雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書の書き方と注意点を解説
従業員を新たに雇用する際に提出する「雇用保険被保険者資格取得届」には提出期限があり、遅れる場合は遅延理由書の提出が求められます。本記事では、遅延理由書が求められるケースやフォーマットの入手方法、記入方法などを解説します。書類を作成する際の注意点も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
雇用保険被保険者資格取得届とは?
企業が新しく従業員を雇用する際、当該従業員が雇用保険の加入条件を満たしている場合は、被保険者資格の取得手続きを行う必要があります。
その雇用保険の加入手続きの際に必要なのが「雇用保険被保険者資格取得届」です。雇用保険被保険者資格取得届には提出期限があり、被保険者となった月の翌月10日までに提出しなければなりません。
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書の提出が求められるケース
雇用保険被保険者資格取得届の提出期限は、被保険者資格を取得した翌月の10日までです。もしも提出期限を過ぎてしまった場合は、遅延理由書をあわせて提出する必要があります。
なお、どの程度の遅れで遅延理由書が必要なのかは、ハローワークによって異なります。一般的には提出期限から半年以上経過している場合に必要とされていますが、事前に管轄のハローワークに問い合わせておくと安心です。
遅延理由書により被保険者資格をさかのぼって取得できる
遅延理由書に記載した内容が認められた場合は、最大で2年前までさかのぼって雇用保険の加入資格を取得できます。2年を超える場合は、雇用保険料の徴収が確認できる書類(賃金台帳など)が別途必要です。
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書の入手方法
遅延理由書のフォーマットは、労働局のホームページからダウンロードできます。「Word形式」「PDF形式」の2つの形式が用意されているので、使いやすい方を選びましょう。
なお、これらのフォーマットは法的に定められたものではなく、企業が独自に作成することもできます。ただし、その場合もフォーマットを参照しながら、最低限必要な項目を盛り込むようにしましょう。
遅延理由書に最低限必要な項目 |
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・提出先のハローワーク ・遅延理由 ・被保険者の氏名 ・生年月日 ・資格取得日 ・被保険者番号 ・事業主の企業名 ・代表者名 ・所在地 |
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書の書き方
遅延理由書の書き方を労働局のフォーマットに沿って解説します。
日付・宛名
まずは、遅延理由書を提出する日付と宛名を記入しましょう。宛名には、事業所を管轄するハローワークの名称を記入します。管轄のハローワークの名称は、厚生労働省のホームページから確認できます。
事業所が所在する都道府県を選び、公共職業安定所の項目の右側にある「管轄一覧表」をクリックすると各管轄区域が表示されます。
参照:『都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧』厚生労働省
雇用保険被保険者資格取得届の内容
次に、雇用保険に加入する従業員の情報を記入します。
具体的には従業員の氏名・生年月日・雇入年月日・資格取得年月日・被保険者番号を記入しますが、基本的には「雇用保険被保険者資格取得届」の内容をそのまま転記すれば問題ありません。
遅延理由
遅延理由書には、その名の通り提出が遅延した理由も記載する必要があります。
遅延理由の項目は選択式ではなく記述式で、遅延理由を説明する文を作成して記入します。「業務多忙により提出が遅れたため」「事務処理上の遅延があったため」「連絡漏れがあったため」など、提出が遅れた理由を記入しましょう。
このとき、再発防止策についても記載しておくのがおすすめです。「以後このようなことがないよう管理を徹底いたします。」というように、謝罪の気持ちが伝わる文章を書き添えるとよいでしょう。
事業所の詳細
最後に、事業所の情報を記入します。事業所の名称・代表者氏名・所在地の3つの情報は欠かさず記入しましょう。
雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由を書く際の注意点
遅延理由書を作成する際は、以下の2つのポイントに注意することが大切です。
- 遅延理由は簡潔に記載する
- 誤字脱字がないようにする
それぞれのポイントについて、以下で詳しく解説します。
遅延理由は簡潔に記載する
雇用保険の手続きを故意に遅延させるケースはごくまれで、多くは事務処理上のミスや不注意によるものでしょう。
遅延理由は記述式であるため、ミスの背景を事細かに記入したくなってしまう人もいるかもしれませんが、詳細まで触れるとかえって言い訳がましい印象を持たれてしまう恐れがあります。遅延理由は長文ではなく、簡潔にわかりやすく書くことを意識しましょう。
また、事業所側の責任を認めることも大切です。たとえ遅延理由が「失念していた」という完全な不注意であっても、事実をありのままに書くよう心がけましょう。
誤字脱字がないようにする
雇用関連の手続きが遅れると、提出を急ぐ気持ちから細かな部分のチェックを怠ってしまうケースが見られます。雇用保険被保険者資格取得届の遅延理由書に提出期限はないため、1秒でも早く提出しようとするよりも、提出が遅れた理由や謝罪の気持ちを的確に伝えることが大切です。
特に、誤字脱字には十分注意しましょう。どれだけ誠意のある内容でも、文章にミスがあると読む人に不信感を与えてしまいます。誤字脱字や記入漏れがないか、隅々まで確認をしたうえで提出してください。
雇用保険未加入における罰則とリスク
従業員を雇用保険に加入させることは、企業の義務です。
加入条件を満たしているにもかかわらず加入手続きを怠った場合、管轄の労働基準監督署より指導や是正勧告が行われるケースもあります。再三の指導・勧告にも従わなかった場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる恐れもあるでしょう。
また、必要な手続きを怠り、行政からの指導にも従わなかったとなれば、企業の社会的信用が失墜しかねません。業績や採用活用にも悪影響を及ぼすリスクがあるため、手続きが遅れてしまった場合は早めの対応が肝心です。
雇用保険の基本的な加入条件
手続きの遅延や未加入を防ぐためにも、雇用保険の加入条件を正確に把握しておきましょう。基本的な加入条件は、以下の3つです。
- 31日間以上勤務する見込みがある
- 1週間あたり20時間以上働く見込みがある
- 学生ではない(例外あり)
学生は原則的に雇用保険の対象外ですが、夜間・定時制の学校に通う学生は雇用保険に加入できます。また「休学中」や「卒業後も引き続き勤務する予定である場合」など一定条件を満たせば、昼間の学校に通う学生も加入できます。
なお、雇用保険の適用範囲は拡大される可能性があるため、常に最新の情報を把握しておきましょう。
【雇用形態別】雇用保険の加入条件
雇用保険の加入条件を雇用形態別にくわしく解説します。
正規雇用の従業員
正規雇用の従業員については、上記で解説した3つの条件を満たす場合に雇用保険に加入させる必要があります。
「31日間以上勤務する見込みがある」「1週間あたりの労働時間が20時間以上である」などは正規雇用であれば多くの従業員が満たしているので、基本的に「正規雇用=雇用保険に加入する」と考えて問題ありません。なお、被保険者区分は一般被保険者です。
後述する短期雇用特例被保険者および日雇労働被保険者に該当しない65歳以上の被保険者は、高年齢被保険者です。なお、一般被保険者は65歳に達すると高年齢被保険者に切り替わります。
非正規雇用の従業員
アルバイトやパートなど非正規雇用の従業員は「1週間あたりの所定労働時間が20時間以上」かつ「継続して31日以上雇用される見込みがある」という条件を満たさないケースもあるため注意が必要です。
また、季節的労働者は雇用保険の「短期雇用特例被保険者」、日雇い労働者(単発の仕事に従事する者や雇用期間が30日以内の者)は「日雇労働被保険者」に該当し、それぞれ別途以下の条件を満たす必要があります。
季節的労働者の加入条件 |
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「当初から4か月を超える雇用契約を結んでいる」または「4か月の雇用期間を超えて引き続き雇用されている」 |
日雇い労働者の加入条件 |
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日雇い労働によって生計を立てており、以下の条件に当てはまる。 ・日々雇用されている ・30日以内の期間を定められている |
雇用保険の手続きが大幅に遅れたときは、遅延理由書の作成・提出が必要
雇用保険の加入手続きが大幅に遅れた場合は、雇用保険被保険者資格取得届とともに遅延理由書を作成・提出する必要があります。遅延理由書の形式に法的な定めはありませんが、労働局のホームページからフォーマットをダウンロードして使用すると便利です。
手続きが遅れた理由を記載する際は、企業としての非を素直に認め、遅延理由を簡潔に記載することが大切。謝罪の気持ちを伝わりやすくするよう、再発防止策について触れておくのもよいでしょう。
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