研修管理とは? エクセルも可能? 課題とシステム化のメリット・機能も解説

研修管理を効率的に実施できていますか。また、従業員一人ひとりの受講履歴がすぐに確認できる状態でしょうか。
研修管理とは、企画して実施し、その成果を記録・評価する一連の流れを体系的に管理することです。リスキリングや人的資本経営を推進する企業が増えるなか、人材育成を支える従業な業務といえます。
しかし現実的には、受講履歴が散在していたり、研修をやって終わりになっていたりする企業も少なくありません。エクセルでの研修管理が大変といった声も耳にします。
本記事では、研修管理の基本からエクセルで効率化する方法、課題を解決する手段としての 研修管理システムの活用メリットや主要機能を解説します。
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目次

研修管理とは
研修管理とは、従業員に対する研修を 計画・実施・記録・評価し、その状況を一元的に整理することを指します。研修管理の対象は社内研修だけでなく、社外セミナーや資格取得研修、eラーニングなども含まれます。
つまり、誰に・どんな研修を・いつ実施し・どの程度参加・習得したのかを把握する仕組みです。
研修管理の基本的な内容
研修管理の主な内容は、次の4つに整理できます。
研修計画の立案 | 研修テーマや対象者、スケジュール、実施方法(集合研修/オンライン/外部委託)を決める |
実施管理 | 会場や講師の手配、研修案内やリマインドを行い、出欠状況をチェック。受講漏れがないようにフォロー |
進捗・履歴の記録 | 受講状況や修了記録を整理・保存し、従業員ごとの研修履歴を一元管理する |
効果測定と評価 | 研修後の理解度や業務への活用度を確認。実施した研修のよしあしを振り返り、次の企画に活かす。 |
研修管理の必要性
研修管理が重要なのは、単に研修を実施するだけでは十分ではないからです。
研修管理は、受講漏れを防ぎ、従業員のスキルや役割に合っていたかを検証し、次の研修改善へつなげる取り組みまでを含んでいます。
研修を人材育成の一環として意味のある人事施策にするには、研修管理により、計画から評価までPDCAサイクルを回すことが欠かせません。
研修管理の課題
多くの企業が研修管理を行っていますが、人事担当者はさまざまな課題を抱えています。主な課題は以下の3点です。
- 研修の受講履歴を管理するのが大変
- 個別のフォローまで手がまわらない
- 研修結果の分析が難しい
研修の受講履歴・資格を管理するのが大変
研修管理で多い悩みは、受講履歴がさまざまな場所に分散してしまうことです。エクセルや紙のリスト、各部署ごとに異なる管理表などに散らばると、組織全体で情報を集約するのが難しくなります。
また、専門的な資格が必要な職種の場合、資格の更新状況や取得・失効予定の年月日まで把握しなければなりません。
担当者は情報を探すだけで時間を費やしてしまいます。
研修管理には、研修の企画・実施、受講履歴の管理、習得度の確認など幅広い業務が含まれるため、日常業務と並行して対応するには大きな負担となります。

個別のフォローまで手がまわらない
研修管理では、従業員一人ひとりの受講履歴や習熟度は異なるため、本来は個別フォローが理想です。しかし、理解度に応じた追加教育や、不足スキルへの補講をすべての人に行うのは現実的ではありません。結果として、フォローが不十分になり、研修の効果を十分に示せないことがあります。
研修の習熟度の分析が難しい
実施した研修が、本当に人材育成に役立っているのか、効果を出すのは簡単ではありません。研修後の理解度やほかの研修との比較、一人ひとりの得意・不得意の把握など、多角的な分析が必要です。
研修管理をエクセルなどを使って作業するには限界があります。さらに、どのような指標で分析したらいいか、評価の基準の設定自体がわからないという場合もあるでしょう。
研修管理の方法・ツール
研修管理を行う方法には、大きく分けて 「エクセルでの管理」 と 「システムを活用した管理」 の2つがあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
エクセル
研修管理の方法で手軽なのは、エクセル・スプレッドシートなどの表計算ツールを使って管理するやり方です。
「研修管理用」のシートを作成し、職種別や部署別に管理する、担当者が定期的に入力・更新するといったやり方が一般的です。
エクセルで研修管理を行うことは可能ですが、公開範囲を制限する必要から、神経を使う作業も多く、現実的には不便なことが多いかもしれません。
エクセルでの研修管理【メリット】 | エクセルでの研修管理【デメリット】 |
---|---|
・導入コストがかからない ・使い慣れている人が多い | ・入力ミス/更新漏れが発生しやすい ・2名以上で同時に編集ができない ・データ量に応じて処理が遅くなる ・日程調整や進捗確認には別のツールを使う必要がある ・セキュリティ対策が必要 |
エクセルでの研修管理は、導入コストがかからず誰でも扱いやすい点がメリットです。しかし一方で、入力や更新に手間がかかり、複数人での編集やセキュリティ管理には不安が残ります。情報が散在しやすく、記録漏れや不整合が起きやすいのはデメリットです。
エクセルでの研修管理は、担当者の負担が大きくなりやすい点を理解しておかなければなりません。従業員数が多い企業ほど、研修管理を自動化できるツールの導入をおすすめします。
エクセルで研修管理をする方法
まずは手軽にエクセルで研修管理を始めたいという方に向けて、簡易的な研修管理表の見本を紹介します。

まずシートの1行目に「従業員名・部署・研修の内容・受講日・受講状況」など必要な項目を入力しましょう。受講日の列には日付の入力規則を設定すると、誤入力を防げます。受講状況を「未受講・受講済み・キャンセル」などのプルダウンにしておくと入力ミスが減り便利です。
基本設定ができたらデータを入力し、定期的にバックアップをとりましょう。合計や平均を計算する数式やグラフを追加すれば、ある程度簡単な分析も実施できます。
研修管理システム
研修管理のもう1つの方法は、人事システムの活用です。
エクセルによる研修管理は手軽ですが、課題も多いため、システム化を検討されている方も多いかもしれません。
研修管理システムを活用すれば、管理やセキュリティ対策を半自動化でき、担当者の負担を減らせます。従業員自身に操作してもらったり、反対に公開範囲を柔軟に設定できたりできるのもメリットです。
研修管理システムには、大きく分けて次の2つのタイプがあります。
研修管理システム(特化型)
研修管理に特化したシステムとは、研修運営における業務全般を支援するために設計された、専用のツールです。学習管理システムと呼ぶ場合もあります。
受講通知の自動送信、受講率の集計、進捗管理、修了証の発行など、研修運営に特化した機能が充実しています。
【メリット】 | 【デメリット】 |
---|---|
・導入後比較的早く研修管理に使える ・専門機能がそろっている ・外部研修と連携が可能なサービスもある | ・研修以外の人事情報とは切り離される ・ほかの人事システムとの連携が大変になる場合もある |
また、オンライン研修・集合研修・ハイブリッド型など、あらゆる研修形態や学習コンテンツを一元的に管理できるのも特長です。決済機能を備えているシステムもあり、社外研修の申込受付や、自社制作のeラーニングコンテンツを有料販売する用途にも活用できます。
研修管理機能があるタレントマネジメントシステム
従業員情報や評価、スキル、キャリアデータを一元管理するタレントマネジメントシステムの一部として、研修管理機能が搭載されているタイプです。
【メリット】 | 【デメリット】 |
---|---|
・人材育成や人的資本経営を推進できる ・人事異動や人事評価と連動した研修を設計できる ・分析機能が充実しているものも多い | ・多機能ゆえに運用設計が複雑になることもある ・導入前に活用イメージを整理することが必要 |
タレントマネジメントシステム内の研修管理機能は、従業員のスキルやキャリア形成と連動した育成施策を実現できる点が大きな強みです。
研修管理だけでなく、企業全体の人材戦略と研修を連動させたい企業におすすめします。
研修管理システムのメリット
研修管理システムを使うと、育成の見える化と運用効率という点でメリットがあります。主なメリットは以下の4点です。
- 受講履歴や資格情報を一元管理できる
- 個別フォローを効率的に実施できる
- 研修の効果を定量的に分析できる
- 担当者の事務作業を削減できる
受講履歴や資格情報を一元管理できる
研修管理システムを使うと、研修に関する情報を一元管理できるというメリットがあります。
エクセルや紙、部署ごとの管理表に分散していた情報が集約され、受講履歴や資格の更新状況がひと目でわかるため、確認の行き来が減ります。
eラーニング機能があるシステムなら、受講・修了は自動で更新。従業員は時間と場所を選ばず学習でき、管理者も最新データが把握しやすくなります。
結果として、情報を探す手間が減り、受講漏れや資格失効の見落としも防げるでしょう。
また、採用時の試験結果や昇格試験のスコアをあわせて管理することで、社員ごとの成長や評価実績を人材データベースとして一元的に把握できます。これにより、より透明性の高い人材育成と適切な配置判断につながります。
個別フォローを効率的に実施できる
従業員一人ひとりへのフォローを効率的に行えるのも、研修管理システムのメリットです。
未受講者や課題未提出者を自動で抽出し、リマインドや再受講の案内を一括で送信できます。レポート提出状況の追跡や、上長への共有もシステム内で完了するため、担当者の負担を増やさずに個別フォローが可能です。受講忘れや遅刻などの機会損失も防げるでしょう。
さらに、職階や年次に応じて対象者を自動抽出できるシステムであれば、研修別の対象者設定も自動化されます。適切なフォローが行き届くことで、従業員も学習意欲を維持しやすくなり、成長へのモチベーション向上にもつながります。

研修の効果を定量的に分析できる
研修管理システムでは、受講率・修了率・テスト結果・アンケートを自動集計し、部門や職種ごとに比較・可視化できるメリットがあります。
エクセルの研修管理では集計だけで手一杯になりがちですが、システムなら自動でダッシュボードに反映されます。傾向を容易に把握でき、報告書の作成も効率化が可能です。
また、分析結果をもとに次の研修内容や対象者を見直せば、PDCAを継続的に回せる体制を整えられます。
人事評価と連携できる研修管理システムなら、受講実績を評価やキャリア開発にも活かせるでしょう。研修管理システムの分析機能は、研修の費用対効果を示すためにも欠かせません。
担当者の事務作業を減らせる
研修管理システムで、出欠確認、課題提出の回収・照合、進捗確認、催促連絡、報告資料の作成といった事務作業を一部自動化できます。
結果として、運用負担が減り、人事担当者は手間から解放されるでしょう。
空いた時間を、研修企画の改善やキャリア施策の立案などコア業務に振り分けられるため、人事部門全体の生産性向上につながります。

研修管理システムの主な機能
研修管理システムには、主に7つの機能があります。
機能 | 内容 |
---|---|
研修情報の登録・管理 | ・研修の日時、会場、対象者の登録 ・課題、アンケートの登録・回収 |
学習コンテンツの配信 | ・eラーニング、オンライン研修コンテンツの配信 |
予約申込み・キャンセル | ・申込、キャンセル、定員制限、キャンセル待ち自動繰り上げ ・当日の出欠確認・参加ログの取得 |
受講履歴・実績の管理 | ・過去の受講履歴や資格取得実績を一元管理 ・人材育成などに活用が可能 |
受講アラート・リマインド | ・受付、実施前リマインド、提出督促メールを自動送信 ・受講漏れ防止 |
分析・効果測定・フィードバック | ・研修効果やROIを可視化 ・個人習熟度や部署別平均点の算出 ・講師フィードバックの入力 |
カスタマイズ | ・スキルレベルや部署別に研修を設計 |
研修管理システムには、eラーニング機能や参加状況を一元的に管理できる受講履歴管理、提出物の回収の手間を省く管理機能などがあります。
これにより、本社と支社の教育格差の解消やキャンセル・受講票の送付といった事務作業の削減、課題の未提出防止に役立ちます。
さらに、研修データを蓄積・分析することで、従業員がスキル取得に必要とする課題を洗い出し、今後の人材育成施策に活用が可能です。
研修管理システムの選び方・比較ポイント
研修管理システムには多様な機能が搭載されており、自社にもっとも適切なシステムがわからないという企業も多いでしょう。
研修管理システムを選定するヒントとして、導入を検討している方に向けて、選び方と6つの比較ポイントを紹介していきます。
- 機能
- 使いやすさ(UI/UX)
- コスト
- サポート体制
- セキュリティ
- ほかの人事労務システムとの連携可否(例:勤怠管理システム、タレントマネジメントシステム)
機能
研修管理システムを選ぶうえでとくに重要なのは、自社が実現したい研修管理をサポートできる機能があるかどうかです。せっかく導入しても、自社の目的に合わなければ、担当者の負担は減らず投資効果も得られません。
たとえば「社員のスキル習得状況を見える化して育成に活かしたい」のであれば、理解度テストや習熟度分析の機能が必要です。反対に「研修成果を人事評価と結びつけたい」のであれば、評価システムとの連携機能が必須になります。
また、最低限「受講履歴を管理したい」「未受講者へリマインドを出したい」「登録データを分析して人材育成に活かしたい」といった基本ニーズであれば、研修管理機能があるタレントマネジメントシステムを選ぶのも一案です。
人材データと紐づけて一元管理されるため、研修管理をそのまま評価やキャリア開発に連携しやすくなります。
一方、社外研修や有料コンテンツ販売など研修運営自体を細かく管理したい場合には、研修管理に特化したシステムの方が適している場合もあるでしょう。
導入前に「どの業務を効率化したいのか」「どのデータを活用したいのか」を整理し、目的に合致した機能が備わっているかを確認することが重要です。
使いやすさ(UI/UX)
研修管理システムは、導入後に多くの従業員が日常的に利用するツールです。画面の見やすさや直感的に操作できる設計でなければ、利用が定着せず、担当者の負担が逆に増えてしまうこともあります。
とくに人事担当者の視点では、「受講履歴やレポートをひと目で確認できるか」、受講者の視点では「研修の検索や申込がスムーズか」「期日のリマインド通知がわかりやすいか」といったポイントが重要です。
ユーザーがストレスなく操作できるUI/UXかどうかを必ず確認しましょう。
コスト
研修管理システムの導入には初期費用や月額利用料がかかるだけでなく、カスタマイズやサポート対応に追加費用が発生する場合があります。
導入コストだけで比較するのではなく、「自社の教育規模にあっているか」「どの範囲まで自動化できるか」を踏まえて、トータルでのコストパフォーマンスを見極めることが大切です。
研修管理者だけでなく受講者にとっても使いやすければ、参加率や学習効果が高まり、結果的に費用対効果も向上します。
サポート体制
研修管理システムは導入して終わりではありません。トラブル発生時の対応速度や、運用に関する質問へのサポート体制が整っているかは非常に重要です。
サポート窓口の有無、問い合わせに対する返信の早さ、操作方法を学べるマニュアルや研修提供の有無などを確認しましょう。
安心して長期的に運用するためには、ベンダーのサポート品質が欠かせません。

セキュリティ
人事部門が研修管理で扱うのは、受講履歴やスキル情報だけでなく、個人データや評価情報など極めて機密性の高い情報です。研修管理システムに限らず、新規システム導入となると、セキュリティに不安を覚える方もいますよね。
もし情報漏えいが発生すれば、信用の低下といった重大リスクにつながります。安心して運用するには、以下の点をチェックしましょう。
- 通信やデータが暗号化されているか
- 脆弱性診断やデータベースの多重化を行っているか
- アクセス権限の設定が柔軟にできるか
複数の担当者がシステムを利用する企業では、権限設定の柔軟さが重要です。セキュリティ水準の高いシステムを選ぶことで、安心して研修管理を任せられる環境を整えられます。
ほかの人事労務システムとの連携可否
研修管理システムを比較する際は、勤怠管理システムやタレントマネジメントシステムと、どの程度連携できるかも確認が必要です。
連携できれば「勤務時間データと受講時間を自動照合」「スキルデータに基づいて次の研修を自動アサイン」といった高度な運用が可能になります。
とくにタレントマネジメントシステムに研修管理機能が含まれるタイプは、人事評価やスキル情報とのデータ連携がスムーズで、人材育成の全体設計を考える企業には相性がよいといえるでしょう。
まとめ|研修管理のシステム化で人材育成を加速
研修管理はエクセルでも可能ですが、データの分散や事務作業の煩雑さ、分析の難しさといった課題があります。こうした悩みを解決できるのが研修管理システムです。
研修に特化したシステムや、タレントマネジメントシステムに搭載された研修管理機能など、選択肢は多様です。導入目的を整理し、自社に最適な仕組みを選びましょう。
煩雑な研修管理から解放され、人材育成を加速させるために、システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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研修の受講履歴を人材情報に紐づけて育成計画に活かすなど、人材育成に活用が可能です。人事評価との連携もスムーズです。
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