意を伝え、コミュニケーションの円滑化に役立つスキルです。
ラポールの語源と本来の使われ方
「ラポール」はフランス語で「関係」や「関連」を意味する言葉です。
もともと心理学やセラピーの分野において、クライエントとの信頼性のある関係を築くためのテクニックやスキルを指し、カウンセリングや治療の場で重要視されていました。
ラポールの概念はビジネスにも派生し、顧客との信頼性のある関係の構築やビジネスを円滑に進めるための戦略として注目を集めています。
ラポールが重要視される理由
ラポールは、良好な人間関係の構築において非常に重要です。ラポールが築けていると、相手に自分の考えや感情をオープンに共有しやすく、相互理解が進みます。
ラポールが形成されていると、意思疎通をスムーズに行うことができ、誤解や対立も生まれにくいでしょう。仕事やプライベートにおいて不可欠なスキルとして重要視されているのです。
ラポールを重視するメリット
ラポール構築のメリットは多くあります。ビジネスにおけるラポールの重要性として4つのメリットを紹介します。
- 信頼関係を構築できる
- コミュニケーションが円滑になる
- チームワークが向上する
- 周りからのサポートを得られる
信頼関係を構築できる
ラポールを形成することは、相手との信頼関係を築く基盤です。信頼関係が築かれていると、相手は自分の考えや感情をより率直に共有しやすくなり、誤解や対立が少ない人間関係を構築できます。
コミュニケーションが円滑になる
ラポールを形成することで、コミュニケーションが円滑に進行しやすくなります。信頼できる相手とのコミュニケーションであれば、お互いがポジティブに相手の意見を聞けるため、効果的な対話が可能です。
チームワークが向上する
ラポールは、チームワークを高めるのに役立ちます。信頼関係が築かれたチームメンバーは、互いをサポートし合いながら共同作業をする傾向があるため、チーム全体の生産性が向上し、よりよい結果が生まれるでしょう。
周りからのサポートを得られる
ラポールが形成されることで信頼関係が築かれ、顧客やチーム内の上司・同僚からのサポートが得やすくなり、個人やチームの目標達成が容易になります。
ラポールを上手に形成するコツ
ラポールを上手に形成するために必要な3つのポイントを紹介します。
相手に共感を示す
相手の感情や意見に共感を示すことで、相手からの信頼獲得につながり、ラポールが築きやすくなります。
また、相手に共感を示すためには、相手の話に耳を傾け、理解しようとする姿勢が必要です。相手が自分を理解してくれると感じることが、信頼関係の基盤となるため、相手に対してオープンで受け入れる態度を示すようにしましょう。
相手のニーズを理解する
相手にとって価値のあるものを提供することで、信頼性の構築につながります。対話の中で相手のニーズや期待を理解し、それに応える努力をしましょう。相手のニーズに応えることで、相手は自分が尊重されていると感じ、信頼関係を深めるきっかけとなります。
誠実な態度で接する
不誠実さはラポールを損なうことになるため、自分自身が誠実で信頼性のある態度を示すことが大切です。一度損なわれた信頼関係は、簡単には修復できません。ラポールを築くためには、立場や年齢に関係なく、相手に対して誠実な態度で接することが重要です。
ラポール形成に役立つテクニック
ラポールを形成するためには、テクニックがあります。すぐに取り入れることができるテクニックを5つご紹介します。
ペーシング(Pacing)
ペーシングは、相手のペースにあわせて行動やコミュニケーションを調整するテクニックです。
相手のリズムや感情状態に合わせることで、無意識に「自分と近い」と感じられるため、安心感が生まれ、コミュニケーションがよりスムーズになります。
ミラーリング(Mirroring)
ミラーリングは、自分の言動や行動を、相手の言動やボディランゲージに合わせる行為です。たとえば、相手が水を飲んだタイミングで自分も水を飲む、相手が手を組んだら自分も同じように手を組む、などの行為が該当します。
相手の姿勢やジェスチャー、話し方などを模倣すると、相手に親近感をもってもらえ、信頼関係が構築できます。
マッチング(Matching)
マッチングはミラーリングの一形態であり、相手の特定の行動や特徴に自分があわせる行為です。たとえば、落ち着いたトーンで話す相手に対して、自分もあわせて話す行動が該当します。
相手との共感を高め、コミュニケーションを円滑にするために使用され、ボディランゲージや感情など、さまざまな要素に適用できます。
バックトラッキング(Backtracking)
バックトラッキングは、コミュニケーションにおいて誤解を避けたり、相手の意図を正確に理解したりするために、過去に言ったことを再確認する行為です。
言葉や情報の誤解や混乱を修正し、相手とのコミュニケーションをスムーズに維持するために用いられます。
キャリブレーション(Calibration)
キャリブレーションは、相手の表情や仕草、口調などから感情を読み取るテクニックです。
相手の感情やニーズを的確に把握し、適切な対応をすることで、相手は「自分に寄り添ってもらえている」と感じて安心します。特にセラピーやコーチング、カウンセリングなどにおいてキャリブレーションが使用されます。
ラポールを形成するときの注意点
次に、ラポールを形成するうえでの注意点を解説します。
相手のペースを尊重する
相手のペースやリズムにあわせてコミュニケーションを調整しましょう。
特にビジネスのシーンでは、契約の獲得など目的達成のために、すぐに本題に入りたいと考えてしまうかもしれません。
しかし、相手のペースを無視して自分が伝えたいことだけを一方的に伝えるコミュニケーションでは、ラポールは築かれません。急いで話したり相手を圧迫したりしないように注意し、相手にあわせて行動することを心掛けましょう。
自然なコミュニケーションを心がける
ラポールを築くためには、誠実さが重要となるため、自分自身を偽らずに自然体でいるようにしましょう。
ラポールを形成するためのテクニックとして、ミラーリングやマッチングなどを挙げましたが、意識しすぎると不自然さが生じ、結果として相手からの信頼を失う可能性もあります。
あくまでも、相手が心地よいと感じられる範囲内でテクニックを駆使し、自然なコミュニケーションを心掛けるようにしましょう。
相手を否定しない
相手の話を聞く中で、自分の価値観と異なる意見が出てくることもあるでしょう。そこで相手を否定してしまうと、相手は自分の意見や感情を隠したり、防御的になったりすることがあります。
一方、相手を否定せず、尊重して受け入れる姿勢で接すると、相手は「自分を尊重してくれている」と感じるようです。
ラポールを形成する方法【タイプ別】
ラポールの形成を難しく感じる人もいますが、相手のタイプにあわせてテクニックを使い分けることで、より効果的にラポールを形成できます。
相手のタイプを「視覚系」「聴覚系」「身体感覚系」の3つに分けて、それぞれに適したラポール形成のテクニックをご紹介します。
視覚系
視覚系とは、視覚から得られる情報を重視してコミュニケーションを行うタイプです。
視覚系タイプは、ジェスチャーを多用しつつ早口で話す傾向があります。相手が視覚系である場合は、自分もジェスチャーを用いながら普段より早口で話すとよいでしょう。
また、視覚的に心地よいと感じてもらうために、相手の動作を不自然にならない範囲で真似をするミラーリングも効果的です。
聴覚系
聴覚系とは、耳から得られる情報を重視してコミュニケーションを行うタイプです。
論理的に話をしたり、相手の口調やトーンに反応したりする傾向が聴覚系タイプの特徴です。相手が聴覚系である場合は、声のトーンや口調を相手にあわせつつ、ロジカルなコミュニケーションを意識しましょう。
身体感覚系
身体感覚系とは、触感や香りなどの身体的感覚を重視してコミュニケーションを行うタイプです。
身体感覚系タイプは、話し方が比較的ゆっくりで「~と感じる」など感覚的な表現を多用します。相手が身体感覚系である場合は、相手のペースにあわせてゆっくりと話し、共感を示しましょう。
ビジネス場面のラポール形成手法
さまざまなビジネス場面で活用されているラポールについて紹介します。
営業・商談でのラポール形成
初回面談では、顧客の背景知識を活用し、さりげなく会話に織り交ぜることで安心感を生み出します。過去の取引履歴や導入サービスの確認を事前に行い、顧客の課題や目標を理解した上で商談に臨むことが重要です。
商談では、顧客の最終的なゴールを常に意識し、「5年後のビジョン」や「現在の課題」について質問を投げかけることで、共通の目標意識を醸成します。これにより、より具体的で筋の通った提案が可能になります。
契約に向けては、提案内容の説明だけでなく、顧客との共通の興味を見つけ出し、親近感を醸成することが重要です。スポーツや趣味など、ビジネス以外の共通点を見つけることで、より深い信頼関係を構築できます。
1on1面談でのラポール形成
1on1面談は週1回など高頻度で定期的に実施し、1回あたり10-15分程度の短時間でも構いません。定期的な対話の機会を設けることで、部下が上司に相談しやすい環境を作ることができます。
1on1は「部下のための時間」という認識を持ち、評価や詰問の場にしないことが重要です。上司は聞き役に徹し、部下の主体的な学びや気づきを引き出す役割を担います。
オンラインでの1on1では、カメラをオンにして表情や仕草が見えるようにし、相手の話に対して適切なあいづちや反応を示すことが重要です。また、画面共有機能を活用して視覚的な情報共有を行うことで、より効果的なコミュニケーションが可能になります。
1on1では、部下の話を遮らず、否定を避けて受容的な態度で臨むことが重要です。「すごくストレスがたまってるんだね」といった共感的な反応により、部下は安心して自分の考えや感情を表現できるようになります。
ラポールを形成して社内での人間関係を円滑に
顧客や上司、同僚と信頼関係を構築するために、ラポールを活用することは重要です。ラポールが形成されることにより、社内コミュニケーションがスムーズになり、交渉や営業が円滑に進みます。また、社内の人間関係も良好になるため、職場の雰囲気もよくなるでしょう。
ラポール形成のためには、相手を尊重し、意見を傾聴することがポイントです。相手のニーズや主張を理解して応えていくことで、さらに信頼関係を深められます。
相手と信頼関係を構築し、社内での人間関係を円滑にするためにも、ラポールを取り入れてみましょう。