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助成金の生産性要件とは? 満たすべき理由と計算方法を徹底解説!

助成金には、一定の要件を満たすことで支給額が増額・増率する「生産性要件」というシステムがあります。本記事では、生産性要件の概要をはじめ、生産性要件を満たすと増額される助成金の種類や支給金額を解説します。すでに助成金の申請実績がある企業をはじめ、助成金の申請を検討している企業の方はぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

助成金の生産性要件とは? 満たすべき理由と計算方法を徹底解説
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    助成金の生産性要件とは?

    助成金の生産性要件とは、厚生労働省が実施している助成金を受給する際、一定条件を満たすことで助成金額が増額、または増率する仕組みです。具体的には、企業や事業所が企業全体や従業員の生産性を高めるために研修や訓練を実施し、生産性要件を満たしていることを証明する必要があります。今後も少子高齢化の深刻化が懸念される日本が経済成長をはかるためには、労働者一人ひとりの労働生産性の向上が必要不可欠です。政府は、生産性向上に取り組む企業や事業所を支援するために、助成額や助成率の割増などの措置を行います。

    しかし、厚生労働省は、雇用関係の助成金の生産性要件を2023年3月31日をもって廃止しました。要件の確認や支給に長期間要するため、事務面で非効率だったことが廃止の要因のようです。生産性要件の制度は廃止されましたが、代わりに賃金引き上げに関する要件を新たに追加し、生産性向上やより働きやすい職場環境の整備をサポートしています。

    助成金における生産性要件の目的とは?

    助成金における生産性要件の制度がスタートした最大の目的は、企業による助成金の適正利用、そして受給事業による生産性向上を促すことです。生産性の向上が企業の経済活動を活発化させ、地域社会の発展につながることが期待されています。

    生産性要件を設定している助成金の種類は7つ

    生産性要件を設定している助成金には、次の7項目があります。

    生産性要件が設定されている助成金
    1.再就職支援関係労働移動支援助成金早期雇入れ支援コース
    2.転職・再就職
     拡大支援関係
    中途採用等支援助成金中途採用拡大コース
    3.雇い入れ関係地域雇用開発助成金地域雇用開発コース
    4.雇用環境の整備関係人材確保等支援助成金雇用管理制度助成コース
    介護福祉機器助成コース
    人事評価改善等助成コース
    若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
    作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
    外国人労働者就労環境整備助成コース
    テレワークコース
    65歳超雇用推進助成金高年齢者評価制度等雇用管理改善コース
    高年齢者無期雇用転換コース
    5.仕事と家庭の両立関係両立支援等助成金出生時両立支援コース
    介護離職防止支援コース(※)
    育児休業等支援コース(※)
    6.キャリアアップ・
     人材育成関係
    キャリアアップ助成金正社員化コース賃金規定等改定コース
    賃金規定等共通化コース
    賞与・退職金制度導入コース
    選択的適用拡大導入時処遇改善コース
    短時間労働者労働時間延長コース
    人材開発支援助成金 特定訓練コース
    一般訓練コース
    教育訓練休暇等付与コース
    特別育成訓練コース
    建設労働者認定訓練コース
    建設労働者技能実習コース
    人への投資促進コース
    7.最低賃金引き上げ関係業務改善助成金

    (※)新型コロナウイルス感染症対応特例は除く

    参考:『労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます』厚生労働省

    これら7つの項目において、行政が用意する「生産性要件算定シート」に基づいて計算を行い、生産性要件を満たした場合に、助成額や助成率の増額・増率が実施されるのです。

    助成金の生産性要件の計算方法

    助成金の生産性要件の計算方法をご紹介しましょう。

    生産性要件の計算方法

    生産性は、次の計算式で算出されます。

    生産性=付加価値(営業利益+人件費+減価償却費+動産・不動産賃借料+粗税公課)/雇用保険被保険者数

    生産性要件は、助成金を申請する直近の会計年度と3年度前がともにプラスの数値でなければなりません。たとえば、営業利益が赤字であっても、人件費が増えたり設備投資によって減価償却費がかさんだりした場合は、生産性はプラスになる可能性もあります。勘定科目がわからない場合は税理士に、人件費の項目などがわからない場合は社会保険労務士に相談しましょう。

    生産性要件を満たすための条件とは?

    生産性要件を満たすために重要なのが、生産性の向上です。次の伸び率であれば、生産性が向上していると判断されます。

    • キャリアアップ助成金の支給申請を行う直近の会計年度の生産性が、3年度前と比べて6%以上伸びていること
    • 生産性が今後伸びると予測されるなど、金融機関から一定の事業性評価を得ており、3年度前に比べて1%以上伸びていること

    参考:『労働生産性を向上させた事業所は労働関係助成金が割増されます』厚生労働省

    企業が設定した目標と実際の業績を比較し、その差が一定の数値以下である必要があります。生産性が一定以上伸びていると判断される基準は、伸び率が6%であるかです。6%に満たなくても1%以上であれば、金融機関から一定基準の事業性評価を得ていることを条件として、生産性要件を満たしたと判断されます。

    企業や事業所は、生産性向上に向けた取り組みを積極的に行い、その成果を証明することが求められます。生産性要件の恩恵を受けるためには、生産性向上のための取り組み実績がわかる適切な書類や資料も必要です。取り組みの例としては、新たな設備やシステムの導入、業務プロセスの改善、従業員のスキルアップや教育、生産性に関する調査や分析などが挙げられます。

    生産性要件を満たすことで増額される助成金と支給金額

    生産性要件を満たすことで増額・増率される助成金と具体的な支給金額をご紹介します。

    1. 再就職支援関係
    2. 転職・再就職拡大支援関係
    3. 雇い入れ関係
    4. 雇用環境の整備関係
    5. 仕事と家庭の両立関係
    6. キャリアアップ・人材育成関係
    7. 最低賃金引き上げ関係

    1.再就職支援関係

    再就職支援関係の助成金制度である『労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)』は、労働者の早期雇用を促進することで、事業主の人員確保を支援する助成金制度です。再就職援助計画の対象となった労働者を雇用し、雇い入れ日から6か月以上引き続き雇用した事業主に助成金が支払われます。

    通常助成額優遇助成額
    30万円40万円

    参考:『労働移動支援助成金ガイドブックー早期雇入れ支援コース』厚生労働省

    2.転職・再就職拡大支援関係

    転職・再就職拡大支援関係の助成金として『中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)』があります。中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)では、中途採用者の雇用管理制度を整備した企業や事業所に対して助成金が支給されます。支給対象は、期間の定めのない労働者として途中採用された人たちです。

    助成対象となる中途採用の拡大には、次の3タイプがあります。

    • 中途採用率の拡大
    • 45歳以上の人の初採用
    • 情報公表+中途採用者数の拡大
    通常助成額優遇助成額
    30〜80万円45〜110万円

    参考:『中途採用等支援助成金(中途採用拡大コース)のご案内』厚生労働省

    3.雇い入れ関係

    雇い入れ関係の助成金として『地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)』があります。過疎地や離島など雇用機会が不足しているエリアの企業や事業主が、そのエリアの求職者を雇い入れた場合に助成金が支給される制度です。事業所の設置や環境整備にかかった費用、増加した労働者数に応じて支給される助成金が変動します。支援対象地域や事業所の種類によって異なる条件があるため注意しましょう。

    措置・設置費用 通常助成額優遇助成額
    300万円以上1,000万円未満48万円60万円
    1,000万円以上3,000万円未満57万円72万円
    3,000万円以上5,000万円未満86万円108万円
    5,000万円以上114万円144万円

    ※労働者の増加数が2〜4人の場合

    参考:『支給額の変更』厚生労働省

    4.雇用環境の整備関係

    雇用環境の整備関係の助成金は、大きく分けて『人材確保等支援助成金』と『65歳超雇用推進助成金』の2つがあります。

    人材確保等支援助成金

    人材確保等支援助成金とは、魅力ある職場づくりのために労働環境を整える事業者や協同組合などに対して助成する制度です。人材確保や離職率の低下、定着率の向上を目的としています。

    人材確保等支援助成金には、主に次のようなコースが設置されています。

    • 雇用管理制度助成コース
    • 介護福祉機器助成コース
    • 人事評価改善等助成コース
    • 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
    • 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
    • 外国人労働者就労環境整備助成コース
    • テレワークコース

    『雇用管理制度助成コース』では、諸手当制度や研修制度、健康づくり制度など、従業員の離職率を高めないための制度を導入、実施する必要があります。制度を導入するだけでなく、作成した雇用管理制度整備計画を管轄の労働局に認定してもらわなければなりません。

    通常助成額優遇助成額
    57万円72万円

    参照:『はじめに 支給までの流れ 雇用管理制度助成コース』厚生労働省

    5.仕事と家庭の両立関係

    仕事と家庭の両立関係の助成金として『両立支援等助成金』があります。両立支援等助成金は、仕事と家庭の両立ができる職場環境づくりを支援するための助成金制度です。

    両立支援等助成金で設置されているコースは次の通りです。

    • 出生時両立支援コース
    • 介護離職防止支援コース(※新型コロナウイルス感染症対応特例は除く)
    • 育児休業等支援コース(※新型コロナウイルス感染症対応特例は除く)
    • 不妊治療両立支援コース

    両立支援等助成金の出生時両立支援コースは、別名『子育てパパ支援助成金』とも呼ばれています。男性労働者が育児休暇や育児目的休暇を取得しやすい職場環境を整備した事業者に対して助成する制度で、育児休業や育児目的休暇を取得させた場合に助成されます。

    中小企業中小企業以外
    通常助成額優遇助成額通常助成額優遇助成額
    57万円72万円28.5万円36万円

    参考:『両立支援等助成金 支給申請の手引き(2021年度版)』厚生労働省・都道府県労働局

    6.キャリアアップ・人材育成関係

    キャリアアップ・人材育成関係の助成金である『キャリアアップ助成金』は、非正規雇用の労働者のキャリアアップをはかるための助成金制度です。

    キャリアアップ助成金には、次の6つのコースが存在します。

    • 正社員化コース
    • 賃金規定等改定コース
    • 賃金規定等共通化コース
    • 賞与・退職金制度導入コース
    • 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
    • 短時間労働者労働時間延長コース

    正社員化コースでは、非正規雇用者を正社員化するための取り組みや処遇改善をはかった事業主に対して助成金が支給されます。

    中小企業大企業
    通常助成額優遇助成額通常助成額優遇助成額
    有期雇用→正規雇用57万円72万円42万7,500円54万円
    無期雇用→正規雇用28万5,000円36万円21万3,750円27万円

    参考: 『キャリアアップ助成金のご案内』厚生労働省

    7.最低賃金引き上げ関係

    最低賃金引き上げ関係の『業務改善助成金』とは、生産性向上のための設備投資や事業所内の最低賃金を一定額以上引き上げた場合に、費用の一部を助成する制度です。生産性や労働能率を向上させるための設備投資を促進する目的があります。

    通常助成額優遇助成額
    事業場内最低賃金870円未満9/109/10
    事業場内最低賃金870円以上920 円未満4/5
    事業場内最低賃金920 円以上3/44/5

    参考: 『中小企業最低賃金引上げ支援対策費補助金(業務改善助成金)交付要綱』厚生労働省

    助成金の生産性要件を満たすうえでの注意点

    助成金の生産性要件を満たすうえで注意すべきポイントをまとめました。

    • 人件費の対象とならないものがある
    • 事業所単位での申請が必要
    • 事業主都合による離職があると要件を満たさない
    • 確定申告が終了していない場合は注意が必要
    • 雇用保険被保険者数を把握しておく必要がある
    • 書類提出が煩雑になる

    人件費の対象とならないものがある

    生産性要件を満たすためには、人件費のうち助成金の対象外となるものがあると理解しておきましょう。たとえば、役員報酬や役員退職金、旅費交通費、派遣労働者の派遣手数料などは、人件費に含まれません。

    事業所単位での申請が必要

    生産性向上助成金の申請においては、営業所や支店など事業所単位での申請が必要です。各事業所が独立して雇用保険適用事業所となっている場合は、事業所ごとに申請書を提出してください。助成金の種類によっては法人単位での申請となるケースもありますので、事前に確認しておきましょう。

    事業主都合による離職があると要件を満たさない

    事業主都合による離職は生産性要件を満たさず、通常の助成金も支給されないケースがあります。生産性要件の算定期間中に事業主都合による離職者がいた場合は、要件対象外となるので注意が必要です。万が一、労使紛争が起こっている場合は、まずは通常の労務管理に注力して職場環境の改善に努めましょう。

    確定申告が終了していない場合は注意が必要

    助成金の申請時期によっては、直近の確定申告が終了していないケースが考えられます。その場合は、前の会計年度を直近会計年度とみなし、3会計年度前と比較して生産性を判断してください。申請対象となる期間を事前に理解しておきましょう。

    雇用保険被保険者数を把握しておく必要がある

    生産性を算出するためには、正確な雇用保険被保険者数を把握しなければなりません。把握できていない場合は、ハローワークにて事業所別被保険者台帳交付請求書を提出することで照会できます。ただし、日雇い労働被保険者や短期雇用特例被保険者は雇用保険被保険者数から除外されるので注意が必要です。

    書類提出が煩雑になる

    生産性要件を適用するためには、助成金の支給申請書とあわせて生産性要件に関する書類の提出も必要です。助成金の受給申請だけでも煩雑な手続きが多い中、さらに必要書類が増えることで書類の準備や提出に苦労するケースも少なくありません。申請期限を過ぎないように、なるべく余裕を持って計画的に準備を進めていきましょう。

    助成金を上手に活用して生産性向上へ(まとめ)

    生産性要件は、厚生労働省が支給する助成金を受給する際、一定条件を満たすことで助成金額を増額、または増率する仕組みです。厚生労働省は、雇用関係の助成金の生産性要件を2023年3月31日をもって廃止しましたが、今後また同じような助成金制度が開始される可能性もあります。最新の情報を確認しながら、利用可能な助成金制度をチェックしていきましょう。

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