休職届とは【テンプレートあり】書き方や必要な理由、企業側の手続きを解説
休職届とは、従業員が休職する際に会社へ提出する書類です。
休職は法律で定められた制度ではないため、休職届の提出は必須ではありません。ただし、従業員とのトラブルを回避してスムーズに手続きを進めるために、休職届のテンプレートを用意しておくと安心です。
本記事では、休職届の概要や必要な理由について解説します。従業員からの申し出にすぐに対応できるよう、休職の際に必要な企業側の手続きやフローも紹介します。
休職届とは
休職届とは、従業員が一定期間、仕事を休むことを申し出るための書類です。
休職届には、休職する理由や休職期間、具体的な復帰時期などを記載します。企業によっては、休職前に医師の診断書や家族の状況が把握できる書類の提出を求めることもあります。
休職届に記載する休職期間や復帰時期は、企業の就業規則や方針、業務の状況によって異なります。ある調査によると、休職期間の平均は17.2か月(約1年5か月)です。(※)
長期の休職が必要な場合は、面談や打ち合わせなどで従業員の意向をヒアリングしたうえで、具体的な休職期間や復帰時期を決めましょう。
(※)参照:『私傷病欠勤・休職制度に関する実態調査』労政時報 第4077号(2024年5月10・24日発行)(P.21)
そもそも休職とは
休職とは、一般的に本人の申し出により個人的な事情で、雇用関係を継続したまま、一定期間の休暇を取得することです。休職期間は短期から長期まで幅があり、取得する理由も多岐にわたります。
休職のように従業員が勤務できない状況になった場合は、原則として解雇の対象です。しかし、解雇にともなうリスクを避けるために、会社側が従業員に休職を命じることもあります。
労働基準法や労働契約法などの法律に休職に関する定めはないため、休職制度を導入するか否かは企業の裁量で決められます。
休職届は必須? 必要な理由
休職制度について法的な定めはないため、休職届の提出も必須ではありません。
ただし、休職に関する社内ルールは、就業規則に定めるのが一般的です。休職届の提出を就業規則に定めている場合は、規定に沿って休職届を提出してもらう必要があります。
休職届を不要とする企業の場合、のちの労務トラブルや人材流出を防ぐためにも提出してもらうと安心です。
休職届の書き方【テンプレートあり】
スムーズに休職手続きを進められるよう、以下のように必要な情報を入れた書類のテンプレートを作成し、担当部署内で共有しておくと安心です。
休職届に記載すべき項目は、次の通りです。
- 休職期間
- 休職理由
- 添付書類の有無
- 休職期間中の連絡先
- 備考(入院期間や入院予定の病院名など)
休職予定の従業員がいなくても、事前に準備しておくと安心です。インターネットで休職届のテンプレートを無料配布しているサイトもあるため、活用するとよいでしょう。
休職の種類
休職届の記載内容にもかかわる、主な休職の種類を紹介します。
- 会社都合
- 自己都合
- 傷病休職
- その他
会社都合
会社都合とは、会社の事情によって休職させることを指します。従業員自身が希望していなくても、就業規則に準じて会社が休職を命じる場合があります。
具体的には、正常に働けないと判断した場合や出向休職・起訴休職などです。
正常に働けないと判断される場合とは、以下のケースが考えられます。従業員本人の意思に関係なく仕事を止めさせることが可能です。
- 病気やケガによって仕事をこなせない
- 遅刻・欠勤が連続している
- ほかの従業員に悪影響を与えている
出向休職とは、会社に籍を残したまま関連会社へ出向させる際に適用する休職制度を指します。また、起訴休職とは、従業員が起訴された場合に、一時的に適用する休職制度です。
会社都合による休職は、自己都合とは異なり、休業手当を支給する必要があります。
自己都合
自己都合とは、従業員自身の事情によって休職することを意味します。
具体的には以下のようなケースが考えられます。
- 家庭の事情(産前産後・育児・介護など)
- 個人的なボランティアへの参加(災害復興支援や福祉施設でのボランティア活動など)
- キャリア形成を目的とした海外留学や資格取得など
休職を認めるか否かは会社の規定次第です。長期的に見て従業員の自己成長やモチベーションの向上につながると考え、自己都合による休職を積極的に認めている企業もあります。
病気やケガによる傷病休職
休職する理由として多いのが、仕事と直接関係のない病気やケガによる傷病休職です。
傷病休職は、休職・復職時に、従業員に対して主治医による診断書の提出を依頼する必要があります。具体的には以下のようなケースが考えられます。
- うつ病
- 適応障害
- 交通事故
傷病休職は、全国健康保険協会(以下、協会けんぽ)や健康保険組合に加入していれば、一定期間、傷病手当金が支給される可能性があります。
傷病手当金が支給される条件は、次の通りです。
- 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること
- 仕事に就けない状態であること
- 連続する3日間を含めて4日以上仕事に就けなかったこと
- 休業した期間の給与の支払いがないこと
傷病手当金が支給される期間は、支給を開始した日から通算して1年6か月です。
また、支給開始日以前の加入期間が12か月に満たない場合は、支給額の計算方法が変わります。詳しい計算方法は、協会けんぽや加入する健康保険組合に問い合わせてご確認いただけます。
傷病休職が適用されるのは、業務外の私的な病気やケガです。
対して、職場の人間関係や長時間労働、通勤時の事故などが原因の傷病は労働災害扱いとなるため、混同しないように気をつけましょう。
参照:『病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)』全国健康保険協会
その他の休職理由
会社都合、自己都合、そして傷病休職以外にも、次のような休職理由があります。
休職理由 | 内容 |
---|---|
事故欠勤休職 | 傷病休職以外の労働者都合の休職制度。 刑事事件によって逮捕や勾留をされたケースなどに適用される |
公職就任休職 | 従業員が地方公務員や市区町村議員などの公職に就く場合に適用される休職制度。 労働基準法第7条により、従業員が公的な職務を執行するために必要な時間を会社に請求した場合、会社は拒めないと定められている |
組合専従休職 | 従業員が会社と雇用関係を維持したまま、労働組合の業務に専念するための休職制度 |
休職にはさまざまな種類があるため、一つひとつのルールを整理して就業規則に定め、規則に沿って対応しましょう。
従業員が休職を申し出たときの手続き
従業員から休職の申し出を受けた際の手続き方法を順を追って解説します。
- 休職届の提出を依頼する
- 傷病休職の場合は、診断書の提出を依頼する
- 傷病手当金や労災保険給付の給付対応を行う
- 住民税や社会保険料の支払い方法を確認する
- 休職期間の連絡頻度や方法を確認する
1.休職届の提出を依頼する
従業員から休職したい旨の相談を受けて休職の対象と判断した場合は、就業規則の規定にしたがって休職届の提出を依頼します。
休職届のフォーマットは会社によって異なりますが、休職期間や休職の理由、休職中の連絡先などを記載するのが一般的です。
休職理由によっては、従業員がすぐに休職届を作成できないことも考えられます。事前に提出期日を決めて、スムーズに手続きを進めましょう。
2.傷病休職の場合は、診断書の提出を依頼する
病気やケガが原因で休職する場合は、主治医による診断書の提出が必要です。診断書は、医師が休職の妥当性を証明する書類であり、従業員が休職の対象となるかの重要な判断材料になります。
従業員との面談が終了し、診断書を受け取ったのちに、正式に休職届を提出してもらうのが一般的な流れです。なお、復職する際も、復職が可能であることを証明する医師の診断書を提出してもらう必要があります。
3.傷病手当金や労災保険給付の給付対応を行う
労働災害以外の私的な傷病による休職の場合、休職中の賃金は発生しません。ただし、健康保険に加入している労働者は、条件を満たせば傷病手当金を一定期間受給できます。
傷病手当金とは、病気やケガで休業中の被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。必要書類に記入し、協会けんぽや所属する健康保険組合に提出します。
一方、業務上の事由によって病気やケガが発生した場合は、労働災害として扱われ、休業(補償)等給付が支給されます。休業(補償)等給付も傷病手当金と同様に、従業員やその家族の生活のために必要な保険給付を行う制度です。
休業(補償)等給付を受給するためには、必要書類を所轄の労働基準監督署に提出しなければなりません。
参照:『労災保険給付の概要』厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署
4.住民税や社会保険料の支払い方法を確認する
休職期間中は、原則として賃金は支給されないものの、住民税や社会保険料の支払いは免除されません。社会保険料は労使折半であるため、休職中の従業員からも保険料を徴収する必要があります。休職期間中の保険料の徴収方法を就業規則に明記しておきましょう。
社会保険料の具体的な徴収方法は、次の通りです。
- 傷病手当金をいったん会社が受領し、社会保険料控除後に従業員へ手当金を支給する
- 毎月社会保険料の請求書を発行し、期限までに支払ってもらう
- 会社が社会保険料を立て替えて、復職後にまとめて支払ってもらう
- 復職後の賞与で相殺する
- 退職金で相殺する
3〜5の方法では、従業員が復職しなかった場合や退職した場合に相殺できなくなる恐れもあるため、注意が必要です。
住民税は、上記の方法で社会保険料とあわせて徴収するか、普通徴収に切り替えて従業員に直接納税してもらいましょう。
税金や社会保険料の徴収は金銭トラブルに発展するリスクをともなうため、事前にルールを策定し、従業員にていねいな説明をしておくことが大切です。
5.休職期間の連絡頻度や方法を確認する
休職期間中の連絡方法や頻度についても、事前に確認しておきましょう。
回復状況や復職のタイミングなどを見極めるためには連絡を取る必要があるものの、頻繁な連絡は従業員にとってストレスとなる恐れがあります。従業員の意向を確認しながら、適度な頻度で連絡を取り合うよう工夫しましょう。
休職中は労働義務がないため、仕事内容や引き継ぎ内容は聞かないように注意します。
従業員の休職中に企業がとるべき対応
従業員の休職中に企業がとるべき対応は、次の通りです。
- 定期的に連絡を取り合う
- 復職や休職の延長、退職について話し合う
- 休職期間の延長や退職に向けて適切に対応する
休職可能な最大期間や退職、解雇については、就業規則に定めておくと安心です。解雇する場合は、解雇日の30日前に予告しないと解雇予告手当を支払うことになる点に注意しましょう。
従業員が復職する際は、どの程度の業務量や時間であれば働けそうかをヒアリングし、リハビリ出勤を提案します。従業員の意思に沿わず、いきなり従来通り働かせるのは避けましょう。復職後も面談を実施しながら、継続的にサポートをします。
休職や休職届への理解を深めて適切な対応を(まとめ)
休職届は、従業員が休職する際に提出する書類です。法的な義務はないものの、就業規則に休職届の提出を規定しておくことで、トラブルを避けながらスムーズに手続きを進められるでしょう。
休職者を出さないよう日頃から従業員へのフォローを徹底することが重要ですが、万が一の事態に備え、休職届のテンプレートを作成し、休職手続きの流れについて周知徹底しましょう。