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従業員がマイナンバーを会社に提出すべき理由|マイナンバーの提出を拒否された場合の対処も解説

マイナンバーは、さまざまな行政手続きに必要とされるようになってきました。企業は基本的に、従業員の雇用形態を問わず、マイナンバーを収集する義務があります。しかし、従業員に提出を拒まれた場合は、マイナンバーを収集できません。本記事では、マイナンバーの収集手順や従業員から提出を拒否された場合の対処法などについて解説します。「提出させる方法がわからない」「従業員から提出を拒まれた」などと悩まれている企業の担当者は、ぜひ参考にしてください。

※本記事の内容は作成日現在のものであり、法令の改正等により、紹介内容が変更されている場合がございます。

 

従業員がマイナンバーを会社に提出すべき理由|マイナンバーの提出を拒否された場合の対処も解説
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    会社が従業員からマイナンバーを受け取る目的

    会社が従業員からマイナンバーを受け取る目的は、次の2つです。

    • 税金手続きをするため
    • 社会保険手続きをするため

    それぞれ解説します。

    税金手続きをするため

    税金の手続きで税務署に提出する源泉徴収票には、マイナンバーの記載が必須です。取得したマイナンバーは、一般的に年末調整の手続きで使用します。手続きに間に合うよう、遅くとも、年末調整の期限(翌年1月31日)までに従業員からマイナンバーを受け取っておきましょう。

    社会保険手続きをするため

    主に、以下の社会保険手続きにはマイナンバーが必要です。

    • 年金
    • 健康保険
    • 労働保険

    社会保険手続きの書類にマイナンバーを記載して、年金事務所や健康保険組合などの各種行政機関へ提出しましょう。

    会社が従業員のマイナンバーを収集する手順

    会社が従業員のマイナンバーを収集するには、次の4つのステップを踏みます。

    1. 利用目的を明示する
    2. 従業員からマイナンバーが記載された書面を受け取る
    3. 従業員の本人確認をする
    4. 適切に保管する

    それぞれ解説します。

    1.利用目的を明示する

    「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(以下、マイナンバー法)」により、従業員からマイナンバーを収集する際には、利用目的を知らせる必要があります。したがって、利用目的を超えたマイナンバーの利用は認められません。税金や社会保険などの手続き以外の目的でマイナンバーを収集すると、マイナンバー法に触れるため、注意しましょう。

    2.従業員からマイナンバーが記載された書面を受け取る

    従業員からマイナンバーが記載された書面を受け取りましょう。認められる書類は、次のようなものです。

    • 個人番号カード
    • マイナンバー通知カード(住民票と同じ住所・氏名であれば利用可)
    • 住民票の写し
    • 住民票記載事項証明書

    手書きで(メモなど)記載された番号では認められないため、正式な書類を受け取る必要があります。なお、上記の書類は、あとで必要な従業員の本人確認(個人番号確認書類)にも使えます。

    3.従業員の本人確認をする

    本人確認は、次の2つの書類が必要です。

    個人番号確認書類取得した番号が正しいかどうかを確認する書類
    身元確認書類取得した番号が本人のものであるかどうかを確認する書類

    個人番号確認書類は、個人番号カードや住民票記載事項証明書などが有効です。身元確認書類は、1点で対応可能なものと2点必要な書類があります。次の表に有効な身元確認書類をまとめていますので、参考にしてください。

    1点で確認できる書類(例)
    マイナンバーカード(個人番号カード)
    運転免許証
    運転経歴証明書(2012年4月1日以降に発行されたもの)
    パスポート
    身体障害者手帳
    精神障害者保健福祉手帳
    愛の手帳(療育手帳)
    在留カード
    特別永住者証明書
    住民基本台帳カード(写真付き)
    税理士証票
    学生証(写真付き)
    社員証(写真付き)
    2点必要な書類(例)
    公的医療保険の被保険者証
    年金手帳
    児童扶養手当証書
    特別児童扶養手当証書
    住民基本台帳カード(写真なし)
    学生証(写真なし)
    社員証(写真なし)
    公共料金の領収書
    住民票の写し

    ※通知カードは身元確認書類として利用できません。

    なお、マイナンバーカード(個人番号カード)1つで、個人番号確認と身元確認を行えます。従業員の手間を省くためには、マイナンバーカードの提出を促しましょう。

    4.適切に保管する

    会社は事前に定めた手続きを実施する場合を除いて、マイナンバー自体やマイナンバーが記載されている書類を保管し続けることが大切です。紛失は情報漏えいに該当するため、セキュリティ面に気をつけて適切に保管しましょう。

    マイナンバーの提出時に必要なもの

    マイナンバーの提出時に必要なものは、次の3つです。

    • マイナンバーカード
    • 通知カード
    • 住民票

    それぞれ解説します。

    マイナンバーカード

    12桁の番号が記載された顔写真つきのカードのことです。ICチップが搭載されており、生年月日や性別などの個人情報が記載されています。総務省によれば、2023年4月末時点で、マイナンバーカードの発行数は国内人口の69.8%にものぼります。そのため、半数以上の従業員は、マイナンバーカードを所有しているでしょう。

    通知カード

    2015年以降にマイナンバーを通知するために配布されたカードです。2020年5月に、通知カードの配布は廃止されました。代わりに「個人番号通知書」が配布されています。通知カードが手元にない場合は、個人番号通知書を提出してもらいましょう。

    住民票

    住民票の写しを取得する際に「マイナンバーも記載」にチェックを入れると、マイナンバーが記載された住民票が発行されます。主に役所で手続きが可能です。マイナンバーカードを所有している方であれば、近くのコンビニでも発行できます。ただし、住民票の発行は、手続き方法を問わず手数料がかかります。都道府県により手数料は異なりますが、コンビニで発行すれば、100円ほど安くなるケースがあります。

    マイナンバーの提出を従業員に拒否された場合

    マイナンバーの提出を従業員に拒否された場合の対処法を解説します。

    従業員のマイナンバー提出は義務づける法律はない

    マイナンバー法に基づき、企業は従業員のマイナンバーを収集することとされています。一方で従業員には、会社にマイナンバーを提出する義務はありません。就業規則に「必要時にはマイナンバーを提出しなければならない」と規定している場合も同様に、従業員に義務は発生しないのです。

    拒否された経緯を行政に証明できるようにする

    催促をしても提出されない場合には、経過を書類で残しておくことが大切です。具体的には「提供を求めたタイミング」「結果として収集できなかった事実」を書類に残します。提出を求めた記録が確認できれば、会社の義務違反でないことを証明できます。なお、従業員が提出を拒否した理由の記載は必要ありません。

    従業員の家族のマイナンバーの取り扱い

    マイナンバーは、従業員の家族分も取得する必要があります。従業員の家族のマイナンバーの取り扱いの留意事項を、次の3つ紹介します。

    • 従業員の扶養家族のマイナンバーも取得する必要がある
    • 扶養家族の本人確認は従業員がみずから行う
    • 扶養家族以外のマイナンバーは必要ない

    それぞれ解説します。

    従業員の扶養家族のマイナンバーも取得する必要がある

    税金や社会保険の手続きには、従業員本人も含む、扶養家族のマイナンバーが必要です。扶養家族においても、マイナンバーを取得する目的を明示する必要があります。そのため、扶養家族のマイナンバーを収集する際は「行政手続きの書類に扶養家族のマイナンバーを記載する必要がある」などと、利用目的を明示しましょう。

    扶養家族の本人確認は従業員がみずから行う

    年末調整の手続きにおいてマイナンバーを収集する際、扶養家族の本人確認は、従業員がみずから行います。ただし、第3号被保険者の届け出は、会社が扶養家族の本人確認を行う必要があります。手続きにより、本人確認の実施者が異なるため、注意しましょう。

    扶養家族以外のマイナンバーは必要ない

    扶養家族以外のマイナンバーを収集することは、マイナンバー法により禁じられています。そのため、家族構成には注意が必要です。同住居に住んでいる子供でも扶養から外れているケースがあります。誤って扶養家族以外のマイナンバーを収集しないよう、注意しましょう。

    会社はマイナンバーを適切に管理する義務がある

    個人情報保護委員会が公表している『特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)』には、マイナンバーを安全に管理するために会社が講じるべき措置について明記されています。また、マイナンバーのファイルを作成する場合は、マイナンバーの利用目的に沿って保管することが大切です。マイナンバーの利用目的以外でファイルを保管すると、マイナンバー法に触れる恐れがあります。管理方法に不安のある方は、情報管理のペーパーレス化が可能なクラウドサービスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。物理的に紛失するリスクがなくなるため、安心してマイナンバーを管理できるでしょう。

    参考:『特定個人情報の適正な取扱いに関するガイドライン(事業者編)』個人情報保護委員会

    会社のマイナンバー管理の注意点

    会社がマイナンバーを管理するうえでの注意点は次の3つです。

    • アクセス権限は細かく設定する
    • アルバイトもマイナンバーの提出を行ってもらう
    • 辞めた従業員のマイナンバーは廃棄する

    それぞれ解説します。

    アクセス権限は細かく設定する

    システムを使ってマイナンバーを管理する場合、アクセス権限は必要な人に必要な範囲だけ、細かく設定しましょう。少し手間はかかりますが、不要なアクセスを防止するためにアクセス権限は分散するのが理想です。マイナンバーは個人情報であるため、取り扱いには細心の注意を払いましょう。アクセス権限を付与する従業員を限定して、マイナンバーに関する情報に触れられる人を増やさない配慮が必要です。

    アルバイトもマイナンバーの提出を行ってもらう

    アルバイトでも、給与の金額が月額88,000円以上の場合、基本的に所得税が天引きされます。天引きした所得税は会社が税務署へ納付するため、手続きの際にマイナンバーを提出する必要があります。これには、基本的に雇用期間は関係ありません。2日ほどしか勤務していないアルバイトの方からも、マイナンバーの収集は必要です。

    辞めた従業員のマイナンバーは廃棄する

    辞めた従業員のマイナンバーは、退職から7年以内に破棄する必要があります。情報漏えいのリスクを下げるには、速やかに廃棄することが好ましいです。しかし、マイナンバーが記載されている書類(源泉徴収票など)によっては、7年間の保管義務があります。保管義務の起算日は、マイナンバーの記載された申告書などの提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日です。そのため、辞めた従業員のマイナンバーを、最長で約7年間保管することがあります。保管義務期間が過ぎて不要になったマイナンバーは速やかに廃棄しましょう。迅速な対応が、個人情報漏えいのリスクを低減します。

    まとめ

    マイナンバーは原則、従業員に提出してもらう必要があります。万が一、提出を拒否された場合は、提出を求めたタイミングや結果として提出されなかった旨を書面にまとめておきましょう。会社が従業員からマイナンバーを収集できなくとも、正当な対応をしている旨を明記できれば、企業が何かしらの罰則を受けることはありません。一方で従業員からマイナンバーを収集できた場合は、適切に保管する必要があります。しかし、書類で保管する場合は、紛失する恐れがあるでしょう。紛失のリスクを防いで従業員のマイナンバーを適切に管理したい担当者は「One人事」がおすすめです。

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