業務委託と業務請負の違い|メリット・デメリット、注意点をわかりやすく解説
「業務委託」と「業務請負」は、業務を外部に依頼する際によく使われる言葉です。しかし、これらは似ている言葉のため、違いがわかりづらいという方も多いのではないでしょうか。
「業務委託」と「業務請負」の大きな違いとして、業務の完了目的があるかどうかという点が挙げられます。理解を深めるためには、両者のメリットやデメリットについての内容把握が必要です。偽装請負や委託する際の注意点も知っておく必要があるでしょう。
そこで本記事では、業務委託と業務請負との違いやメリットとデメリット、注意点などを紹介します。ぜひ参考にしてください。
業務委託・業務請負の概要と違い
業務委託と業務請負、それぞれの概要との違いについてご紹介します。
業務委託(アウトソーシング)とは
業務委託とは、企業の業務の一部、またはすべての業務を外部に依頼することで、アウトソーシングとも呼ばれます。委託とは、業務などを外部の人や企業に依頼することです。
民法上の業務委託とは
民法における業務委託は、以下の3つの契約形態を総称した用語です。
- 委任契約
- 準委任契約
- 請負契約
つまり広義の意味で業務委託は、業務委任を指す委任契約と準委任契約、業務請負を指す請負契約に分かれます。ただし法律の条文では「委任」ではなく「委託」という言葉で表現されています。
そこで業務委託は狭義の意味で、業務委任(委任契約と準委任契約)を指すと考えていいでしょう。
委任契約 | 業務委任(一般的には業務委託と呼ばれている) |
---|---|
準委任契約 | |
請負契約 | 業務請負 |
業務委任(委任契約・準委任契約)の特徴は、受託者が業務を開始した時点で、報酬を支払わなければならない点です。
業務請負とは
業務請負は、民法における「請負契約」のことです。請負契約は、成果物に対して報酬を支払うという特徴があります。業務の発注者は、完成品が納品されるまでの過程に、原則として指示を出せないことになっています。
業務委託と業務請負の違いとは
業務委託と業務請負の大きな違いは、報酬が支払われる対象や目的です。業務の遂行を目的とする業務委託は、一定の時間業務に着手していれば報酬を支払わなければなりません。
一方の業務請負は、委託者への納品をもって報酬が発生し、完成を目的とします。成果を出せなければ、報酬を減額できる場合もあるでしょう。
業務内容で委任・準委任を選ぶ必要がある
委任契約と準委任契約をまとめて「委任」と呼ぶ場合も多いですが、違いがある点に注意が必要です。委任契約では、契約や税務などの法律行為を委託し、準委任契約では、事務処理などの法律行為以外の業務を委託します。そのため、業務内容によって委任・準委任を選ぶ必要があるでしょう。
委任契約と請負契約の目的
多くの業務委託では、実質的に委任契約か請負契約のどちらかが締結されています。委任契約と請負契約の目的について、それぞれご紹介します。
委任契約の目的は業務遂行
委任契約の目的は業務遂行です。成果物がなくても、業務を行いさえすれば対価が発生し、業務に必要な原材料費や諸経費などの費用は、委託者が負担します。
主な業種としては、ビル管理やシステムのメンテナンス、弁護士、コンサルタントです。これらの業種では、受託者には善管注意義務が課されているのが特徴といえるでしょう。
「善管注意義務」は、善良な管理者の注意義務の略です。受託者が事務をはじめ管理を行う場合に適用されます。善管注意義務は、地位や職務に応じて、通常要求される程度の注意義務を払うことです。特定の職業や地位にある人々に適用されます。
請負契約の目的は成果物作成
請負契約の目的は「成果物作成」です。請負契約は「成果報酬型」であり、請負人の仕事の結果に対して報酬が支払われます。発注者は直接指示できず、請負人が業務の手順や方法を決めるのです。
また、業務の原材料費や諸経費は、請負契約の報酬に含まれます。主な業種は、製造や物流・運輸、システム開発などです。
業務委託・業務請負のメリット
次に、アウトソーシングとして業務委託や業務請負をするメリットについてご紹介します。
人材・設備のコストが削減できる
「業務委託・業務請負」を利用すると、業務を行う人材の管理が不要です。労務管理などにかかわる業務の負担が軽減されます。また、専門知識を持った人材の採用や育成も不要で、設備投資のコスト削減にもつながるでしょう。
ニーズに応じて専門知識を活かせる
業務委託・業務請負では、専門的業務や新規業務などニーズに応じた業務発注ができます。特に、自社にはないスキルやノウハウが必要な場合に役立つでしょう。繁忙期など、局所的に人材を補えるのもメリットの一つといえます。
業務委託・業務請負のデメリット
業務委託や業務請負にはメリットがある一方、デメリットもあります。業務委託・業務請負の主なデメリットをご紹介します。
社内にノウハウが蓄積されない
社内にノウハウが蓄積されないというデメリットがあります。「業務委託・業務請負」を利用すると、業務は外部に委託され、自社の従業員は行いません。たとえば、受託者とミーティングを実施することが考えられます。社内でもノウハウを吸収できる工夫をすると良いでしょう。
進捗管理や業務指示ができない
進捗管理や業務指示ができない点もデメリットといえます。特に業務請負の目的は、納期までの納品が目的のため、進め方は受託者の自由です。期限遅れや不具合が発生した場合、または想定していた完成品ができなかった場合、損害を受ける可能性があります。ただし、細かい指示をしすぎると「偽造請負」になってしまう恐れがあるので、注意が必要です。
偽装請負を避ける方法やポイント
偽装請負になってしまうことを避けるにはどうしたらよいか、参考となるポイントを2つご紹介します。
偽装請負に注意
委託企業が作業方法に細かい指示を出す場合があります。たとえば、勤務時間の管理や始業時間の指定です。この場合、偽装請負と見なされる可能性があります。場合によっては罰則を受ける可能性や裁判に発展した事例もあるため、注意しましょう。
偽装請負にならないための対策
偽装請負にならないためには、契約内容を可能な限りくわしく記載し、細かい指示が必要ないようにしておくとよいでしょう。また、指示を出しながら業務を進めるケースであれば「人材派遣」の活用も検討することをおすすめします。
個人事業主・フリーランスに業務委託する場合の注意点
個人事業主・フリーランスに業務委託する際に注意すべき点を2つご紹介します。
下請代金支払遅延等防止法に注意する
「下請代金支払遅延等防止法」は一般的に「下請法」と呼ばれています。下請法は、親事業者が下請事業者に対する優越的地位の濫用を取り締まるために制定されました。
下請法では、取引条件について記載した書面の交付を義務づけています。また、商品やサービスを不当に返品することや、商品やサービスの代金を不当に減額することなどの行為を禁止しています。
企業の法令遵守が強く叫ばれるなか、下請法違反は企業価値を大きく損なう行為といえます。あらかじめ下請法の内容を理解し、公正な取引を行いましょう。
また、2024年11月からフリーランス保護のための法律である「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(フリーランス新法)」の施行が予定されています。下請法よりも広い範囲での保護をはかる法律であるため、個人事業主やフリーランスと取引を行う企業は、内容について理解しておきましょう。
参考:『下請代金支払遅延等防止法ガイドブック ポイント解説 下請法』 公正取引委員会・中小企業庁
参照:『フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ』 厚生労働省
不履行のリスクに備える
業務委託をする際は、不履行のリスクに備えておく必要があります。業務の途中で遂行が困難になる可能性があるためです。たとえば、マニュアル作成や社内対応などの代替案をあらかじめ用意しておくとよいでしょう。
まとめ
業務委託と業務請負の違いは、業務の完了目的の有無です。業務委託には請負契約(業務請負)と委任契約・準委任契約(業務委任)があります。これらのメリットはコスト削減と専門知識の活用ですが、一方でノウハウの蓄積不足や進捗管理の難しさがあります。偽装請負や法律違反のリスクに注意し、外部委託のメリット・デメリットを理解することが重要です。
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