休職手当はどんな条件で受給できる? 給料はもらえる? 計算方法や申請の手続きまでわかりやすく解説
休職とは、従業員が自分の都合で長期間会社を休むことです。休職中に条件を満たすと、休職手当を給付しなければならない場合があります。そのため、従業員が突然休職した際に慌てないよう、担当者はあらかじめ給付要件を把握しておくことが重要です。
本記事では休職について解説し、休職の種類や休職手当の計算方法、受給期間などを紹介します。人事労務の担当者は参考にしてください。
休職の意味・概要とは?
休職とは、従業員の都合で雇用契約を継続させたまま労働義務を免除することです。企業に在籍していても、労働してなければ従業員に賃金を支払う義務はないため、多くの場合は休職中は無給扱いです。
また、休職制度は労働基準法や労働契約法で定められている制度ではありません。それぞれの企業の就業規則によって扱いが異なります。
休職と休業、欠勤との違い
休職と、休業や欠勤の違いは下記の通りです。
休職 | 従業員の都合で雇用契約を継続させたまま労働義務を免除すること |
---|---|
休業 | 従業員の就業意思はあるが、企業の業務上の都合などにより労働が免除されること ・労働災害や通勤災害 ・自己都合(産前産後休暇や育児休暇、介護休暇など) ・会社都合 ・自然災害 |
欠勤 | 従業員の都合で労働しなければならない日(所定労働日)に勤務しないこと |
休職の種類
休職の6つの種類を取り上げて、それぞれ解説します。
- 傷病(病気)休職
- 依願休職(ボランティア休職・留学休職)
- 事故休職
- 起訴休職
- 調整休職(出向休職・組合専従休職)
- 公職就任休職(公務休職)
傷病(病気)休職
「傷病(病気)休職」は、業務とは関係のないけがや病気で休む場合に適用されます。医師による診断書の提出が必要であり、対象の従業員は休職の4日目から傷病手当金を受給できます。
一方で、業務や通勤にかかわる病気やけがは労働災害のため、休業にあたります。
依願休職(ボランティア休職・留学休職)
「依願休職」は、企業側からの指示ではなく、従業員の希望による休職です。自己都合休職ともいわれます。対象者は業務から離れている間、社会貢献活動やスキルアップに向けた留学を経験することが多いです。
なかには、依願休職を会社の制度として認め、給与や賞与を支給する企業もあります。そのような企業は、ほかの従業員にかかる業務負担よりも、対象者のモチベーションアップや会社のイメージアップを重視しているのでしょう。
事故休職
「事故休職」とは、従業員が事故や刑事事件にかかわったことで、結果として職務を一時的に休止する状況です。
たとえば、本人が刑事事件を起こして勾留や逮捕された場合が挙げられます。また、どの休職理由にも該当しない自己都合の休職も事故休職に該当します。
起訴休職
「起訴休職」は、従業員が刑事事件の被告人として起訴された場合に適用されます。一定期間または判決が確定するまでの期間が対象で、適用には以下の要件を満たす必要があります。
- 企業が社会的信用を失い、職場の秩序が乱れるおそれがある
- そのほか、休職命令に合理性がある場合
判決が確定するまでの期間は懲戒処分が難しいため、起訴休職制度が利用されます。
調整休職(出向休職・組合専従休職)
ほかの社内制度との調整中に、従業員を休ませるときに適用されるのが「調整休職」です。調整休職には「出向休職」と「組合専従休職」があります。
出向休職 | 従業員が籍を残したままグループ会社などに出向する際、出向元の企業では休職扱いにすること |
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組合専従休職 | 大規模労働組合の役員が組合の業務に専念するために、本来の業務を中止すること |
ただし、組合専従者へ給与を支払うことは、不当労働行為として労働組合法で禁止されています。
公職就任休職(公務休職)
「公職就任休職(公務休職)」とは、従業員が議員に当選し、公職に就任するために休むことです。公職就任休職を適用する場合、ほかの従業員に対して就任の経緯などを説明する義務があります。
また、労働基準法では公職に就いたことによる不当な扱いは認められていません。
休職手当(傷病手当金)とは?
「休職手当(傷病手当金)」とは、従業員が業務とは関係のない病気やケガで働けなくなった際に、保険者(協会けんぽまたは健康保険組合)から給付される手当です。
病気やけがで働けなくなり、十分な報酬を受けられない従業員とその家族の生活を支えることを目的とした制度です。
休職手当が支給される条件
休職手当(傷病手当金)が支給されるには、以下の4つの条件を満たす必要があります。
- 社会保険に加入していること
- 連続3日間仕事を休み、4日以上休んでいること
- ケガや病気で働くことができないこと
- 休職中に給与を受け取っていないこと
社会保険に加入していること
休職手当は、社会保険に加入していなければ支給されません。国民健康保険ではなく社会保険に加入している必要があり、自営業やフリーランスなどで国民年金保険に加入している人は対象外です。
従業員が休職手当を受給している途中で社会保険を脱退(資格喪失)した場合は、下記の条件を満たすと休職手当が継続されます。
- 退職日(資格喪失の前日)までに引き続き1年以上の被保険者期間がある
- 資格喪失日の前日に、すでに休職手当を受給しているまたは受給条件を満たしている
連続3日間仕事を休み、4日以上休んでいること
療養のために仕事を連続して3日間休んだあと、4日目から支給の対象になります。要件を満たすまでの3日間には、有給休暇や土日・祝日などの公休も含まれます。しかし、2日休んで数日働き、2日休んだ場合は対象外です。
就業中に業務に関係なく発生した病気やケガによって、労働できない状態となったとき、その当日を初日として起算します。一方で、就業時間終了後に労務不能となったときは、翌日から起算します。
ケガや病気で働くことができないこと
休職手当の支給には、従業員が働けないことを証明しなければなりません。医療機関を受診し、医師から休職の必要性を判断してもらったうえで、診断書を受ける必要があります。休職する期間は、従業員と相談して医師が最終的に判断します。
休職中に給与を受け取っていないこと
対象の従業員が、休職中に給与を受け取っていないことも証明できなければなりません。休職手当は、生活保障を行う目的で支給されるためです。給与の一部を受け取っている場合は、本来受給できる休職手当から受け取った給与を差し引いて支給されます。
また、有給休暇を取得すると給与が発生するため、休職手当は支給されません。
休職手当が支給される期間
休職手当の支給期間は、1つの病気やケガに対して最長1年6か月です。この支給期間は通算であるため、一度受給したあと復職し、再度休職した場合も1年6か月が経過するまでは支給されます。1年6か月を過ぎてしまうと対象から外れてしまいます。
休職手当で支給される金額【計算方法も】
休職手当の1日あたりの支給額は、以下の通りです。
支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2 |
たとえば、支給日が6月1日として、5月からさかのぼった12か月間の標準報酬月額を平均した額が、45万円の場合、以下の通り計算します。
450,000÷30×3分の2=10,000(円) |
つまり、上記の例だと休職手当の支給額は10,000円です。
また、支給開始日以前の社会保険の加入期間が12か月に満たないと、下記の2つの計算方法のうち金額の低い方が採用されます。
- 支給開始日以前の直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
- 標準報酬月額の平均値である300,000円
休職手当はいつ振り込まれる?
休職手当は、協会けんぽまたは健康保険組合が申請書類を受け取ってから、1か月程度で振り込まれます。書類に不備があると手続きが遅れるため、担当者は迅速に処理を進められるようにしましょう。
休職手当金の申請に必要な手続き
休職手当金の申請を行う際に、必要な添付書類や手続きについて解説します。手続き方法は、紙による書類作成後の窓口や郵送、電子申請があります。
手続きに必要な書類
申請に必要な傷病手当金支給申請書や医師の意見書と一緒に提出する添付書類は、条件によって異なります。
条件 | 必要な添付書類 |
---|---|
事業所変更(支給開始以前12か月以内) 被保険者番号変更 | 変更前の事業所の名称・所在地・事業所に使用されていた期間がわかる書類 |
障害厚生年金または老齢退職年金を受給中、かつマイナンバーでの情報照会を希望しない | 年金証書 年金額改定通知書 ※いずれもコピー可 |
障害手当金を受給中、かつマイナンバーでの情報照会を希望しない | 支給証明書 ※コピー可 |
休業補償給付を受給中 | 休業補償給付支給決定通知書のコピー |
けが | 負傷原因届 |
第三者行為(交通事故やけんか) | 第三者の行為による傷病届 |
被保険者が死亡(相続人請求) | (除籍)戸籍謄本又は戸籍抄本 |
被保険者のマイナンバーを記載した場合 | マイナンバーがわかる本人確認書類 |
従業員本人が行う手続き
申請する従業員本人が行う手続きは、下記の通りです。
- 支給申請書の被保険者用紙に記入する
- 医療機関に、療養担当者記入用紙への記入を依頼する
- 事業主に提出してもらう場合は委任状欄に署名する
事業主が行う手続き
事業主は、支給申請書の事業主記入用紙に、被保険者の申請期間中の出勤日や、給与の支払い日を記入します。1枚に収まらないときは、申請書の事業主用紙をコピーして複数枚で提出できます。
傷病手当金の申請は電子申請でも行えます。
従業員が休職する際の注意点
従業員が休職する際に注意すべき点を3つ取り上げます。
休職中も社会保険料の支払い義務がある
健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料は、企業と従業員の双方が支払わなければなりません。そのため、休職中も社会保険料の支払い義務があります。
ただし、休職は無給扱いとなるため、月々の給与額に応じて発生する雇用保険料の支払いは必要ありません。
休職の取得基準を明確にしておく
部署や人ごとに休職の定義が変わると、従業員の不満につながります。どのような場合に休職と認めるのか、休職の取得基準を明確に定めておく必要があります。
休職期間満了時の対応は慎重に行う
休職期間が満了したあと、すぐに復職できるわけではない点に注意が必要です。休職期間満了時の対応は慎重に行いましょう。
復帰の時期は産業医やかかりつけ医と従業員が相談のうえ決定し、戻ったあとは負担が少ない業務から始めてもらうなど、本人のサポートに努めることが重要です。
まとめ
休職とは、従業員の都合で雇用契約を継続させたまま労働の義務を免除することです。労働していないため無給のケースが多いです。ただし、従業員が業務と関係のない病気やけがで働けなくなった場合、申請すれば協会けんぽや健康保険組合から「休職手当(傷病手当金)」が支給されます。
ただし「社会保険への加入」や「連続3日間を含んで4日以上の休んでいる」などの条件があります。休職手当が支給される期間は1つの病気やけがに対して最長で通算1年6か月です。
手当金の申請には、手続きや条件に応じた添付書類が必要です。突然の休職に慌てることがないように理解しておきましょう。また、休職中も社会保険料の支払い義務があるという注意点も押さえておく必要があります。
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