社会保険を電子申請する3つの方法|手順やメリット・注意点を解説
現在、一部の企業に対して電子申請が義務化されていますが、義務化の対象でない企業でも電子申請ができることをご存知でしょうか。電子申請にはさまざまなメリットがあるため、うまく活用すれば業務の効率化につながります。当記事では、義務化の対象や電子申請の方法、手順などを解説します。社会保険の担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
社会保険手続きの電子申請とは
社会保険手続きの電子申請とは、社会保険や労働保険など一部の手続きのオンライン申請を指します。事業者の行政手続きに対するコスト削減を目的としており、2020年4月からは特定の法人に対して義務化されています。
義務化の対象ではない企業も電子申請できる
社会保険の手続きの電子申請は、義務化の対象ではない企業も活用できます。書面やCD、DVDでの届け出といった従来の手段に電子申請が加わったことで、申請方法の選択手段が広がっています。さまざまな手続きを電子申請することによるメリットは多いため、導入を検討してみるとよいでしょう。
社会保険手続きの電子申請が義務化された企業
電子申請が義務化された企業は、社会保険手続きの一部を電子申請で行う必要があります。対象となっている企業は、以下の4種類です。
- 資本金などが1億円を超えている
- 相互会社である
- 投資法人である
- 特定目的会社である
資本金などが1億円を超えている
資本金や出資金、銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金などが1億円を超える企業は、義務化の対象です。このような企業は「大規模法人」とも呼ばれますが、大企業のみとは限らず、中小企業でも該当する場合があります。
相互会社である
保険業法に基づく「相互会社」も、規模にかかわらず義務化の対象です。相互会社は保険会社にのみ認められている非営利法人で、株式会社とは異なり、株主が存在しません。契約者自体が構成員に含まれているのが特徴です。
投資法人である
「投資法人」も、義務化対象企業の一つです。投資法人とは『投資信託及び投資法人に関する法律』に基づき、投資家から集めた資金を特定の資産に投資運用することを目的として設立された法人を指します。
特定目的会社である
義務化の対象には「特定目的会社」も含まれます。特定目的会社は『資産の流動化に関する法律』に基づき、有価証券の発行など特定の目的のために設立された会社です。「SPC」や「TMK」と略される場合もあります。
電子申請できる社会保険の種類
社会保険の電子申請には、義務化されている手続きと、義務化はされていませんが電子申請可能な手続きがあります。それぞれについて解説します。
義務化されている手続き
健康保険・厚生年金保険 | 被保険者報酬月額算定基礎届 |
---|---|
被保険者報酬月額変更届 | |
被保険者賞与支払届 | |
雇用保険 | 被保険者資格取得届 |
被保険者資格喪失届 | |
被保険者転勤届 | |
高年齢雇用継続給付支給申請 | |
育児休業給付支給申請 | |
労働保険 | 継続事業に取り組む事業主が提出する以下の申告書 (※一括有期事業を含む) |
年度更新に関する申告書 (概算保険料申告書や確定保険料申告書、一般拠出金申告書) | |
増加概算保険料申告書 |
参考:『2020年4月から特定の法人について電子申請が義務化されます。』厚生労働省
義務ではないが電子申請が可能な手続き
義務化はされていませんが、ほかにも多くの手続きが電子申請できます。下記がその一例です。
- 健康保険 被扶養者(異動)届
- 健康保険 厚生年金保険 新規適用届
- 任意適用申請書
- 任意適用取消申請書
- 一括適用承認申請書
- 産前産後休業取得者申出書・変更(終了)届
- 産前産後休業終了時報酬月額変更届
- 育児休業等取得者申出書(新規・延長)・終了届
- 育児休業等終了時報酬月額変更届
- 介護保険適用除外等該当・非該当届
社会保険を電子申請するメリット
それでは、社会保険を電子申請で手続きすることにはどのようなメリットがあるのでしょうか。主なメリットを2つ取り上げて解説します。
手続き関連の業務をコストカットできる
インターネットに接続できるパソコンがあれば、自宅や職場からでも電子申請で社会保険の手続きが行えます。そのため、行政機関の窓口に足を運ぶ必要がありません。時間や交通費をカットできる点が大きなメリットといえるでしょう。また、電子申請では紙書類の必要がないことから、ペーパーレス化の実現につながります。印刷や管理のコストカットはもちろん、事務処理の効率化もはかれるでしょう。
いつでも申請できる
電子申請は、365日24時間申請可能です。手続きを直接役所で行う場合、窓口が開いている平日の夕方までに行かなければなりません。一方、電子申請ではいつでも手続きができるため、行政窓口の受付時間に左右されず、都合のよいタイミングで申請できます。
社会保険を電子申請に移行する注意点
社会保険の電子申請には多くのメリットがありますが、注意点もあるので確認しておきましょう。まず、電子申請の制度や手順を把握しなくてはならないため、手間がかかる点が挙げられます。担当者の学習時間を考慮する必要があるでしょう。また、電子申請に必要な機器やネットワークの事前準備も欠かせません。新たにソフトやサービスを導入する場合は、コストがかかることも念頭に置いておきましょう。
社会保険手続きを電子申請する方法と手順
社会保険手続きを電子申請するための方法は、3つあります。それぞれについて解説します。
- e-Govから電子申請する
- 日本年金機構の届書作成プログラムを利用し、電子申請する
- e-Gov対応のAPIソフトで電子申請する
e-Govから電子申請する
「e-Gov(イーガブ)」は、デジタル庁管轄のポータルサイトです。電子政府の総合窓口としての役割を持ち、ここから直接、社会保険の電子申請の手続きができます。e-Govから電子申請する手順は、以下の通りです。
1.利用のためのアカウントを取得する
まず、e-Govを利用するためのアカウントを取得します。アカウントには以下の3種類があり、いずれかが必要です。
- e-Govアカウント
- GビズID
- Microsoft アカウント
e-Govアカウントは、メールアドレスを準備し「e-Gov電子申請」のページから仮登録・メール確認・本登録の3ステップで簡単に取得できます。ただし、社会保険の手続きの際は、電子証明書を添付する必要があることに注意しましょう。また、GビズIDとは、1つのアカウントで複数の行政サービスにアクセスできる認証システムで、GビズIDホームページから作成し、印鑑証明書が必要です。そのためGビズIDがあれば、実際に手続きを行う際の電子証明書添付は省略できることがメリットといえるでしょう。Microsoft アカウントは、Microsoft のサービス上で利用できるアカウントで、e-Govサイトにログインすることもできます。
参考:『1.e-Govアカウントの取得』e-Gov電子申請
参考:『GビズID』日本年金機構
2.専用アプリケーションで届出書を作成する
次に、e-Gov専用アプリケーションをインストールし、取得したIDでe-Gov電子申請にログインします。e-Govアカウントを利用する場合は、初回ログインの際に、2要素認証や追加認証の設定が必要です。ログイン後に表示される「手続き検索」から申請書類を検索して、作成画面で届出書を作成します。
3.電子申請する
最後に、作成した届出書をWeb上で提出して完了です。申請先を選択し「提出する」をクリックしましょう。e-Govアカウントでログインして進めた場合、提出の段階で電子証明書の添付が求められます。提出後は、e-Govの画面上で処理状況を確認できます。また、e-GovではCSVファイル添付方式やAPI利用方式での申請もできるため、労務管理ソフトの利用時も便利に使えるでしょう。
日本年金機構の届書作成プログラムを利用し、電子申請する
日本年金機構では、社会保険の電子申請に特化したソフトウェア「届書作成プログラム」を無料で提供しています。届書作成プログラムを利用した電子申請の手順を解説します。
1.申請に必要なアカウント「GビズID」を取得する
あらかじめ、申請に必要な「GビズID」アカウントを取得しておきます。ただし、取得の際は印鑑証明書など必要書類の郵送による提出や審査があることに注意しましょう。審査には2週間程度、書類に不備がある場合はそれ以上の時間がかかるため、余裕を持った手続きを行う必要があります。申請が承認されるとメールが届くので、記載されたURLをクリックし、パスワードを設定することで「GビズID」を取得できます。
2.届書作成プログラムを日本年金機構のホームページからダウンロードする
gBizIDを取得したら、日本年金機構のホームページから「届書作成プログラム」のダウンロードを行います。なお、ダウンロードは無料です。また操作説明書や、自社システムを利用して届書を作成する方に向けた仕様書や通知書形式変換プログラム、チェック一覧表などもダウンロードできます。
参考:『電子申請を利用中の方へ』日本年金機構(ダウンロードページ)
3.プログラム上で届書を作成し申請する
ダウンロードしたプログラム上で、届書の作成から申請まで行えます。届書作成プログラムを起動したら「届書の作成」をクリックし、提出ファイル形式で「電子申請用」を選択します。続いて「届書の申請・申請状況の紹介」をクリックし「届書の申請」から必要事項を入力します。最後に、gBizIDを入力して「申請完了」をクリックすることで申請完了です。
e-Gov対応のAPIソフトで電子申請する
e-Gov対応のAPIソフトを導入している場合、新たなアカウントを取得しなくても、既存のアカウントでデータ作成から申請まで行えます。この場合、入力済みの労務管理データを使った電子申請ができるため、業務の効率化につながるでしょう。また、普段使用している人事管理システムで電子申請の一元管理ができれば、新たなアプリやシステムのインストールをする必要はありません。ただし、申請の手順はAPIソフトによって異なります。あらかじめ各APIソフトの提供元に詳細を確認しておくとよいでしょう。
まとめ
現在、社会保険手続きの電子申請が特定の企業で義務化されていますが、義務化の対象外企業でも電子申請を行えます。電子申請では社会保険に関するさまざまな手続きを行うことができ、業務のコストカットにつながったり、いつでも申請できたりといった多くのメリットが得られるでしょう。社会保険の電子申請は、e-Govや日本年金機構の届書作成プログラム、e-Gov対応のAPIソフトで行うことができます。アカウント登録やプログラムのダウンロードが必要になるなど、それぞれの手順が異なるため、自社に適した方法を選択するとよいでしょう。
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