雇用保険の電子申請でのやり方は? おすすめの理由やメリット・デメリットを解説
雇用保険をはじめとする、行政手続きに費やす時間を削減できる電子申請。大規模な企業は雇用保険の電子申請が義務化されており、中小企業でも電子申請を選択する例が増加しています。
しかし「雇用保険の電子申請でのやり方がわからない」「メリットやデメリットを知りたい」などと悩まれている方もいるでしょう。特に、義務化されている企業で新たに人事部に移った方は、いち早く電子申請のやり方を把握されたいはずです。
そこで本記事では、雇用保険における電子申請のやり方や手順、メリット・デメリットなどを解説します。電子申請のやり方を詳しく知りたい方は、参考にしてみてください。
雇用保険の電子申請の基本
雇用保険の電子申請のやり方をおさえるまえに、基本を把握しておきましょう。電子申請の概要や義務化の対象となる法人の特徴をご紹介します。
電子申請とは?
行政の窓口に出向いて行っていた申請や届け出などを、インターネットを経由してパソコンから手続きする方法です。行政手続きの一部のみに対応しています。
雇用保険に関しては、次のような手続きを電子申請で行えます。
- 被保険者資格取得届
- 被保険者資格喪失届
- 被保険者転勤届
- 高年齢雇用継続給付支給申請
- 育児休業給付支給申請
上記の業務を電子申請できるだけでも、社内コスト(時間)の削減を実現できるでしょう。
また過去には、CD-Rや光ディスクなどの電子媒体を使用した提出が義務化され、電子化が進んできました。一方、電子申請ではインターネットを利用した手続きのみが認められています。
なお、一部の法人については、2020年4月から電子申請が義務化されました。
義務化の対象となる法人
電子申請の義務化の対象は、以下の法人です。
- 資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
- 相互会社
- 投資法人
- 特定目的会社
上記に該当する法人であっても、電子以外での申請が認められるケースもあります。たとえば、インターネットの不具合で電子申請が物理的に行えないなどが挙げられるでしょう。
また、義務化の対象外である資本金などが1億円以下の中小企業も、電子申請以外で行政手続きを行えます。
しかし、電子申請が義務化された背景(事業者が行政手続きに費やす時間の削減)を考慮すれば、いずれは中小企業も義務化されることが想定されます。そのため、義務化されていない企業も、電子申請を導入しておいて損はしないでしょう。
雇用保険の電子申請の種類
雇用保険の電子申請の種類は、次の3つです。
- 直接入力方式
- 連記式
- API利用方式
それぞれ解説します。
直接入力方式
e-Govの雇用保険被保険者資格取得届の内容に沿って、入力手続きを進める方式です。
作成方法は、書類に記入する場合とほとんど変わりません。そのため、電子申請が初めてだったり、抵抗があったりする方でも容易に申請できるでしょう。
直接入力方式に不安のある方は、厚生労働省が公表している手順書を参考にしてください。なお、直接入力方式は、1つの申請につき1被保険者のみの届け出です。
参考:『雇用保険被保険者資格取得届電子申請手順』厚生労働省職業安定局(2022年3月)
連記式
電子申請用のCSVファイルを作成し、添付する方式です。雇用保険の電子申請では「連記式」、社会保険の電子申請では「CSVファイル添付方式」と呼ばれます。
直接入力方式とは異なり、1つの申請で複数人を対象として届け出できるのが特徴といえるでしょう。CSVファイルを作成する知識が求められますが、ファイルさえ作成できればe-Govに添付するだけで完了します。
API利用方式
e-Govに対応している外部のAPIシステムを利用して、申請データを作成したり申請処理したりする方式です。電子申請のためにAPIを導入する必要はありません。
日常的にe-Gov対応のAPIを利用していれば、データの作成と公文書の取得をソフト内で完了させられます。API利用方式を使った電子申請は、e-Govでのサイト内操作が不要のため、さらに作業スピードを上げられるでしょう。
雇用保険の電子申請のやり方
雇用保険の電子申請のやり方は、次の通りです。
- 必要な書類を準備する
- アプリをインストールする
- アカウントを作成しログインする
- マイページから申請する
- 処理状況を確認し手数料を納付する
- 公文書をダウンロードする
それぞれ解説します。
1.必要な書類を準備する
電子申請を行ううえで、必要な添付書類は原則ありません。ただし、状況に応じてハローワークから書類の添付を求められるケースがあります。状況に応じて、必要な書類を準備しましょう。
また、対応できるファイルの拡張子は「.jpeg」もしくは「.pdf」のみです。加えて、ファイルに機種依存文字は利用できません。不備があればエラーになる可能性があります。ファイルや書類の準備ができたら、雇用保険の電子申請手続きに進みましょう。
2.アプリをインストールする
必要書類の準備が完了すれば、パソコンへ「e-Gov電子申請アプリケーション」をインストールしましょう。OSは、Windowsとmacに対応しています。インストールは簡単ですが、不安な方はe-Gov電子申請のHPを参照してください。
画像による操作の案内があるため、はじめての方でも容易に電子申請の準備を行えるでしょう。なお、雇用保険被保険者資格取得届の電子申請に必要な書類は、アプリから取得できます。
3.アカウントを作成しログインする
アプリにログインするには、e-Govのアカウントが必要です。そのため、アプリを開いたのちに、アカウント作成に移行しましょう。アプリを開いた画面の下部に、アカウントの仮登録リンクがあります。そこから、本登録に移行できます。
なお、本登録はメールアドレスとパスワードを設定するだけで完了です。
4.マイページから申請する
アカウントの作成が完了すると、マイページにログインできます。マイページからは雇用保険被保険者資格取得届をはじめ、さまざまな書類の電子申請が可能です。雇用保険被保険者資格取得届を申請するには、次の順番で画面を進めましょう。
- 画面上部の「手続き検索」をクリック
- 「被保険者の資格取得・転勤」タブをクリック
- 雇用保険被保険者資格取得届をクリック
あとは、画面遷移に従って入力するだけです。入力が完了し、必要があれば書類を添付して提出ボタンをクリックしましょう。
5.処理状況を確認し手数料を納付する
申請の処理状況は、マイページからスマートフォンおよびパソコンで確認できます。手数料が発生する場合は、電子納付を選択しましょう。支払いは、ネットバンキングやATMで行えます。
6.公文書をダウンロードする
申請が受理されると、公文書が発出されます。
雇用保険被保険者資格取得届の電子申請が完了したのちに、公文書を取得しましょう。取得方法は、マイページから公文書のダウンロードを選択すれば可能です。なお、申請内容によっては発行されないケースがあるため、ダウンロードできる公文書か確認してください。
雇用保険の電子申請のメリット
雇用保険の電子申請のメリットは、次の4つです。
- 社内から申請できる
- 時間を問わず申請できる
- 情報漏えいのリスクを下げられる
- 支払いがネットバンキングでできる
それぞれ解説します。
社内から申請できる
電子申請では役所まで行く必要がなく、自社内で手続きが可能です。そのため、窓口まで往復する時間と混雑していた場合の待ち時間、交通費を大幅に削減できるでしょう。担当者の負担を減らすことは、社員と会社にとって大きなメリットといえます。
また、複数の窓口を回る必要がなく、一括で申請できることも特徴です。即時申請のため、郵送のようなタイムラグも起こりません。以上のように電子申請は、隙間時間を活用して行政手続きを行えるため、業務の効率化につながるのです。
時間を問わず申請できる
前提として、雇用保険被保険者資格取得届は、従業員を雇用した翌月10日までに提出する必要があります。繁忙期だと、作成や窓口に出向くのに時間を充てにくいはずです。
電子申請であれば、雇用保険をはじめとした行政手続きを、24時間いつでも行えます。仕事の空き時間を活用すれば、繁忙期でもゆとりを持って行政手続きができるでしょう。
情報漏えいのリスクを下げられる
雇用保険被保険者資格取得届には、多くの個人情報を記載する必要があります。紙ベースで手続きする場合は、窓口への持参やポスト投函をしなければならず、所定の場所に書類を持っていく際に、書類を紛失するリスクが考えられます。
しかし、電子申請であればインターネット上で手続きが完結するため、書類紛失のような物理的な情報漏えいのリスクを下げられるでしょう。
支払いがネットバンキングでできる
雇用保険被保険者資格取得届の申請には手数料がかかる場合があります。ATMで手続きすると手間がかかります。電子申請であれば、インターネットバンキングを利用した電子納付が可能です。
また、銀行の利用履歴を取り込んでいれば、次回以降の納付手続きはよりスムーズに行えます。
さらに、手数料が発生する場合は手続き検索欄に「行政手数料有」と表示されるため、入金を忘れるリスクも回避できるでしょう。ただし、電子納付では領収証書が発行されない点に注意しましょう。
雇用保険の電子申請のデメリット
雇用保険の電子申請のデメリットは、次の2つです。
- 導入にコストがかかるケースがある
- 完了までに時間がかかるケースがある
それぞれ解説します。
導入にコストがかかる
電子申請には、パソコンや電子申請システムに対応したOS、インターネット環境やICカードリーダーなどが必要です。もし、これらを1から整備する場合は、費用や時間などのコストがかかるでしょう。
とはいえ、電子申請により行政手続きにかける時間を削減できれば、社内の生産性向上が期待できます。結果として、費用や時間などの導入コストは、回収できるかもしれません。
完了までに時間がかかる
役所に持参した場合は、その場で確認してもらえたり、修正できたりします。
しかし、電子申請は提出後すぐに確認してもらえるわけではありません。申請時期やサーバーの状況などによっては、時間がかかるケースもあります。
また、申請内容に不備があれば、書類の修正や再提出が必要になる可能性があります。結果、手続きの完了までに時間がかかるでしょう。
電子申請で効率化するコツ
電子申請を効率化するコツは、次の2つです。
- 目的を明確にして早めに準備する
- 利便性とデメリットを理解する
それぞれ解説します。
目的を明確にして早めに準備する
電子申請にはメリットとデメリットが存在します。中小企業で義務化されていない場合は、導入する目的を明確にしましょう。たとえば、被保険者資格取得届や育児休業給付支給申請などです。電子申請でどのような手続きを行うかを明確にすれば、準備時間を短縮できます。
また、導入により業務が効率化されるかを確認してから準備しましょう。
利便性とデメリットを理解する
申請を担当する方が入力や申請しやすいシステムにしましょう。修正の難しさが懸念点のため、提出前には入念にチェックが必要です。スムーズに電子申請するためには、ケアレスミスを防ぐ体制を整えましょう。
また、インターネット環境を介して申請するため、個人情報の流出を防ぐセキュリティ対策も重要です。懸念点をカバーできれば、電子申請の恩恵をより高められるでしょう。
まとめ
電子申請とは、一部の行政手続きをパソコンから行う方法です。時間や場所を問わず行政手続きが可能なため、窓口に出向く手間がかかりません。
申請方法も3種類あるため、手続きしやすい方法で申し込めます。導入する際は、電子申請でどのような手続きを行うかの明確化が大切です。目的が明確になれば必要な準備がわかるため、よりスムーズに手続きできるでしょう。
とはいえ、電子申請は、主に社内の行政手続きコストを削減するための施策です。従業員が少ない企業は、雇用保険を電子申請で行っても、コスト削減の恩恵は感じにくいかもしれません。
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