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助成金の不正受給とは? リスクや故意ではない場合の対処法も解説!

会社や各種団体の取り組みを支援するために、国や地方自治体によってさまざまな助成金が支給されています。なかでも、休業手当などの一部を助成する「雇用調整助成金」は、多くの事業者によって利用されてきました。事業者救済を目的として実施されている助成金制度ですが、不正受給が発生してしまうケースもあります。本記事では、不正受給が発生してしまうケースや発生したときのリスク、対処法について解説します。ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

助成金の不正受給とは? リスクや故意ではない場合の対処法も解説!
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    助成金の不正受給とは?

    助成金の不正受給とは、本来助成金を支給されるべきではない人や団体が、虚偽の情報や改ざんした書類を提出し、助成金を不正に受け取ることを指す言葉です。不正受給は社会的に問題があるため取り締まりが厳しく、助成金の返還や罰金、刑事罰などの処罰が科せられます。

    問題になる故意と過失の違いについて

    同じ不正受給といえども、故意に行った場合と過失で行ってしまった場合には大きな違いがあります。故意とは、意図的に虚偽の情報や改ざんした書類を提出して助成金を不正に受け取ることです。過失とは、本人が知らずに虚偽の情報や誤った書類を提出し、その結果不正受給につながります。故意に不正受給を行った場合は、当然ながら処罰の対象です。過失の場合でも、注意義務を怠ったことが認められると過失による不正受給として処罰される可能性があるため、注意しましょう。

    不正受給が発覚する4つの要因

    不正受給は主に、監査や告発、外部からの情報、照合・検証によって発覚します。それぞれの発覚要因は、下記の通りです。

    不正受給が発覚する要因
    監査助成金を支給する団体や機関による、支給された助成金の使用状況の監査
    告発・情報提供不正受給の疑いがある場合、周囲の人々からの告発や情報提供
    外部からの情報不正受給が行われた企業と関係のある外部団体からの情報提供
    照合・検証助成金を受け取る際に提出された書類や情報を、ほかの情報と照合・検証

    このように、不正受給が発覚する要因にはさまざまなパターンがあります。不正受給は何らかの方法で発覚するケースが多いため「自分だけはバレないから大丈夫」との認識は避けましょう。

    助成金の不正受給が問題になるケース

    ここからは、助成金の不正受給の対象となるケースを具体的に解説します。

    • 従業員が隠れて出勤していた
    • 代表取締役を会社同士で雇い合っている
    • 受け取るべきではないのに受給してしまった

    従業員が隠れて出勤していた

    従業員が隠れて出勤し、雇用調整助成金を受け取る行為は不正受給です。休業手当を支払っているはずの従業員が出勤していると、休業手当の不正受給に該当します。また、助成金を受け取っている企業が、労働時間の記録を正確に行っていない場合も不正受給につながります。隠れて出勤していた従業員に支払われた給与が労働時間に対して過剰であることが発覚し、助成金の金額が変わるケースもあるでしょう。

    代表取締役を会社同士で雇い合っている

    不正受給の問題は、子会社で代表取締役を勤めている人が親会社にも雇用されている場合に発生する可能性があります。代表取締役は助成金の適用対象外なので、親会社の従業員としての立場で雇用調整助成金を申請することはできません。代表取締役を複数の会社で同時に雇用している場合は注意しましょう。

    受け取るべきではないのに受給してしまった

    助成金を受け取る資格がないのに、誤って受給してしまうケースも見られます。手続きを進めるうちに、自分の会社が申請要件を満たしていないと気づくこともあるでしょう。労働局は雇用調整助成金の不正受給がないかどうかを調査しており、不正行為が発覚した場合には罰則につながってしまいます。誤りに気づいた際には、会社側から「受け取るべきではない雇用調整助成金を受給してしまったことがあります」と申告しましょう。詳細を報告することで、過失であった場合には、理解してもらえて罰則の対象とならないケースもあります。受け取るべきではないのに受給してしまった場合には、自発的に申告・相談するようにしましょう。

    助成金の不正受給によるリスクとは?

    ここからは、助成金の不正受給が引き起こすリスクを5つ解説します。

    • 5年間の支給停止
    • 刑事告発になる可能性がある
    • 事業所名が公開される
    • 全額返金と延滞金が発生する
    • かかわった人も罰則になる

    5年間の支給停止

    不正受給を行うと、最大で5年間にわたり助成金の支給停止や返還請求などの罰則が科されます。さらに、不正受給は、公的な助成金に対する信頼が失われることにつながります。場合によっては制度そのものが撤廃されてしまう可能性もあるでしょう。助成金を必要とする多くの会社や組織に対しても影響が及ぶため、十分な注意が必要です。

    刑事告発になる可能性がある

    虚偽の報告書を提出したり、意図的に助成金の支給要件を満たしていない状態で申請を行ったりした場合、詐欺罪や偽証罪などの罪に問われます。さらに、架空の従業員を登録したり、支給された助成金を私的な目的に使ったりした場合には、着服罪や横領罪などが成立する可能性もあります。助成金の申請や受給に際しては、法令や規則に厳密に従い、誠実かつ正確な情報を提供することが何よりも大切です。

    事業所名が公開される

    助成金の不正受給が確認されると、労働局はその事業所名などを公表します。具体的には、下記の情報が対象です。

    • 事業主の名称、代表者氏名
    • 事業所の名称、所在地、概要
    • 不正受給の金額、内容
    • 不正に関与していた社会保険労務士や代理人、教育訓練を行う者の名称や所在地など

    この措置は、同様の不正行為を行おうとする事業所への警鐘を鳴らす役割があります。公表されると、社会的な信用力は大きく損なわれるでしょう。

    全額返金と延滞金が発生する

    助成金の不正受給が発覚した場合、当然ながら不正受給した金額を返還しなければなりません。

    返還請求額は、下記3点を合計した額です。

    • 不正受給した助成金の額
    • 不正受給の日の翌日から納付の日まで、年5%の割合で算定した延滞金
    • 不正受給した助成金の額の20%に相当する額

    不正受給が発覚した場合、不正によって得た利益よりも大きな負担が生じます。結果的に損をするため、不正受給は本末転倒でしょう。

    かかわった人も罰則になる

    不正受給が発覚すると、当人以外にかかわった人すべてが罰則の対象です。社会保険労務士や代理人なども、不正行為に加担していた場合は罰則の対象になります。具体的な例は、社会保険労務士が顧客の申請書類を改ざんした場合や、代理人が顧客に嘘の情報を提供して申請を行った場合などです。経営者のみならず、社会保険労務士や代理人にも法令遵守と倫理的な行動、顧客への正確な情報提供が求められます。

    助成金を不正受給してしまった場合の対処法

    助成金の不正受給が発覚した場合には、しかるべき対処をとりましょう。具体的な対処法は下記の3つです。

    対処法
    返金手続き助成金を不正受給してしまった場合は、迅速に返金手続きを開始する
    弁護士や社会保険労務士への相談助成金の不正受給に関する法的な問題が発生した場合には、
    弁護士や社会保険労務士への相談が重要
    再発防止策の実施過失の場合には、同じ過ちを繰り返さないよう再発防止策を策定・実行する

    それぞれの手続きをスピーディーに進めることで、不正受給による罰則を避けられる可能性も出てくるでしょう。

    助成金を不正受給している可能性があれば速やかな対処を

    経営者や代表者を助ける各種助成金ですが、その目的は継続困難な事業の金銭的サポートにあります。助成金制度を悪用した不正受給が増えると、経営危機に直面している会社や団体を救えなくなってしまう可能性も今後出てくるのです。過失によって不正受給を行っている可能性があれば、速やかにしかるべき対処をとりましょう。人事労務に関する手続きが煩雑になっているなら「One人事」の導入も検討してみてはいかがでしょうか。

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