アルバイトの雇用契約のポイント|契約書の必要性と記載項目、期間や解除に関する注意点を解説
アルバイトに限らず雇用契約書の作成は任意です。しかし、トラブルを避けるためにも、できる限り雇用契約書を締結するのが望ましいと考えられています。
本記事では、アルバイトの雇用契約を結ぶ際のポイントを詳しく解説します。雇用契約書の必要性をはじめ、記載すべき項目や契約期間、契約解除に関する注意点についてもわかりやすく紹介するので、人事労務関連の業務に携わる方は参考にしてください。
アルバイトの雇用契約とは
アルバイトとは、正社員と比べて働く時間が短い非正規雇用の労働者です。法律上は「短時間労働者」と呼ばれ、一般的に就業期間や月間の勤務日数、労働時間などの勤務条件を柔軟に調整できる雇用形態を指します。
雇用契約とは、雇用主と雇用される従業員の二者間で締結する契約です。アルバイトは従業員として会社に労働力を提供すること、会社側は労働に対する賃金を支払うことを約束します。
アルバイトとして雇用契約が成立すると正社員と同様に、労働基準法をはじめ最低賃金法や労働者災害補償保険法、雇用保険法などの法律が適用されます。たとえ短期間の契約であっても例外ではなく、労働条件通知書を作成したうえで、雇用契約書を取り交わすのが一般的です。
パートとの違い
アルバイトと似たような働き方にパートがあります。アルバイトとパートは、法律上はどちらもパートタイム労働者として区分されており、法律では以下のように定義されています。
一週間の所定労働時間が同一の事業主に雇用される通常の労働者(〜中略〜)の一週間の所定労働時間に比し短い労働者
引用:『短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律』e-GOV法令検索
主婦や主夫向けの求人をパートと呼び、学生やフリーター向けの求人をアルバイトと使い分けるケースも多く見られます。しかし、実際は両者に明確な違いはなく、法律においても区分されていません。
契約社員との違い
契約社員に関しても法律上、明確な定義は存在しません。どのような雇用形態を契約社員とするかは企業が自由に決められます。
しかし、契約期間の定めがある有期雇用契約を締結した従業員を契約社員と呼ぶ場合が多くあります。アルバイトは、契約次第で無期と有期のどちらにもなり得るのが契約社員との大きな違いです。
雇用期間は、労働基準法において「原則として最長3年(専門職など特定の条件がある場合は最長5年)」と定められています。契約社員を無期雇用とすることもできますが、ほとんどの企業では有期雇用を採用しています。
また、契約社員はあらかじめ勤務時間が定められていることが多くありますが、アルバイトは勤務時間が流動的な点も特徴です。
さらに、契約社員は基本的に社会保険へ加入し、アルバイトは労働時間などの労働条件が要件を満たしているかによって異なるため、社会保険に加入していないケースもあります。
正社員雇用との違い
正社員雇用とは、雇用期間を定めずに労働契約を締結する雇用形態です。無期雇用されるため、基本的にはみずから退職を志願しない限り雇用され続けます。
アルバイトは、契約次第で無期雇用にも有期雇用にもなりますが、多くは有期雇用契約が締結される傾向にあります。
正社員の労働時間は「週5日・8時間」のようにもともと決まっている会社が多い一方で、アルバイトはシフト制が採用されることが多く、ライフスタイルに合わせて働く時間を決めやすい点も特徴です。
また、アルバイトは時給制が多く、働いた時間の分だけ賃金が支払われるため、毎月の収入が安定しません。正社員は月給制が多く、毎月決まった金額が支払われるので安定した収入を得られます。賞与がもらえたり、昇給したりすることもあるでしょう。
アルバイトにも雇用契約書や労働条件通知書は必要?
アルバイトを雇用する際に雇用契約書は必要ないものの、労働条件通知書は作成しなければなりません。そこで、アルバイトに対する雇用契約書と労働条件通知書の取り扱い方法を詳しく解説します。
雇用契約書はできれば作成
雇用契約書とは、雇用主と従業員の間で交わされた契約を書面にしたものです。
民法上、雇用契約書の作成はあくまでも任意であり、双方の合意があればアルバイトの契約も成立します。書面による契約の締結は義務ではありません。
ただし、口頭でのやり取りはのちのトラブルにつながる恐れがあるため、アルバイトに対してもできる限り雇用契約書を作成し、双方が1枚ずつ保管した方がよいでしょう。
労働条件通知書は必須
アルバイトへの雇用契約書の交付は任意である一方「労働条件通知書」は労働基準法第15条に交付が義務づけられています。
労働条件通知書とは、賃金や労働時間、休暇などについて記載した書類です。
雇用契約書が雇用主と労働者双方の合意のもとで取り交わす書面であるのに対し、労働条件通知書は雇用主から従業員へ一方的に明示される書面です。
労働条件通知書には、大きく分けて以下の2つの内容を記載します。
絶対的明示事項 | 法律上、明記が義務づけられている内容 |
---|---|
相対的明示事項 | 会社の制度として定められている場合に記載が必要で、 口頭通知でも問題ない内容 |
上記の中で、昇給を除く絶対的明示事項については書面での交付が必要です。明示義務に違反すると、労働基準法第120条により、30万円以下の罰金が科される恐れがあるため注意しましょう。
相対的明示事項については、会社独自の規定がある場合は明示しなければなりません。口頭での明示でも問題ありませんが、トラブルを回避するために書面で交付するのがおすすめです。
アルバイト向け雇用契約書の記載事項
絶対的明示事項と相対的明示事項を踏まえて、ここからはアルバイト向けの雇用契約書に記載する項目について解説します。
必ず記載すべき項目
アルバイト向けの雇用契約書に記載すべき項目は、以下の通りです。
- 入社日
- 労働契約期間
- 就業場所
- 業務内容
- 始業時刻や終業時刻
- 時間外労働の有無
- 休日や休暇、休憩時間
- 賃金の発生基準や計算方法、支払い方法・時期に関する事項
- 退職に関する事項
労働契約期間は、有期雇用か無期雇用かを明確にするために記載しなければなりません。期間に定めがある場合は、契約期間や更新の有無なども記載しましょう。
賃金は雇用主と従業員とでトラブルに発展しやすい項目なので、なるべく詳細に記載します。時給以外に手当がある場合は、手当の種類や計算方法、金額をわかりやすく明記しましょう。
アルバイトだからこそ記載すべき項目
アルバイトに対しては「パートタイム・有期雇用労働法」により、以下の4項目を明示することが義務づけられています。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 雇用の改善など関する相談窓口
上記の4項目は、口頭で伝えるだけでなく、書面の交付により明示しなければなりません。相談窓口については、従業員に不安や悩みなどがある場合に相談できる部署名、連絡先などを記載します。
会社のルールがあれば記載すべき項目
会社が独自に定めるルールがある場合は、相対的明示事項として以下の項目を記載しましょう。
- 退職手当の有無
- 臨時に支払われる賃金、賞与、最低賃金に関する事項
- 労働者側が負担しなければならない費用
- 安全衛生に関する事項
- 職業訓練に関する事項
- 災害補償・業務外の傷病扶助に関する事項
- 表彰・制裁に関する事項
- 休職に関する事項
上記の項目は明示義務はないものの、企業の状況に合わせて記載することをおすすめします。
アルバイトの雇用契約における5つの注意点
アルバイトと雇用契約を締結する際に注意すべきポイントを5つ取り上げて解説します。
- 労働条件通知書は必ず作成する
- 雇用契約書は2部作成し本人控えを渡す
- 短期・単発、試用期間も雇用契約書を作成する
- 雇用契約書の記載項目を網羅する
- 契約解除のルールも設定する
労働条件通知書は必ず作成する
労働条件通知書は、雇用形態に関係なく交付しなければならない書類です。アルバイトを雇用する際には、正社員と同様に労働条件通知書を作成・交付しましょう。
ただし、労働条件通知書の内容を雇用契約書に含めて交付しても問題ありません。「労働条件通知書兼雇用契約書」として1つの書類にまとめれば、労働条件通知書を交付したと見なされるとともに、雇用契約書により雇用主と従業員の双方が内容に合意したことを証明できます。
雇用契約書は2部作成し本人控えを渡す
雇用契約書に限らず、契約書はトラブルに発展した際の証拠書類となるため、通常は2部作成して雇用主・従業員の双方で保管する必要があります。
原本を作成し、コピーしたものを従業員に手渡しても問題ありません。事業所でも適切な方法で保管し、契約内容をすぐに確認できる体制を整えておきましょう。
短期・単発、試用期間も雇用契約書を作成する
短期間で雇用する場合や単発での仕事を任せる場合であっても、労働契約が締結されていると判断されます。
企業には、ほかの従業員を雇用する際と同じように労働条件を明示する義務があるため、労働条件通知書もしくは労働条件通知書兼雇用契約書の作成と交付が必要です。
また、試用期間中においても労働契約は発生しています。試用期間がある場合は、試用期間の開始日と終了日、試用期間中の賃金、正式採用されないケースなどを記載しておきましょう。
雇用契約書の記載項目を網羅する
雇用契約書に記載する内容は多岐にわたります。特に労働条件通知書の内容を盛り込む場合は、記載しなければならない項目が多くなります。
記載漏れが生じると、従業員とのトラブルに発展する恐れがあり、最悪の場合、法律違反と判断されてしまう可能性も考えられます。雇用契約書を作成する際は、記載すべき項目を網羅しているかを確認しましょう。
契約解除のルールも設定する
正社員を雇用する際と同様に、アルバイトを雇用する際も、契約解除に関する規定を明確に記載しなければなりません。特に解雇事由については、わかりやすく記載するよう心がけましょう。
契約解除に関するルールの具体的な例は、以下の通りです。
- 違反行為が発覚した場合
- 無断欠勤や遅刻、早退などが続き、勤務態度の改善が見られない場合
解雇事由や懲戒処分に関しては、就業規則や雇用契約書等に規定しておくことが必要です。根拠がなければ、懲戒処分は下せません。契約解除のルールとあわせて、契約更新の有無や更新するための条件なども記載しておきましょう。
アルバイトの雇用契約に関する疑問
アルバイトの雇用契約についてよくある質問とその回答を紹介します。
- アルバイトの雇用契約期間はどれくらい?
- アルバイトの雇用契約は解除できる?
アルバイトの雇用契約期間はどれくらい?
アルバイトは有期雇用である場合が多く、一般的な契約期間は3〜6か月です。
ただし、アルバイトの雇用契約期間は企業が独自に設定できるため、数日間の短期契約や1年間の長期契約などさまざまなケースがあります。また、契約更新を繰り返すことで、同じ職場で継続して働くことも可能です。
アルバイトの雇用契約は解除できる?
アルバイトの雇用契約は解除することもできますが、解雇するためには正当な理由が必要です。
正当な解雇理由として判断される事例は、以下の通りです。
- 違反行為や無断欠勤などがあり、勤務態度が悪い
- 業務を遂行する能力が不足している
- 事業を縮小する
- 従事していた業務が終了・中止している
- 契約の更新回数の上限に達した
- 契約を更新しないことに合意している
契約を解除する際は、適切な手順を踏む必要があります。万が一、適切な手続きを怠って契約を解除した場合は、アルバイト従業員から民事訴訟を起こされる恐れがあるため注意が必要です。
解雇時のトラブルを回避するためにも、雇用契約書に契約更新の有無や契約解除をする際の判断基準を明記しておきましょう。
アルバイトの雇用契約も適切に準備しましょう
アルバイトを雇用する際に、雇用契約書の作成は義務づけられていません。ただし、労働条件通知書を一方的に交付するだけではのちのちトラブルに発展する恐れがあるため、雇用契約書の作成と交付に向けて準備しましょう。
アルバイト向けの雇用契約書に労働条件通知書の内容も盛り込む場合は、記載すべき項目をすべて網羅する必要があります。また、契約書は2部作成して、控えを従業員に渡しましょう。
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