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電子申請の義務化とは|社会保険と労働保険の手続きに役立つ情報

2020年4月から電子申請が義務化されたとの情報を耳にした方も多いのではないでしょうか。今のところ、対象となっている企業は限定的ですが、今後対象が拡大する可能性があります。そのため、すべての企業の担当者が電子申請義務化についてしっかり理解しておく必要があるでしょう。本記事では、電子申請義務化の概要や、電子申請義務化の対象・メリットについて解説します。電子申請義務化に関する知識を把握しておきたい方は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

電子申請の義務化とは|社会保険と労働保険の手続きに役立つ情報
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    電子申請義務化の概要

    2020年4月から、特定の企業を対象に、社会保険と労働保険の一部に電子申請が義務化されました。電子申請とは、インターネットを使って自宅や職場のパソコンから申請・手続きを行うことを指し、各省庁のさまざまな行政手続きについても、デジタル庁が運営する「e-Gov(イーガブ)」を利用した電子申請が可能です。

    電子申請義務化の背景

    電子申請義務化は、2018年4月の「規制改革推進会議・行政手続部会」において情報が公開されました。この中では、行政手続コスト削減についての方針が示されており「社会保険に関する手続」の電子申請義務化は、取り組みの一つです。電子申請によって事業者の生産性向上につながることが期待されています。

    参考:『行政手続コスト削減に向けて(見直し結果と今後の方針)』規制改革推進会議・行政手続部会(2018)

    電子申請義務化の対象企業

    それでは、社会保険・労働保険の一部が電子申請義務化の対象となるのはどのような企業なのでしょうか。電子申請義務化の対象となる特定の法人として、下記の4つが挙げられます。

    大法人資本金や出資金、銀行等保有株式取得機構に納めている拠出金が1億円を超える
    相互会社保険業法に基づく
    投資法人投資信託及び投資法人に関する法律に基づく
    特定目的会社資産の流動化に関する法律に基づく

    それぞれの特徴を解説していきます。

    大法人

    資本金か出資金、または銀行等保有株式取得機構に納める拠出金が1億円超えの大きな法人が電子申請義務化の対象です。対象になるかどうかは、従業員数や被保険者数ではなく、資本金額(1億円以上)によって決まります。

    相互会社

    保険業法に基づいて設立された法人も、電子申請を行うことが義務となっています。保険会社には「株式会社」と、株主がおらず保険契約者も構成員に含まれる「相互会社」の2種類があり、電子申請の義務化対象は、相互会社です。よって、保険契約者が意思決定を行います。

    投資法人

    投資信託及び投資法人に関する法律に基づく「投資法人」も電子申請義務化の対象です。投資法人とは、会社型投資信託とも呼ばれる資産投資・運用を目的として設立された法人を指します。

    特定目的会社

    資産の流動化に関する法律に基づいて設立された「特定目的会社」も、電子申請義務化が求められています。特定目的会社は、企業が所有する不動産を証券化するなど、特定の目的のために設立される法人です。「TMK」という略称があるほか「SPC(Special Purpose Company)」と呼ばれることもあります。上記4つの法人について、社会保険労務士や社会保険労務士法人が代行して手続きを行っている場合も対象に含まれるため、該当するかもしれない場合は確認しておくとよいでしょう。

    参考:『2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。』厚生労働省

    中小企業は対象外になるのか

    中小企業は電子申請義務化の対象外になるのか気になる方も多いでしょう。基本的に中小企業は対象外です。ただし、資本金または出資額、銀行等保有株式取得機構に納める拠出金が1億円を超える場合は対象に入ります。従業員が少ない、規模が小さいにかかわらず中小企業でも該当することがあるため、中小企業の担当者は、自社が該当するか確認しておくとよいでしょう。

    電子申請義務化の対象となる手続きと例外

    次に、電子申請義務化の対象になった手続きと、その例外をご紹介します。

    電子申請が義務化された手続き

    電子申請が義務化された手続きは下記の通りです。

    健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額算定基礎届
    被保険者報酬月額変更届
    被保険者賞与支払届
    労働保険継続事業に取り組む事業主が提出する以下の申告書
    (※一括有期事業を含む)
    年度更新に関する申告書
    概算保険料申告書
    確定保険料申告書
    一般拠出金申告書
    増加概算保険料申告書
    雇用保険被保険者資格取得届
    被保険者資格喪失届
    被保険者転勤届
    高年齢雇用継続給付支給申請
    育児休業給付支給申請

    参考:『2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。』厚生労働省

    電子申請以外の方法が認められている場合

    例外として、電子申請以外の方法が認められている場合もあります。労働保険関係の手続きにおいて以下の場合は、電子申請以外の方法で申請することができます。

    • 労働保険事務組合に労働保険関係の事務処理が委託されている
    • 単独有期事業を行う
    • 中途の従業員に対して、保険関係が成立した日から数えて50日以内に申告書を提出する
    • 電気通信回線の故障や災害などを理由として、電子申請が困難と認められる

    労働保険関連で手続きを行う際は、ぜひ確認しておきましょう。

    電子申請するメリット

    電子申請の義務化には、行政手続きを簡略化して利便性を高め、企業の生産性を向上させる目的があります。電子申請によって得られる、主な4つのメリットについて解説します。

    24時間申請できる

    電子申請のメリットのとして、24時間いつでも申請できることが挙げられます。申請を行う場合、通常であれば役所の窓口が開いている時間に行かなければなりません。基本的に役所の窓口は平日の夕方までしか開いておらず、時間が限られてしまうことが問題でした。しかし、電子申請を利用すれば申請時間の制限がなくなり、都合のよいタイミングで手続きができます。また、郵送のタイムラグを考慮する必要もありません。

    申請手続きの手間やコストが減る

    電子申請ならどこからでも申請ができるため、申請場所の制限がなくなります。遠くまで足を運んだり、複数の役所を回ったりする必要がなくなり、効率化にもつながるでしょう。また、役所の窓口で申請する場合では移動時間や交通費がかかりますが、このようなコスト削減も実現できます。

    必要書類の手書き業務がなくなる

    電子申請はすべてパソコンで完了するため、必要書類に手書きで記入する必要がありません。これまで記入に要していた手間や時間がなくなり、ほかの業務に手を回すことができるでしょう。さらに、手書きで発生しがちな誤字脱字などの間違いも防止できます。

    セキュリティ対策になる

    書類の場合は、申請書の紛失や情報漏洩のリスクがあります。しかし、電子申請はオンラインで手続きが完了するため、部外者の目に触れることがありません。安全に申請でき、セキュリティ対策にもなるでしょう。

    電子申請の方法

    電子申請のメリットが理解できたところで、次は具体的な電子申請の方法をご紹介します。電子申請の方法には、e-Govから直接申請する方法とAPIソフトを使って申請する方法の2つがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

    e-Govから直接申請する

    e-Govは政府が運営する行政情報のポータルサイトで、電子政府の総合窓口ともいわれています。e-Gov電子申請システムを利用すれば、直接手続きすることができます。

    申請手順は下記の通りです。

    1. アカウントを取得する
    2. 届出書を作成する
    3. 申請する

    1.アカウントを取得する

    e-Govを利用するには、はじめに「e-Govアカウント」か「GビズID」「Microsoftアカウント」のいずれかでアカウントを取得する必要があります。e-Govアカウントの方が一般的ですが、事前に「電子証明書」を取得しておかなければいけません。自社に合ったアカウントを取得しておきましょう。

    2.届出書を作成する

    電子申請する際の届出書は「届書作成プログラム」の利用、または「e-Govの届書作成画面」から作成できます。どちらの場合も、初回に専用アプリのインストールが必要です。「届書作成プログラム」を利用する場合は日本年金機構のサイトから、「e-Govの届書作成画面」を利用する場合は、e-Govサイトからダウンロードしましょう。

    参考:『電子申請(e-Gov)』日本年金機構

    3.申請する

    届出書が作成できたら、提出する省庁を選び「提出」ボタンを押して申請を完了させましょう。

    APIソフトを使って申請する

    上記のe-Gov電子申請システムは「進捗がわかりにくい」「項目を1つずつ手入力しなくてはいけない」など使いづらい点が多いシステムです。そのため、e-Gov対応のAPIソフトを使って申請する方法をおすすめします。この方法を使えば、申請データの作成や申請がすべてソフトウェア上で行え、クラウド対応しているソフトウェアならすべての作業がWeb上で完結できるのです。もちろん、業務で利用している人事管理システムで一元管理もできます。圧倒的に使いやすく、作業負担の軽減にも役立つでしょう。ただし、e-Gov対応のAPIソフトはそれぞれで電子申請方法が異なります。各APIソフトの提供元に詳細を確認しておきましょう。

    電子申請義務化にともない注意すべき点

    電子申請を行う場合、注意しなくてはいけないポイントを押さえておくことでスムーズに進めることができます。電子申請義務化にともなって注意すべき点を4つ取り上げて解説します。

    利用環境の整備が必要になる

    電子申請をするには、設備の準備が必要です。たとえば、パソコン・インターネット接続の確認やICカードリーダーの準備などをしておかなければいけません。特にe-Gov電子申請システムを利用する場合は、ポップアップブロックが設定されていると正しく作動しないケースがあります。また、専用アプリのインストールも必須です。不十分な利用環境だと電子申請ができないため、設備コストがかかる恐れがあるでしょう。

    準備に時間がかかる

    利用環境や申請手順の把握には時間が必要です。そのため、慣れていないうちは従来のやり方より時間がかかってしまう可能性があります。さらに、審査にも時間がかかります。提出してから審査が完了するまで待つことになるため、余裕を持って申請することが大切です。

    事前に電子申請書の準備がいる

    電子申請を行う場合は、あらかじめ電子証明書を取得しておかなければなりません。e-Gov電子申請システムから申請する場合でも、API対応ソフトで申請する場合でも、どちらにしても電子証明書が必要です。電子証明書の発行は認証局で手続きをしますが、e-Govのサイトで紹介されている認証局からでないと利用できない場合があるため注意しましょう。また、電子証明書の発行には、手数料が必要です。あらかじめ、詳細について各認証局に問い合わせておくことをおすすめします。

    申請が無効になる恐れがある

    電子申請義務化の対象企業であれば、電子申請しないことによって申請が無効になる恐れがあります。義務化とはいえ、今のところ電子申請をしなかったときの罰則はありませんが、事実上受理されない可能性が高いでしょう。自社が対象企業に該当するのか再度確認しておくことが重要です。

    まとめ

    2020年4月から施行された「電子申請義務化」は、面倒な行政手続きを簡略化して生産性の向上をはかる取り組みの一つです。対象企業は一部に限定されていますが、今後すべての企業が対象になる可能性があります。本記事でご紹介した電子申請のメリットや注意点、方法を把握しておくとよいでしょう。また、電子申請義務化をきっかけとして、業務の効率化に積極的に取り組むことをおすすめします。

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