労務の効率化を実現する手段や手順、ポイントを解説

労務の効率化を実現する手段や手順、ポイントを解説

労務管理の担当者は幅広い業務を抱えており、労働人口の減少による人材不足も相まって効率化が求められています。しかし業務数の多さから、効率化をはかるために何から始めるべきか優先づけが難しいこともあるのではないでしょうか。本記事は、労務の基本や現状をはじめ、効率化に欠かせないポイントや方法などを解説します。自社の労務を効率化したいと考えている方は、ぜひ参考にしてください。

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    労務の基本

    労務とひと言にいってもその業務内容は多岐に渡ります。労務の基本と、労務と混合されやすい人事についてご紹介します。

    労務の仕事内容とは

    労務とは、労働に付随して発生する業務全般を差し、従業員に代わって書類の作成や申請などを行います。従業員が業務に専念できるようサポート的な役割も担い、そのほかに労務に関する業務内容としては、主に以下の7つが挙げられるでしょう。

    • 勤怠管理
    • 給与計算
    • 入退社の手続き
    • 就業規則の作成
    • 従業員の健康管理
    • 福利厚生の管理
    • 労務トラブルへの対応

    人事との違い

    労務の目的は、従業員が働きやすい環境を整備することです。そのために、社会保険や福利厚生の加入手続きなどさまざまな作業を従業員に代わって行います。一方人事の目的は、自社の組織力を強化することに重きが置かれていることが多いです。採用活動を通して優秀な人材を獲得すること、従業員が最大限のパフォーマンスが発揮できる環境をつくる役割が人事担当者にはあります。企業によっては、労務と人事を兼務しているケースもあるでしょう。

    労務の現状

    2019年4月1日より働き方改革関連法が施行され、これまで以上に労務管理の徹底が求められるようになりました。さらに業務の中で扱う書類も多く、労務管理は従来より難しくなっています。

    ワークライフバランスの改善が求められている

    働き方改革関連法により、時間外労働の上限規制が設けられるとともに、有給休暇の取得が義務づけられました。こうした背景には長時間労働や過労死といった問題があり、労務担当者はこれまで以上に徹底した労働時間管理が求められています。具体的には、週の労働時間が40時間を超える場合は残業とみなし、特別な事情を除き、残業時間は月単位で45時間、年単位で360時間以内が最大です。

    週休2日制を採用している企業のケースを考えると、残業を命じても1日1.5時間前後までに抑えなければなりません。有給休暇については、10日以上取得する従業員を対象として5日以上の取得が義務化されました。成果主義への移行や有給の事前申請の徹底など、必要のない残業の削減が求められています。

    扱う書類が多い

    労務管理では、手続きによって書類の種類や提出期限が異なるため、それぞれの書類について正確に把握しておく必要があります。たとえば健康保険や厚生年金の資格取得届は、従業員を雇用してから5日以内に提出しなければなりません。なかには期限内に提出しなければ罰則が課せられる書類もあるため、それぞれの提出期限を確認し、必ず期限内に提出するようにしましょう。

    労務を効率化する方法

    業務の幅が広い労務管理を効率化するには、業務内容を洗い出して全体像を把握することから始めましょう。

    • 業務を振り分ける
    • 業務を分担しつつ属人化を防ぐ
    • スケジュールを作成する
    • ITツールを導入する
    • ペーパーレス化を進める

    業務を振り分ける

    労務管理の業務はさまざまなタスクの組み合わせで成り立っており、効率化するには業務を「定型業務」と「非定型業務」に振り分けることが大切です。定型業務とは、勤怠管理や給与計算など、一定の手順に沿って実施する業務を指します。標準化や自動化が容易で、効率化しやすいのが特徴です。

    一方非定型業務とは、就業規則の策定やハラスメントへの対策など、それぞれのケースに合わせて適切に対応することが求められます。非定型業務にはコミュニケーション能力や判断力が求められるため、自動化や標準化が容易ではありません。非定型業務の効率化をはかるには適切な担当者を割り当て、属人化を防ぐためにスキルの共有を行うことが大切です。

    業務を分担しつつ属人化を防ぐ

    労務管理では、テーマ単位で業務を進める傾向があるため、業務負担の偏りを可能な限り防止するために分担する必要があります。ただし、同じ業務を行っても、担当者により品質や進捗に差が生じるため、分担には属人化のリスクが考えられるでしょう。

    属人化とは、特定の業務について作業担当者である従業員のみが把握している状態です。属人化すると、担当者の不在時に業務の滞りが発生することも少なくありません。そのため属人化を防ぐには、業務マニュアルの作成が重要です。ノウハウや情報を共有すると、業務の品質が均一化され、進捗の差が縮まり効率化につながります。

    スケジュールを作成する

    労務の業務を効率化するには、年間スケジュールを立てて優先順位をつけ、期限を明確にすることが重要です。多くの業務を並行して行うには、業務の範囲が広く容易ではありません。スケジュールを立てることで、期限の迫っている業務や定期的に発生する業務を一元的に管理・可視化できます。業務に遅延がある場合も早期に見つけられ、迅速な対応につながるでしょう。

    ITツールを導入する

    ITツールを導入すると、労務管理の勤怠管理や給与計算などの定型業務の自動化が進みます。労務に特化したITツールが増加し、業務の効率化をはかるためにITツールを導入する企業も多くなりました。ITツールの導入によりスピードはもちろん正確性も増し、人的ミスの削減や業務の手間を省けます。また従業員の労働時間や勤怠情報など、管理者は最新の情報をリアルタイムで把握が可能です。これまで進められなかったそのほかの業務へ時間を充てられるでしょう。

    ペーパーレス化を進める

    紙で管理していた書類をペーパーレス化すると、労務管理の効率化がはかれるでしょう。労務の情報を紙で管理すると量が増え続け、社内で情報を共有したい場合や検索したい場合に手間がかかってしまいます。紙では記載漏れや誤字が起こりやすく、品質に悪影響を及ぼしかねません。ペーパーレス化し書類を電子化すると、検索にかかる時間を削減でき、ミスも減らせるでしょう。

    労務を効率化する手順

    労務を効率化する手順は、下記の4つの手順で進めていくのがポイントです。

    1. 現状を把握する
    2. 課題を明確にする
    3. 改善のスケジュールを定める
    4. スケジュールに沿って進める

    1.現状を把握する

    労務管理の効率化をはかるには、業務内容や人員配置所要時間や工数など、現状を把握することが重要です。業務の洗い出しにより正確な情報が得られると、必要なリソースの把握やスケジュールの作成をしやすくなるでしょう。

    2.課題を明確にする

    自社が抱える課題を明確にし改善策を考えましょう。社内会議のような場で多くの意見を集め、企業側が悩んでいることや従業員が困っていることなどの課題をすべて洗い出します。改善策を考える際は社内での意見に加え、同業他社の事例を調べたり、専門家の意見を集めたりすると効果的です。

    3.改善のスケジュールを定める

    改善を進める業務を細分化し、実現に向けて改善のスケジュールを定めましょう。必要な工程を把握し、時間や人員を決めます。スケジュール作成と並行で進められる作業があれば、作業の工数を削減できるでしょう。

    4.スケジュールに沿って進める

    改善策を実行に移し、定期的に進捗状況の確認と問題点の修正を実施しましょう。改善策を実行したあとに、効果を検証する必要があります。得られた検証結果から、さらに優れた改善策を見出すことにつながるでしょう。

    労務効率化成功のポイント

    労務の効率化で期待した効果を得るには、以下の3つのポイントを押さえておくことが大切です。

    1. 業務が本当に必要か検討する
    2. 改善の優先順位を決める
    3. 事前に業務の流れを考える

    1.業務が本当に必要か検討する

    効率化をはかるには業務を洗い出すことに加え、そもそも必要な業務かを検討しましょう。業務の現状を把握する際は、無駄を洗い出して改善することに集中しがちです。必要性を見極めるには業務の実態を正確に把握し、重要性や目的、実施方法などを明確にすることがポイントです。不要な業務であれば、改善ではなく業務ごとに削除するという考え方もあります。無駄を削減すると、重要な業務への集中力を高められるでしょう。

    2.改善の優先順位を決める

    削減できる作業工数や日数、ほかの業務への影響、緊急性などから優先順位を決め、上位から改善を進めることが重要です。業務を洗い出す中で、改善点が数多く見つかることもあります。すべての改善策をまとめて進めると、多くのコストや時間がかかりあまり効率的ではありません。優先順位の高い業務にリソースを充てることで、リソースの最適化がはかれます。

    3.事前に業務の流れを考える

    日々の業務の流れを考え、フローチャートを用意しましょう。フローチャートを活用することで業務の全体像を理解でき、時間配分をしながら業務を進められます。さらに、フローチャートを使って認識を共有すると改善策やアイデアが浮かびやすくなる効果が期待できます。

    まとめ

    労働力人口の減少にともない、労務管理においても最小限の人材で業務を効率化させることが課題となっています。業務の効率化が実現すると、優先順位の高い業務にリソースを充てられるようになり、重要な業務へ集中できるでしょう。労務管理を効率化するには、まず業務の現状を把握することが重要です。業務の進め方に無駄はないか、自動化できる業務の洗い出しを実施します。課題を明確にし、スケジュールに沿って課題解決に取り組むことで労務の効率化が期待できるでしょう。業務にリソースが充てられない場合は、労務管理を自動化できるITツールの導入もおすすめです。

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