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雇用保険の育児休業給付金とは? 企業向けに支給申請の流れを解説

雇用保険の育児休業給付金とは? 企業向けに支給申請の流れを解説

育児休業給付金とは、育児のため仕事を休むときにもらえる給付金のことです。育児休業給付金は、雇用保険の加入者に与えられた権利です。2023年3月に日本政府が育児休業給付金の給付額を、現行の67%から80%へ引き上げる方針を表明しました。

育児休業給付金は、非課税であり社会保険料も免除されるため、引き上げが実現すれば、育児休業期間中の大切な収入源となるでしょう。従業員が受給を希望する場合は、期間や条件など、対象者に含まれているか確認が必要です。

そこで本記事では、雇用保険における育児休業給付金について解説します。給付金額や申請方法についてもお伝えするので、ぜひ役立ててください。

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    雇用保険の育児休業給付金とは

    育児休業給付金とは、育児休業を取得している従業員に対して、雇用保険から支払われる手当です。

    2023年4月時点では、休業開始時賃金日額の67%の給付金を180日間取得できます。181日目からは50%が給付されます。

    ただし、雇用保険加入者でもすべての人が対象ではないため確認が必要です。

    過去に行われた雇用保険の育児休業給付金における改正

    過去に行われた育児休業給付金の法律改正内容をお伝えします。

    2021年9月の法律改正内容

    2021年9月の改正では、被保険者期間の要件が緩和されました。改正前後の違いは下記のとおりです。

    改正前改正後
    起算日が育児休業を開始した日起算日に産前休業を開始した日を追加

    大きな違いとして起算日が追加されています。改正前は育児休業を開始する日ですが、改正後は「産前」休業を開始した日も対象として追加されました。産前休業は育児休業前に取得する制度です。つまり、改正により被保険者期間の要件を満たしやすくなりました。

    なお、いずれも休業前2年間に被保険者期間が12か月以上必要なので注意しましょう。

    2022年10月の法律改正内容

    2022年10月の改正では下記の制度が導入されました。

    • 育児休業の分割取得が可能になった
    • 産後パパ育休制度が導入された

    それぞれ解説します。

    育児休業の分割取得が可能になった

    育児休業の分割取得が可能になりました。これまでは、分割取得不可能だったため、まとめて取得する必要がありました。

    しかし、2022年10月からは2回まで分割取得可能です。分割取得できるため、夫婦で交代しながら育児休業を取得できます。

    また、一度職場に戻る機会を設けることで、スムーズな職場復帰も期待できます。育児と仕事の両面でメリットになるシステムです。

    参考:『中小企業事業主の皆様へ 改正育児・介護休業法 対応はお済みですか?』厚生労働省

    産後パパ育休制度が導入された

    産後パパ育休制度(出生時育児休業)が導入されました。

    男性の育児休業取得を目的としており、通常の育児休業とは別に、出生後8週間のうち4週間を限度とし、2回まで分割して育児休業が取得できる制度です。

    通常の育児休業と同様に、2回まで分割取得が可能なため、家庭や仕事の都合に合わせながら計画的に取得できる点が魅力的といえるでしょう。

    2023年も改正される?

    2023年3月に育児休業給付金を、現行の賃金67%から最大80%へ引き上げが表明されました。育児休業給付金は非課税であり、社会保険料も免除されるため、育児休業中の大きな助けとなるでしょう。

    2023年4月時点で、引き上げ時期は未定です。今後、経済的な負担を気にせず育児に専念できる環境が構築されるでしょう。

    育児休業給付金の対象者を確認

    育児休業給付金の対象者は下記の5種類で、すべての項目を満たしていないと支給されません。6つめは有期雇用契約の場合のみ追加される条件です。

    1. 雇用保険の加入者であること
    2. 1歳に達する日の前日(誕生日の前日)までの子どもがいること
    3. 休業を開始した日の前日からさかのぼって2年間に被保険者期間が12か月以上あること(満たさない場合には産前休業を開始した日の前日からさかのぼって2年間に被保険者期間が12か月以上)
    4. 支払われる賃金の額が休業開始時賃金月額の80%未満であること
    5. 育児休業期間中の就業日数が月10日以内であること(10日を超える場合には80時間以下)
    6. 有期雇用の場合は子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約が終了しないこと

    上記を踏まえて、従業員が該当者なのかチェックしましょう。

    なお、3の要件にある2年間に関して、育児休業などを開始した日の前日からさかのぼって2年間に病気やけがにより、引き続き30日以上賃金の支払いを受けることができなかった日数がある場合には、その日数を2年に加算した期間(合計で最長4年)とする特例があります。

    雇用保険の加入者であること

    雇用保険の加入者が育児休業給付金の対象です。育児休業給付金は雇用保険から給付されるため、加入していないと支給されません。

    1歳に達する日の前日までの子どもがいること

    1歳の誕生日の前日までの子どもがいる従業員が対象です。延長して育児休業を取得したい場合は、下記の事由が求められます。

    • 子どもが1歳に達した時点で、保育園へ入園が認められないとき
    • 両親に不測の事態が起きたとき

    保育園などへ入園できない場合、証明できる書類などが必要です。両親の不測の事態とは、障害により育児が困難になった場合や婚姻を解消するなどの事態に適用されます。育児休業は、最大子どもが2歳になるまで継続できます。

    12か月以上の被保険者期間があること

    産休日前もしくは育児休業開始した日の前日からさかのぼって2年間で、1か月に11日以上勤務した月が12か月以上あれば対象です。正社員であればほとんどの方は対象に当てはまります。

    しかし、アルバイトやパートで上記の条件を満たせない場合は、月80時間以上勤務した月を1か月として算出可能です。期間内であれば、手続きできます。

    育休期間中に支払われる賃金が所定の金額よりも少ないこと

    育児休業期間中の賃金支払い額が育児休業前の賃金に対して、80%以上支払われていなければ給付の対象です。たとえば、月20万円の賃金をもらっている人は、育児休業期間中に16万円以上の賃金が支払われると給付金の対象外になります。

    育児休業期間中の就業日数が月10日以内であること

    育児休業期間中の就業日数が月10日以下である従業員が対象です。月10日以上就業する場合は、労働時間が80時間以下です。上記に当てはまらないと支給対象外になるので注意しましょう。

    有期雇用の場合は子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約が終了しないこと

    有期雇用契約者の場合、子どもが1歳6か月に達する日までに労働契約が終了していないことが条件です。特別な事情がある場合は、子どもが2歳になるまで延長できます。

    参考:『育児休業や介護休業をすることができる有期雇用労働者について』厚生労働省

    育児休業給付金の支給額を計算する方法

    育児休業給付金の計算方法について紹介します。

    支給額の計算方法

    育児休業給付金の計算方法は下記の通りです。

    育児休業開始時賃金日額×支給日数×67%

    育児休業開始時賃金日額とは、育児休業を開始する前6か月間の賃金を180で割った金額です。

    たとえば、月給30万円の人が6か月間給付した場合だと下記の計算であらわせます。30万円を6か月間支給された場合は180万円であるため、180で割ると、育児休業開始時賃金日額は1万円と計算できます。

    1万円×30日×67%=201,000円

    社会保険料や所得税は控除されないので、額面通り支払われるでしょう。

    育児休業中に賃金が支払われている場合の計算方法

    育児休業中に働いていた場合、減額支給されます。下記の表にまとめたので確認してみてください。

    賃金月額に対する賃金支給額
    13%未満満額支給
    13%〜80%未満賃金月額×80%−賃金
    80%以上支給なし

    育児休業中の賃金が賃金月額に対して13〜80%未満の場合、給付金が減額支給されます。

    育児休業給付金は支給から180日経過すると減額される

    育児休業給付金は支給から6か月経過すると減額されます。180日目までは賃金月額の67%が支給され、181日目以降では50%に減少します。

    180日目まで育児休業開始時賃金日額×支給日数×67%
    181日目以降育児休業開始時賃金日額×支給日数×50%

    賃金月額別の比較を下記の表にまとめました。(支給日数は30日)

    賃金6か月以内6か月経過後
    10万円66,993円50,000円
    15万円100,500円75,000円
    20万円133,986円100,000円
    25万円150,750円125,000円
    30万円201,000円150,000円
    35万円234,500円175,000円
    40万円268,000円200,000円
    45万円301,500円225,000円

    育児休業前6か月の賃金がいくらなのか、ご自身の収入と照らし合わせてみてください。

    育児休業給付金の支給申請の流れを解説

    育児休業給付金を申請する流れを解説します。申請方法を間違えたり書類に不備があったりすると、申請が長引くので事前準備を怠らないようにしましょう。

    支給申請の手続きに必要な書類とは

    育児休業給付金の支給申請に必要な書類は下記の通りです。加入者と事業主が用意する書類をそれぞれ確認しましょう。

    事業主側で
    用意する書類
    ・雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
    ・育児休業給付受給資格確認票
    ・(初回)育児休業給付金支給申請書
    ・適用事業所台帳(任意)
    ・賃金台帳
    ・出勤簿または育児休業証明書
    加入者側で
    用意する書類
    ・払渡希望金融機関指定届
    ・母子手帳のコピー
     (出生届出済証明のページで育児休業取得者名が記入されたもの)
    ・手書きで申請書を作成している場合のみ通帳のコピー
     (本人名義。旧姓の口座は不可)
     ※キャッシュカードコピー、銀行窓口でもらう確認印でも可

    従業員から育児休業の希望があった場合、雇用主である会社が代わりに手続きするのが一般的です。

    参考:『育児休業給付の申請時の必要書類』ハローワーク飯田橋

    支給申請の流れ

    支給申請の流れは下記の3ステップです。

    1. 加入者が事業主に対して育休の利用を申し出る
    2. 加入者が必要書類を用意し、事業主に提出する
    3. ハローワークへ必要書類を提出する

    順番に解説します。

    1.加入者が事業主に対して育児休業の利用を申し出る

    加入者から育児休業給付金の希望があった場合に、雇用主である会社が代わりに手続きをします。

    2.加入者が必要書類を用意し、事業主に提出する

    加入者に下記の書類を用意してもらいましょう。

    1. 払渡希望金融機関指定届
    2. 母子手帳のコピー(出生届出済証明のページで育児休業取得者名が記入されたもの)

    3.ハローワークへ必要書類を提出する

    加入者から書類を受け取ったら事業所側で必要な書類を用意してハローワークに提出します。事業主側が用意する書類は下記の通りです。

    1. 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
    2. 育児休業給付受給資格確認票(初回)育児休業給付金支給申請書
    3. 適用事業所台帳(任意)
    4. 賃金台帳
    5. 出勤簿または育児休業証明書

    加入者から受け取った書類とともにハローワークへ提出しましょう。手続きは2か月に一度行う必要があります。

    2回目以降に提出する書類は下記の内容で構いません。

    1. 育児休業給付支給申請書
    2. 賃金台帳
    3. 出勤簿またはタイムカード

    初回は多くの書類が必要ですが、2回目以降は数が減少します。

    参考:『育児休業給付金とは?必要書類や申請方法を解説!』常陽銀行

    育児休業給付金は支給対象期間の延長が可能

    育児休業給付金の延長が認められる条件と、延長手続きの流れを解説します。

    育児休業給付金の延長が認められる条件とは

    育児休業給付金の延長が認められる条件は下記の通りです。

    • 配偶者が病気などの理由で子どもを養育できない場合
    • 保育園などに申し込みをしているものの、希望が通らず子どもを預けられない場合

    支給対象期間の延長手続きの流れ

    支給対象期間を延長するには、理由別で必要書類が異なります。たとえば、保育園などに入所できないことが理由の場合、市区町村が発行した入所保留通知書などの書類が必要です。

    また、病気やけがで養育ができない場合は診断書が必要です。理由によって必要書類が異なるので、準備を怠らないようにしましょう。

    育児休業給付金以外の子育て支援制度「両立支援等助成金」

    2023年4月現在、育児休業給付金以外の子育て支援制度は下記の2種類あります。

    1. 育児休業支援等コース
    2. 出生時両立支援コース

    順番に解説します。

    育児休業支援等コース

    育児休業支援等コースとは、従業員の育児休業取得時と職場復帰時に、事業者に対して支給される助成金のことです。育児休業取得のため円滑に準備を行った中小事業主のみが対象です。

    産業によって中小事業主の定義が異なるので、厚生労働省の『令和5年度 両立支援等助成金』のページから確認しておきましょう。

    支給額

    支給額を下記の表にまとめました。

    ①育休取得時30万円※①②各2回まで
    (無期・有期雇用者各1回)
    ②職場復帰時30万円
    ③業務代替支援1.新規雇用(派遣を含む)
    ※50万円
    2.手当支給など
    ※10万円
    ※有期雇用者加算10万円
    ※1と2あわせて、初回から
     5年以内に1年度10人まで
    ④職場復帰後支援制度導入
    30万円
    制度利用
    ・看護休暇制度
     1,000円×時間
    ・保育サービス費用
     実支出額の2/3補助
    ※制度導入は1回限り
    ※制度利用は初回から
     3年以内に5人まで
    育児休業等に関する
    情報公表加算
    ①~④いずれかへの加算として2万円※1回限り
    ⑤新型コロナウイルス  感染症対応特例1人あたり10万円
    ※10人まで(上限100万円)

    参考:『令和5年度 両立支援等助成金』厚生労働省

    出生時両立支援コース

    出生時両立支援コースは、男性従業員が育休を取得しやすい職場づくりをした場合に支給される給付金です。「子育てパパ支援助成金」とも呼ばれており、第1種と第2種があります。

    違いは下記に記載しましたので確認してみてください。

    第1種第2種
    男性従業員が育児休業を取得しやすい雇用環境整備や業務体制に取り組み、育児休業を5日間以上取得した場合第1種を受給した事業所が3事業年度以内に育児休業取得率が30pt以上上昇した場合

    支給額

    支給額を下記にまとめたので確認してみましょう。

    第1種第2種
    20万円(代替要員加算:20万円)第1種を受給したあと、
    1事業年度以内に30pt上昇:60万円
    2事業年度以内に30pt上昇:40万円
    3事業年度以内に30pt上昇:20万円

    参考:『出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)』厚生労働省

    まとめ

    育児休業給付金は、経済的に安心して育児ができるよう年々取得できる金額が増えています。企業としても従業員が安心して暮らせるようなサポートで、良好な関係性が築けるでしょう。

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